ラブライダー   作:ACHA

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これは大変なことになりそうね。

赤い毛をくるくる回しながら

ゆっくりと意志を固める。


獣と野獣と女王

「……あれがギルス」

 あれをライダーと形容していいのだろうか。緑色の、それは、限りなく生き物に近い。緑という色は、不完全さを示す。それは熟す前の果実。熟す前だからこそ、無限の可能性と戦力を持つ。

「アギトの別進化だったわね」

 アギトを見れば、このギルスがいかに不完全かがわかる。胸のアーマーのような装甲はない。ベルトも人工物とは思えない。まさに、アギトが黄金の果実だとしたら、このギルスはそれが熟す前に落ちてしまった果実だ。

「うがああああああああああああああああああ!!」

 咆哮が響くと、勝負は一瞬だった。三人の所に風が吹き荒れたかと思うと、大きなダメージを負う。

「何が……」

「単純に早く動いただけだよ」

 ギルスはそう言うと変身者たちを見下した。そしてまだ変身していない曜に目線を向ける。

「何しているの?」

「……」

「これだけ倒されても、曜ちゃんは変身しないの?」

「……あなたは誰なの?」

「私?私は高海千歌だよ?」

「違うよね……あなたは……」

「じゃあ、ギルスって言えばいいの?」

「違う、今の千歌ちゃんは違う!お願い!戻って!」

 曜は彼女の胸をがっとつかむ。ギルスはそれを簡単に振り払う。

「やめるずら」

 トンネルの向こう側から二人の少女が出てきた。ルビィと花丸だ。

「少なくとも、今の曜さんに、千歌さんは止められないずら」

「どうして!」

「曜さん、千歌さんにとって、あなたは太陽なんだよ。しかも強い、太陽なんだよ」

「強い光はやがて闇を生みます。もしアギトが正しい方向の太陽ならば、ギルスはその対となる存在です」

「そして、それは、紛れもなく千歌さん自身ずら」

 花丸が言う。

「これを千歌だって、花丸ちゃんは受け入れるの?」

 果南が立ち上がる。

「むしろ、何で受け入れないずら。人間には、光と闇があるずら。そして、ライダーになって最初に受け入れた人を何で、みんな受け入れないんずら」

「……」

「……ただ、みんなを傷つけたお仕置きは必要ずら!」

 花丸は眼魂を出す。それは強い光を放った。

「ありがとう、英霊さん、住職さん」

「お姉ちゃん、もう一度!」

「ルビィ、あなたが戦いなさい!」

「……うん。来て、ファング!」

 ルビィが叫ぶと恐竜のメモリが背後から来る。それをキャッチすると、ドライバーに挿す。獣の咆吼が聞こえる。

「変身!」

 

 二人のライダーが誕生した。ギルスはふうと息をつく。

「そう、影も合わせて人なんだよ。自分の黒い感情まで含めて!人なんだよ!」

「そうずら。でも、その欲望を仲間に向けていいわけないずら!」

「うん。ルビィもこのファングに時間がかかったの。でも大切なのはこの子を支配することじゃない、受け入れることだって。光も、闇も!それは千歌さんも!」

「ルビィ……」

「もうどうなっても知らないから!」

 白と黒の野獣、Wファングジョーカーは叫ぶと前に出る。

 

「ピギィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!」

「うがああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 二人の野獣は咆哮する。それは、トンネルの蛍光灯を破壊する。バチバチという音。野獣たちは動かない。その一つが完全に落ち、大きな音がした。

 

ガシャン!!

それがゴングだった。

 

 野獣は一気に近づき、戦闘を始める。ファングジョーカーは再び咆哮すると、華麗な足技で相手を翻弄し始める。足技をギルスはいなして、ギルスも咆哮をする。その動物が命を取り合う様は人の戦いではなかった。ギルスはしっかりとガードをして反撃をする。彼女は幼なじみ二人のように特出した特徴はない。だが、基本に忠実に戦闘を行っている。一方のルビィは、メモリの力で身体能力を上げているに過ぎない。地力の差で千歌はじりじりと追い詰めていく。

「ハハハ!ルビィちゃん!こんなに強かったんだね!」

 ギルスの声が響く。ルビィのスタイルはどこか、まるで誰かに似せているようだった。それを彼女たちはすぐに知る。ギルスはそれをためらいなく言う。

「まるで善子ちゃんみたい!だけど飛び道具はないんだね?でも、所詮はメモリの力でパワーを上げているだけ!」

 すると、ギルスへ顔面パンチが飛ぶ。それは左側から飛んできた。それがギルスに当たる。

「あら、パワーを上げているだけなら、これぐらい避けられますわよね?」

 見えない死角からの一撃にギルスは不意をつかれる。Wは二人で一人。その半身にはダイヤが宿る。

「ウィザードとは違いますから!」

 肩の刃を投げる。これを反応できずにギルスはガードをする。その怯んだ隙にゴーストが飛んだ。彼女は剣を持って斬ろうとするが、ギルスはそれをかわす。

「ずら!」

 ゴーストの峰打ちをギルスは止めて、ダメージを減らす。ギルスは攻撃のターゲットをゴーストに変えて、攻撃を開始する。

「夜に泣いてたのは誰かな?」

「!」

 ガンと剣を止めると

「花丸ちゃんも焦っていたくせに!」

「うるさいずらああああああ!」

 剣をぶんぶんと振り回す。しかしその大ぶりの剣は当たらない。ギルスは間合いをつめる。それを見てゴーストはその場でバク転し地面を削る。コンクリートを顔に当て一瞬ひるませる。ゴーストは着地をするとアイコンを変化させた。その変化の最中にファングジョーカーが再び距離を詰める。

「もう!」

 ギルスは消えた。しかし、ファングジョーカーの先読みで拳を喰らう。加えて蹴りを入れる。ゴーストのビリー・ザ・キッドの追加の銃撃も加えた。怯んだところにルビィはメモリをベルトに差し込む。『ファング!マキシマムドライブ!』とベルトが唸る。花丸も必殺技の準備を行う。銃撃と足の攻撃。それが重なり、ギルスを襲う。ギルスはそれを高速移動でかわした。二人の背後を取る。

「これで終わり!」

「甘いわね」

 ギルスに対して銃撃。ドライブが行った。そしてその怯んだ隙にブラックRXがギルスに向かう。ギルスは攻撃を防ぎ、攻めに転じた。

「これだけ言われても、まだ抵抗するのか!」

「私は、辞めないよ!例えあなたが凄く強くても!」

 RXは千歌の目が鈍く濁っているのを見た。赤黒い。ドライブの時の完全な黒とは違った。ギルスをはじき飛ばすと

「キングストーンフラッシュ!」

 ベルトから光を出す。そのまばゆい光はひるませるのに充分だった。その時に、ギルスの後ろに、何かがいるのをRXは発見した。それを伝えようとした瞬間、ギルスの怯みを確認した鎧武が突撃する。上からの一撃はギルスを一刀両断しようとしたが、その剣筋は止められる。トンネルに轟音が響き、蛍光灯が割れた。

「このわからず屋!」

「迷っている子なんかに負けないよ!」

「迷う?違うわね」

「え?」

「もっと広く視野は持つべきよ!」

 両側からダブルとゴーストが蹴りを入れようとする。ギルスはそれに気が付き、離れようとしたが足が動かない。鎧武の一撃で地面に足がのめり込み、動けなくなったのだ。鎧武はかろうじてはじき飛ばしたが、背後の二人は確実に間に合わない。するとその時、二人に衝撃が走った。銃弾によって吹き飛ばされたのだ。二人はギルスの正面まで飛ばされる。幸い、それはバランスを崩すためのもので、ダメージはさほどなかった。すぐに着地し振り返る。

 トンネルの入口から影が出る。それはコウモリの姿をしたライダーだった。銃を持ち、その銃口からは煙が出ている。このライダーが狙撃手であることは間違いない。

「急いでよかったわ。だけど、ここは私に免じてもらえないかしら」

 そう言って歩みを進める者。それは仮面ライダーキバだった。武器をハンマーに持ち替えて、ギルスの周囲を壊す。自由にした後は変身を解いた。それは赤髪の少女、西木野真姫だった。

 

 彼女はギルスの正面に立つ。

「真姫さん」

「ふん!」

 ドコっという大きな音が響く。ギルスは膝を地につけた。

「な、なんで……」

「眠っときなさい。その間に話をつけるわ」

 ギルスが倒れると変身が解除され、千歌になった。曜が駆け寄る。

「気を失っているだけよ、心配いらないわ」

「なんで!」

「あら、てっきりあなたには伝えられていると思っていたのだけれども」

 髪をいじりながらそう言う。

「何のこと?」

「見てもいないの?この子の力を」

 その瞬間、曜は無意識に彼女の胸ぐらを掴んでいた。

「何のこと?」

 それを二人のライダーは止める。

「はあ……はあ……」

「高速移動からの攻撃パターン、あれは絵理から教わっているはずよ」

「……はい?」

「ああ、どこかで見たことあると思ったら……」

 果南は言う。ダイヤとルビィは変身を解いていた。

「では、ギルスはマスクドライダーシステムを?」

「いいえ。ギルスになったら身体能力は大幅に上昇するわ。でも絵理のマスクドライダーシステムよりははるかに劣るはずよ」

「でも、あの動きってお姉ちゃん、ダブルだと認識できないから、ファングにしたんだよね?」

「ええ。あれは対応できませんでしたわ」

「いいえ。対応できたはずよ。『ギルスの状態で高速で動いた』だけですもの。クロックアップよりもたやすいわ」

「……随分と詳しいのですね」

 ダイヤは真姫を見る。真姫は相変わらず髪をぐるぐると巻いている。

「今、変身を解いていますが、ここでまたルビィが変身したら、どうなるかおわかりですね?」

「慌てないの。ね、梨子も」

 真姫は鎧武の剣を首筋に当てられている。

「この状態で言う台詞ではないですよね?」

「全く、争うつもりなんてないんだから」

「じゃあ、話してもらえるかしら?」

「まず剣をしまいなさい。それからよ」

 梨子が剣をしまう。

「で、私は拷問でもされるのかしら」

「話さなければ、考えますわ」

「……一つ言うとね、現実味がないかもしれないわよ」

「真姫ちゃんは、私たちから出る、この殺意がわからないかなあ」

 果南が言う。ベルトはメダルをセットし、いつでも変身できるように構えていた。

「わかったわ。鞠莉に渡す」

 紙束を鞠莉に渡した。ドイツ語で書かれている、カルテだ。鞠莉はそれをつぶさに見る。そして目つきが変わった。

「本当なの?これ?」

「間違いないわ」

「千歌を、千歌を改造したなんて!」

 鞠莉の一言に場が凍り付く。

「改造……?」

「違うわよ。『脳機能の制御を外す手術と身体の耐久度の向上手術』よ」

「えっと……どういうこと?」

「人間には、ついつい制御してしまう領域があるのよ。私達が通常で出せる力は20%。それが何で出せないかは脳がストッパーをかけているからなのよ。それをあの子は今、いつでも外せるってわけ。それだとダメだから同時に身体機能を頑丈にしたわ」

「それを世間では改造っていうのよ!」

「潜在的能力の解放よ。改造じゃないわ」

「あなた、千歌さんに何をしたのですか?」

「今、言ったじゃない」

「そうだよ、千歌ちゃんが、こんな事を望むわけがない!」

 曜が叫ぶ。そしてゆらりと立ちあがり変身する。

「あなたが、強引にやったんでしょ。許さないよ……」

「あの子の希望をかなえただけよ」

「そんなこと!」

 曜は真姫に近づこうとするが、足を掴まれた。千歌が抑えていた。

「千歌ちゃん!?」

「……ほら、こんな力無かったよね?」

「じゃ、じゃあ……」

「事実だよ。私から望んだの」

 すっと立ち上がる。先程のダメージは見事に回復している。

「ギルスになると治癒力も向上するのね」

「そうみたいです。じゃないと全力出せませんからね」

「もはや生物兵器ね。ライダーっていう括りじゃない気がするわ」

「……私自体が人間じゃないというか」

「あら?あなたは人間よ。ただ人より力が出せるだけよ。というか言っておきなさいよ」

「……」

「千歌」

 果南が近付く。

「説明してもらうよ。真姫ちゃんももう少しいいかな?」

 彼女はすでにいつでも変身できるように準備している果南を見てため息をつく。

「拒否しても帰す気ないでしょ」

「ではあなたは黒澤家で面倒を見ますわ。大体の拘束具は揃えていますので」

「ちょっと、拷問しなくても言うわよ。目的、それが半分だし」

「さて千歌さんは……」

「見たことが全部だよ?」

「……黒澤家で面倒を見ますわ。光太郎さん、本日は千歌さんの家じゃなく黒澤家にご招待致します」

「ああ……」

 一同は黒澤家に行く。

 

 




千歌……
俺がいなければ

お前はまた、闇の中だ。


*UAが1000を超えました。ありがとうございます。
*ルビィちゃんファングの咆哮はこれしか考えられなかった。後悔はしていない。
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