辺境の提督   作:ナタク

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辺境提督とひなせ丸

貴様!また無断で建造したな!

 

怒号を撒き散らす上官の言葉を右から左へ流し、作業に没頭する自分。

 

気にくわないなら、この場で切り捨てれば良い。

 

お前が付けている軍刀は飾りか?

 

そう感じ、上官にそのまま伝える。

 

更に頭にきた上官は、何もしないでその場を去って行く。

 

それを見た自分は、出来上がった軍艦に満足感を感じていた。

 

名前は「ひなせ丸」

 

俺がかつて改装を行った、空母ブラオメーアの設計図を基にした補給艦だが、ブラオメーアとは姉妹艦として建造した。

 

今はいないブラオメーアに、新しく生まれた妹を見せてやりたいと思うと、心が踊り始めてしょうがなかった。

ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ

 

ひなせ丸が生まれてからは、いつも一緒にいた。

 

ひなせ丸の甲板にて就寝、飯を食べて、ひなせ丸に、色々な話を聞かせたり、まるで我が子のように、または娘のように接していた。

 

他人からは狂っている、頭がおかしいと言われるが、誰が言おうが、俺はひなせ丸を可愛いがっていた。

 

早くブラオメーアと会わせたいと言う気持ちが高ぶっていたが、その願いが叶うことはなかった。

 

ブラオメーアは沈み、ひなせ丸も俺が共生軍から追い出された数日後に沈んだ。

 

自分が造り上げ、娘のように可愛いがっていたひなせ丸が沈んで、もう会えない。

 

そんな思いを深い意識に沈ませ、今まで生きていたが、

会えた!

 

俺が愛したひなせ丸に、俺に敵意と殺意を放ちながら、小さなナイフを手に持ち俺の前に立っているひなせ丸に!

 

「ひなせ丸!俺だ!お前を可愛いがっていた工廠のおっちゃんだ」

 

ひなせ丸「お前なんか知らない!こっちに来るな!」

 

両腕を広げて歩み寄ろうとした信夜だが、ナイフを向けて警戒心を露にするひなせ丸に、信夜は足を止める。

 

(艦娘になって、昔の記憶がないのか?!だったら)

 

持っていた軍刀をその場に捨てた信夜は、

 

「本当に覚えてないのか!?お前の甲板の上で飯を食べたことがある!」

 

ひなせ丸「知らないと言っているだろ!近付くな!」

 

ベタな展開的に、ひなせ丸との思い出を振り替えるように、次々に印象深い思い出を口に出す。

 

「お前の甲板の上でよだれを垂らしながら、寝ていたこともか!」

 

ひなせ丸「知らない!止めろ!」

 

するとひなせ丸は、頭を抑え苦しみだした。

 

「仲間と一緒に酒を飲んだくれて、泥酔した俺は甲板から落ちて、皆に笑われたこともあった!」

 

「俺はいつもお前の整備していた!いつか一緒に戦場に出て、お前の姉ちゃんである、ブラオメーアに会わせたかった!

 

ひなせ丸「お姉ちゃん!?私には姉はいない!私は独りだ!いつも独りだった!」

 

「本当に独りだったか!?お前は覚えている筈だ!お前を今でも愛している俺の名前を!」

 

ひなせ丸「知らない!!」

 

頬から流れ落ちる滴、涙に気づいたひなせ丸。

 

脳裏をよぎる懐かしい声、懐かしい場所、そして、何よりも自分を娘のように愛してくれた人の顔。

 

ひなせ丸「うるさい!私から離れろぉ!!!」

 

更に苦しみだした彼女に寄り添おうとした瞬間、激痛が神経全体に走った。

 

その理由に、ひなせ丸のナイフが信夜の腹に深く刺さっている。

 

そこから流れる赤い液体、その液体は少量であるが綺麗だったひなせ丸の手を汚してしまっていた。

 

信夜はそれでもひなせ丸に寄り添い、彼女を抱き締める。

 

「汚れちゃったな。····帰ろうぜひなせ丸。お前の居場所は······ここじゃない」

 

そうひなせ丸に言い聞かせ、ナイフを握ったままのひなせ丸の手からナイフを離し、ひなせ丸を少しだけ下がらせる。

 

そのナイフを力強く握りしめ、腹部から抜き出そうとする。

 

ナイフを少しずつ抜き出せば、じわじわと赤い液体がナイフ回りの服に滲みだして来る。

 

大きい痛みが神経に流れて来るが、気にせずナイフに力を込める。

 

だが、中々抜けない。

 

すると、ひなせ丸が信夜の手ごとナイフを握りしめ、ナイフを抜き出そうする。

 

止めさせようとしたが、赤い液体とは違う、涙を流しながら懸命に信夜を助けようとする。

 

それを見た信夜は残っている力を全部使い、ひなせと一緒に力を込めてナイフを抜く。

 

その直後、腹部からナイフは抜け落ちるが、信夜の腹部からは先程より流れ落ちる赤い液体が量を増す。

 

ひなせ丸は、応急措置をしようと液体が流れ落ちる穴に手を添えようとするが、突然信夜はひなせ丸を自分の背中に隠す。

 

その理由に、奥から傭兵を連れて面倒な奴が現れた。

 

「どうやら、お前が今までひなせ丸の面倒を見ててくれたようだな、英雄!」

 

英雄「そうだ!ひなせ丸と言う素材はなかなかお目にかかることはないからな!だから、立派な兵士に鍛えてから、俺の装備に加えてやろうと思ったのさ!」

 

「てめえ!まだそんなことをやっていたのか!!」

 

英雄「そう怒るな技術者。今すぐに貴様を殺してひなせ丸を頂きたいが、俺は今すこぶる機嫌が悪い!さっさとこの場から失せろ!貴様を殺すのは、次の機会だ!」

 

「そんなこと言われなくても、次に会った時は俺自身でケリを付けてやる!また会おう!」

 

そう言うと、信夜の回りから黒い煙が吹き出すと次の瞬間、突然の爆発により驚く傭兵達だが、爆発によって煙が無くなると、そこには誰も居なかった。

 

英雄「煙幕を用いた爆発にてひなせ丸と逃げたか。よしお前ら、破壊されたルトゥーリーバを回収作業を始めろ!」

 

傭兵達は居なくなり、携帯電話を取り出し、依頼主に電話を掛ける。

 

英雄「おう。元気そうだな。·····あんたの言った通りだった。奴は生きていたぜ、あんたから”撃たれた„にはピンピンしてたぜ。·····わかった、報酬は弾めよ」

 

依頼主にそう伝え、電話を切る。

 

英雄「楽しくなりそうだな!!」

 

三日月のような狂気な笑みをこぼす英雄は、子供のように純粋に楽しんでいた。

 

 

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