私は弱いから
誰よりも
強くならないと
「そっか……でも梨子ちゃん、どうするの?」
「辞めさせに来たわ。あなた一人でできることなんて」
「私は辞めないよ」
梨子の後ろから二人の影。果南と曜だった。曜は下を向いている。
「だったら、力づくで止めるよ」
光太郎も合流した。
「梨子ちゃん、1対4だなんてずるいよ」
「辞める気はないのね。千歌ちゃん」
「私はリーダーなの!だから!」
千歌はベルトをかざしスイッチを入れる。そして変身した。スイッチのライダー、仮面ライダーフォーゼ。
「誰よりも強くないといけないの!」
「何を言い出すかと思ったら……」
「ちょっと待って、みんな戦うつもりなの?」
曜は間に入る。
「曜、そういう話だったよね。千歌が聞き入れない場合は、力尽くで止めるって」
「だからって!」
曜は千歌の所に行く。
「ねえ!こんな事辞めてよ!」
「曜ちゃんはわかんないんだよ、こればっかりは!」
「そんな!話そうよ!話せばわかるよ!」
それを聞いて、フォーゼの中で何かが起こったのか曜の首を掴む。
「ちかちゃん・・・・・・」
暴走はしていない。
「曜ちゃん……あなたに、あなただけには、そんなこと!」
曜を突き放すと顔面にパンチを入れようとする。それをアンクは曜の横から押す形で回避させた。
「おい!曜!これ以上あいつを刺激するな!」
「アンク!離してよ!」
「曜、手出ししないで」
「果南ちゃんまで、何で!?」
その問いかけを無視して
「千歌、本気なんだね」
果南は問う。
「わかってる?今の千歌の状態で、私たちに勝てると思うの?」
「……」
「どっちにしても、曜をぶん殴ろうとしたのは、説教だよ!」
果南はメダルを入れてスキャンする。そして、メダルのライダー、オーズへと変身を遂げた。
「千歌、今のあなたにスイッチの力は使えない。それは、絆がないといけないんだよ」
「それは、果南ちゃんの認識だよね?」
千歌はスイッチを差し替えた。そしてそれをオンにすると、白から黄色のライダーとなる。
「ぐう……!」
「引く気はないんだね」
オーズは剣を構えフォーゼも剣を構える。
「……」
ガン!と剣が当たる音がした。それで周囲に風が吹く。つばぜり合いの最中にライダーが集まってきた。
「どいう状況ですか!?」
ダイヤが叫ぶ。
「これ、止めないとまずいわよ!ベルトさん!」
「……いや、マリー。これは止めなくていいと思う」
「何でよ!」
「ぶつかり合わないと理解できないこともあるんだよ」
フォーゼとオーズは第二撃を当てる。
「ねえ、千歌!そんなに曜がうらやましかったの?」
「……」
フォーゼにオーズが問う。
「曜だけじゃない!私や梨子!他のみんなも妬んでいたの!?」
「だあ!」
つばぜり合いをフォーゼが制する。剣に帯電させて追撃。オーズはそれを流した。再び競り合いとなる。
「果南ちゃんに何が!」
「今の千歌はわからないよ!だけど!友人を妬む気持ちなら!」
「でも果南ちゃんは!」
「誰でも!うらやましいことはあるでしょ!私だって、千歌を!」
「嘘だ!」
「この!わからず屋あああああ!」
叫びと轟音が響く。オーズは力を込めてなぎ払い、フォーゼを吹き飛ばした。トンネルの横壁にフォーゼがめり込む。
「うう……」
「もう終わり?」
「私はね、みんなのリーダーなの!」
フォーゼは立ち上がる。
「リーダーはね、ほのかさんみたいに強くないと、太陽みたいに輝いてないといけないんだよ」
「……」
「だから、私は、強くならないとダメなの!」
フォーゼはボタンを取り出し、それをベルトに挿した。ロケットの発射スイッチに似たボタンを彼女は押す。しかし、何も起こらない。何度かボタンを押すが、やはり反応しない。
「そんな!どうして?」
「言ったよね?今の千歌にはスイッチの力は使えない。今の、誰も頼ろうとしない千歌に、コズミックのスイッチは応えない!」
オーズは言う。
「だけど、他のなら!」
他のスイッチも試す。しかし、ベースから変化はない。
「……」
「千歌。言ったよね。自分の力を、自分を認めることから始めようって。あの時、初めてだったんだよ。この力を見て、怯えなかった子って。私たちがサポートするから。千歌は千歌のままでいてよ!」
「……ダメなんだよ。そんなきれい事で、善子ちゃんが……善子ちゃんの穴を埋めるなんてできないんだよ!」
「完全には塞げないかもしれない!だけど、みんなの力で」
「果南ちゃんにはわからないんだよ!」
フォーゼが叫ぶ。
「善子ちゃんの本気を見たことがないみんなはわからないんだよ!あんな力、あのままの私じゃ塞ぎきれないんだよ!」
「……だから!私『たち』で!」
「そんなの、きれい事だよ!結局は一人なんだよ!一人ひとりの力なんだよ!だから私からなるんだよ!あの太陽に!起動して!」
スイッチが反応した。白のライダーから青のライダーになる。しかし、その直後に胸から爆発した。その衝撃で変身が解ける。
「千歌ちゃん!」
「……そっか。もうダメなんだね」
「……嘘でしょ?絆を重視していた千歌ちゃんが、絆の力で変身するライダーになれないの……」
「……違う。これがあいつの!千歌の欲望!」
アンクは言う。その表情は凍り付いていた。それは恐怖ではなく驚き。これまでに彼女のそのような表情を見たことが無かったからだ。欲望に敏感なグリードでも、彼女の欲望は推し量ることはできなかった。ただ、この瞬間にアンクは確信した。
「欲望?欲望なんかに千歌ちゃんが負けるはずないよ!」
曜が言う。
「バカ言え!あいつはその欲望を長い間隠していたんだ!果南!そして曜!お前らのせいだ!」
「はあ!?」
曜は言う。
「運動神経抜群のお前らと一緒にいれば比較されるだろ!そして同じライダーの力があったら!」
「そりゃ、千歌は相対的に見て私や曜より劣るね」
オーズのその言葉に、感情はこもっていない。
「今までは曜がライダーになれなかったから均衡していた。だけど曜!お前がウィザードになったおかげで、その欲望は解放された!」
「そんな!」
「アンク、嫉妬も欲望なの?」
千歌が立ち上がり彼に聞く。
「立派な欲望だ」
「そっか……だから私も花丸ちゃんも変身できなかったんだね」
千歌は笑う。
「そうだよ。千歌は果南ちゃんや曜ちゃんに憧れていた。曜ちゃんなんか何でもできちゃうもの。嫉妬しない方が変だよ」
「……」
鞠莉は腕を組んでそれを聞いていた。千歌の目に光は宿っていない。
「でもね、求めて何が悪いの?強くなって何が悪いのさ!みんなと並びたいと思って何が悪いのさ!」
千歌は叫ぶ。
「……だからね、受けたんだよ」
「受けた?」
千歌は生身の状態で消えた。オーズに肉薄するとパンチをした。その一撃はオーズを吹き飛ばす。不意打ちとは言え千歌にここまでの怪力があると果南には思えなかった。オーズは体勢を直す。
「もう、手加減しないから!」
そう言うと、千歌は走りオーズの所に行く。オーズは生身の相手であるにも関わらず、武器を振るうが、千歌はそれを避ける。千歌の一撃が重い。剣をしまい、オーズも戦闘態勢を取る。しかし、その攻撃は千歌によって避けられる。
「オーズが生身のちかっちに押されている?」
「違うな。果南というのが悪い」
アンクの指摘通りだった。幼なじみの戦闘は見慣れているのだ。だから戦闘の癖もすでに見抜いている。だから彼女はどんどん避けているのだ。そしてもう一つ、果南は口ではああ言ったものの、その姿で突っ込んでくる彼女に本気で戦えない。本能的なストッパーがかかっている状態である。それは千歌も同じはずなのだが、彼女は本気で殺そうとしている。腕をつかみ、目を見ると、千歌は赤い目をしている。
「ぐ!」
「その目って・・・・・・!」
千歌は手を払ってオーズを蹴りで吹き飛ばす。その衝撃で果南は変身が戻った。千歌はバックステップで距離を取る。
「千歌ちゃん、ちょっとやり過ぎよ」
「正気に戻ってよ!」
「曜ちゃん、これが千歌の正気だよ」
「でも……」
「曜ちゃん、迷うならどいて。多分あの千歌ちゃん相当強い」
梨子がそう言うと曜はトンネルから出る。
「これはぶっ飛ばして止めるしかないわ」
「荒療治ですね。でも、果南さんを吹き飛ばしたリーダーにはお仕置きですわ」
ダイヤと鞠莉は変身した。
「お姉ちゃん!どんな状況?」
「千歌さんにお仕置きですわ!」
「ピギィ!」
「……どうして戦うの?」
「絆の力を見せるためよ」
梨子も変身する。その姿は侍。鎧を纏った武者。
「3対1なんて」
千歌が消える。ダブルはそれに反応しガードする。しかし、その上からでも彼女のパンチは強かった。ダブルが吹き飛ぶほどだ。
「ずるいよ」
二人に挟まれ、千歌は剣をかわす。身を翻すと二人にもパンチをした。それは二人の体を後ろに後退させた。
「なんてパンチ力!」
「こんなに……」
「私は強い・・・・・・良い機会だよ。それを証明してあげる」
千歌は腕を顔の前でクロスさせた。そして「変身」と叫ぶと一瞬で緑のライダーとなった。
彼女は急ぐ。
自分の関わった者が
暴走しかけていたことを
心配し
沼津へ向かい、着いたのは夜だった。