コワンの村のエルフたちやコダ村の人々はアルヌスに無事到着し、なし崩し的に受け入れられた。
伊丹二尉は上司にこっぴどく怒られていたが、へらへらと笑っていた。丈夫な神経の持ち主だと私は改めてこの人に対して感心した。
そんな私だが、何故かは知らないけれど、狭間陸将の部屋にいる。呼び出されたのだ。
何故呼び出されたのかは見当も付かない。
「君は伊丹二尉が率いる第三偵察隊の副隊長だったね」
「はい」
「今朝、君が基地から抜け出すのをみた」
「……え」
「しかも、その同時刻に君が第三偵察隊として出発するのも見た」
「は、」
「監視カメラの記録にも残っている」
(マジでか!!)
私の背中には冷や汗が流れた。
「説明してくれるかな? 桐ヶ谷三等陸尉」
その後、私は逆転時計の事は隠し、自分が魔法使いだということを暴露した。魔法も使って見せた。
「ふむ……魔法で影分身のようなことができるのか。どこかで学んだのか?」
狭間陸将は興味深いという表情で私の顔を見ていた。
「……それはお教えできません」
「分かった。もう一度、魔法を見せてはくれないか?」
私は害が無い魔法を使う為に杖を取り出した。
「ルーモス」
光が杖から溢れた。その時
「陸将、ご報告が……」
柳田二等陸尉がノックもなしに入って来た。それもその筈、陸将の部屋は常日頃から開放されていて、「ノック不要、入室許可」と書かれた紙が貼り付けられているのだ。
つまり、誰でも入りやすい部屋になっている=プライバシーがないに等しい。なので、秘密にしたい事をこの部屋でやってはいけない。私はその事を忘れていた。
「や、柳田二尉?」
柳田二尉は私の杖を凝視している。
お願いだ、何か喋ってくれ。
「よし、桐ヶ谷、柳田。このことはここでは俺たちだけの秘密だ。桐ヶ谷、この事は上に一応、報告しておく。分かったか?」
報告は止めて欲しいけど、仕方が無いので頷いた。
「柳田、分かったか?」
「は、はい、陸将」
動揺が収まっていないようだが、柳田二尉は頷いた。
「よし、桐ヶ谷は戻ってよし、柳田は報告があるんだろ。聞かせてもらおう」
「はい」
私はその様子を見ながら、一礼して、部屋を去った。
(やってしまった……魔法省に報告すべきか? ここはダンブルドアに相談するか……)
今度の休暇はダンブルドアに会いにホグワーツに行くことを決めた。
(ダンブルドアはどんな反応をするだろうか……)
あの飄々とした態度は何をしても崩れはしないという事を思い、私は苦笑を浮かべた。
そして、私は持ち場に戻るのだった。