母と私はダンブルドアに翻訳の魔法を掛けて貰った。
ダイアゴン横丁を進むと、見覚えのある店に辿り着いた。
「まずは、オリバンダー杖店で杖を調達せねばな」
そう言って、ダンブルドアはオリバンダー杖店に入っていった。
「これはこれは、ダンブルドアではありませんか」
「久しいの、オリバンダー。今日はこの子の杖を見て欲しくてね」
「ふむ、東洋の……もしや日本人ですかな?」
「左様、日本人じゃよ」
「分かりました、ちょっと、お待ちを」
オリバンダーはそう言って、奥の方へと引っ込んだ。すぐに一つの箱を持ってやってくる。
「トネリコに芯は不死鳥の尾羽です。試してみて下さい」
オリバンダーから杖を受け取った私は思いきって振ってみた。
ガッシャーン
棚から箱という箱が落ちていった。私は思わずオリバンダーの顔色を窺ったが、オリバンダーは全く気にしていないようだった。
「では、次を」
その後、いくつもの杖を試して試して試しまくったが、全て合わなかった。
オリバンダーは奥に引っ込み、深緑の箱を持ってやってきた。
「これはどうかな?」
オリバンダーに渡された杖を振るう。すると、ごちゃごちゃになっていたオリバンダーの杖店が一気に綺麗になった。
「すごい……この杖は?」
「桐の木に芯は不死鳥の尾羽じゃ」
「ほほう、珍しいの、桐の木は女帝の木、とか王女の木と呼ばれている木じゃな。女の子にはぴったりじゃな」
「良かったわね」
「うん」
桐がつく名字なので、同じ木だと思うと嬉しくて、私は笑顔を浮かべていた。
「では、次はペットじゃ」
「はーい」
そして、イーロップのふくろう百貨店にやってきた。
イーロップには様々な梟がいた。
どうせならハリーと同じ白い梟がいい、と思いながら店内を散策していたら、小さい丸っこい梟を発見した。
「か、可愛い……」
私は思わずその子が入っている鳥かごを持ち上げてしまった。
「む? その子が良いのかね?」
「はい」
「まだ、子供みたいじゃの。これから大きくなるが、大丈夫かのう」
「大丈夫です」
元々、ハリーの持ってる梟みたいな梟が欲しかったのだ。全然、構わない。
「では、買ってくるからのう」
「はーい」
ダンブルドアを待って、私は店内をうろうろしていた。母はまだ、体調が優れないので、外にいるのだ。
「ん? 君は日本人かな?」
私に声を掛けてきたのは白髪の老人だった。若い頃は美青年だったのだろうと思わせる整った顔立ちをしていた。
「? はい、そうですが」
「そうか、そうか、日本人の魔法使いか」
男性は嬉しそうに言うと、紙に何かを書き、渡してきた。
「これは僕の家の住所だ。妻が日本人でね、良かったら遊びに来てくれ」
私は驚いてその男性の顔を見た。男性は私の手に紙を握らせ微笑みを浮かべた。
「サキ? どこじゃ」
私は呼ばれたので振り返った。
「ダンブルドア先生、ここです!」
ダンブルドアはこちらに気づくと、早足でやってきた。
「全く、心配させるでない」
「ごめんなさい、あ、ダンブルドア先生、」
私は白髪の老人をダンブルドアに紹介しようと振り返ったが、そこには誰もいなかった。
「どうしたのじゃ? サキ」
「ううん、なんでもないの、ダンブルドア先生」
私は白髪の老人に貰った紙をポケットに仕舞い、ダンブルドアの後に付いて行った。
イーロップから出た後は、制服や教科書を購入して買い物は終わりになった。
姿現しをする時は母が渋ったが、帰るしかないので、仕方なくダンブルドアの手を取っていた。
「咲枝」
「なあに、お母さん」
「無理はしちゃ駄目だけど、限界には挑戦しなさい。あなたならできるわ」
母は真剣な目で私を見ていた。私は頷く。
「うん、やってみる」
私は現世の母の愛に感謝しつつ、言葉を紡いだのだった。