ホグワーツに一年所属して分かったのが、ハリー・ポッターはもう卒業して、クウィディッチの選手として活躍していること。
ロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーは魔法省の闇払い局で働いていること。
他の原作キャラ達もそれぞれの場所で生活していること。
それらの事を鑑みて、私は一つの仮説を立てた。
その仮説を確かめる為に、私はイギリス北部のある町に来ていた。
ピンポーン
紙に書いてある住所を頼りに探し当てたその家は優美な造りの家だった。
中から出てきたのは白髪の優しげな女性だった。
「あら、来たのね。いらっしゃい」
まるで、分かっていたかのような口調で私を出迎えた女性はリビングへと私を誘った。
リビングにはあの時の白髪の男性がいた。
「やあ、来たんだね。さ、座りなさい」
「あ、はい」
私は戸惑いながらも、ソファーに座った。
「紅茶でも飲んで頂戴」
女性が紅茶の入ったカップを私に差し出した。私は遠慮無く頂いた。
「さ、自己紹介でもしましょうか」
「待って下さい。私の仮説を言わせて頂いてもいいですか?」
私は女性の言葉を遮って、発言した。どうしても、この仮説を先に言いたかったのだ。
女性と男性は顔を見合わせ、笑った。
「ああ、良いとも」
「聞かせて頂戴」
「ありがとうございます」
私はお辞儀をして二人を見た。
「まず、あなたの名前から当てます。あなたはヒカリ・アマノさんですね」
「まあ! 合ってるわ」
ふふふ、とヒカリさんは笑った。
「そして、あなたはトム・マールヴォロ・リドルさん」
「おお、合っているよ」
二人ともにこにこと笑っている。
「そして、ヒカリさん、あなたは転生者ですね」
「うふふ、そうよ」
「貴方は約六十年前に転生し、ホグワーツに通うこととなった。そこでリドルさんと出会う。闇の道にリドルさんが進まなかったのはヒカリさん、あなたが干渉したからでしょう。そして、二人は結婚し、幸せに暮らし、魔法界も平和が保たれた。……こんな感じですが、いかがですか?」
「素晴らしい推理ね! パーフェクトよ」
「まだこんなに小さいのに、凄いな」
私は仮説が合っていたことに満足した。
「それで、お嬢さんのお名前は?」
「あ、申し遅れました! 私はサキエ・キリガヤです」
「そう、サキちゃん、って呼んでもいいかしら?」
「あ、はい」
自分の本当のおばあちゃんと話しているような気分になった。
「じゃあ、真実に辿り着いたサキちゃんにご褒美よ」
ヒカリさんは私に封筒と一枚の小さな紙と優美な造りの古い鍵を渡した。
「これは?」
「日本の青森にある私の別荘の所有権と鍵よ。もう貴方に所有権は移行させてあるから、返品不可よ」
ヒカリさんはそう言うとウインクした。
「え、えーっと?」
「まあ、混乱するのも無理ないわ。私も前の所有者に渡された時は混乱したもの」
「わ、私たちの前にも転生者が?」
「いたの」
ヒカリさんは悪戯が成功した子供のように笑った。
「ここか」
青森県の西の端にある山々の間に広がる平野がある。そこに一件の洋館がぽつりと立っていた。綺麗で優美な佇まいの洋館は許可された魔法使いにしか見えないらしい。
私はヒカリさんに渡された鍵で扉を開けた。
「ようこそ、新しい主。あなたをこの家の主として設定します」
背に透き通るような羽を持ち、小さな美しい人の形をした妖精が現れ、私に話しかける。
「設定しました。主サキエ・キリガヤ。あなたを歓迎します。私はこの家の管理者のエレーナです。この家は過去の転生者が後の転生者の為に知識を貯蔵した家です。全てあなたのものなので、ご自由にお使い下さい」
「分かったわ、エレーナ。まずは部屋を案内してくれる?」
「畏まりました」
エレーナはリビング、書庫、倉庫、トイレ、風呂、寝室、客間、執務室と案内してくれた。どこも素敵な内装で私はこの家を建てた人に会ってみたいと思った。けれど、もう会えそうにないなとも思った。
書庫で何か知識を得ようと思って本棚に触れると、光が現れ、一冊の本を示した。
それは《初心者転生者の本》と書いてあった。
試しに私はその本を読んでみた。
すると、驚愕の事実が書かれていた。
まず、転生者はあらゆる魔法を覚えることができるということ。
通常の魔力よりも強大な魔力を有しているということ。
別の世界に転移することもできるということ。
この家には別の世界で集めたあらゆる魔法の知識があるということだ。
これは私にとってショッキングな内容だった。けれど、同時にわくわくした。
別の世界の新しい魔法を覚えることができる。
それは、とても魅力的な話だった。
その日から私は休みの度に青森の洋館に籠もった。