Fate/Advent Hero   作:絹ごし

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第32話『髑髏と仮面』

 危険に満ちた商店街から五体満足での脱出を果たし、何事も無く間桐邸へと帰還した真司は、原付を車庫に駐車してから荷物を取り出す。

 

「まだ夜にもなってないってのに、精神的に参ってちゃ駄目だろ」

 

 およそ半日後に訪れる本当の危険に備えろ。心労気味の己に言い聞かせる。

 しかし、常在戦場を心掛けるとまではいかないが、日中でも油断が禁物な事は思い知らされた。

 自戒の念を胸に抱きつつ、真司は買い物袋を手に下げて玄関へと向かう。だが、そこに辿り着く前に家の扉が向こう側から開かれた。

 

「兄さん、おかえりなさい」

 

「は、はあぁぁ……桜ちゃん、たっだいまぁぁ……。それと、遅くなってごめん……」

 

 生還を暖かく出迎える桜の微笑み。たったそれだけで、胸の内の戒めは、止め処なく込み上げた安堵と溜め息によって追い出された。

 萎れた茎のように前傾した背筋が、吐き出された呼気に伴って元通りになってゆく。

 

「それは別にいいんですけど。どうかしたんですか? そんなに大きい溜め息なんかついて」

 

「別に……。やっぱり家が一番居心地いいんだって再認識しただけだよ。それよりも昼飯にしよう、昼飯。次は俺が作るからさ」

 

 一気に心の活力を取り戻した真司は、怪訝混じりな桜の質問を、混じり気の無い本音で受け流す。

 そのまま、適当に買い込んだ食材たちで何を作ろうか、様々な思案を巡らせながらキッチンへと向かった。

 野菜やら肉魚やら卵やら果物やら。真司は台の上に所狭しと並べた食材の連合部隊と睨み合う。

 

「………………」

 

「うん? 別に手伝ってくれなくても大丈夫だよ。頭空っぽで買い物したから、ちょっと悩んでるのは確かだけどさ」

 

 足音に釣られて視線を逸らすと、いつのまにか桜が隣までやってきていた。

 手をこまねく様子を見兼ねてしまったのだろうか。それとも、お腹が空いて遠回しに催促をしにきたのだろうか。

 真司はその場凌ぎの間食を与えようと、網に入れられた蜜柑を幾つか見繕って桜に差し出した。

 

「ごめん、三十分ぐらいだったらそれで保つでしょ? 直ぐに作っちゃうから待ってて」

 

「………………」

 

「さ、桜ちゃん?」

 

 しかし、桜は蜜柑を受け取ったものの、この場から動こうとしない。漫然とした紫の瞳が、真司を見据えるだけだった。

 まさか、また風邪がぶり返したのか。真司は慌てて手の甲を桜の額に添えて、熱を測ろうとする。

 

「———え、あっ。ご、ごめんなさい兄さん。私ったらぼんやりしてたみたいです」

 

「なーんだ、びっくりさせないでよ。ただでさえ桜ちゃんが風邪引くなんて珍しい事なんだからさ。ほら、何時迄も突っ立ってないで座ってなよ」

 

「はい……っ」

 

 手を伸ばした瞬間。落ちたブレーカーを押し上げたかのように、桜は意識を取り戻した。

 真司の言葉を聞くや否や、どこか慌てた足取りでキッチンを離れて行く。

 

「まあ、一先ず今は頭よりも手を動かそうか。即興でもいけるだろ」

 

 気にはなったが、大人しくさせていれば問題無いだろう。真司は視線を再び台の上へと向ける。

 どれを使うのか、どれを使わないのか。真司は食材を直感で手に取り、準備を開始した。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

「………………」

 

 昼食を終えて軽い仮眠を取った後に、夕食を終えて風呂を済ませる。昨日のような不測の事態が起こる事も無く、緩やかに時間が過ぎていった。

 眼下に広がる夜の世界へと飛び込む為の英気は、その他愛のない時間のお陰で充分に養われた。

 

「しっかし、今夜はどうするべきかな……。下手にうろついて、またあいつらに出くわしたくないし」

 

 現像された写真を裏返して透過したかのように、左右が完全に反転した鏡写しの世界。

 龍騎は間桐邸を囲う煉瓦の塀に座り込み、新都の夜景を一望しながら静かに思案する。

 今度は浮遊する宝石が目潰しを仕掛けてくるだけでなく、空から矢や剣が降ってくるかもしれない。

 四方八方を警戒しながら、聖杯の手掛かりを探すのは不可能に近いだろう。

 

「取り敢えず動くべきか。聖杯、この坂の上から分かりやすく転がって来ないかなぁ」

 

 後頭部を掻きながらあり得ない願望を呟く。そうして、龍騎は塀を飛び降りる。

 そして、足の向き先を深山町へと定めた。何処にあるかも知らぬ聖杯を求めて。

 だが、龍騎の第六感は、好ましく無い気配を正面から知覚した。歩みを止めて視線を投げかける。

 

「——————」

 

「またかよっ……!」

 

 探しているのは、聖杯であってお前では無い。まるで、龍騎の言葉や行動に反応したかのように、黒い影が路傍に駐車された車から這い出てきた。

 

「お、俺はお前と追いかけっこなんかしてる暇無いんだよ! ……つ、ついてくんなって!」

 

 咄嗟に踵を返し、龍騎は勢い良く駆け出す。当然の如く、黒い影も追従してくる。

 不本意を示す龍騎の悪態を皮切りに、昨夜の逃走と追走が一日ぶりに再開された。

 

「———」

 

「うおおっ!?」

 

 下り坂が幸いして、後続との距離が一気に離れた。そのまま、坂道は丁字路に突き当たる。

 アスファルトを擦って減速しながら、龍騎は右に曲がろうとする。だが、その進路は眼前に迫る触腕の束によって通行止めとなった。

 現実世界から回り込んで来たのか。そんな思考よりも先んじた反射が、即座に身体を飛び退かせる。

 

「こんのっ……。鏡上手い事使いやがって、昨日までは俺の特権だと思ってたのに!」

 

 カーブミラーの鏡面から、黒い影が支柱を伝って降りてきた。世界を使い分ける機転の良さに感心しながらも、それを評して捕まってやるつもりなど毛頭無い。

 地面を這って伸ばされた影を、跳躍して躱した龍騎は一般家屋の屋根に飛び乗る。

 そのまま、屋根伝いに駆け出した。律儀に道を走るのは止めだと言わんばかりに、屋根を一歩一歩踏み砕いて逃走する。

 

「——————」

 

 距離を離す為に現実世界へ逃げ込み、回り込まれぬ為にミラーワールドへ直帰する。

 だが、幾度と無く世界の間を行き来しても尚、黒い影の追跡を振り切るには至らない。

 諦めの悪さを如実に表現するように、龍騎の行く先々は何度も塞がれた。

 

「はぁ……はぁ……。い、いつまでついてくるんだか……。俺が、お前に何したってんだよ」

 

「———、———」

 

 やがて、龍騎の足は徐行と記された標識の前で止まる。間桐邸を始点に始まった逃走劇は、何処とも知れぬ立体駐車場にまで及んだ。

 疎らに停められた車両たちが、己の主人の迎えを静かに待っている。

 

「…………」

 

 此処を終点にしてやりたい。無論、逃げ切るという意味で。肩で荒々しい呼吸をしながら、黒い影に対して後ずさる。

 しかし、相手も限界が近いのか、余裕であるが故に弄んでいるのか。直ぐに掴みかかる予兆を示さない。

 何か、一つでも切っ掛けがあれば。そう思い、龍騎は辺りを見渡す。

 

「いっそのこと、あのかっこいいスポーツカーでもひったくって……。そうだ!」

 

 良い方法を閃いた。頑なに追い縋ってくる眼前の存在を振り切る、冴えた方法を。

 龍騎は残った体力を振り絞って、接触事故を防止する湾曲した鏡へと頭から飛び込む。

 

「やっぱりあった!」

 

 そして、ミラーワールドに続く狭間の空間にて、乗り手を待ち構えるように据え置かれた装置に跨り、ハンドルを力一杯に捻った。

 

「———」

 

 その瞬間、自動二輪と呼ぶにはあまりにも特異な形をしたバイクが、龍騎を乗せて弾丸の如く射出される。

 狭間を越えてミラーワールドに突入したバイクは、反転した徐行の標識を鉄筋コンクリートごと突き破り、彼方へと凄まじい速度で消えて行った。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

「ここまで来ても、まだまだ不安だ……」

 

 頻りに後方や鏡になる物を確認しながら、窮地を救ってくれたバイク……ライドシューターから下車する。

 何処までも遠くへ行く為に、龍騎はこの暴れ馬を駆って深山町を端から端まで横断した。

 行き先を定めぬ我武者羅な走行の結果。ライドシューターは円蔵山の麓、柳洞寺へ続く石段の前にまで行き着いた。

 

「お寺って、居るだけで悪霊除けになるのかな……?」

 

 寺生まれの生徒会長に頼み込めば、もう黒い影から追い掛けられる事は無くなるかもしれない。

 せめて、仏様の神秘的な力か何かで、あれを一晩やり過ごせるだけでも良い。

 僅かな希望に縋って、龍騎は長い階段の一段目に足を掛ける。どの道、回れ右をして戻るという選択は憚れた。

 

「……………」

 

 上の寺と下の町を繋ぐ唯一の道。その両端を、雑木林が垣根の如き様相で立ち並んでいる。

 幹と幹の間に生じた濃い暗闇は、あの黒い影を想起させた。龍騎は急かされるように、石段を一段飛ばしで駆け登る。一時の安息を求めて。

 

「なんだあれ。…………刀か?」

 

 暫しの間、段数にそぐわぬ跫音を立てて進んでいると、階上の踊り場に転がる刀の鏡面が目に留まった。

 一旦足を止めて、その長々とした得物を注視する。見え透いた罠にかかるのは、昨夜だけで充分だった。

 しかし、無造作に転がされた刀は、虫食いのように穴を広げて消えてゆく。嫌な予感が、龍騎の背筋を這った。

 

「———って、どう見てもサーヴァントの奴の武器だろ!」

 

 踊り場から柳洞寺の山門までの距離を無視して、龍騎は一息で飛び上がり境内に転がり込む。そして、手水場の濡れそぼった岩から現実世界へと戻った。

 刹那、赤と紫の入り混じった魔力の光が、寺の離れ座敷から放たれる。

 砂利を踏み散らして跳躍し、瓦屋根を踏み砕いて疾駆し、襖を薙ぎ飛ばして侵入し。龍騎は直線上の存在へと体当たりをぶちかました。

 

「っ———ドンピシャ!」

 

「ぎ、ギギ……。何ダ、お前ハ」

 

 相手は勢いよく吹き飛ばされながらも、宙で体勢を立て直す敏捷性を披露した。龍騎は警戒して眼前を見据える。

 仰々しい髑髏の仮面、夜の闇に溶け込む漆黒の套。まさに、絵に描いたような暗殺者の出で立ちだ。

 

「…………っ!」

 

 暗殺者が左手に携えた黒いナイフの先端からは、何者かの血が既に滴っていた。反射的に、龍騎の双眸は部屋の惨状へと向けられる。

 畳の上に撒き散らされ、繊維に浸透した血糊。その発生源と思しき、うつ伏せに倒れ伏す男性。そして、呪い師めいた装いの女性。

 

「————キイィッ!」

 

「くっ!?」

 

 間に合わなかったのか。そんな龍騎の心の揺れを見て取った暗殺者は、隙を突くようにナイフを投擲した。

 先端が突き刺さる寸前、龍騎はどうにか身を捩る。胸の直ぐ先を鋭い刃が通過した。

 しかし、そのナイフは牽制の意図も込められていた。暗殺者は瞬時に部屋から飛び出てゆく。

 あのような手合いに、仕切り直しの機会を与えては危険だ。そう判断した龍騎も、外廊下に出て続こうとする。

 

「宗一郎様っ……」

 

 だが、嗚咽が大半を占める悲痛な声が、聞き覚えのある名前を叫んだ。

 咄嗟に足を止めて振り返ると、呪い師が宗一郎と呼ばれた男を必死に介抱している。

 葛木宗一郎(くずきそういちろう)。穂群原学園の教師の一人だ。寡黙で近寄り難い雰囲気を持っている、悟りを開いた仙人のような男性。

 喉と手足を横に切られ、腹を縦に大きく裂かれた傷だらけの姿は、とても無残なものだった。

 

「…………」

 

 どうか死なないでくれ。彼に信頼を寄せている生徒や教師たちの悲しむ顔は見たくない。黙したまま小さく願う。

 そうして、血で手が汚れる事も厭わず治療を施そうとしている呪い師から顔を逸らし、暗殺者の後を追った。

 

「あいつ、何処行っ———」

 

 視線を巡らせきる前に、左側に続く廊下の奥からナイフの群れが矢継ぎ早に飛来する。

 龍騎は泡を食って柱へと転がり、その凶刃をやり過ごす。対面の壁を見やると、即席の剣山が出来上がっていた。

 

【SWORD VENT】

 

 青龍刀を召喚した後に、板間を蹴って再び壁から身を投げ出す。眉間に真っ直ぐ迫り来る黒い刃を弾き返し、白い髑髏の仮面を目掛けて駆け出した。

 しかし、その青龍刀の間合いに捉えられる事を暗殺者は良しとしない。指の間に挟んだ四つのナイフを、龍騎の足先へと一斉に投げ放った。

 

「っとととっ!」

 

 堪らずに踵を床へめり込ませて急停止。板の目沿いに、刃が小気味の良い音を立てて突き刺さる。

 そして、暗殺者は黒い布をはためかせながら別棟の瓦屋根へと飛び跳ねた。黒づくめの見かけから察しはついていたが、正面からの戦闘が嫌いらしい。

 

「ついさっきまで追い掛けられてた側なのに、今度は追い掛ける側ってのはなっ」

 

 しかし、闇に紛れて奇襲を仕掛けられては、治療に掛り切りの呪い師を守りきれないだろう。

 せめて、円蔵山の外まで出て行かせれば。龍騎は暗殺者を見失わぬように目を凝らして後に食らいつく。

 

「キキキキッ」

 

 屋根から屋根へ、廊下から廊下へ、部屋から部屋へ。龍騎の思惑に反して、暗殺者は柳洞寺の敷地から離れようとしない。

 鈍間が。仮面の隙間から漏れる小刻みな金切り声は、言葉に出さない嘲りを龍騎へと示していた。

 

「このっ……逃げたいんならさっさと逃げろよ、髑髏男!」

 

 付かず離れずの距離を取るのは止めだ。宗一郎の安否が気にかかった龍騎は、追従する速度を上げる。

 そして、暗殺者の走る道筋を予測し、右手の青龍刀を相手の三歩先目掛けてぶん投げた。

 

「キッ———」

 

 空気を上下に切り拓くような水平回転。湾曲した片刃が楕円軌道を描いて、黒衣の縁と薄皮一枚を切り裂く。

 上手く意表を突けた。龍騎は右脚を大きく踏み込み、追跡対象へと身を躍らせて肉薄する。

 接近の気配を読み取った暗殺者は、機敏に身を翻してナイフの反撃を繰り出す。しかし、その刃先は龍騎の眼前を空振るのみに留まった。

 歩調を僅かにずらしたフェイント。暗殺者の反撃から一瞬の間が置かれ、握り拳が大きく振りかぶられる。

 

「ギギギィ!?」

 

 そして、龍騎はその拳を髑髏の仮面の鼻先に思い切り捻じ込む。暗殺者は錐揉みに回りながら、襖を蹴散らして廊下へと殴り飛ばされた。

 

「ここで、やれるってんなら」

 

 外縁の手摺りに背を預け、身悶えしたままの暗殺者。その様子を、龍騎はチャンスと捉えた。

 もう一度逃げられる前に、柱にでもふん縛ってやる。龍騎は急ぎ足で駆け寄って行く。

 

「ク、クカカカッ……」

 

 だが、勇み足気味な龍騎の歩みは、暗殺者の先程とは違う笑い声によって止まった。何か、奥の手を持っているのか。警戒は必然的にそちらに向けられる。

 

「———なっ!?」

 

 しかし、その警戒の向き先は間違いだった。横合いから発射された何かをまともに受けて押し出され、龍騎は壁へと張り付けられる。

 粘り気に満ちた謎の物体は、投網のように纏わり付いて龍騎から離れようとしない。

 

「キョウリョク感謝する。魔術師ドノ」

 

 骨を鳴らす鈍い音と共に、暗殺者は首を回しながら起き上がる。彼の直ぐ側に、巨大な蜘蛛の怪物が降ってきた。

 この物体の正体は蜘蛛の糸か。得心するとき同時に、龍騎は身体の自由を求めて只管にもがく。

 

「サテ……」

 

「くっそ、全然剥がれないぞっ」

 

 綽々とした動作とは対極的な鋭い殺意が、髑髏の仮面の隙間から発せられる。そして、暗殺者はマントの裏に隠していた右手を初めて露わにした。

 拘束具を思わせる、何重にも巻かれた分厚い包帯。手先から肩までを覆う帯が独りでに解けてゆく。

 

「サーヴァントの類のモノではないようダガ。……そのシンゾウ、私ノ糧とサセテ貰おう」

 

「あ、あの槍男といい、また心臓かよ…………!」

 

 伸び切った帯が重力に逆らって宙を舞う。揺らめきに伴い、包帯に隠された全貌が明らかとなった。

 それは、人ならざる者の怪腕だった。折り畳んだ羽根を開く動作で、自らの身の丈を超えた右腕を大きく広げる。

 そして、暗殺者は龍騎へと赤熱した掌を差し向けた。いつかの日の紅い槍の穂先と、この掌が重なって見える。

 

「こ、こんなところでやられて———」

 

「———宝具」

 

 無慈悲な死刑宣告が龍騎の言葉の続きを掻き消す。異形の指先が、今か今かと目前の標的を求めて脈動する。

 身体の自由が利かず、あの鋭利な指先を躱す手段はない。徹底的に生存の可能性を摘まれた状況。

 諦念が胸の奥を起点に四肢へと広がる。それでも手足はもがく事を止めない。

 

妄想(ザバー)———ッ!?」

 

 相手の切り札が発動する直前。龍騎の視界によぎったのは、何故か少女と思しき人影が雑木林の中で佇む姿だった。直後、暗殺者が吃驚の声を漏らす。

 雑木林と境内を隔てる塀。その隙間から伸びた影が、大挙して暗殺者へと押し寄せた。

 しかし、迫る影の刺突を、巨大な蜘蛛が自らの体躯を活かし身代わりとなって受け止める。

 

「ギギキキキイイィ……ッッ!!」

 

 そのまま、暗殺者は龍騎に脇目も振らず、秒針が振れるよりも先にこの場から逃げ出していった。

 果実を搾るかのような湿った音が周囲に木霊する。影の刃に切り刻まれ、憐れな獲物の原型が無くなってゆく。

 

「助かっ……てはいないよなあ。この状況」

 

「——————」

 

 手ごろな大きさにまで裁断された蜘蛛のなれの果てが、地面を擦ってある方向に引き寄せられる。

 悲観的な予想は寸分も狂るってくれない。捕食を終えた黒い影を見据え、依然として壁から動けない龍騎はがっくりと項垂れた。




ようやく、全てのクラスのサーヴァントとの顔合わせが終了しました。真アサシンの触媒となったアサシンさんには申し訳ありませんが。

それとHF二章の映画も見ましたが、とっても良いものでしたね。何度か見直して今後の描写の参考にしたくなってしまいます。

感想、アドバイス、お待ちしております。
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