病み上がりの和人を置いていくのは忍びなかったが、「姉さんは自分の仕事頑張って」と言われて泣く泣く出てきた。
これから、和人が身体を元に戻して、明日奈を救う為にALOに飛び込むのは分かっていたので、仕事の合間にALOで鍛えたキャラクターを用意しておいた。しかし、管理者権限やら、そういう重要な権限も何も無いので、彼を導く手助けぐらいしかできないだろうと踏んでいた。
茅場晶彦が和人を助けてくれることを信じるしか無い。
あのSAO事件の後、茅場晶彦は自身の脳を完全スキャンさせ、魂をVR世界に投じた。彼の魂は今もVRの世界にある筈だ。だからこそ、茅場が助けてくれると私は信じている。
魔法を研究してもいいという約束はまだ果たせていないが、その内、接触してくるだろうと踏んでいるので気にはならなかった。
ならなかったのだが、ALOにダイブしている時に大衆の面前で公然と声を掛けてきたのには驚いた。勿論、すぐに近くの宿屋に入ったが。
宿屋の宿泊部屋で、茅場は私に魔法の研究について語った。
「君の魔法の研究については僕の恩師である、東都工業大学電気電子工学科教授の重村教授にお願いしてある。半信半疑だろうが、君が実際に魔法を使えば信じるだろう。研究成果は私も見に行く。期待しているよ」
そう言って、茅場は消えた。
私は大きく溜息を吐き、鬱憤を晴らすため、モンスターを狩りに出かけた。
私が有給を取っていたとき、イタリカの事件が起こっていたらしく、面倒事に巻き込まれなかった私は心底、安堵した。が、有給から帰ってきて、しばらく経ったある日、私は狭間陸将に呼ばれ、彼の執務室にいた。
面倒事の臭いがプンプンした。
「そんなに嫌そうな顔をして立たれると、私も言いにくくなるんだが」
「すみません。で、なんでしょう?」
「君を特地資源状況調査班の班長に任命する」
「私を?」
「君も三等陸尉だ。班長をやってもいいだろう。副班長はヴァンだ。彼も魔法使いだそうだな」
「!?」
(ヴァン、何言ってくれちゃってるの!?)
「あと、班員は口の固い連中だ。皆、お前が魔法使いだと知っているからな、資源探索するついでに魔法も教えてやれ」
「……はい、普通の人が使えるような魔法だけ教えときますよ」
異世界の魔法は自身が持っている魔力が少なくとも空中に漂うマナを媒介として発動させることのできる魔法もある。要するにやろうと思えば誰でも魔法は使えるのだ。
「資源探索のついでに各地の人々と親睦を深めてもいいぞ」
むしろ、親睦を深めてこいというのが陸将の言いたいところなのだろう。
「分かりました。頑張ります」
「あと、班員は檜垣三等陸佐に確認するように。君たちの出発は明日の0930だ」
「了解!」
私は敬礼して、陸将の部屋を出ると、檜垣三佐の元に向かった。