忠犬ハチ公 ハチマン   作:八橋夏目

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お待たせしました。
超長いです。


4話

「ライコウ、でんきショック!」

 

 俺は今、伝説のポケモンと対峙していた。

 名はライコウ。

 シャドーに唯一捕まらなかった雷の申し子。

 まあ、これで俺はエンテイ、スイクン、ライコウ全てに出逢ったことになるんだが。

 そしてそのライコウのトレーナーはリラという中性的な容姿の女。俺よりもいくつか年上らしい。容姿のせいであまり年上感がないが、本人が言うのだからそうなのだろう。

 いやはや、まさか引ったくり犯を捕まえた時に現れたのがバトルタワーのフロンティアブレーンだったとはな。まあ、ライコウなんか連れている時点で相当な実力者なんだし、バトルフロンティアの関係者とくれば自ずとどこかのブレーンでしかないよな。

 

「躱せ!」

 

 ここに来て、まさかでんきショックが厄介になってくるとはな。

 飛び回るリザードンに対してでんきショックで場所を誘導されている。分かってはいるが、対策らしい対策が全く浮かばない。

 

「どうしたんだい? キミの実力はそんなものなのかい? 噂に聞いていたほど、大したことないね」

 

 このアマ………。

 バトルピラミッドでも思ったが、ブレーンの中には伝説のポケモンを使いこなす奴がいる。差し詰めそれは実力を測る物差しとなり、目の前のリラという女が頂点。その次に来るのがバトルピラミッドのジンダイという男だろう。あのおじさん、俺の知らないポケモンを出して来やがった。暴君様に確認したところ、ホウエンの古代ポケモン、レジロック、レジアイス、レジスチルというらしい。

 やべぇ、いくら全力を出せない状態だったとはいえ、キモリでレジロックと相打ち、リザードンで他二体を倒しちまったよ。これでライコウに勝てないとかまるでトレーナーの俺が悪いみたいじゃないか。それはなんかムカつく。

 

「手がないなら作るしかないか………。リザードン、りゅうのまい!」

 

 俺の前まで戻ってきたリザードンに反撃の準備をさせていく。

 これといって対抗策ができたわけでも、逆に悪足掻きでもない。いついかなる状況でも動けるようにするためだ。りゅうのまいはそのための保険である。

 

「今さら反撃かい? 遅いよ? ライコウ、かみなり!」

 

 ああ、遅いかもしれない。

 だけどまだ俺は何も手を見せてはいない。ただでんきショックから逃げていたに過ぎない。だからここからは、これまで培った経験を見せてやる。

 

「ソニックブースト」

 

 背中の雨雲からのかみなりを急加速で躱した。

 

「ッ!? でんきショック!!」

 

 一瞬、驚いたな。

 これならいけそうだ。

 

「ハイヨーヨー!」

 

 急上昇していき、次の攻撃へと移る。

 

「ライコウ、かみなりで撃ち落とせ!」

「リザードン、トルネードドラゴンクロー!」

 

 竜の爪を高速回転させて、雷撃を弾いた。

 今度はこっちが攻撃する番だな。

 

「エアキックターン!」

 

 ハイヨーヨーの切り返しにエアキックターンも盛り込んでみた。想像以上に加速できるようになっていたらしい。

 一瞬、といってもいいほどあまりにも速く、ライコウもリラも反応できていない。勝機はここだな。

 

「ハッ?! ライコウ、躱せ!」

 

 げっ、急所を逸らしやがった。

 おかげでライコウに逃げられてしまったじゃないか。

 

「じしん!」

 

 だったら今度は広範囲技だ。しかも効果抜群の。

 ライコウは揺れる地面に足を取られ、バランスを崩した。

 

「ブラストバーン!」

 

 決め技としてはこれ以上ない技。

 ただし、一度使えば反動でしばらく動けなくなる。それ故に最後の切り札って扱いになっているが………。

 

「………これはっ!?」

「動けなくなるのは身体だけなんだよな………」

 

 技を放った時余波がその身に流れ麻痺する。それが反動の正体だ。なら、麻痺していない器官の方を使えば動くことも可能なはず。

 

「へぇ、やるね………」

 

 さすが伝説のポケモン。

 究極技程度では倒せないか。

 だが、確かにダメージも入っている。毛並みが所々焦げているのがその証拠である。

 

「だけど! 伝説のポケモンを甘く見たらダメだよ。ライコウ、でんじほう!」

 

 でんじほう。

 ザイモクザが愛用する高威力の電気技。当たれば必ず麻痺する危険な技だ。

 そういえば、あいつがでんじほうに虜になったのもライコウの影響だとか言ってたな。

 ………つか、あいつ何気に伝説のポケモンと出くわしてるのね。しかも俺よりも早く………………。ザイモクザのくせに。

 

「りゅうのまい!」

 

 地面に腕を叩きつけた態勢のまま、炎と水と電気の三点張りから竜の気を生成していく。この技は特に身体を動かす必要はない。しかも気を高めれば高めるほど、鎧としても扱うことができる。

 つまりはーーー。

 

「なっ?! りゅうのまいを防壁にっ!?」

 

 これで硬直中の時間稼ぎができる。

 徐々に麻痺が回復してきたようで纏う竜の気が、さらに高まっていく。

 

「押し返せ! ドラゴンクロー!」

「シャアッ!!」

 

 竜の爪の先端を電磁砲に突き刺し、くるっと一回転して遠心力を加えてライコウへと押し返した。

 

「ライコウ!」

 

 リラの呼びかけにライコウは反応し、電磁砲を躱した。自分の攻撃を自分が躱すってどういう気分なんだろうな。

 

「ペンタグラム、フォース」

 

 竜の気は思いの外、リザードンを強化していた。電磁砲を押し返した後、気づけばライコウの背後にリザードンがいた。瞬き一つしていたかどうか………。そんな一瞬である。

 そして竜の爪で掬い上げ、宙で五芒星を描くように移動していく。目で追うのも早々に諦めてしまうほど速く、残像が色濃く五芒星を描き出していた。

 

『伝説のポケモンも所詮はポケモンということか………』

 

 外野から見ていた暴君様の思念も思わず流れてくるほど、五芒星から意識を外せないでいる。

 

「そろそろか。リザードン、叩きつけろ!」

「シャア!」

 

 そろそろ可哀想になってきたので、終わらせることにした。恐らくすでにライコウの意識はない、あるいはダメージの蓄積により動けなくなっているはずだ。これ以上してはいくら伝説のポケモンといえど危険である。

 

「ライコウッ?!」

 

 とうとうリラの顔が崩れた。さっきまでの余裕、というか強気な態度はどこへやら。恐怖、絶望、焦りーーいろいろなものがひしめき合った表情が全てを物語っている。

 

「終わったな」

「…………………………はっ、ら、ライコウ、せせせ戦闘、ふふ不能!」

 

 あ、一番恐怖に陥っているのは審判の男だったわ。

 

「ヒ、ヒキガヤ君………」

 

 げっ、この声は。

 いや、ちょっと待て。人違いの可能性もある。

 恐る恐る声のした方を見ると………。

 

「ユキノシタ………」

 

 案の定、彼女がいた。

 しかも観客席に。

 おい待て。何であんなところの声が聞こえたんだよ。言ったってよりは呟いたって方が正しいはずなのに。俺の耳もおかしくなってんのかね。

 

「まさかボクが負けるなんて………」

「どうだ、リラ。あいつは強いだろ?」

「……………ダツラさん。強い、というか初めてですよ。あんなリザードン」

 

 あ、ファクトリーのブレーンだ。

 

「まあな。俺も熟知しているはずのレンタルポケモンにやられたからな」

「それもバトル中に新しく技を吹き込まれて、だろ?」

「ジンダイさん………、来てたんですね」

 

 ピラミッドのおっさんもいるのか。

 

「ああ、まさかレジロックをキモリで相打ち、レジアイスとレジスチルをリザードンでねじ伏せられるとは思ってなかった。ありゃとんでもないトレーナーだな」

 

 まあ、それよりも今は凍てついた眼差しでこちらに歩み寄って来る氷の女王をどうにかしなければ。

 

「ワーオ、どうしたんですか、皆さんお揃いで」

「ルビー、それにサファイアも。お前たちも見てたのか?」

「ボクが勧誘してね」

「「「オーナー?!」」」

 

 後ろからついて来ているオーダイルもやれやれといった仕草で止める気配もない。

 ねえ、お前の主人だろ?止めてくれよ。じゃないと俺死んじゃう。

 

「すみません、オーナー。俺たちあのトレーナーにことごとく負けてしまいました」

「いや、いいよいいよ。最初からこうなることは分かっていたからね」

 

 耳をあっち傾けながら、一歩一歩歩み寄って来る氷の女王をどうしよう考えていると、聞き捨てならない声が聞こえてきた。

 はっ? あのサングラス、俺のことを知ってるっていうのか?!

 

「さあ、ハチ公。バトルフロンティアを制したキミにご褒美をあげよう。何が望みだい?」

 

 ッ!?

 やっぱり、あのサングラスは警戒対象だったか。

 どうする?

 ここで口を封じるか?

 いやそれは得策ではない。ここには図鑑所有者にフロンティアブレーンが三人もいる。何がなんでもカウンターが返ってくる。

 それにどこまで知っているかにもよる。

 あの一連の実験についてまで知っているというのなら、話は別だ。

 

「………その前に、俺のこと、どこまで知っている………」

「いやー、そんな警戒しないでよ。元カントーチャンピオンさん」

 

 ハチ公以外にチャンピオンのことも知っているのか。

 どこから話が漏れているんだよ。

 

「「「「「チャ、チャンピオン?!」」」」」

「あれ? 知らない? カントーのポケモンリーグをリザードン一体で優勝し、三日間だけチャンピオンの座に就いたトレーナーの話」

「もしやそいつがこの男だと?」

「うん、そう」

「ハチ公というのは?」

「カントーポケモン協会理事の懐刀だからね。名前を隠すために通り名として付けられたんだよ」

「つまり俺たちは………」

「とんでもない人を相手にしてたってことですか………?」

 

 ………………。

 

「そういうこと」

「ヒキガヤくん? 説明、してくれるわよね?」

 

 あ、忘れてた。

 俺の体温がどんどん下がっていくのが分かる。

 ユキノシタさん、とても素敵な笑顔なのに目が笑ってませんのことよ?

 

「言っとくけど、ルビーくん。キミも彼には勝てないよ」

「………それはやってみなければ分かりませんよ?」

「今の時点でバトルフロンティアを制覇された。そのほとんどがリザードン一体での攻略。それがフルメンバーになったらどうだい?」

「リザードン並みのポケモンがあと五体控えている………」

「無理だな、俺たちでも手も足も出ない」

「………ルビー、アンタも気づいてるったい。あん人のポケモンはまだまだ本気を出してなか。手持ちを見せているのもリザードンとキモリだけち。それにリザードン以上のポケモンの気も感じるたい。正直今にも押しつぶされそうじゃち」

「だからボクは決めたよ。彼を仲間として引き入れる」

「オーナー、本気ですか!?」

 

 いやほんと。

 正気か?

 俺を仲間に引き入れるとか。

 そもそも仲間ってあれか?俺もフロンティアブレーンになれってことか?

 やだよ、面倒くさい。

 今でも面倒なのにこれ以上仕事が増えるとかなんなの? 超ブラックだな。

 

「あの、やっぱり話を聞いていたら一度手合わせしたくなってきました。お願いできますか?」

「ルビー………!」

 

 ちょっとー空気読もうよ。

 俺いやなんですけど。

 

「え、面倒なんだけど。今やっとバトル終わったってのに、またバトルとか、ないわー」

「では、そこの白い鎧をつけたポケモンでどうです?」

「え? あれポケモンだったの?!」

 

 暴君様をご指名かー。

 なら俺いらないしなー。

 

「どうする?」

『いいだろう。そろそろ暴れたくなってきたところだ。発散に付き合ってもらおうではないか』

「ま、お前がいいならいいけどよ」

「では、お願いします。ZUZU!」

 

 好きにしてください。

 俺はその間にユキノシタへの言い訳を考えてるから。

 

「マッドショット!」

『ふん!』

 

 うわ、サイコキネシスで止めちゃったよ。

 あ、押し返した。

 

「ねえ、ヒキガヤくん? どうして今まで私の前に現れなかったのかしら?」

「………別に、お前と四六時中一緒にいる理由もないだろ」

「今は同じチームよ」

「俺は一人の方がいいんだよ。お前らだって一人の方が動きやすいだろ?」

「ええ、そうね………」

 

 あ、はどうだんが無数に。ってか、俺たちも狙われてない?

 

「………心配したんだから」

「え、あ、その………なんか、すまん」

 

 暴君様に気を取られて話を聞いてなかったわ。

 まあ、いいか。特に重要な話ってわけでもないだろうし。それよりも離れてくれませんかね。締め付け過ぎですよ?

 

「がまん!」

 

 はい、我慢します!

 って、そうじゃなくて。

 

「ユキノシタ………?」

「……………やっと見つけたのに、また離れ離れになるのは、ごめんだわ………」

 

 え、なに?

 まさか愛の告白とか?

 

「………ルビー、あの二人いつの間にかイチャついてるったい」

「ボクたちもやるかい?」

「~~~! こん人はなしてそげんこつば平気な顔で言いよるとか! は、恥ずかしか!」

「いや、もう充分二人もイチャついてるからな」

「「うんうん」」

 

 あれー?

 なんか誤解が生まれちゃってるようなんですけど!

 誤解とかもう解が出てて解きようがないってのに。

 やめてくれ!

 

「彼女は?」

「ユキノシタユキノ。カントーとジョウトのジムを全て制覇し、それぞれのリーグ大会で優勝もしている若き天才トレーナー。二冠王なんて言われているよ」

「さ、最強のカップルったい………」

「………それ言ったらグリーン先輩とブルー先輩も最強のカップルだと思うけど」

「あ、あん人らはまだ付き合ってなか! そげんこつば二人に言いよったら、アンタの息の根止められるとよ?」

「………それは、うーん…………やりそうだね……………」

「滅多なこと言ってるといつかひどい目みるとよ?」

「うーん、確かに君にもしものことがあったらボクはコンテストも捨てるだろうね」

「だ、だからなしてそげんこつば恥ずかしかセリフを真顔でいいよっとか! 聞いてるこっちが恥ずかしいったい!」

 

 うわー、あれはすげぇバカップルの類だ。

 リア充爆発しろ!

 

「どうだい、フロンティアブレーンとしてうちで働かないかい? 君専用の施設を新しく設けることもできるよ?」

「慎みて、お断りします。俺、働きたくないんで。今でもこんな面倒な仕事をさせられてるっていうのに、まだ働けっていうんですか。労働基準を優に超しますよ。過労死します。嫌です」

「「す、すごい拒否反応だな………」」

「だったら、こうしよう。キミはボクに勝った。そして、バトルフロンティアという七つの関門を勝ち抜いた。それを評してボクが、いやボクたちに貸し一にするということでどうだい?」

「………それで、そっちに何のメリットがあるって言うんだ? 俺が得する条件しかないように思えるんだが?」

「それは決まっているじゃないか。キミとボクたちの関係がここで途切れるわけじゃない。貸し一という、いつかボクたちを使う権利と使われる労働義務が双方に発生する。しかもキミには負けたものの、実力は全員折り紙付きだ。何かあればキミは必ずボクたちを頼るという選択肢が増える。つまりはボクたちのことを思い出す。………どうだい? いい呪いだろう?」

「ほんと、いい呪いだわ。これから何をするにしてもジョーカーが七枚あるとか、咄嗟の判断に狂いが出そうだわ」

「ふふっ、面白いじゃないか」

「ちっとも面白くねぇよ。なんだよ、恩の押し売りかよ。ほんと無料より怖いものはないわ」

『ふっ、今はオレというジョーカーもいるしな』

「黙っとれ! お前はアレだ。トランプ買った時に入ってる二枚目のジョーカーだ。つまり反則だ」

 

 ほとんどのトランプが買った時にジョーカーが二枚入っている。というか二枚入っているのしか見たことがない。

 それを普通にトランプゲームで用いてみれば、あら不思議。余裕で勝っちゃう、なんてことも出てきてしまうのだ。敵に回せばぼこぼこに。

 やだね、こんなのが仲間なのかよ。

 

「取り引き、成立かな………?」

「そうだな、呪いだろうがなんだろうが受け取ってやるよ」

 

 俺はただ鍛えに来たってだけなのに。

 いつの間にかこんなことになっちまったよ。

 しかもユキノシタに見つかるわ、さっきから離れないわ、マジでなんなのん?

 

「ZUZU、いい具合にたまってるね! さあ、解放だ!」

『ふん!』

 

 あ、そういやまだバトルしてたのね。

 俺特に指示出す必要ないし、全く見てなかったわ。

 …………さすが暴君様。がまんのエネルギー解放なんてスプーンで弾き飛ばしやがった。

 

「ハイドロカノン!」

『くっ?!』

 

 お、初めて暴君様が押し返された。

 地味にアーマーも壊れてるし。

 ちょっとー? 折角特注した衣装壊さないでくれます?

 それお前のためにあるんだからな? そこんとこ分かってんだろうな?

 

『ならば、オレも本気を出させてもらうぞ。ふん!』

 

 おお、この前の大技。

 あれ危険だよなー。りゅうせいぐんよりヤバいと思う。

 使うのが暴君様ってところがもうね。

 

「………ZUZU、お疲れ様」

「すごいとね………。ルビーが負けるば思っとったけど、まさか手も足も出せておらんち。あのポケモン、相当強か、よく育てられてるたい」

「エクセレント!! こんな強いポケモンがいたなんて!」

 

 負けたのに彼氏の方はなんかすげぇ興奮してる。

 キモいよ。

 

「…………おい、そろそろ離れません?」

「いやよ…………」

 

 即答かよ。

 

「やっぱり、レッド先輩たちに聞いてた通りだよ。ねぇ、ミュウツー」

「『ッ!?』」

 

 こいつ、まさか今のバトルで………。

 いや、それとも分かった上でバトルを吹っかけてきたのか………?

 どちらにせよ、なんて野郎だ。

 普通はこいつの正体を理解した頭では恐怖を覚えてもおかしくはないってのに。

 ブレーンの三人はミュウツーと聞いてもピンと来ていないのだろう。あと、ユキノシタも。その事実を知っているのはこの場に俺を除けばこのバカップルの彼氏の方だけということだ。

 まあ、そんな警戒するようなことでもないだろう。相手は図鑑所有者だ。カントー組の後輩ともなればミュウツーのことくらい聞いていたとしても普通だ。

 

「なんのことだ? こいつの正式名称はシルヴァディ。対伝説のポケモン用に試作で作られたポケモンだが?」

「シルヴァディ? 聞いたことのない名前だ………」

 

 俺も聞いたことがないぞ。

 だって、今なんとなく思いついたかっこいい名前だし。

 そんなポケモンがいるなら俺も見てみたいくらいだわ。

 

「そりゃそうだろう。なんたってまだ開発段階なんだからな。言っただろう? 試作で作られたって」

「うーん、怪しい……………」

「怪しいか怪しくないか思うのはお前らの勝手だ。どう思おうがこいつが暴れ出したらお前らでは手の打ちようがない。よく考えるんだな」

 

 俺は未だにあのサングラスの人の方が何倍も怪しいんだけどな。

 

「…………んじゃ、俺たち帰るわ」

「そうかい。気をつけて。キミはエメラルドと並ぶ最速でフロンティア制覇したトレーナーだ」

「んな大袈裟な」

「気が変わったらいつでも連絡してねー」

「へいへい」

 

 こうして、俺のバトルフロンティアでの特訓は幕を閉じた。

 ………………特に特訓という特訓にもなってなかった気もするが。

 

『礼は言わんぞ』

「別にいらねぇよ」

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

「ほれ、お前の家だ」

 

 カントーに帰る前にキモリが元いたトウカの森に寄った。

 単に連れ出しただけだし、元いたところに帰すのが普通だろ?

 

「どうだ、外の世界は。楽しかったか?」

 

 肩車していたキモリを降ろして、しゃがんで目線を合わせてそう言うと、コクコクと首を縦に振ってきた。

 

「左様で。ならよかったわ。お前、戦闘能力は高いんだ。そこを磨けば強くなれるんじゃないか?」

「………………」

「………ゲット、しないの?」

「はっ? なんでだよ。最初から捕まえる気はなかったし」

「そう……………」

 

 なんだよ、その何か物言いたげな空気は。

 俺だって無理強してまで捕まえる気はないっての。それがあの伝説のポケモンたちみたいなことになってるって話なら別だけど。

 

「………確かに、こいつは強い。レジロックとかいう伝説のポケモンにすら相打ちに持っていっている。けど、それだけじゃ無理だ。俺といるってことはイコール死と隣り合わせってことだからな。ロケット団だけじゃなくて、いつ俺たちに殺されるかも分からんのだ。それなら初めから俺たちには深入りしない方がいい」

「………………それでも、それでもあなたの側であなたを見ていたい者もいるかもしれないわ」

「はっ、誰だよ、そんな好き者な奴は。こんなトラブルメーカーの仲間になりたいとか、頭イかれてるんじゃねぇの?」

「そう、かもしれないわね」

 

 なら、何でそんな悲しい表情をしてるんだよ。

 

「…………」

「……………………ん? ありゃなんだ?」

「どれかしら?」

「あれ、あの木の上で光ってるやつ。どうも葉っぱに引っかかっているようだが………」

「キ……!」

 

 お、キモリが取ってきてくれるのか?

 

「ほんと身軽ね」

「だろ? キモリはーーというかその進化系も含めてこういう森の中では無敵らしいぞ」

「へぇ、物知りなのね」

「たまたま知る機会があっただけだ」

 

 おっと。

 落とすなら落とすって言ってくれよ。

 まあ、キャッチできたからいいけどさ。

 

「これは………?」

「さあ、なんだろうな。綺麗な石? か?」

「石、じゃないかしら。珠という表現の方がしっくりくるけれど」

 

 珠、ね………。

 まあ、丸いしな。確かに石というよりは珠かもな。

 

「…………そうだ、キモリ。これをやるよ。そいつに俺は、お前とまた会うと誓いを立てる」

「キ………?」

「好きね、そういうの。男子って」

「また会おうぜ、キモリ。今度は強くなったお前を見てみたい」

「キ………!」

「ほんと、罪な男ね………」

 

 キモリは強い。そしてこれからも強くなる。だけど、俺といてはその強さが危険な方に走る可能性だってあるのだ。こんな俺たちになる前からずっといるリザードンはお互い様なところがあると理解し合っており、二人で背負っていこうということで合意している。だが、キモリは何の関係もない。それなのに、こんな危険な目に遭わせられるかよ。

 だから俺は、キモリを連れて行かない。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

 討伐部隊結成から二年。

 ついにロケット団が動いた。

 これまでにもロケット団の潜伏先を洗い出し、潰していたが、次から次へと場所が変わっていくのみで、全く勢いが止まる気配がなかった。そんな中での大々的な登場。こちらも手に負えないというものであるが、ようやくである。

 というかもう、うんざりしている。なんかバカバカしくなってきたんだよなー。

 ………………もう人の血は見たくないね。

 

「ーーーアルセウス。それが今回の狙いみたいよ」

「えっと………、アルセウスとは?」

「シンオウ地方の神話に登場するディアルガ、パルキア、ギラティナ。それぞれ時間、空間、反物質を司る神と呼ばれるポケモンですね。そのポケモンたちを創造したと云われているのがアルセウスです」

 

 ユキノシタ姉に補足するようにほんわかした助手? が説明をしていく。

 それにしても今日は何であの二人、自分のポケモンを出しているんだろうか。ユキノシタ姉の方がカメックスとネイティオを、その助手の方がフシギバナとポッチャマ? だっけ? を出している。

 なんかあったのか?

 まあ、いい。

 それにしてもアルセウス、か………。

 またトンデモナイポケモンに手を出そうしているな。

 サカキは…………これに反対ということなのだろうな。これを止めるために、組織を半壊させようとしているわけだ。人が多いというのも考えものだな。

 まあ、要は今主導側に立って指揮している奴が、今回の黒幕。そいつらさえ消せたらは俺はどうだっていい。

 あ、なんか妹の方もオーダイルを出してきた。なぜ今なのん?

 

「今回は特に危険な任務になるかと思います。みなさん、気を引き締めていきましょう!」

 

 それにしてもこの人数。

 なんか数が減ってない?

 基本的に会議とか参加してなかったからアレだけど、人減ってるよね?

 

「前回は………こちらとしても痛手だったわ。まさかこちらが奇襲に遭い、私のチームの二人とチームタマナワが全員病院送りになってしまって。………というわけだから、自分のことは自分で守るように」

 

 あー、前回の時に負傷者が出たのね。知らんかったわ。つか、気にも止めてなかったな。

 だって、初日のアレを見たらなー。

 ダメだと思うだろ、普通。

 結局、参加はしても俺は単独行動。時折、ユキノシタが追いかけてくるが、俺は気にせず前へ前へ。黒いのもいつの間にか帰ってきており、暴君様の二体で無敵状態。何ならリザードンも入れて逃げ場すらなくなっている状態だ。

 

「それで、これからどうするのだ?」

「ロケット団を潰しにいくわ」

「場所の検討はついているのかしら?」

「ユキノちゃん、お姉ちゃんを誰だと思ってるの? それくらい朝飯前だよ」

「…………それにしても、この人数で、か………」

 

 まあ、そうなりますよね。

 だって、招集された半分が病院送りになり、六人になっちまったんだからな。

 俺だって人増やせよと思わなくもない。

 だが、そうもいかないのだろう。

 人手不足。正確には使える人材の人手不足。これは解決のしようがないな。いっそ図鑑所有者を呼んだ方が確実かもしれないくらいだわ。

 

「あら、私としてはこの面子の方が動きやすいのよねー。正直、怪我した人たちって使えなかったもん」

 

 もん、じゃねぇよ。

 さらっと酷ぇこと言ってるぞ。

 ザイモクザなんかすげぇ怯えてる。奥歯ガタガタさせてるまであるぞ。ヤベェ………………。

 

「姉さん、さすがにそれは彼らに失礼だわ」

「でも実際そうだったし。ま、ユキノちゃんはそこのハチ公君にお熱なようだから知らなくても仕方ないわ」

「なっ!? そ、そんなわけないでしょ! 言いがかりも甚だしいわ!」

 

 うわ、なにその顔。真っ赤だぞ。

 

「でもやっぱりこの中に裏切り者がいるんじゃないかって思っちゃうんだよねー」

 

 うわー、この姉貴腹黒い。

 今そういうこと言っちゃうのかよ。

 

「それこそ、言いがかりよ!」

「ふーん、ユキノちゃんは庇うんだ」

「庇うも何も、事実を言っているまでよ! そんなに疑うのであれば、彼が裏切り者だという証拠を見せてちょうだい」

「なら、逆に裏切り者ではない証拠を見せなさい」

 

 あーあ、お互い無理なことを要求しちゃって。

 それにしてもこの人、何考えてんのかね。言葉は疑ってるくせに敵意が全く感じられない。話題の大元ではあるものの、見ているのは妹の方だけって言うとしっくりくる。そんな感じだ。つまり、俺を出汁に妹に突っかかってるってことだな。

 

「あら、出せないんだ。何も変わってないわね、昔から。ユキノちゃんはいつもそう」

 

 あー、始まったよ姉妹喧嘩。

 はあ、どうせ後でユキノシタが伝えに来るだろうし、退散しとこう。

 ザイモクザ?

 知らんな、そんな奴。

 

「ふぅ………」

 

 さて、どうしたものか。

 遠からずロケット団に攻め入ることになるのは間違いない。

 だが、アルセウス。

 狙いが神っていうのが結構危険だ。俺もシンオウの神話に出て来る最高神ということくらいしか知らないしな。

 ………そうだな、ユキノシタが来るまでにアルセウスについて調べておくか。

 となると、図書館がベストだろうな。

 

『終わったのか?』

「んあ? ああ、なんか姉妹喧嘩が始まったから抜けてきた」

 

 そういやこの暴君様。バトルフロンティアでもホウエンの伝説ポケモンについて知ってたよな。シンオウの伝説ポケモンについても知ってるんじゃないか?

 

「なあ、アルセウスについて知ってることあるか?」

『アルセウス、か。また、トンデモナイ奴の名を出してきたな』

「シンオウの神話に出て来る最高神ってことくらいしか知らねぇんだよな。どんな能力を持っているのか、それが分かれば対処のしようもあると思うんだが」

『奴は創造神だ。シンオウの神話に出て来るディアルガ、パルキア、ギラティナ。そして、ユクシー、アグノム、エムリットを創り出し、世界を構築したと言われている』

「………………その話、やっぱりマジなのか」

 

 以前、伝説のポケモンについていろいろと調べたことがある。その情報が正しいのかどうか、答え合わせをするような相手もいなかったが、どうやら俺が調べたことは正しいらしい。

 

『なんだ、調べていたのか』

「そりゃな。だが、それくらいしか知らねぇんだよな」

 

 だが、そうなると少々厄介である。

 相手は最高神。能力が分かれば対処のしようあると思うが、その能力がチート級なら諦めるしかない。

 

『なるほど。なら、奴が全てのタイプを司ることも知らないというわけだな』

「はっ?」

『考えてもみろ。奴は創造神。伝説のポケモンを創り出したんだ。なら、そいつらのタイプのルーツはどこだ』

「…………全てのタイプを有しているからこそ、創造神としてポケモンを創り出せたってことか………?」

 

 やべぇ。

 マジでヤバい。

 そんなことができるんじゃ、奴が暴れ出したりでもすれば歯が立たなくなる。世界が終わると言っても過言ではない。どうせ、奴は世界を再構築できるんだろうし、神自身が世界を終わらせることだって厭わないだろう。

 

『そういうことだな』

「………なら、お前のルーツであるミュウはどうなるんだよ。あいつは全てのポケモンの遺伝子を有しているんだろ?」

 

 全てのタイプを有している。

 似たようなことが書かれている奴が一体いた。

 ミュウ。

 この暴君様のルーツでもあり、全てのポケモンの遺伝子を持つとされるポケモン。

 

『さあな、そこまではオレにも調べようのないことだ。ただ言えるのは、奴は姿を変えることができる。それが全てのポケモンの遺伝子を持つ根拠だということだな』

「………つまり、言い換えるとアルセウスは姿を変えることができないってことか」

 

 ま、今までの説明の中にアルセウスが変身能力を有しているなんてことは一切なかった。つまるところ、最高神でも姿を変えることはできない。

 

『所詮、人間が記録してきたものからの情報でしかない。実際は未知なる生き物だ』

「俺たちでこれならロケット団はどこまで把握できているんだろうな。………取り返しのつかないことにならなきゃいいが」

『どうせ奴に見限られる運命だろう』

「それはそうかもしれないが………。創造神なんぞを支配下に置こうものなら、その代償は世界そのものになってもおかしくないんじゃねぇの?」

『あり得る話だな……………』

「………つーわけで、さっさとロケット団を倒しますか」

『ああ』

 

 要するに。

 俺たちには時間がない。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

 姉妹喧嘩の最中、ワタルという男が行方不明になったとかって情報が入って来たらしく、急遽ユキノシタがチャンピオンの座に就くことになった。何でも姉の方が「チャンピオン? もう興味なんかないよ。私はあの頃の私じゃないから」とか言って断り、押し付けられたらしい。

 というのも三日前の話であり。

 今、俺はある物を探し回っている。

 暴君様曰く、『プレート』なるものを集める必要があるのだとか。

 

「三日でこれ一枚って……………」

 

 一応プレートを一枚見つけてはいる。

 ピンクピンクした長方形の手の平大の板だ。

 えっと………、これって何タイプ?

 

『エスパータイプ、ではないな。オレに対して何の効果もない』

 

 ええー、本当にこれなのか?

 全く信用できねぇんだけど。

 

「どうすんだよ。三日かけて見つけたと思ったらタイプ不明の一枚のみって。あと十五枚、これがハズレなら十六枚あるんだぞ。見つけた頃には戦いが終わってると思うんだが?」

『なら、人手を増やせ』

「それは無理な相談だな。まず頼る人がいない」

『………そうだったな。使えねぇ』

 

 今さらっと俺のこと貶さなかった?

 

「マニューラ、次のプレートのところだ」

「マニュ!」

 

 ッ?!

 プレート!?

 振り返ると赤髪の少年がマニューラとともに走り去っていった。

 

「今のは……………」

『ほう、どうやらこの事件。またしても図鑑所有者が絡んできているようだな』

「あいつも、図鑑所有者、なのか……………?」

『ああ。………そして、サカキの息子だ』

「へえ…………………はっ?!」

 

 あいつが、サカキの息子………………?

 いや、まさか。こんなところで見かけるような偶然なんか起きるわけないだろ。

 

「今何つった?」

『あの赤髪の少年はサカキの息子だと言ったんだが?』

「聞き間違いじゃないのか……………」

 

 サカキの息子で図鑑所有者。

 一体何がどうなったらそうなるんだよ。

 よもや親子で戦おうとかしてないだろうな。

 

「そういやチラホラとサカキの口から息子の話を聞いたような気もしなくはないわ」

『あいつは仮面の男によって幼少期に誘拐されている。サカキは長年息子を探し続けていた。奴がデオキシスを支配下に置こうとしたのも、息子を呼び寄せるためだったらしい』

「あの野郎、んなこと一言も言ってねぇし………………」

『組織を私的に使うことになるからな。口外はできないだろう』

「まあ、いい。要は図鑑所有者が動いている。それが事実だ。それ以上のことは何もない。何なら俺の仕事がなくなったわけだから万々歳である」

 

 ま、あの赤髪が誰かなんてどうでもいいか。

 重要なのはあいつがプレートを集めているということ。

 今まさに俺がやっていることをあいつがやっているというわけだ。しかもあいつ図鑑所有者。運があるのはどう考えてもあいつの方だ。

 

『あいつに集めさせるつもりか?』

「まあな。あいつ、図鑑所有者なんだろ? なら大丈夫だ。運命を引き寄せ、解決していく主人公気質の奴らばかりだからな」

 

 なら、俺はその動向を観察しておけばいい。

 いずれ、アルセウスに辿り着くだろうからな。

 

「あいつを追うぞ」

『ふん、好きにしろ』

 

 まだ、赤い後ろ髪が微かに見えている。

 俺は暴君様の念動力で後を追うことにした。

 

「にしても二年経ってやっとこれって………。やっぱりサカキに踊らされるんかね」

『あり得なくもない話だ。あの男は力も権力も金も持っている。ただのトレーナーにどうこうできる奴じゃない』

「ああ、そうだな。俺は図鑑所有者じゃない。単に実験の被験体になってしまっただけのただのトレーナーだ」

『ふん、主人公要素としては充分だと思うがな』

 

 どこがだよ。

 

「ばっかばか、主人公ってのはヒーローだぞ? 片や俺は悪党紛いのいいとこ敵役でしかない」

 

 敵役つっても画面に映るか映らないかの瀬戸際の役だろうし。

 基本いなくても話が成り立つような、そんな役回りだっつの。

 

『ダークヒーローという言葉も聞くが』

「あれはヒーローだ。態と悪役に回って解決していく。結局一緒だ」

 

 俺の場合はほんとに悪役になることしか思いつかん。ダークヒーローにすらなれねぇよ。

 

『………やれやれ、自覚がないのも大概だな』

「凡人には凡人なりのやり方ってもんがあるんだよ」

 

 だから、凡人は凡人らしく、しかもぼっちらしくやるんだっつの。

 

『貴様は恐らく…………図鑑所有者になれなかった男、なのだろうな』

「あ? なんだよ、その言い回し」

『いずれ分かる日が来るだろう。単なるオレの印象だが、あながち間違ってもいないだろうな』

 

 まったく、意味が分からん………。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

 ジョウト地方アルフの遺跡。

 赤髪の図鑑所有者を追いかけてきたら、こんなところにまでやってきてしまった。当の少年の姿は見失ってしまい、絶賛迷子である。

 どうしたものか。

 そもそも初めて来たし、右も左もさっぱりだ。

 

『シシシシシシッ』

 

 うわっ、なんか気味が悪い。

 

「なあ、なんかヤバくないか?」

『いるな』

「マジかよ」

『しかも相当な数だ』

「嘘だろ………、働きたくないでござる」

『なら、そのまま死んでろ』

「へいへい、分かったよ。俺も戦いますよ」

 

 ッ!?

 うおぃ! マジかっ?!

 なんだ、この数!

 

「何だよこいつら………………」

 

 声のした方へ振り向けば……………絶句。

 なんか黒いのがうじゃうじゃとやってきた。

 

『オレたちと同族、ではあるみたいだな』

「つまり、ポケモン、なのか……………?」

 

 ポケモン、にしてはあまりにも歪すぎる。

 いや、形が歪なのではなく、形が『文字』だから歪なのだ。

 

「アルファベット、だよな………………?」

『なるほど、どこかで見覚えのある形だと思えば。貴様らの言語を可視化させる一つの手法か』

 

 だからって、なんでこんな奴らが。

 何が目的なんだよ。

 

『シシシシシシッ』

『ダメだな、言葉が通じない』

「お前でもかっ?! くそっ」

『未確認生物、アンノウンといったところか』

「何でもいい、とにかく片すぞ!」

『ああ』

「リザードン、かえんほうしゃ!」

 

 ここが遺跡だと思うと下手に大技を使えない。究極技ならばまとめてやれそうなんだが、狭すぎなんだっつの!

 

『シシシシシシッ!』

 

 くそっ、キリがねぇ。

 一瞬だけ穴は空くのにすぐにうじゃうじゃ湧いて出てきやがる。

 

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

 

 だぁぁあああ、この何ともいえぬ気味の悪い鳴き声。脳が揺さぶられて吐き気がこみ上げてくる。

 

「リザードン、ハイヨーヨー!」

 

 なら、今度は引きつけてみよう。これで分散できれば暴君様も片を付けやすくなるはずだ。

 

『ふん!』

 

 サイコウェーブによる竜巻を起こし、アンノウンどもを呑み込んでいく。

 リザードンの背後には一体もいない。

 くそっ、やっぱりついて来ないか。

 

「リザードン、トルネードドラゴンクロー!」

 

 急降下からのトルネードを加えた竜の爪を叩きつけた。

 

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

 

 ダメだ。

 これでも意味がない。

 これはアレだな、伝説のポケモンたちよりも厄介だな。

 

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

『シシシシシシッ!』

「なっ?!」

『なん、だと…………?!』

 

 渦巻いていたアンノウンたちの中心にはいつの間にか黒いポケモンがいた。

 両翼を広げ、蒼い炎と雄叫びを上げている。

 その雄叫びに反応してか、さらにポケモンが生み出されてくる。

 

「………ポケモンの創造、だとでもいうのか…………?」

『ふん、アルセウス以外にも創造できる奴がいたとはな』

『シシシシシシッ!』

 

 ッ!?

 来るっ!

 

「リザードン、ブラストバーン!」

 

 もう知るか。

 ここが遺跡だとか、狭いだとか、んなこと気にしてる余裕なんてない。

 

「ッ!?」

 

 おいおい、マジかよ。

 シャドーの時よりキツい状況だぞ。

 

「見たことあるようで見たことないポケモンばっかじゃねぇか」

『あの黒い翼のポケモン。リザードンに似ていないか?』

「言われてみれば………」

 

 暴君様の言う通り、黒く蒼い炎を吐いているポケモンはどこかリザードンを彷彿させてくる姿をしている。他にもなんか花がでかいような気がするフシギバナ、背中の砲台が一本のカメックス、なんかおかしいピジョット、ヤドラン? ヤドキング? あいつだけどっちなのかさっぱり分からん。が、なんか食われてる。

 まだまだいる。ゲンガーにガルーラ、翅の生えたカイロス、どこぞの機密指定のポケモンみたいなハッサム、角が尖って腕が太いヘラクロス、太いギャラドス、刺々しいプテラ、モコモコなデンリュウ、なんか回ってるハガネール、角が長いヘルガー、どこかしら太くなったライボルト、背中から尻尾にかけて珠が付いたジュカイン、頭が尖ったバシャーモ、上半身が太くなったラグラージ、スカートはいたサーナイト、マント羽織ったエルレイド、ツインテール牙のクチート、宝石の方がでかいヤミラミ、どこか違うチャーレム、尖ったサメハダー、噴火後のバクーダ、モコモコなチルタリス、スラっとしたミミロップ、ぬいぐるみ感がすごいジュペッタ、中二心くすぐるアブソル、あごの外れたオニゴーリ、四つん這いのユキノオー、全身鎧のボスゴドラ、怖いバンギラス、三日月の一枚翼になったボーマンダ、腕が増えたメタグロス、腕が鎌になったガブリアス、かっこいいルカリオ。

 ……ホウエン、シンオウのポケモンまでいるのかよ。

 

「他の奴らもどこか似ているな………」

『ああ、だが何かが違う。亜種か?』

「分からん。分からんが………、取り敢えずヤバいってのは分かるわ」

『だな』

 

 まさかこんな日がくるとは。

 俺、今暴君様と背中合わせに立ってるぞ。

 殺気がすごいのなんのって。

 

「リザードン、りゅうのまい!」

『ふん!』

 

 炎と水と電気の三点張りからの竜の気を生成。

 その間に後ろでは暴君様がはどうだんで次々と亜種のポケモンたちを弾き飛ばしていく。

 

「ソニックブースト!」

 

 まずは加速して一気に間合いを詰める。

 

「ドラゴンクロー!」

 

 そして、竜の気を爪に乗せて、ガブリアスを切り裂いた。

 見たところこちらにダメージが入ってくるような仕掛けはない。

 

「ッ!! リザードン、垂直のエアキックターン!」

 

 こちらがリザードンというのを考慮してなのか、ピジョット、ギャラドス、カイロス、ハッサム、プテラ、チルタリス、オニゴーリ、ボーマンダ、メタグロスが攻め込んできた。

 待て待て待て。

 この数をリザードン一体で同時に開いてしろって言うのかよ!

 こっちがこれなら、あっちも…………。

 

『出し惜しみなんかしてられないか。フン!!』

 

 最初から大技の連発か。

 

「リザードン、そのままハイヨーヨー!」

 

 確かに暴君様の言う通りだ。出し惜しみなんてしてられない。

 

「出て来い、黒いの。お前も手伝ってくれ」

「ライ」

 

 声をかけると黒いのがぬっと出てきた。

 それに反応してきたのがゴーストタイプのポケモンたち。ゲンガーにジュペッタだ。

 

「好きにやれ」

「ライ」

 

 黒いのはあくのはどうで二体の動きを封じた。

 

「リザードン、かみなりパンチのスイシーダ!」

 

 リザードンの動きにいち早く追いついてきたプテラを電気をまとった拳で地面に叩きつける。

 その背後からはカイロスが頭のハサミを大きく開いて詰めよっている。

 

「ブラスターロール!」

 

 くるっと翻ってカイロスの背後を取った。

 

「もう一発だ!」

 

 カイロスにも電気をまとった拳を叩きつけた。

 そんなこんなしていると雨が降ってきた。降らせているのは恐らくギャラドス。

 次第に周りの風が強くなっていく。

 黒いのがゲンガーとジュペッタを眠らせたようだ。

 

「リザードン、ギャラドスを狙え! ソニックブーストからのかみなりパンチ!」

 

 超加速でギャラドスの元へと詰め寄るも、メタグロスとボーマンダが立ちはだかってきた。

 電気をまとった拳は鋼の拳で受け止められ、竜を模した波導に襲われた。

 

「リザードン!」

 

 今の一撃倒される、ということはなかったが、思った以上にダメージが大きい。俺の知っているボーマンダの威力をはるかに超えていた。

 

「りゅうのまい!」

 

 もう一度、炎と水と電気の三点張りから竜の気を生成していく。

 その間にリザードンの周りには暴風が巻き起こされた。

 右にピジョット、左にギャラドス。

 あいつらの狙いはこれだったのだろう。

 

「リザードン、思いっきり地面に叩きつけろ! ブラストバーン!」

 

 今日一番の炎の究極技により、一瞬にして暴風と雨雲が消え去った。

 やべぇ、こんなこともできちゃうのかよ。

 

『すまん、そっちに行った!』

 

 振り向けば、ルカリオがこちらに詰め寄ってきていた。というか俺に詰め寄ってきている。

 えー、これ無理じゃね?

 俺、死ぬくね?

 

「ライ」

「ゲン!」

「ジュ!」

 

 絶句していると目の間にゲンガーとジュペッタの後ろ姿が現れた。

 おい、待て。お前ら敵じゃねぇのかよ。

 

「ライ」

 

 ああ、そういうことか。

 黒いのがさいみんじゅつで操っているのか。

 

「そっちは任せるぞ。リザードン、ソニックブースト!」

 

 取りこぼしなどは黒いのに任せよう。

 俺はこっちだ。

 

「ハッサムにかえんほうしゃ!」

 

 弱点を狙えそうなのから攻めることにしたが、今度は盾になるやつは現れなかった。

 代わりに水砲撃がいくつか飛んできた。

 ギャラドスと………ボーマンダか。あと、地上からカメックスも狙っている。

 

「ハッサムを掴んで投げろ!」

 

 ガード体制だったハッサムのハサミを掴み、リザードンと位置を入れ替えさせる。

 ちょうどそこに水砲撃が帰結しており、ハッサムが身代わりとなった。

 

「ギャラドスにデルタフォース・雷!」

 

 さっきからいい感じに攻撃の起点となっているギャラドスを片付けることにする。というか割と近くにいたから狙いに行った。

 リザードンはギャラドスに電気をまとった拳を一発叩きつけると、そのまま空中で大きな三角形を描くように連続攻撃していく。

 それにはさずがに他のポケモンたちも動きようがないのか攻撃を仕掛けてこない。

 

『チッ!』

 

 あっちはあっちで…………おい待て。なんでエスパータイプばかりリザードンの方を向いているんだ?!

 

『しまっーー!?』

 

 リザードンの動きが止まった。

 ドスンと空中からはギャラドスが落ちてきて………消えた。残ったのは赤い結晶のみ。

 

『ボールに戻せ!』

「ッ!? そういうことかよ! 戻れ、リザードン! 黒いの! 黒い穴だ!」

 

 エスパータイプの奴らでサイコキネシスを一斉に行い、リザードンの動きを完全に封じ込んできた。

 これだけの数がいれば、そんな動きをされてもこちらに対処のしようがないってな。

 しかも攻撃してこなかったポケモンたちがここぞとばかりに一斉攻撃を仕掛けてきた。

 俺はモンスターボールを取り出し、リザードンに向けるが………やはり届かない。もう頼みの綱は黒いのに託されたようだ。

 

「オーダイル、ハイドロポンプ! コモルー、かえんほうしゃ! ペルシアン、10まんボルト!」

 

 水と炎と電気がリザードンの前で集結し、爆発を起こした。

 爆発により、一斉攻撃もリザードンに届くことは………ある程度抑えられただけだった。

 結局、防げてはいない。

 

「くそ、第二弾もあるのかよ!」

『舐めるなよ!』

 

 暴君様がお怒りのようである。

 頭上から大技が降ってきた。これほんと、なんつー技なんだろうか。

 

「シャアッ?!」

 

 それでもまだ防ぎきることはできなかった。

 一点に集められている攻撃に悲鳴を上げるリザードン。

 俺はこんな時でも何もしてやれないのかよ。

 結局、トレーナーって何なんだよ。

 

「リザー………ドン………………」

 

 まだいる。

 まだまだいる。

 こいつら普通じゃない。

 もし同じポケモンで見た目通り、俺が知っている姿のポケモンたちと同じだというのであれば、どいつも俺が知っているポケモンたちより遥かに強い。一体一体が伝説のポケモンかと言いたいくらいのパワーを、重たい一撃を持っている。

 

「くっ………そっ!」

 

 こんなんで負けてたまるかよ。

 ロケット団倒して、俺たちは帰るんだ。

 生きて帰るだっつの。

 

「シャアアァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 ブチンと。

 俺の、俺たちの中で何かが弾けた。

 立ち上がる身体が不思議と痛みを感じない。

 

「リミットブレイク」

 

 雄叫びを上げていたリザードンが黒い炎に身を包んでいく。

 同時に俺への圧力が尋常じゃない強さで押し寄せてきた。

 だが、そんなもの今さらどうだっていい。俺はあいつらを倒して、ロケット団を倒して、家に帰るんだから。

 

「リロード・オン………ファイア」

 

 黒い炎に包まれたリザードンが次々と亜種のポケモンたちを貫いていく。暴君様よりも暴君へと化している。

 ポケモンたちは跡形もなく消え去っていく。

 残っているのは大量の赤い結晶のみ。

 

『シシシシシシシッ!』

 

 ……二体、残ってしまった。

 

『シシ、シシシシッシシッシシシ、シシシシシッ!』

 

 黒いリザードンとデンリュウ擬きが姿を変え始める。

 進化、なのか?

 

「あ、あれはまさか………………レシラムと、ゼクロム…………?!」

『やはり、奴らをどうにかしなければ、終わりが来ない』

 

 聞き覚えのない名前だ。ただ声は知っている、気がする。

 だが、どうだっていい。

 あいつらはどちらにせよ結晶だ。結晶で創り出されたポケモンだ。

 だから俺たちは、アレを打ち砕くのみ。

 

「リザードン、ーーーーーー」

 

 黒いリザードンから白いポケモンに、デンリュウ擬きから黒いポケモンになった二体を蒼い炎をで包み込んでいく。パリンパリンと結晶が弾けて欠けていく音がしてきた。

 

『やった、のか……………』

 

 恐らくやった。

 やってなくてもここは先へ進ませてもらう。

 用があるのはお前たちじゃない。ロケット団だ。

 どうせあの赤髪がここに来たってことはロケット団もここにきているはず。

 

「オーダイル、アクアジェット! ニューラ、エネコ、ユキワラシ、こごえるかぜ!」

 

 だから。

 まだ終わってない。

 あいつらを、アンノウンを倒さないと。

 

「ヒキガヤ君!」

 

 ッ?!

 な、んで、お前、がここ、に、いるん、だよ………。

 

「…………………ユキノシタ」

「ヒキガんぐっ!?」

 

 ッ?!

 な、なんだ?! 俺の身体はどうしたって言うんだ?! 何勝手に動いてんだ!?

 息、できない…………。呼吸が…………。

 ああ、でもなんか、俺の中で落ち着きを取り戻している。暴れていたのが沈静していくようだ。

 

「………ぷはっ、………いいわよ。好きにしなさい。私はずっとあなたの味方だから」

 

 チョロいな、俺も。

 今の言葉で正気に戻ってしまった。こいつの顔を、声を、匂いを、全てが俺を落ち着かせていく。

 全く意味分からん。

 何故ユキノシタには俺を止められるのか、何故ユキノシタにキスまでしてしまったのか、何故俺はこいつの言葉一つに左右されているのか。

 全く訳が分からない。

 

「…………ぁ」

 

 無言でユキノシタを突き放した。

 自分から唇を奪っといてこの仕打ちはないだろと、我ながら思う。思うのだが、身体が勝手に動いてしまった。

 リザードンの方を見るとオーダイルが止めに入っていたらしい。何とか踏みとどまったと言わんばかりの片膝感。当のリザードンもあまり状況を把握できていないようだ。

 …………いつの間にかアンノウンたちが消えている。ほんとに倒したのか?

 

「お、戻って来れた」

「シント遺跡から帰ってこれたぞ!」

 

 ッ?!

 ロケット、団…………!

 

「何ですの、この結晶」

 

 ッッ!?

 あいつはッ?!

 

「お前………」

「あれ? 人がいる」

「こっちくるぞ」

 

 くそ、逆なでする声だな。

 聞いてるだけで胸糞悪い。

 

「あ、待て………黒いマント………………? に、白い…………アーマー…………ッ!?」

「ッ!? サカキ様! こいつ今まで俺たちの仲間を次々と殺していった黒マントと白アーマーです!」

「ま、まさか、ですわ…………。だって、白アーマーはどこにも」

 

 ああ、そうだな。

 白アーマーはもういない。

 壊れちまったんだからな。

 いるのは、本来の姿を出したミュウツーだけだ。

 

「あの男、まさか…………?」

「アテナ、知っているのか?」

「し、知りませんわ、こんな男」

 

 赤い髪の女。

 二年前、クチバのトレーナーズスクールを襲撃したロケット団のチームリーダー。

 コマチを危険な目に合わせた奴らの大将。

 振り向けばそこにロケット団の集団がおり、赤髪の女がいた。

 

「あの時はよくの妹たちを危険な目に合わせてくれたな。死ね」

「きゃあっ?!」

 

 その声は一瞬で消えた。

 他が驚く隙もない。与えもしない。

 

「さ、サカキ様!」

「呑め」

「「「うぁぁぁあああああああああっっっ!?!」」」

 

 サカキに助けを求めているが、そんなのはどうでもいい。

 

「全員で叩き潰せ!」

「………いちいち面倒だな」

「なんだと!?」

「おい、黒いの。代償は後でいくらでもくれてやる。あいつら全員呑み込め」

 

 承諾したのか、初めて見る大きさの黒い穴を作り出し、サカキ以外のロケット団を呑み込んでいった。

 

「これで、いいんだろ?」

「ふん、まさかここまでやってしまうとはな。ああ、オレの部下が惜しい。実に惜しい」

 

 サカキは口では惜しいと言いながらも思いっきり笑っている。不安材料が消えたからだろうか。

 相当な歪み様である。

 

「…………どうやら覚醒したようだな」

「何の話だ」

「お前も分かってるんじゃないのか? 自分の中の力ってやつを」

「ハッ、んなもん知るかよ」

「ま、今はそれでいい。まだ、コントロールできたってわけではなさそうだからな」

 

 チラッと俺から視線を外すサカキ。

 その視線の先には、追いかけてきたのだ、ユキノシタの姿があった。

 

「ハチマン、オレの部下になれ」

「断る」

 

 何が悲しくて俺はロケット団になんかならなきゃいけないんだ。

 

「くそっ」

 

 全てはあの『レッドプラン』のせいだ。あんなのがあるから俺は日常に戻れない。ユキノシタにも迷惑をかけるだけだ。

 

「そもそもこんな力があるからお前から逃げられないんだ」

 

 だったら、こんな力なんかいらない。俺は俺だ。他の誰でもない。

 

「なら」

 

 はっきり言ってもう嫌だ。こんな生活、うんざりだ。

 

「ーーーダークライ、俺の記憶を全てくれてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 あれ……………?

 ここはどこだろうか…………。

 俺はなぜ空を見上げているのだろうか……………。

 

『大丈夫ですか………?』

 

 女の、子…………?

 

『元気になるまでゆっくり休んでいてください。その間わたくしがお世話をしますので』

 

 …………この感じ、ポケモン、かな……………?

 まあ、なんでもいい。もう少しだけ、寝かせてもらおう……………。

 

『おやすみなさい、マスター』

 




これにて番外編はすべて完結です。
何気に番外編だけでも一つのストーリー性がありますね。
シリーズ全体でみれば本編の前章としても一つの作品になりそうです。


続編の方も完結に向けて書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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