がたん、ごとん、と蒸気機関車ホグワーツ・エクスプレスに揺られながら、私は窓の外を見詰めていた。
いかにして原作に巻き込まれないでいるかを考えながら。
梟の子供――ブランをずっと撫で続けていると、私は心が安らぐのを感じた。
「あれ? ここ、空いてるのかな?」
九月までの短期間で詰め込んだ英語の知識で何とか聞き取る。
扉を開けたのは、プラチナブロンドにエメラルドグリーンの瞳を持った西洋人形のような美少女だった。
「うん、空いてるよ」
「失礼するわ」
美少女は私の対面に座った。
「私はレティーツィア・フォルクヴァルツ。ドイツ人よ。レティって呼んで頂戴」
「分かった、レティ。私はサキエ・キリガヤ。日本人。サキって呼んで」
レティは満足げに笑った。
「日本人の魔法使いに会えて嬉しいわ。貴方、オンミョウジなんでしょ?」
「陰陽師とかじゃないよ、私はマグルだから」
「あら、そうなの、残念だわ」
レティはあからさまに残念そうな顔をした。
「ねえ、日本ってどんなところかしら、最近VRの研究が日本で進んでいるって話を聞いたわ。確か――」
「お、ここ、空いてるぞ」
レティの言葉を遮ったのはプラチナブロンドに青い瞳を持ったやんちゃそうな美少年だった。
「駄目だよ、グレン。ちゃんと先客に聞かなきゃ。お嬢さん方、ご一緒しても宜しいですか?」
後からやってきたのはシルバーブロンドにグレーの瞳を持った落ち着いた美少年だった。
此処には美しい人ばかりが集うのだろうか、私以外だけど。
「あなたに免じて相席を許してあげるわ」
レティがシルバーブロンドの彼にそう言うと、二人は席に座った。
金髪がレティ、シルバーブロンドが私の隣に座った。
私たちは自己紹介をしあう。
金髪の彼はグレン・グリーングラス、イギリス出身の純血。
シルバーブロンドの彼はヴァレリアン・キーロヴィチ、ロシア出身のマグル。
異色の組み合わせに私は目を白黒させた。
「どの組に組み分けされるかしら、楽しみね、サキ」
「俺はグリフィンドールだな、絶対」
「あら、あなた、純血ならスリザリンじゃなくて?」
「うるさいな、良いんだよ、俺は俺で、で、レティさんはどこに組み分けられたいんだ?」
「残念だけど、グリフィンドールよ」
グレンとレティは舌戦を繰り広げていた。
「サキはどこに組み分けられたいの?」
「私? ……レイブンクローかパッフルパフかな。平和そうだし」
「そっか、俺はレイブンクローかなあ、勉強に打ち込みたいんだ」
「そうなんだ、偉いね、ヴァン」
この年齢の子供はまだ遊びたい盛りだろう。ヴァンは真面目だと、私の中で位置づけられた。
「あ、もうそろそろ着くわ。着替えるから出て行って。あ、サキもごめんね」
「え? 私、一応、女だよ?」
「「ええぇええ~!?」」
あ、やっぱり、と私は思った。今日はパンツだったから仕方が無いと私は落ち込んだ。そんな私の肩をヴァンが叩いてくれた。ヴァンだけは私を女だと思ってくれていたらしい。それが、とても嬉しかった。
「ご、ごめんなさい、サキ、中性的な顔で髪が短かったから、てっきり……」
「俺も、ごめん」
「良いって、さ、早く着替えちゃおう」
そうして、私たちが着替え終わると、蒸気機関車はホグワーツに辿り着いた。