ここが2の島か。
そんな大きな島でもなく、島民も少ない。
こんなところに究極技なんてものを伝承している人がいるとは到底思えないが、一際高いところにポツンと一軒家があり、ものすごくそれっぽい感を放っている。
「カイリュー、りゅうせいぐんじゃ!」
はっ?
なんか降ってきたんですけど。
「リザードン!」
絶対人が来ないと思ってやってるだろ。
「トルネードドラゴンクロー!」
だったら、全部砕いてやる。それはもう粉々に。
「なんじゃと?!」
上の方から枯れた声が聞こえてきた。恐らくカイリューのトレーナーだろう。
「………お主、何者じゃ」
カイリューから降りてきたのは一人の婆さんだった。マジかよ、婆さんなのかよ。
「ただのポケモントレーナーだ」
「ふんっ、こんな辺境の地に来るトレーナーが『ただの』トレーナーなわけあるかい」
そりゃまあ、ご尤もで。
「それで、何の用じゃ」
「究極技とやらを習得しに」
「ほう、究極技じゃと? 帰るんじゃな。生半可な実力じゃ使えるものではない」
「生半可な実力ねぇ……………」
りゅうせいぐんを全て落としてもダメか。
つか、この人でいいんだよな。この人でなかったら帰される意味も分からんし。
「オーキドグリーン。この名前に聞き覚えくらいあるんじゃないか?」
「ッ?! グリーンじゃと!? ………いや、今やあいつもジムリーダーに上り詰めた有名人じゃ。誰が知っててもおかしくはない」
こっちの手札は使えない、か。
「なら、バトルでどうだ?」
「わしに戦えと?」
「………カイリュー以外にポケモンは?」
「いるがそれがとうしたというのじゃ」
「全員出せよ。まとめて相手してやる。それで勝てば文句ないだろ」
手札が使えないなら相手の手札をすべて叩き潰すのみだ。
「ふん、メガニウム、バクフーン、オーダイル。この生意気な小僧を蹴散らすのじゃ!」
ジョウト地方の御三家の最終進化形か。
リザードンが究極技を使えたということは恐らくはバクフーンも同じ技を使える。そして、くさタイプ、みずタイプにもそれぞれ究極技があるとすれば、同じ御三家であるメガニウムとオーダイルもまた究極技を使えるのだろう。
「リザードン」
「ほう、グリーンと同じというわけじゃな。カイリュー、りゅうせいぐん! メガニウム、ばーどぷらんと! バクフーン、ぶらすとばーん! オーダイル、はいどろかのん!」
もしやと思ってはいたが。
やはり炎以外の究極技もあったんだな。しかも三位一体となる合わせ技。三体揃えば危険なんてものじゃない。
「リザードン、ハイヨーヨー」
まずは三位一体を急上昇で躱す。だが、頭上からは流星が弾け、無作為に降り注いできた。
「トルネードドラゴンクロー!」
腕を前に突き出し、高速回転して流星群の中を突き進んでいく。
まずはこのままカイリューを落とす。
「カイリュー、かわすのじゃ!」
チッ、間一髪で躱されたか。
だが、まだだ。
リザードンは空気を思いっきり蹴って反転すると、急下降で一気にカイリューを地面に突き落とした。
「シャシャッとはなて深緑の力!」
これは………?!
ハード、プラントか………!?
さっきとはまるで威力が違う。さっきのは手加減、されていたというのか?
「リザードン、カイリューの尻尾を掴んで投げ飛ばせ!」
起き上がりかけているカイリューの尻尾を掴み、バランスを奪うとぐるんぐるんと回して太い根の方へと投げつけた。これでカイリューが身代わりとなって技を消化するだろう。
「………体内の炎をすべて右の拳に集めろ」
「………ほのおのぱんち……か?」
「イメージは………火山の噴火だ。地割れとともに炎柱を噴き上がらせるような、地中で爆発を起こすんだ」
「小僧、なにをする気じゃ?」
「本来が、どんな技なのかは知らない。それを今から学ぼうと思ってここに来たんだ。ただ、これは名前を借りた俺たち特製の究極技だ」
グリーンのブラストバーンから得た見よう見真似の究極技。だけど、一発撃って分かったこともある。
火力が足りないんじゃない。分散させすぎていたのだ。だからもっと、もっと一点にエネルギーを集める必要がある。
「叩きつけろ! ブラストバーン!」
叩きつけた瞬間、地面が揺れた。割れた地面からは炎の柱が立ち上っていく。
「………この威力、じしんか………。それに追加効果のようなものとして炎柱が立ち上ったというところか……………。まだまだだな」
やはりそう簡単に上手くはいかないか。
ま、新しくじしんを覚えたんだから、良しとするか。
「か、カイリュー?! メガニウム?!」
後は二体。
「リザードン、じしん!」
新しく覚えた技を単体で使ってみた。
結構激しく揺れるな。俺の三半規管が揺さぶられて吐き気を催してきた。
「まずはバクフーンだな。リザードン、ドラゴンクロー!」
「ゴゴッと唸れ劫火の力! バジャッとはじけ水勢の力!」
やはり。
こちらもさっきとは打って変わって威力が桁違いだ。
だが、来ると分かっていればどうとでもなる。
「ソニックブースト!」
究極技の欠点は一直線に放つこと。
特にオーダイルのは正面に一直線であるため読みやすい。同様にハードプラントも地面を這うような技だから軌道を読みやすい。
「………使った後はしばらく動けなくなるのか。究極技というだけのことはある」
ま、こんな特大威力の技を何の反動もなく使えるわけがないよな。
「大体は掴めた。やっぱり再現するには技が足りないな。………よし、この際だ。リザードン、ありったけの炎を纏え!」
久しぶりだな。バトル中に新しく技を覚えさせるなんて。だけど、これが一番道理に合っていると思う。全てのヒントはバトルの中にあるのだ。
「なっ?! ふれあどらいぶじゃと!?」
フレアドライブ。
激しく燃え盛る炎を纏い、突撃をする大技。反動でこちらにもダメージが返ってくる程の破壊力がある。
だが、それがどうしたというのだ。俺は別にこの技でどうにかしようなんて考えちゃいない。
「そのまま右の拳の先に、一点に集中させるんだ」
結局のところ。
グリーンのリザードンやこの婆さんのバクフーンみたいに火力が足りないのは文字通り火力が足りないからだ。だったら、ポケモンの技でそれを補えばいい話。そして、ないなら新たに覚えさせるのみ。
「やれ、ブラストバーン!!」
右の拳を地面に叩きつけた。
拳が地面に当たる前には既に地割れが起き、炎の柱が次々と立ち上っていく。
さっきとは比べ物にならない威力。
ただ………………。
「やっぱなんか違うな………」
何だろうか。
理屈の上ではこれで成功したと言っていいはずだ。
だけど、何か。何かが俺の中で引っかかっている。
「バクフーン!? オーダイル?!」
あ、いつの間にか四体とも戦闘不能にしてたみたいだわ。今ずっと究極技のことしか頭になかったぞ。ヤバい、集中し過ぎると周りが見えなくなってるな。
「………もう一度聞くぞ。お主、何者じゃ?」
「元カントーチャンピオン、ヒキガヤハチマンだ」
「………っ?! なるほどのぅ。ガッテンがいったわい」
ここまでやったからにはこれくらい言っておかないとな?
「図鑑所有者に匹敵する実力かい。いいじゃろう、受け取りな」
婆さんが認めてくれたらしく、赤いリングを俺とリザードンに投げてきた。それを取ろうして、リングに触れた瞬間、勝手に腕に嵌った。
え? なにこのリング。意思でもあるわけ?
リザードンも俺と同じことを思ったらしく、自分の腕のリングをまじまじと見ている。
「ま、お主はほぼ完成しておる。後はこのリングから授かるのみじゃろう」
こりゃジョウトの赤髪に並ぶ早さだね、と呆れていた。
なるほど、要するにこれがなければ完成しないというわけか。あながち、俺の勘も間違っていなかったというわけだ。
「いいかい、究極技はおいそれと使えるものじゃない。じゃがお主らはそれを自力で形にした。その実力はわしが見てきた中でもずいいちじゃ。ちからに驕れるじゃないよ」
「驕れ、ね………。そんなの散々見てきた。ポケモンに負荷を掛けてまで勝敗に拘り、ポケモンを飼い慣らして力で捩じ伏せる。………そんなのはただの欺瞞だ。俺はリザードンにーーヒトカゲに選ばれた。そして俺はそれを受け入れたんだ。そんなことで俺たちの関係を終わらせてたまるかよ」
ああ、そうだ。
サカキが俺たちに何か施していようと、そんなのは関係ない。俺はこいつのトレーナーで、こいつは俺のポケモンだ。たかだか究極技くらいでリザードンの力を過信したりはしない。
俺はできることを指示し、やれることを増やしてやるだけだ。
「んで、究極技ってのは三つあるんだろう?」
「それがなんじゃ?さっき見せたじゃろう?」
「他二つも試し撃ちできたりしないのか?」
「なっ!?」
あれ?
そんな驚くことだったか?
「………いいじゃろう。メガニウム、オーダイル。回復できたかいっ?」
「メガッ!」
「オーダッ!」
「………究極技を舐めるじゃないよ?」
メガニウムとオーダイルの回復を確認すると、ニヤッと不敵な笑みを浮かべてきた。婆さん、様になってて怖い。
「はっ、いいね。それくらいじゃないと張り合いがない」
✳︎ ✳︎ ✳︎
キワメ婆さんのところを訪れて半年。
俺は一度もユキノシタたちの前に顔を出していない。要するに逃走中というわけだ。
ーーー暴君様を連れて。
「『謎の黒マントと白アーマー! 再び現れる!?』………ね」
『ふっ、流石に派手にやり過ぎたか?』
「いいんじゃねぇの?相手は犯罪組織なんだし」
新聞の一面にデカデカと貼られた項目を読み上げると暴君様が話し掛けてきた。
『黒マント…………………ふっ』
「なんだよ、白アーマー」
実は新聞の記事は俺たちである。
三つの究極技を三体同時に一発で成功させ、キワメ婆さんに後継者として認められた後。
俺たちはそのままカントーの犯罪組織を洗いざらい潰し始めた。情報源は暴君様。一体どこからそんな情報を仕入れてきたのか知らないが、確かな情報なもんだから隅に置けない。
「んで、次は?」
『そろそろロケット団も交えるか』
「本命はそこだろうが」
『………奴は帰ってこないな』
「お前とやってから気配がない。………何かしたのか?」
『さあな。オレはあいつと一瞬交えたくらいしかない。あいつが何者なのか、何も知らん』
「一度じゃなく一瞬、ね………」
『ああ、一瞬だ』
その時何があったのかは聞かない。聞くのは野暮ってもんだ。
「まずは次の場所へ移動するか」
『ああ、そうだーーー』
「サイホーン、とっしん!」
「リングマ、はかいこうせん!」
「ナッシー、タマゴばくだん!」
次の場所へと移動しようかと決めた時、轟音がなった。声のする方を見るとサイホーン、リングマ、ナッシーが暴れ始めている。トレーナーは恐らくあの中央にいる三人。
「ったく………」
『いくのか?』
「見過ごすのも寝覚めが悪いだろ」
ここでやらなければ到底ロケット団を倒すことなんで出来はしない。
「ママ?!」
「ユイ、私はいいから逃げなさい!」
「いやっ!」
「いいから早く!」
転けて逃げ遅れた母親に娘が離れないでいる。
「クァンッ!」
「サブレ?!」
母親の方のポケモンだろうか。
アレは確か…………ポチエナ、だっか?
「よお、こいつ弱いくせに牙を剥いてきてるぜ」
「一発やってろうぜ」
「へへっ、サイホーン、じならし!」
「きゃ?!」
「うわっ!?」
母娘以外にも今のじならしによりバランスを崩し、逃げ遅れる者が増えていく。
「リングマ、ブレイククロー!」
反抗的だったポチエナにリングマの爪が刺さった。
軽く吹き飛ばされていくポチエナ。
「ナッシー、ソーラービーム!」
「サブレぇぇぇえええええええええっっ!?」
そこにナッシーのソーラービームが刺さった。
こりゃ無理だな。反撃の隙も与えない数の暴力。ポチエナでは耐えることなど万に一つもないだろう。
「血気盛んなのはいいが、自分の実力も把握しとかねぇと命がいくつあっても足りねぇぞ」
リザードンに乗ってポチエナを回収すると目を回していた。
「何者だ!?」
そして着地し、暴君の横に並び立つと三人の中の一人が睨んできた。
「っ!? 黒マントに白アーマー…………まさかっ?!」
質問に答えるよりも先に別の一人が俺たちの様相に気がつき、戦慄いている。
『ふん!』
「ぐあぁぁっ!?」
暴君様はお怒りのようである。
サイコキネシスで気づいた男を吹き飛ばした。
「リザードン、ブラストバーン」
「シャア、アアッ!」
「「うわっ、うわぁぁぁあああああああああっっっ!?!」」
こっちも残り二人を纏めて狩っていく。
ナッシーとサイホーンも間に割って入ってきたが、究極技の前では意味を成さなかった。
「クァン!」
「わかったわかった。んなに舐めんな」
なにこの懐き様。
「サブレ!?」
「………ん」
駆け寄ってきたお団子頭にポチエナを差し出す。
…………が、何故か受け取ってくれない。
「………あ、ありがとう…………ごさいます………………」
「逃げられるか?」
「あ、足挫いたみたいで………」
「だったらここにいろ。リザードン、ここで周辺を警戒しててくれ。他にもいるみたいだからな」
「シャア!」
お団子頭の少女の脇にポチエナを寝かせると動けない代わりリザードンを護衛を任せた。
「ヒッキー………?」
そして俺も片を付けにいこうとしたら、ポツリと聞き覚えのあるようなないような呼び方をされた。
や、そもそも「ヒッキー」とか、ただの蔑称だろ。
「誰が引きこもりだ。俺はこうして昼夜問わず働いてるっつの」
気のせいだと思うことにし、今は目の前の暴挙を打ちのめす方へと切り替える。
「さて暴君さんよ。この場合、集団テロと断定してもいいのかね」
『別に構わんだろう。害をなす者は敵。それに刃向かう者は味方。関係ない者を護る者こそ正義であろう?』
「違いない。んじゃ一発デカいの頼むぜ」
『ふんっ!』
いやー、やっぱすげぇわ。敵に回すとたまったもんじゃないが味方にするとすげぇ心強いな。
一発で他に待機してた奴らを放りやがった。
「すご…………」
おっと、この音は……………。
「警察です! 身柄を拘束します!」
………ん?
俺?
「や、捕まえるの俺じゃなくてあっち。どう見てもあっちだろ」
「し、失礼しました!」
「ぶほっ!」
おいこら、そこのお団子頭。
何笑ってんだよ。
「や、やー………ははは」
「ったく………」
なんだかんだ人が集まってきたな。
野次馬どもも暇過ぎんだろ。
「げっ、コマチ………」
今日って休日だっけ?
母ちゃんまでいるし。いや、そもそもここは…………。
「そうか、クチバに来てたのか」
あまりにも周囲に無頓着過ぎたようだ。自分が今立っている場所でさえ把握できていなかった。
そうと分かっていれば、こんな大事にしなくてもよかっただろうに。もっと、一発で、いや一瞬で片付けられるようにならないと…………。
「暴君、予定変更だ。ホウエンのバトルフロンティアにいくぞ」
『………何をする気だ?』
「バトルフロンティアの全てのシンボルを手に入れる。そして、圧倒的な力でロケット団を潰す」
『ふっ、いいだろう。好きにしろ』
警察が奴らを全員拘束したのを確認し、リザードンに乗ってその場を離れた。
「黒マントに白アーマー……………………まさかね」
✳︎ ✳︎ ✳︎
ロケット団討伐部隊編成から八ヶ月。
俺はホウエン地方のトウカの森に来ていた。
ロケット団がカントー・ジョウトの外を活動拠点にしている可能性を考慮し、捜索範囲を広げたためだ。
これまでいくつかロケット団による事件はあったものの、表立った活動は見受けられず、これだけ足取りを掴まなければサカキに踊らされているのではと、疑わざるを得ない気分である。だが、やはりロケット団絡みの事件は日に日に増えているため油断はできない。
あれだけ犯罪組織を潰したというのに、逆にロケット団が動きやすくなってしまっているのが否めない。
トウカの森に来たのはただの息抜き。
のはずなのに何故か絡まれるという。しかもポケモンに。
「フシャーッ!」
威嚇のつもりだろうか。
身体が小さいため全然怖くない。なんか背伸びしてんなーとにやけてくるまである。
「えっと………、このポケモンは」
黄緑色の身体に咥え枝。
とくれば奴しかいないな。
「キモリ………か」
取り敢えずなんか構って欲しそうなので、リュックからきのみを取り出し、コロッとキモリの前に転がした。
キモリはきのみを目で追っていく。
……………そしてじっと見ている。
これ、傍から見たら奇妙な光景だろう。
「きのみは嫌いか? つーか、あれか。飽きてるか」
じっと見つめるだけで何もしようとはしない。
勿体無いな。
「よっと………イテッ!?」
屈んできのみを拾い上げようとしたら、枝で攻撃された。手の甲に鞭の後が残っている。どんだけしならせたんだよ。
「なんだよ、結局いるのかよ」
きのみを後ろ手に隠すように俺を睨みつけてくる。
「………ならこれはどうだ?」
ジョウト名物いかり饅頭。
個包装から取り出した瞬間、奪われた。今無駄に動きが早くなかったか?
「………お前、独りか?」
見た限り仲間の気配もなさそうなので一応聞いてみたが、全く聞いちゃいない。饅頭を食うことだけに意識がいってるようだ。
『まるで子供だな』
「いやどう見ても子供だろ」
まあ、この暴君様がいるってのに全くプレッシャーを感じてないところを見ると大物なのかもしれないが。
「よっと」
『連れていくのか?』
「暇そうだしな」
俺はキモリを肩車し歩き出した。
嫌がる素振りも見せないため、このまま森の外に出してみよう。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ここがバトルフロンティアか………」
強者のトレーナーが挙って集まる様々なバトルルールの施設を完備している特別区。
ロケット団とやり合うためにもここで鍛える、それもホウエンに来た理由の一つである。
「泥棒ぉぉぉ!」
えー…………。
こんなところでもいるのかよ。
つってもこんな広場でってことは引ったくりの類か。
「ま、俺には関係な……………」
なんか物凄くそれっぽい奴がこっちに走ってくるんですけど。
このままだと俺は正面で鉢合わせになってしまう。
「はあ………」
ま、こっち来てから身軽な奴がいるからな。リザードンを出すまでもない。
「キモリ、でんこうせっか」
俺の肩に乗っていたキモリはバッと飛び出し、こっちに向かってくる引ったくり犯を突き飛ばした。
ほう、やるな。
「ぶぉあっ?!」
弱いな。
自分で実行したということはトレーナーじゃないのか?
「こ、このぉっ!!」
段々と野次馬が増えて来たな。
だからこういうのは嫌だってのに。
「………何をしている」
背後からポツリと声がした。
振り向けばそこには…………見た目中性的な奴がいた。野次馬たちも一瞬で言葉を失っている。それもそうだろう。奴の傍らには伝説のポケモン、ライコウがこっちを威嚇しているのだから。
「…………なるほど、だから捕まらなかったわけか」
「君は何者だ」
「これ引ったくり犯。んじゃ」
野次馬たちが口々に「タワータイクーンのリラ」とか「バトルタワーの」と言っていたため、ここの関係者なのだろう。だから、後は任せることに俺はバトルフロンティアを巡ることにした。
「………?」
キモリが引ったくり犯と俺を交互に見ながら小首を傾げてくる。
「いいんだよ。餅は餅屋。俺たちの仕事はこれで終わりだ。後はあっちが後始末する番なの」
俺たちがそんな力をかけることでもない。俺たちはただの客。こういう対応は関係者がやるもんなんだよ。
「それより、どこから回ったもんか」
『お前ならどこでもいけそうだがな』
「どうだろうな。そもそも参加制限があるかもしれんし」
『ふっ、確かにそれであればお前には無理かもしれん』
「だろ?」
一つ気になっているのはバトルファクトリーという施設。何でもポケモンをレンタルできるらしい。人のポケモン、というか施設のポケモンを使ってバトルとか、まさにバトルフロンティアならではって感じじゃないか。
「………決まりだな。ファクトリーにいくぞ」
まあ、逆に言えばリザードンもキモリも使えないってことなんだがな。
「おや、バトルファクトリーを訪問かい?」
あっ?
うわ、なんだこの胡散臭い人。
アロハシャツにサングラスとか怪しさ満点だろ。
「やあやあ、ボクはエニシダ。ここバトルフロンティアのオーナーだよ」
余計に怪しすぎる。
何なんだこの人。
「見たところエメラルド君やルビー君サファイアちゃんと同じ何かを感じるね」
エメラルド? それにルビーにサファイア?
誰だよそれ。
「よし、それじゃボクがバトルファクトリーに案内しよう」
「遠慮しておきます」
や、普通断るでしょうに。知らない人について言っちゃダメって教わらなかったのん?
そうでなくても怪しいってのに。
「いやー、師匠に誘われてヒースさんのバトルを見に来たけど、来て正解だったよ」
「いやー、ヒース様もバトルの強かお人ね。ルビーでも負けるんじゃなかと?」
「んー、エメラルドも負けてるみたいだからなー。それにボクの本業はコンテスト。バトルの腕前はともかく、コンテストで負ける気はないね」
「かーっ! そういうところだけは自信家ったい。もう少しば謙虚になんね!」
「いやいや、自分の得意分野に自信を持たないでいつ自信を持つというんだい。キミもジムを制覇したんだから、この気持ちもわかると思うんだけど」
「………いくらジムを制覇したば言っても誰かさんに勝ったとは思えんったい。ふんっ!」
「ボクとしてはそれくらいがちょうどいいんだけどね。キミが危険な目にあうことも減るだろうし」
「あ、あんたそげん恥ずかしかセリフ、よくさらっと言えるとね………。あたしの身にもなってほしいばい………………………」
なんだあのバカップル。
昼間からイチャつきやがって。
「おや、噂をすれば。おーい! ルビー君、サファイアちゃん!」
「「ん? あ、エニシダさん!」」
こんなところまでハモらなくても………。
なんか今はマッカンを飲む気になれねぇ。
「「ッ!?」」
おっと、なんか俺たちに気が付いたら一瞬で空気が変わったんだけど。すげぇ殺気を感じる。
「エニシダさん、その人たちから離れてください」
「ん? どうかしたのかい?」
「いいから早く離れるとね! そこん人から危険な気を感じるとよっ!」
「それとその横の白いアーマーの人もね」
そういいながら二人は青いポケモンと赤いポケモンを出してきた。
青い方は………ラグラージといったか?
んで、赤い方がバシャーモ。どちらもキモリと同じホウエンの御三家と言われるポケモンの最終進化形。すぐに思い出せるのはキワメ婆さんのところで久しぶりにその姿を写真で見たからだ。
「わははははっ! さすがホウエンの図鑑所有者だね。誰よりも勘が鋭いよ」
と、こちらもボールに手をかけたところで怪しいサングラス男が大爆笑しだした。
やっぱ早くこの人から離れるべきかもな。何か企んでそうだ。
「………ん? 図鑑所有者?」
つまりはグリーンたちのホウエンバージョンってことか?
このバカップルが?
マジで………?
「そうね! あたしとルビー、それにエメラルドも入れてポケモン図鑑ホウエントリオたい!」
「…………ダッサ………ぶふっ」
ヤバい。
なんだそのネーミング。
笑いがこみあげてきて抑えるのに必死なんだけど。
もうすでに漏れ出てるけど。こんな変なネーミングにしてしまうこいつらの感性が悪い。俺は何も悪くない。
「あー! 今笑った?! 笑ったとね!?」
「………サファイア、ちょっと落ち着こう?」
まるで野生児だな。
こういう時にはどっちかっつーと男の方がしゃしゃり出てきそうなもんなのに。
こいつは冷静というか、性別と性格がまるで逆というか。
「で、ファクトリーってあれっすよね? んじゃ、俺はこれで」
一向に終わりそうにないので、俺から話を切り上げることにした。
「ちょ、ちょっと何勝手に話を終わらせてるとね!」
が、無理だった。
なんなの、この野生児ガール。
「サファイア」
「………ごめんち………」
こいつ…………。
まさかの亭主関白?
ってわけでもないか。でも彼女をドスの利いた声で諫めるとは、やる時はマジでやるみたいだな。
「それで、あなたは一体何者なんですか? どうやらエニシダさんはあなたが誰なのか知っているようですけど」
「…………通りすがりのポケモントレーナーとでも思っとけばいいんじゃねぇの?」
しれっと彼女を守るように一歩前に出てくるとか。
さりげなく、彼女の手を握ってるとか。
どんだけイケメンなんだよ……………。
いちいち腹立つなー、このバカップル。
「そうであればこちらとしてもありがたいんですがね。このホウエンでいろいろ問題を起こされてはこちらとしても困るんですよ」
「それなら世界各地にいる犯罪組織に言ってくれ。もういいだろ?」
「………では、最後に一つだけ。あなたはこのバトルフロンティアに何しにきたのですか?」
「………何しにって………、そりゃバトルしに、だろ」
「では見学させてもらうとしましょう!」
「へっ?」
「ほう。いいよ、ボクが許可する」
おいこらちょっと待て!
くそ、曲者なのはこのサングラスよりもこいつの方だったのかよ。
「善は急げ。サファイア、いくよ!」
「ちょ、ルビーあんた一体何考えてるとね! もう! ちょっと待つたい!」
『あれがホウエンの図鑑所有者か。頭の切れる少年だな』
「だな………」
ホウエン地方の図鑑所有者。
特にあの彼氏の方は、バトルを見なくても秘めた強さを感じられた。
あれを表に出したとき、あいつは誰よりも強いのだろう。
✳︎ ✳︎ ✳︎
バトルファクトリー。
レンタルポケモンを使用してバトルを行う施設。
初めに三体のポケモンを選び、三対三の一勝負事に勝ったらポケモンを一体交換できる。それを繰り返しながら七連勝ワンセット。それを六周することで最後にファクトリーヘッドが出てくるというルール。
そして俺はすでに六周目の最後のバトルを迎えていた。
半日でたどり着いちまったな。
「ほぼ瞬殺だったね………」
「うん、強かお人ね」
まあ、確かに毎度すぐにバトルは終わったな。
攻撃が単調というか、俺が選んだポケモンたちが優秀というか。
「でもまさか、最初に選んだポケモンでここまで来るとは思ってなかったな。こりゃあ当たりかも」
やっぱり何か企んでるんだな。
下手な手は見せない方がいいか?
それとも脅しも兼ねて圧倒的なパフォーマンスをした方がいいのか?
「君が挑戦者か。俺がこのバトルファクトリーのファクトリーヘッド、ダツラだ。早速バトルを始めようか」
「うっす」
「それではバトル、開始!」
特に長い挨拶もなく、すんなりと最後のバトルが始まった。
ポケモンの回復はすでに終わっている。
まさかこんなところにまでポケモンセンターの回復マシンが備え付けられているとはおもあっていなかった。だが、確かにこれがなければこの施設、いやこのバトルフロンティアは成り立たないだろう。
一体どんだけ金がかかってんだか。
「いけ、バンギラス」
「ラグラージ」
相手のポケモンは最初からバンギラスかよ。
こっちは六周目の最初からずっとラグラージ、バシャーモ、オニゴーリの三体。なんかあの二人のポケモンが最初に選ぶことができたから手持ちに入れてみたが、これがまた使える奴らだった。オニゴーリなんか最後の必殺技も持っているし。まだ一度も使ってないけど。
「バンギラス、いわなだれ!」
バンギラスが出てきた瞬間、フィールドが砂嵐で覆われた。
だが、ラグラージには意味がない。目くらましにもなってなければダメージすら入らない。
「カウンター」
何を覚えているのかと思えば、ちょっとレアな技を覚えていた。このラグラージ、誰が育てたんだろうな。
「なにっ!?」
「そのままじしん!」
カウンターで降ってくる岩々をバンギラスの方へと投げ返し、岩の対処をしている間に地面を揺らして足元のバランスを崩させた。倒れたバンギラスには残りの岩々が次々と突き刺さっていく。
「うまいっ!?」
「流れるような動きったい!」
「やるな。だが、バンギラスの硬さはこんなことでは崩れない。バンギラス、りゅうのまい!」
バンギラスがりゅうのまい、だと………?
…………ダメだ、バンギラスがどこまで技を覚えるのか忘れちまった。まだまだ勉強のし直しだな、こりゃあ。
「かみくだく!」
速い!
やはりあの竜の気をまとうことで、一気に加速を手に入れたか。
これは厄介だな。
ラグラージはそこまで速い部類のポケモンではない。どちらかといえば遅い方である。これが水中であれば話はまた別になってくるのだが、今はそんなことを考えても仕方がない。今これをどうにかしなければこっちがやられてしまうのが現実だ。
「ラグラージ、食わせてやれ」
「ッ!? 待て、バンギラス!」
急所を外してラグラージは自らの腕をバンギラスに差し出した。隙だらけの腕に噛みついたバンギラスはギチギチとラグラージの腕を噛み砕こうとしている。
「カウンター」
だが、そんなものは誘いである。
さっきも見せたというのに学習能力がないな、このバンギラスは。
ファクトリーヘッドも攻撃の中断を指示したのに、止まることのできなかったバンギラスは技を出すしかなかった。まあ、それを誘ったのだからこちらとしては成功である。
「さて、ちょっと試してみるか。ラグラージ! 水系の技を出すときにため込むところを意識しろ! 圧縮、水を圧縮させろ! 撃ち出しは弾丸のように! ポンプなんか屁でもない。ありったけの水を、力を、この一撃に乗せるんだ!」
最初に選んだ時にラグラージとバシャーモにはあるものを持たせていた。持たせたというかつけたというか。そのせいで、こいつらの持ち物は効果がなくなってしまっているが。
「ハイドロカノン!」
「「あれはっ?!」」
水の究極技。
婆さんからもらった青いリングをラグラージにつけておいたが、どうやらあれは本物らしい。本人からもらったとはいえ、あれが偽物だったら今後気づかないまま無駄に時間だけを浪費してしまってたかもしれない。それを確かめるためにも、一度試しに使ってみたというわけだ。
「バンギラス、戦闘不能!」
ふぅ、ざっとこんなもんだろ。
「………本当に彼は何者なんだ……………」
「究極技を、レンタルポケモンが使えるなんて…………」
「いやはや、まさかこれほどの実力とはねー」
ん?
三人とも究極技を知っているのか?
「………今のはいったい………。ラグラージにそんな技は覚えさせていなかったはず………。まさか、君が…………」
「さて、次いきましょうか」
「まあいい。いけ、メタグロス!」
次はメタグロスか。
これまたあちらさんも砂嵐の影響を受けないポケモンを出してきたというわけだな。
こういうところも考えた人選なのだろう。
こりゃやはり他のトレーナーとは格が違うな。
「サイコキネシス!」
くそっ、ここでエスパー技かよ。
身動きが取れねぇな。
だったら………!
「ラグラージ、交代だ」
ボールに戻す。これ鉄板な。
「ここで引くのか?」
「ラグラージはバンギラスを倒したんだ。無理する必要はない」
「ほう、潔い判断だな」
「さて、次はお前だ、バシャーモ」
二体目はバシャーモ。
オニゴーリでははがねタイプの技でやられそうだし、逆にメタグロスを倒す術が一つしかない。それも賭けが前面に出る技だし。
かくとうタイプがエスパータイプに不利ではあるが、バシャーモの方が何かと動けるだろう。
「メタグロス、じしん!」
「バシャーモ、飛べ!」
バシャーモは飛べない鳥。
だが、いくつか使えるひこう技も覚えるほどには鳥である。
「上か………、メタグロス、サイコキネシス!」
「かげぶんしん」
「なにっ!?」
狙ってくるのも使ってくる技も見え見えだっつの。
わかっていれば対処もできる。結局技なんてのは当たってなんぼのもの。当たらなければ意味がない。
「オーバーヒート」
バシャーモ本体を探しているメタグロスの周りを取り囲むように、影がじわじわと近づいていく。その身は今にも炎が噴き出しそうな、爆発を起こしそうな状態であり、触るな危険! 状態である。
「………あれ? 不発ばなかと?」
「いや、不発だろうけど、それも何かの仕掛けなんじゃないかな。あれだけラグラージに実力以上のことをさせられていたんだ。バシャーモも何かあるはずだよ」
やはり、彼氏の方は洞察力に優れているな。
お前の勘が正しいことを見せてやるよ。
「バシャーモ、炎を一点に集めろ! 爆発を一点に集中させるんだ!」
影ともども地面に降りてきたバシャーモが地面に拳に炎を流していく。
「ブラストバーン!」
そして地面に叩きつけた瞬間、拳を中心に爆発が起きた。
「メタグロス、まもる!」
爆発は影の分もあり、はがねタイプのメタグロスが耐えきることは難しいだろう。例え防壁を張ったとしても。
「………ワーオ、まさか炎の究極技もいけるなんて……………」
「ありえんったい。あたしらがあんな必死に、時間がない中やっと覚えた技をば、こげん簡単に使いこなすとかありえんち……………」
「うーん、こりゃ他のブレーンにもいい刺激になりそうだね」
俺にはあまりいい刺激になってないんだけどな…………。
なんだよ、ファクトリーヘッドってのはこんなもんなのかよ……………。
「………知識、実戦経験、他にも俺の知らないことを知っているようだな。ふっ、面白い。なあ、メタグロス」
「ガロース!」
へぇ、アレを絶えたのか。だが、息がすげぇ上がってるぞ。
「じしん!」
で、動けないバシャーモに対して反撃というわけか。
ま、躱せないんだが。
「続けてコメットパンチ!」
じしんにより足元のバランスを崩し、バシャーモはふらついている。
そこにメタグロスが前足を突き出して突進してきた。
しかもメタグロスの突進により生み出された逆風により、とうとうバシャーモは片膝をついてしまった。
「スカイアッパー」
ただアレだ。
最後の一発にはいい態勢になっている。
「くっ?!」
ギリギリコメットパンチが逸れ、下からの掬い上げることに成功した。
直角に進行方向を変えられたメタグロスは天井にまでたどり着き、太陽の光を取り込みながら重力に従って地面にその身を叩きつけた。
「………メタグロス、戦闘不能!」
ファクトリーヘッドはメタグロスをボールに戻しながら、悔しそうな表情を浮かべている。
まあ、二連敗だもんな。これで後がないし。
ファクトリーヘッドとしての威厳が全くなくなってしまうバトルでもあるし。
本人としては一生くらいは納めたいところだろう。させないけど。
「バトルファクトリーはポケモンたちの実力に遜色ないことが取り柄だ。逆に言い換えれば勝敗を決めるのはトレーナーの実力である。だからこそ、ここはトレーナーたちの実力を図るための場所としてあるが…………、君は一体どこでその強さを手に入れたんだ? 何をどうしたら、そこまで強くなれる」
「別に、特に何もしてないけど。それにトレーナーの実力はポケモンを使いこなすことじゃないだろ。ポケモンたちにあったバトルを組み立てて、ポケモンたちのやりたいことを実現させてやるのがトレーナーってもんでしょ」
だから今の俺は本当の意味でこいつらがやりたいバトルを実現できているとは思えない。それこそ長い年月をかけてお互いを知らなければ、なしえないことだと思っている。それでもラグラージとバシャーモは全力で俺のバトルに応えてくれた。だから俺はこいつらに勝利と新しい可能性を与えただけである。
「ははっ、まさかそんな考え方があったとはな。確かにその通りかもしれない。ポケモンは仲間であって奴隷ではない。技を出すことを「命令」なんて言葉で表現しているが、そもそもがおかしかったのかもな。ボーマンダ、相手は今までお前たちが出会ってきたどのトレーナーよりも強い。最初から全力で行くぞ!」
おい、そのまま最後のポケモンを出すのかよ。
最初から最後まで会話の主導を握ってるやつだな。
「バシャーモ、交代だ。ゆっくりしてな」
さっきダメージを受けたバシャーモは交代。
翼を持つボーマンダには分が悪い。鳥は鳥でも飛べない鳥。ボーマンダには技が届かないことがたびたび出てくるだろう。
「オニゴーリ、お前にもいいことを教えてやる」
代わりにオニゴーリならば浮いている分、ボーマンダの動きについていけるだろう。それに相手はドラゴン・ひこうタイプ。こおりタイプの技は効果抜群でボーマンダの天敵といってもいい。
というかさっきからボーマンダの威嚇が怖いんだけど。
「ボーマンダ、りゅうのまい!」
炎と水と電気の三点張りからの竜の気の生成。
こいつもりゅうのまいを覚えているのか。
これで元々高い攻撃力がさらに高くなったというわけだ。
だが、今のオニゴーリには特に気にするようなことではない。
「あられ」
いつの間にか収まっていた砂嵐の代わりに今度は霰を降らせてやる。最後くらいこっちのフィールドをこっち側につけたって文句はないだろう。
「いわなだれ!」
「ふぶきで押し返せ!」
霰が降っている中での吹雪は天候上、必ず相手を巻き込んでいく。それもそのはず、技の範囲がくそ広くなるのだ。どれだけ広いかっていえば、フィールドはおろかこの場全てを吹雪で包み込んでしまうくらいにはくそ広い。おかげで一気に真冬になってしまった。この南国の地で。
「る、ルビー、ざぶいぃぃぃ!」
「さ、サファイアァァァアアァァアアア」
二人が凍死しかけている。
さっさと終わらせないとな。
「オニゴーリ、ぜったいれいど」
最後の切り札、一撃必殺。
なんか、こいつ最初から覚えていやがった。
まさかこんなポケモンまでレンタルできるとか、実力に遜色がないとか嘘だろ。
こいつらだけもう実力が頭一個分くらい突き抜けてるぞ。
「ボーマンダ!?」
吹雪の中、ドサッと重たい何かが地面に叩きつけられる音が聞こえた。
十中八九ボーマンダだろうけど。
「……………ぼ、ボーマンダ、戦闘、不能!」
審判の判断も下され、決着がついた。
結局、俺の三連勝。
呆気なかったというか、予想だにしていなかった結果である。
他もこの調子だとここに来た意味が全くないんだけどなー。何しにバトルフロンティアなんぞに来たんだか。
「………ま、参った……。キミは強い」
「そりゃ、どうも」
この後タクティクスシンボルをもらい、ポケモンたちと別れて他の施設を見て回ることにした。
外はすっかり陽が落ちていたが、何故か野次馬三人は俺の後をずっとついてくるというね。何なのあの三人。ストーカーなの?
結局、どこも入ることはなく、ポケモンセンターに帰ることで俺のプライベートは守られたのだった。
次回で恐らくこの番外編、並びに番外編シリーズの最終回になると思います。その代わり長くなるかと。