時は流れ、六年の年月が経った。
私はホグワーツに通いながら逆転時計を駆使し、小中高を卒業した。
死ぬかと思った時期だった。もう、二度としたくないが、ダンブルドアは卒業の記念に逆転時計をプレゼントしてくれやがった。もう、二度と二重生活なんてしないんだから!
この生活で私をずっと励まし共に高め合ったのはヴァンだった。もちろん、レティとグレンもだけど、ほとんどの時間をヴァンと過ごしていたように思う。
ヴァンには感謝しかない。本当に有り難かった。
「サキ」
「あ、ヴァン、どうしたの? 浮かない顔をして」
「サキのこれからを聞いていないな、と思って……サキはどうするの?」
「私? 私は日本に戻って自衛隊に入る為に自衛隊体育学校に通おうと思ってるわ。だから、会うのは難しくなるかも。魔法があればなんとかできるかもだけど」
「自衛隊……って、なんで?」
「うーんと、魔法なしでどこまでやれるか試してみたいの。それに、自衛隊って格好いいし!」
「……そっか、サキ、ちゃんと、僕にも連絡してね」
「連絡するよ。絶対、だってヴァンは親友だからね」
ヴァンは一瞬複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔を浮かべた。え、親友だよね?
「うん、僕の親友だよ、サキ」
その応えに満足した私は笑顔を浮かべた。
「ただいま~」
私は日本の桐ヶ谷家に帰ってきた。
「あ、姉さんだ。ねぇねぇ、お土産は?」
「お土産あるわよ~」
懐からお土産を取り出した。
「フィフィ・フィズビーよ」
「やった!」
弟はフィフィ・フィズビーを舐め始めた。すると身体が数センチ浮き上がる。
「あー! お兄ちゃん、ずるーい!」
「ちゃんとあなたにも用意してあるわ」
妹にもフィフィ・フィズビーを渡した。彼女は喜んで舐め始めた。
私の兄弟は可愛い。目に入れても痛くないくらい可愛い。弟の和人は女の子かと思う可憐さがあるがちゃんと男の子だ。妹の直葉は男勝りだが可愛らしい。
この名前を聞いて、お分かりだと思うが、二人はあのSAOのキャラクターだった。和人がSAOの中に閉じ込められるのを止める事はできる。しかし、それでは結城明日奈と和人が出会えなくなってしまう。それは避けたかった。
茅場晶彦には既に接触している。魔法に甚く関心を持っていたので、魔法を交換条件にすれば、茅場は言うことを聞くかもしれない。
「姉さん、どうかした?」
「ん? ううん、なんでもないわ。大丈夫よ」
家族を守る為に、私は戦おう。
春、自衛隊体育大学に入学した。
入学式の新入生代表挨拶でヴァレリアン・キーロヴィチという名前が聞こえたときには耳を疑った。
(なんで、ヴァンがここに!?)
ヴァンは流暢な日本語を操り、挨拶を終えた。
入学式が終わると、私は真っ先にヴァンの所に駆け寄った。
「ヴァン、なんで……」
「君の話に興味を持ってね、魔法なしでどこまでいけるか、僕も試したい」
「……そう」
「桐ヶ谷!」
今年の女子を引率する先生に呼ばれた。
「はい! ……じゃあね、ヴァン」
今年は女の子がいなかったらしいので、引率されるのは私だけだ。
寮にやってきて案内されたのは一人部屋だった。魔法も部屋なら自由に使えそうだ。なんてラッキーなんだろう。
私は家族や友人、知人に手紙を書いた。そして、イベントリから梟のブランを取り出して、彼女に手紙を託して窓から外に放った。
イベントリは私の魔法だ。
あの青森の洋館の書庫でずっと本を読んでいて思いついたのだ。時空間魔法の応用で、思い浮かべたイベントリに入っているものをすぐに顕現させることができる。リストも表示できる優れものだ。
私は窓の外に顔を出した。春だが、夜だと少し肌寒い。
東京の空はあまり星が見えない。そのことを少し残念に思いながら、私は今後のことを思った。
今まで、剣道やランニングで身体を鍛えてはいたが、自衛隊の訓練は厳しいだろうということは容易に想像できる。魔法なしでどこまでいけるか試してみたい思いでここまで来たが、どこまでやれるか正直分からなかった。
「考えても仕方が無い、かあ……」
私は窓を閉めて、さっさと休んだ。