準精霊《ヴァンパイア》   作:biwanosin

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さあさあbiwanoshinが他の作品一切問題解決してないのにまた始めたぞ!
どうせまた何か問題が発生して停止するぞ!
でもできれば一巻の分だけは書ききりたいなぁ、と思ってるんだぞ!


第一話

都立来禅高校の屋上、貯水タンクに背中を預けて自販機で買ったパックのトマトジュースを啜る。最初は虚しい代償行為であったはずのこれは、気が付けば好物にまでなっていた。人間の生活というものはよくわからない。

空を見る。日光に目を細め、耐えきれなくなって左手でひさしを作る。腕時計が目に入り、ちょうどいい時間であることを知った。これ以上ここにいたらきっと、上司からスマホに着信が入る。立ち上がってトマトジュースを飲み干し、ちゃんと時間を守る意志はありますよー、と上官へアピール。

 

「さ、行きますか」

 

クラスは前もって上司から二年四組であると聞いている。梯子を使わず飛び降りて、人の気配がないことを確認してから屋上の扉を開ける。指を鍵穴に当てて施錠し、教室へ向かう。

ガラガラと音を立てて入ると、もうすぐホームルームということもあって結構な人数が揃っていた。

元々友人だったのか一つの机に集まって姦しく騒いでいる女生徒。友人がいなかったのか一人机でぼーっとスマホを弄っている者。分厚い技術書っぽいものを読んでいる銀髪のお人形さん。友人にヘッドロックをきめられている私の友人件護衛対象。見慣れた三人組でおしゃべりしているアイマイミー。

さて、自分の席もあらかじめ聞いていることだし、いつも通り過ぎてスルーしていた友人に話しかけるとしよう。

 

「オハヨ、五河に殿町。何やってんの?」

「お、おはよう河合。や、特に何かあったわけじゃないんだが……」

 

果たして何もなくこうなるのだろうか。そう思ってヘッドロックをきめられている側からきめている側へと視線を移す。

 

「おはよう、河合。いやな、この五河がいつの間にか三位の鳶一と仲良くなってたから問い詰めてたんだ」

「この光景は尋問かなんかじゃないのかな、って」

 

ふむ、鳶一さんと、ねぇ。それは十中八九五河が何かやったんじゃなくて鳶一さん側だと思うのだけど、わざわざ口にすることではないかな。ついつい首に触れてしまってから、ふと疑問に思ったことを問う。

 

「三位って、鳶一さんは定期テスト一位じゃなかったっけ?」

「や、それじゃなくて『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』の方」

「何、男子ランキングだけじゃなくて女子ランキングもやってたの?」

「言っておくが、こっちは俺主催じゃないからな?」

 

違ったのか。そんなものを主催しようとする人がコイツ以外にもいたとは、驚きである。

 

「因みに、河合は五位だったぞ?」

「うっわー本気でどうでもいい」

「男子票も多かったが女子票に後押しされた結果だな」

「アタシそういうタイプかな?女子ウケする方じゃないと思うんだけど」

「投票理由の中でも多かったのは『吸血鬼っぽくてなんだか色気がある』『血を吸ってほしい』等だ」

「常時長袖で貧血そうにしてた方がいいのかな?いっそ金髪にでもする?」

「校則ってものがあるんだから気を付けような?」

「ちなみに、『男子が選んだ校内ベストカップル』では鳶一とセットで堂々の一位だ」

「ほっとんど関わりないはずなんだけど、あれか。吸血鬼ペアか」

 

考えてみると、確かに鳶一さんは吸血鬼っぽい雰囲気がある。それに対して私の吸血鬼要素はちょっと長い八重歯だけである。男子たち、吸血鬼認定の基準が低すぎやしないかね?

 

「ちなみに、『腐女子が選んだ校内ベストカップル』では俺と五河でベスト2だ。一歩及ばなかったな!」

「これっぽっちも嬉しくねぇしこれっぽっちも悔しくねぇぇぇぇぇッ!」

 

殿町がもう既に何かを乗り越えた様子なのが、ちょっと気になった。まあ五河は女っ気がなさ過ぎてホモなんじゃないか疑惑がわいていたし、いつも仲良くしていればいい飯のタネになったことだろう。心の中で合掌しておく。

余談だが、個人的妄想(メシ)のタネはアイマイミー三人のレズである。決して取り合いはしないで仲良くしていてほしい。

 

と、そんなことを考えていたら予冷。二人は教室前方の黒板に席を確認しに行ったので、あらかじめ知らされていた席につく。鳶一さんが席一つ挟んだ先にいたので、ちょっと頬杖をついて観察してみる。

まず間違いなく、見た目は校内トップだ。恋人ランキングで三位だったのは雰囲気の問題だろう。スタイルだってボンキュッボンと言うわけではないが整っている。肌の白さと髪色、身長、本人の雰囲気まで込みの一つの芸術として考えるのならばベストマッチであろう。

性的本音をぶちまけるのであれば、裸……いや、全体的にはだけさせるようにしてベッドに押し倒し、右手で胸に触れ、左手を足に這わせながら赤みを帯びた顔を眺め、その首筋に顔をうずめたい。

あ、こっちみた。なので見返してみるも、何の反応もない。これは顔を赤らめるという妄想は妄想以上にはならないだろうなぁ。無表情のところに顔をうずめる……うーむ、それならいっそ寝ているところを、の方がいいなぁ。

と、五河がこっちに向かってきたのでちょっと頭を下げて教室前方へと視線を移す。

 

「お隣は河合だったのか、しばらくよろしく」

「こっちこそ、よろしく。さっき言うべきだったけど、本年度もクラスメイトとして」

「そういえばそうだな、こちらこそ本年度もよろしく」

 

再び視線を一度隣に移して、まあそれくらいのあいさつですぐに終わりである。友人同士のあいさつであり、相手は女子ではなく男子。これくらいで済むのは、正直楽ですらある。恋愛対象は女子だけど友人関係は男子の方が、色々と気楽なものだ。そうも言ってられないので女子とも仲良くするし、トイレにも一緒にいくのだけども。適度な距離感、大切。アイマイミーはその辺の諸々が他グループと比べても楽なので、イベント事の班編成はあそこに混ぜてもらう感じにしよう。三人が限度の班編成の時は……うーむ、鳶一さんでも誘おうかな。

 

「おっ、タマちゃんだ。ラッキー」

 

と、一年間の計画を立てていたら特徴のある担任が入ってきたのでつい小声で言ってしまう。

社会科担当の岡峰珠恵、通称タマちゃん。縁の細い眼鏡と同年代……と言うか年下にしか見えない小柄な体躯とのんびりした性格が特徴の先生であり、担任ガチャとしては大当たりである。

タマちゃんはまだ性にそこまで関心の無い年齢にしか見えないがしかししっかりと大人である、というのがミソだ。あれで29歳だというのだから(追い込まれてる気がするので恋愛は無いけど)妄想がはかどる。着衣の状態で背後から手を伸ばし、耳を咥えながら胸に触れる。柔らかさを感じられるかは謎だけど重要なのはそこではない。その状態で反応を楽しんで、片手を段々と下へ滑らせていく。下着の上からそこに触れて、同時にもう片方の手でシャツのボタンを外していく。上の方だけ外して横に剥き、肩から胸を出した状態でいっそ下着に手を突っ込んでしまおうか、スポブラだと大変イメージ通りで素晴らしい。しばらくしたらブラもずらしてさらけ出し、両手で青い果実に触れつつ首筋に顔をうずめ、舌を這わす。うん、これだな。

 

「な、なんなんだ一体……」

 

と、妄想にふけっていたら隣からそんな声が。まさか妄想が表情に漏れて変な顔でもしてしまったのだろうかと一瞬焦ったが、どうやらそうではないらしい。視線を向けると、鳶一さんに全力の視線を向けられて焦っている五河の姿あり、だ。頑張れ少年、その人の愛は大変重いぞ。

 

で、この三時間後。去年からの女友達と食事をとっている最中に空間震警報、発令。他の人に気取られないように屋上に向かって、スマホを取り出す。その様子を見ていたのであろう上司からの着信は、その瞬間にかかってきた。

 

「ハロハロー」

『ふざけてんじゃないわよ。状況報告』

「ちゃんと指令の指示通り、五河が友人とシェルターに向かってるのを確認してからこっちに来ましたよ。入るところまでは確認してないですけど」

『まあ、そこまでいくとシェルターに入らざるを得ないからいいわ』

 

そらそうだ、と思いつつフェンスを登り、その上に立つ。教師に見られていたら一発で生徒指導室送りだ。

 

「それじゃ、ここからもまた予定通りでいいですかね?」

『ええ、そうしてちょうだい。予測出現位置と空間震の範囲は端末に送ったわ』

「りょーかいです。それじゃ……アタシたちの」

『ええ、私たちの』

『「戦争(デート)を始めましょうか」』

 

電話を切り、フェンスから飛び降りつつ端末の画面を確認。予測震災範囲を少し外れた位置取りを確認して、ひとまずはそこに向かうことにした。

 




さて、第二話はどうなるのかな?biwanoshin、楽しみです!

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