生存戦略 エリオ・モンディアルの手記   作:ニョニュム

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第1話

○月×日◇曜日

 生前の僕は輪廻転生という言葉を知っていたけど信じた事など一度も無かった。宗教的な事に興味も無かったから熱心に神様へお祈りしたような事も無い。だけど、今この状況にあるからこそ言える。輪廻転生は存在する。

 

 何故なら今、この手記を書いている僕こそが輪廻転生を体験した“転生者”であるからだ。

 

 生前の僕について語る事はあまりない。と言うか、いまいち生前の自分を思い出せない。少なくとも自分の事を僕なんて呼び方はしていなかった。生前の記憶や思い出は無くても知識を継承している感じだ。なら何故、僕が自分を“転生者”だと理解しているのか。

 

 答えは簡単。僕の名前はエリオ・モンディアル。生前の知識に存在するアニメ――――魔法少女リリカルなのはStrikerSに登場するキャラクターの一人、エリオ・モンディアルのオリジナルとして転生したからだ。アニメに登場するエリオはプロジャクトFと呼ばれた違法クローン技術的なモノで生み出された僕のクローンだ。何故、そんなクローンが存在しているのかと言えば、それは第三期と呼ばれるアニメ原作が始まる前に僕が“死んでいる”からに他ならない。

 

 そう、僕は一度死んでいる。勿論、生前の話ではなく、この世界での話だ。これは僕の憶測であるがいわゆる原作のオリジナルエリオ君が死んだ瞬間、その身体に僕の魂が入り込んだんだと思っている。その理由は僕が“転生者”だと自覚した時とエリオ君が息を引き取ったと思われる時がほぼ同じだからだ。

 

 最初はもうびっくりした。目を開けたら見覚えのある名前も知っているけど見慣れない両親、驚愕の表情を浮かべているお医者さん、なにより死んでいるように重い身体、気持ち悪くて考えが纏まらない思考、絶不調の身体に負けてすぐに眠ってしまった。

 

 そして目を覚まし、喜びに泣き崩れる両親と色々確認の為に質問をぶつけてくるお医者さんに受け答えしながら僕は自分がエリオ・モンディアルだと知った。そして僕はハッキリと言ったのだ。僕は貴方達の知っているエリオ・モンディアルではありませんと。

 

 今思えばとんでもなく最低な発言だったと反省している。生きていた事を喜んでいる両親へ自分は両親の知っている自分でないと宣言したのだ。だけど、それに待ったを掛けたのがお医者さんだった。お医者さん曰く、先祖の知識を引き継いで生まれる事は珍しい事ではあるがありえない事ではない、と言う話だった。当時、そんなめちゃくちゃな“設定”が存在する事なんて知らない僕は目がテンになっていたに違いない。

 

 結局、僕は死に際に先祖の記憶を思い出して生き長らえたエリオ・モンディアルとして両親に受け入れられた。その後、長い闘病生活を乗り越える事が出来た僕は健康維持を目的としてミッドチルダで一般的な格闘技であるストライクアーツを習い始めた。

 

 勿論、ストライクアーツを習いたいと言った時、両親から猛反対された。特に母親の反対は凄かったけど僕も譲らなかった。フェイトのオリジナルであるアリシアの魔力的資質が低かったように僕の魔力的資質も原作エリオ君と比べたら劣るものの素質自体はそれなりに存在した。

 

 それなら魔法を使ってみたいと考えるのは仕方ない事だろう。とはいえ、命の危険がある原作に参加する事などありえない。そもそも富豪であるモンディアル家の長男である僕が原作のように管理局へ勤める事も無理がある。妥協案として見つけたのが健康的なスポーツの要素を持つストライクアーツだった。

 

 

○月×日◇曜日

 ストライクアーツを習い始めてから数年、僕の戦闘スタイルもそれなりに固まってきた。幼い頃から身体が強い方ではなかった事もあって、高機動カウンター型の格闘家として練習を続けている。最初の頃はただのカウンター型で練習をしていたけど実力が上がるにつれて出場する大会のレベルも上がっていき、相手の中からカウンター覚悟のパワー型の選手などを相手にするようになり、限界を感じ始めたのでパワーに対抗する為、スピードを取り入れるようになった。

 

 

○月×日◇曜日

この前、JS事件と呼ばれる原作のエリオ君が解決した事件が起きた。とはいえ、一般人として過ごしている僕に関係はあまりない。興味本位で原作の登場人物を調べてみた事もあったけど、関わりあいが無いので特に何か起きたりしない。ただ、赤毛の少年が事件解決に尽力したという噂を耳にした時に初めて自分が両親から何も聞かされていない事に気付いた。

 

 

○月×日◇曜日

DSAAと呼ばれる魔法戦競技の本選に参加する権利を勝ち取った。この大会は全管理世界から凄腕の格闘家が集まるので注目度も高い。一回戦負けしてボロ泣きした事は絶対に忘れない。

 

 

○月×日◇曜日

もう何度か出場したDSAAだけど、そろそろ僕の名前も売れ始めた。最初の出場は一回戦敗退、それから何度も出場を重ねてようやく去年、去年の優勝者に敗退してベスト4という成績を残す事が出来た。今年こそ優勝目指すつもりだ。

 

 

○月×日◇曜日

DSAAは勿論、試合が男子と女子で分かれている。男子の試合を観戦するのは情報収集を兼ねているので当然だけど、女子の試合も十分にレベルが高い。それに好成績を残している選手の中には何人か知り合いもいるので、応援する為に試合を観戦している。そして、その出場者の中にありえない名前を見つけて固まった。

 

 その名前はルーテシア・アルピーノ。そして、高町ヴィヴィオだ。

 

 

(エリオ・モンディアルの手記から抜粋)

 




昔のUSBに入っていたネタを見つけたのでなんとなく投稿してみました。

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