婀嗟烬我愛瑠〜assassin girl〜番外編 作:大岡 ひじき
時系列とか設定がメチャクチャな上、塾生全員が光が女である事を知ってるという前提でお読みください。
戦闘!!
「み、みんな──っ!た、大変だ──っ!!」
その日の騒動は寮の夕飯時、食堂に飛び込んできた秀麻呂の叫びから始まった。
「な、なんじゃ秀麻呂、藪から棒に。」
勢い余って激突してきた秀麻呂を受け止めながら、虎丸が訊ねる。
「配膳の最中じゃなくて良かったぜ。
ひっくり返したら飯抜きだからな。
ここのマズ飯だって、一応は俺たちの命綱だからな?」
富樫が言うのを聞いているのかいないのか、ようやく息を整えた秀麻呂が、俺たち全員に向かってこう告げた。
「光が、商店街でチョコレートを買っていた!」
………………は?
「…光さんは、甘いものが好きだからね。
別におかしな事じゃないと思うけど…?」
椿山が言うのに、富樫が頷く。
「そうだな。羅刹はチョコレートパフェを奢るって口実で、光とデートしたらしいし。」
その富樫のコメントに、その手があったか!と全員が騒めき出したが、最初の情報を持ってきた秀麻呂は、そこにおずおずと口を開いた。
「けどさ…明日はバレンタインなんだぜ…?」
瞬間、全員の動きが止まった。
☆☆☆
「そういえば…御前の邸にいた頃に読んだ本に、源流を中国拳法に求めるお伽話を集めたものがあって、その中の記述に、蛇を使った拳法のお話が…!」
「ほう。興味深いな。どんな内容だ?」
「眠れる森の美女についての考察です。
その本によれば、眠る姫を守っていたのは茨ではなく、姫が飼い慣らしていた蛇だったのだと。
そもそも姫が眠りに落ちたのは、姫の飼い慣らす蛇に刺客が紛れさせたグリーク・ティナコンダの毒によるもので、助けた王子は無数の蛇の中からその一匹を見つけて、その解毒剤となる生き血を口移しで飲ませた、という話であるようです。」
「ちょっと待て光。
それは恐らく、いつかの『アルプス一万尺』の際に見つけた本と、同じ出版社から出されてた奴じゃないか?」
「そうなんですか?
出版社の名前までは、見ていなかったのでわかりませんでしたが…。」
次の日。
新一号生たちの教室で、何故か
なかなかに和やかな風景だ。
…光を挟む二人が、触れれば切れるような殺気を、全身から発してさえいなければ。
というか、二人だけじゃない。
よく見ればそこにいる全員が、異様な氣を発しながら、三人を遠巻きに見ている。
「…そうだったんですね。
たくさんの蛇の中から本物を見つけ出すところは、愛のなせる業だなと、読んだ時感動したので、ちょっとがっかりです。」
「愛……か?」
「愛です(キッパリ)。」
「そ、そうだ。
愛といえば…光、今日は何の日か……」
駄目だ。こんな空気の中に光を置いてはおけん。
考える間も無く声をかける。
「ひ、光!」
「桃?おはようございます。」
殺気には敏感な筈のこいつが何の反応もしていないのは、やはりそれが自分に向けられたものではないからか。
「すまん、今いいか?
頼みたい事があるんだが…。」
「頼み事?それはどういう…?」
本当はそんなものはなく、咄嗟に口から出てきた。
しまったと思ったが、今更撤回もできない。
とりあえずは光を、この空間から連れ出す事だけを考えよう。
「…その、他人には聞かれたくない話なんで、できれば二人で話したいんだが。」
「?…わかりました、では、私の執務室に行きましょうか。
豪くん、
またお話を聞かせてください。」
…全員の殺気が一斉にこちらに向かったが、それも仕方ない。
☆☆☆
「それで、頼みたい事とは…?」
「あー…うん。」
結局、執務室に入るまでの道のりで、用件を思いつく事が出来なかった俺が言い澱むのを見て、光は下から心配そうに、俺の顔を覗き込んできた。
「……珍しいですね。
あなたがそんなに歯切れの悪い態度を取るなんて。
余程のことなのでしょうか。
私にできる事ならば何でもしますから、遠慮なく仰ってください。」
見上げてくる顔が本当に真剣で、なんだか申し訳ない気がすると同時に…このまま抱きしめたくなった。
「光……。」
その頬を、思わず掌で包む。と、
「邪魔するぞ、光。
………って、剣!てめえ、何してやがる!!」
ノックもなしに突然入ってきた赤石先輩にいきなり斬りかかられた。
俺も光を背に庇いながら、身を守るべく刀を抜く。
だが、
「やめなさい、二人とも!
執務室で抜刀するのはやめてくださいと、いつも言っているでしょう!
斬り合うなら外でやってください!!」
二人まとめて追い出された。なんだか理不尽だ。
・・・
「ひょっとして赤石先輩も、光のチョコの行方、気になってるんじゃないですか?」
「な、なんで俺がそんな事…!」
「気にならないんですか?」
「………わかったら教えろ。」
やっぱり気になってるんじゃないか。
☆☆☆
それ以上どうすることも出来ず、教室に戻ってみると、三面拳と話をしていた伊達が、不意にこちらを振り返った。
「戻ったか、桃。
どうやら三面拳が調べたところによると、光は今朝早くに、天動宮へ行ってる。
そして、しばらくして出てきた光が、来るときには手にしていた荷物を、帰りは持っていなかったらしい。
…光のチョコを受け取ったのは、どうやら三号生の誰かのようだぜ。」
…ていうか、調べさせたのか伊達。
しかし三号生とは…可能性が高いのは、一度光とデートをしている羅刹か、天挑五輪大武會で行動を共にしていた影慶か、それとも、氣の講義を定期的に受けてるという邪鬼か…。
☆☆☆
放課後、いつもの桜の下に行ってみると、Jが一輪の赤いバラと、どうやらチョコレートらしい包みを、光に向かって差し出している場面に出くわした。
そうか、アメリカのバレンタインデーのプレゼントは、確か女性からに限定はされてなかったな。
「光は俺たち塾生全員の恋人みたいなものだ。
日頃の感謝も含めて、受け取ってくれ。」
だがそんなJに、光がなぜか、悲しそうな目を向ける。
「そんな…どうして私とJが、戦わなければならないんですか…!?」
「え?」
そのまま二人が固まってしまったので、仕方なく俺が話に入る。
「…光、今日がなんの日か知っているか?」
「バレンタインデーでしょう。知っていますよ?
婚姻を禁止された恋人たちの為に密かに禁を破り、結婚式を挙げさせた司祭が処刑された日ですよね?
その無念の魂を鎮めんが為に、時のローマ皇帝が武術大会を開いて、勝者には敗者の血を捧げられ、それを飲み干したと、御前の書庫にあった本に書いてありました。」
いや待て。
「そして現代では、互いに血の代わりにチョコレートを賭けて、宿敵との決闘を行う習わしが…」
「ねえよそんなもん!」
と、唐突に後ろからツッコミが入る。
振り返ると富樫が立っており、その後ろに何故か大勢の塾生たちが、いつのまにか集まってきていた。
いつ来たんだ、おまえら。
「ええっ!?」
心底驚いたような顔をして立ちすくむ光に近づき、その肩を抱いた豪毅が、ため息をつきながら言う。
「光…親父の書庫にあった本で得た知識は、半分くらいは疑ってかかった方がいいぞ。」
☆☆☆
「そんな……ど、どうしよう。
私は邪鬼様に、嘘の情報を教えてしまったのでしょうか!?」
「…どういう事だ?」
「その話を邪鬼様との会話の中で何気なく出したら、邪鬼様がなにやら思いつめたお顔で、チョコレートを買ってきてほしいと仰るので、決着を付けたい相手がいるのだろうと思い、昨日商店街で購入したものを、今朝お渡ししたんです。」
「…ていう事は、光が買ったチョコは、邪鬼のところに行ったって事か?」
「そうじゃない。
邪鬼の宿敵というのは……!!」
☆☆☆
「受け取れい
「意味がわからん!!」
すいませんでした。