私、桐ヶ谷咲枝は自衛隊隊員であり、魔法使いでもある。魔法使いとしての自分のことも忘れていないし、忘れることはない。いくら忙しかろうと。
そして、私は先日、狭間陸将に魔法使いだとバレ、それを上に報告されるという失態を犯した。その事を相談すべく、私は休日を利用し、ホグワーツ魔法魔術学校の校長室に姿現しをした。
「久しいの、サキ」
「お久しぶりです、校長先生」
私は真剣な顔をしたまま、口を開いた。
「ダンブルドア、伝えなければいけないことがあります」
「なんじゃ?」
「実は……」
私は正直に全てを話した。狭間陸将に魔法がバレた事、それを上に報告された事。その内、日本政府に伝わってしまうだろうことも。
「……ふむ、そうか、それは大変なことになったのぅ」
「どうすればいいのでしょう、ダンブルドア」
「良い機会じゃ、これを機に魔法界が外界と接するのも良いじゃろう」
「えぇ?」
「魔法省には儂から伝えておこう。それから、外界と接触するように促してみよう」
「そんなこと……」
「誰もしたがらない? 確かに、そうかもしれんな。けど、その内、マグルの方が我々の存在に気づくじゃろう。彼らの科学技術は目覚ましい発展を続けておる。いつか、我々の存在は彼らに見つかる。それが早いか遅いかの違いじゃよ」
「ダンブルドア……」
「心配するでない。サキ。大丈夫じゃよ」
「……そうですね、大丈夫。絶対、大丈夫」
桜ちゃんの無敵の呪文を呟き、私は笑みを浮かべた。
「あ、そうだ、ダンブルドアにお土産です」
「む、これは?」
「炎龍という異界のドラゴンの鱗です」
「なんと! 有り難く頂こう」
ダンブルドアは嬉しそうに鱗を懐にしまった。彼の無邪気さは変わらない。
「校長先生、私、戻りますね」
「おお、そうか、気を付けるんじゃぞ」
「はい」
そして、私は姿くらましをした。向かう先は桐ヶ谷家だ。自室に姿を現した私は、いつもより騒がしいのに気がついた。
一階に降りると、直葉と母が荷物を持って上がってくるところだった。
そして、その後ろには……
「和人……?」
痩せてはいたが、その顔を間違える筈も無い。
「ただいま、姉さん」
そうして、笑った和人を私は抱きしめた。
「おかえり、和人」
私の頬を涙が伝った。
私は和人との再会を喜び、上司に事情を話して有給を申請した。
久しぶりの家族団欒は皆笑顔で幸せそうだった。
「和人、どんな冒険してきたの? 姉さん気になるなぁ」
「それより、俺、姉さんの話が聞きたい、ゲートが出来たんだろ? 異世界の話、聞きたいな」
私は言葉に詰まった。が、話し始めた。
「そうね、剣と魔法のファンタジーが現実になったような世界よ。ドラゴンもいるわ」
「凄い……行ってみたいな」
「私も!」
「だーめ、民間人は連れていけません」
あはは、と食卓は家族の笑い声で満ちていた。