婀嗟烬我愛瑠〜assassin girl〜番外編   作:大岡 ひじき

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本編放り出して、アタシは一体何を書いているのだ…!


女たちの男塾

「…なによ。」

「…なんだい。」

 それは私が聞きたい。

 校門を出た瞬間、女子大生のお姉さんとおばあちゃんの2人に挟まれて、私を挟んだその2人が火花散らせるくらい睨み合っているこの状況とか。

 

「わたしは彼に用があるのよ!」

「わしだってそうだよ!!」

 そうなのか私に用なのか。

 そうだよね、2人とも私の腕をしっかり掴んでいるもんね。

 ちなみに蓉子さんというこの女子大生のお姉さんは、状況は知らないが以前助けられた桃に一目惚れしたらしく、彼女が桃に手作りのクッキーを持ってきて受け取りを拒否され、これ見よがしにその包みを道に投げ捨てたところを、私がたまたま通りかかって知り合った。

 食べ物は粗末にしちゃダメだと説教しながら拾い、せっかくだからと包みを開けて一個食べたら泣かれた。

 そうだよね桃の為に作ったのに私が食べちゃダメだよねごめんなさい、と思って謝ったら、そうじゃない感動したのと更に泣かれ、以来たびたびお菓子を貰ったりお茶に誘われたりしている。

 ちなみにクッキーは結構しょっぱかった。

 これはこれでありなのかもしれないが私は甘い方が好きだ。

 そしてこっちのおばあちゃんはというと、以前寮長が胃腸炎でダウンし、代理で男根寮の夕食を急遽用意しなければならなくなった際、買い出しに付き合ってくれた桃とはぐれた時に声をかけられて以来の交流がある。

 やはり以前桃に助けられて以来桃のファンなのだそうだが、どうやら戦争で亡くした息子さんに私が似ているそうで、違うとわかっていてもつい呼びかけてしまったのだと聞けば、なんだか私までも胸の奥が痛くなってしまい、どうしても無碍には扱えなかった。

 以来買い物などで近くまで来たら、ついでにお宅に顔を出して、家事などを手伝いお話を聞いて、お茶やお菓子をご馳走になっているうちにすっかり仲良くなってしまった。

 …あれ?よく考えたら私、この2人のどっちにも餌付けされてない?

 まあそれはともかく当たり前だが、2人一緒にここに顔を出すのは初めてだ。

 

「光君、駅前にお洒落なカフェができたの。

 ケーキが美味しいらしくて、今月のテーマはぶどうと洋梨なんですって。

 ね、両方とも食べてみたくない?

 2人で頼んで、半分こしましょうよ♪」

 蓉子さんはいつも通り、甘いもので私を誘惑してくる。

 

「良男──っ!

 おまえの好きな焼きイモを買ってきたんじゃよ〜!!

 帰って母ちゃんと一緒に食おう、な?」

 おばあちゃんは私の同情心をつつき、いい感じに食べ物でも釣ってくる。

 

「ちょっと、邪魔しないでよ!

 光君は、わたしとデートするんだから!!」

「へっ、うちの良男を、おまえみたいなアバズレにやれるもんかい!」

「なにが『良男』よ!

 アンタ、前に剣君のこともそう呼んでたの、わたし知ってるんだからね!!

 アンタこそ若い男だったら誰でもいいんでしょ!?」

「なにおう!!?」

 …ちょっと私が思ってた『良男』のイメージが揺らいだ気がするんだが、まあお年寄りってのは得てしてそんなものだろう。

 気がつけばぎゃんぎゃん言い争う女2人の手が私から離れており、同時に遠巻きにギャラリーが集まってこっちに注目しているのに気付いた。

 止めようか他人のフリをしようか迷っていると、突然後ろから肩を引かれる。

 

「うひゃ」

「押忍、光。何してるんだ?」

 頭の上から降ってきた声に顔を上げると、多分間接的にこの事態の原因になっている男が、私を腕に抱き込みながら、笑って見下ろしていた。

 

「こんにちは、桃。

 どうやら女性2人が私を取り合っているようなのです。

 なんとかしてください。」

「ふうん。モテるんだな、光は。」

「…あなたに言ったのが間違いでした。」

 とりあえず絡んでくる桃の腕から脱出し、これ以上の騒ぎになると近所迷惑だと判断して、2人を止めようと…思ったら、2人ともなぜかこっちを見て固まっていた。

 

「よ、ばあさん。今の『良男』は光なのか?

 こいつはお人好しだから、あんまり困らせないでやってくれよ。」

 後ろから聞こえる桃の声が、からかうような口調の中に少しだけ厳しい色を帯びる。

 ひょっとして『良男』に似ているのは私だけじゃなかったんだろうか。

 

「わ、わし用事を思い出したわ…また今度な、良男。」

 おばあちゃんは何故かそそくさとその場を後にした。

 

「ありがとう剣君。

 さあ、邪魔者がいなくなったところで、光君。

 お姉さんとデートしましょう?」

 おばあちゃんがいなくなって、蓉子さんが改めて私に手を伸ばしてくる。

 だが、彼女の手が私の手を掴む前に、何故か桃の腕の中に、私は再び抱き込まれてしまう。

 

「悪いな、こいつは俺のものなんだ。」

 いや、確かに助けてとは言ったけど!

 よりによってなんつー収め方をするんだこの男は!!

 

「……えっ?」

 案の定、蓉子さんは意味がわからないといった表情で、私と桃の顔を交互に見る。

 

「……な?」

 私を抱いたまま顔を覗き込んで、問いかけてくる桃は、話を合わせろというようにウインクしてくる。

 

「え、ええと…その……」

 どう答えていいかわからず、無駄に色気のある桃の顔から目が離せずにいるうちに、桃は私を小脇に抱えて、

 

「じゃ、そういうことで。」

 とその場から連れ出してくれた…じゃなくて!

 

「ちょっと、桃!荷物運びはやめてください!!」

「ん?お姫様抱っこの方がいいか?」

「そうじゃなく!!」

 今度は私と桃がぎゃんぎゃん言い争う事になり、結局は近所迷惑だったと気付いたのは後になってからだ。

 そして……

 

「貴い……!!」

 校門前に1人取り残された蓉子さんがそう呟いていた事など、私には知る由もなかった。




ごめんなさい。
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