ラブライダー   作:ACHA

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千歌さんが何故リーダーか、ですか?

そうですね。今までの行動ならば、私が取り仕切った方が冷静な判断はできるかもしれませんわね。

でも、私にはできませんわ。

千歌さんには勝てませんもの。


4章 暗闇の少女達
比較対象


「全く、彼女は拘束する気なんてないでしょ」

 真姫は風呂からあがり光太郎にそう言う。

「この子たちは拘束している、なんて考えてないんじゃないか」

「あら、自由にさせているのは知っている仲のためですよ」

 ダイヤは二人の会話に入る。その隣には顔面が蒼白になった曜がいる。

「唯一の懸念は、光太郎さんが『男』にならないか、ということですが。まあ手を出したら犯罪ですし」

「……俺にとっては地獄かもね」

「千歌は?」

「千歌さんは果南さんの取調べを受けていますわ。で、私は真姫さんに」

「いいわよ。どこから話す?」

「待った。曜ちゃん、大丈夫?」

「……ごめんなさい。ちょっと無理……」

「……ダイヤちゃん。送り届けてもいいかい?」

「……どうせ気がついているのでしょ?監視の目があること」

「だから言っているんだ」

「わかりました。もう貴方にこそこそ嗅ぎまわることなどできないでしょう」

 缶を取り出し、ガシャンとつぶす。すると、小さい鷹となった。

「コウモリじゃないのか?」

「あの子に無理をさせ過ぎましたわ」

「わかった。よし、曜ちゃん、行こうか」

 光太郎は曜を連れて部屋を出る。

 

「それでは真姫さん、お話を」

「ええ。でも明日になったらみんなに説明するわよ?」

「こういうのは早いうちに、ですわ」

「まあいいわ。貴女がどう解釈するかは知らないわよ」

 真姫は語り始めた。

 それはちょうど善子が消えたという情報がミューズに伝わってからの話だ。ミューズでも対応を協議しなければならなかった。具体的な議題として「戦力をどのように補填するか」である。その際、鞠莉も共に同席していた。

「鞠莉さんが?」

「ええ。その時の説明は、曜を別のライダーとして『人工的に』目覚めさせる計画を進行している、ってことだったわ。そのライダー、というよりも本命はそのライダーの力を借りて変身する千歌が戦力の補填になるって話だったの」

「初耳ですね・・・・・・その、フォーゼに、ということですか」

「正直、眉つばものだったんだけど、曜がそれに変身する動画を撮っていたわ。千歌と同じギミックで変身するライダー。『メテオ』と言ったかしら」

「待って下さい。そうなると小原グループはアストロスイッチの開発に成功した、とでも?」

「いいえ。解析をした結果、『力を注入して』同様のものを生み出すことができる、と言っていたわ。これに関しては他のメンバーに聞いてもいいわよ」

「……そうですか」

 彼女は話を進める。その場では「目途が立っている」ので戦力としては問題がないだろうという結論になった。ただこれで生まれる新しい敵には注意が必要である、という結論に達した。そして真姫は自宅へと帰ると、千歌がいた。千歌はこう言った。

「力を、みんなを守れる力を。それが手に入るなら私は何者にでも!」

 必死に訴えかけられた。真姫は話を聞くために落ち着かせた。話を聞くと、電撃戦をしかけようと提案したがそれが却下されてしまったのだと彼女は聞いた。

「それは本当なの?」

「ええ。皆で止めましたわ。花丸さんはやる気でしたが。あの時は一手でも間違えれば私たちは分裂していたのです。だから冷静になるよう二人を諭しましたわ」

「ふーん。千歌はそれを自分が弱いからだと言っていたわ」

「弱い?」

「善子が提案すればみんな参加した、果南が言えばみんな参加した。でも弱い私が言ったからみんな参加しなかったんだと」

「そんなことを……」

「私も言ったのよ。だけど聞く耳を持たなかった」

「それで折れて改造手術をしたと?」

「……あーそれなんだけどね。あの場では本人がいるからああ言ったんだけど、私なにもしてないのよ」

「どういうことです?」

「一応ね、理論上は脳機能のストッパーを外すことで力が得られるのよ。そしてやろうと思えば私の病院でできる。でもそれは身体能力の向上じゃないのよ。セーブしている力を出せるようにする能力だから、訓練でどうにでもなるわ。もちろん手術でもできるけど、私が選んだ、いや選ぼうとしたのは前者よ。そちらの方がリスク少ないのよ」

「・・・・・・選ぼうとした、ということは改造をしようと」

「だからー、改造じゃないわよ。言うなれば催眠術よ。数回脳に力を発揮できる状態にすれば、脳は『ここまでは出していい』って勘違いするのよ。私はそれを狙ったの。契約書にもあるけど、月に一度は定期検診に来ることって書いてあるわ」

 真姫はあきれて説明していた。ダイヤはこの話では彼女が折れることはないと思い

「・・・・・・では一度それは置いておきますわ」

 そう伝え、次の疑問を伝える。

「しかし、それならば千歌さんの身体能力は何を持って?」

「『ギルス』ね。緑色のライダー」

「ギルスですか・・・・・・そもそもあれは何なのですか?門矢さんでしたっけ?あの方いわくアギト、つまり花陽さんの亜種とのことですが」

「私も彼に聞いたわ。ただ彼も名前だけでどんな能力があるかは全然わからないんだって。私が把握しているのは身体能力の向上と再生能力、そしてこれは変身者自身に影響を及ぼすわ」

「変身者自身に?ということは、外付けの我々よりも、あなた達に近い変身システムということですか?」

「そうね。体内に変身するためのシステムがあると考えていいわ」

「・・・・・・あれは新しいライダーということは」

「新しい敵が生まれている、はずよ」

 真姫はそう言い切った。

ダイヤはうーんと考える。

「どうしても解せないのですが・・・・・・」

「改造のこと?言っておくけど、確かに催眠術でやろうとしたし、彼女には偽物の書類を書かせた。でも、それをやろうとして深層心理に触れた瞬間にギルスになったのよ」

「いえ。ライダーを顕現させるには強い意志が必要だったはずです。誰かを守りたい、誰かを救いたい・・・・・・だからこそライダーの力は心が安定しないと暴走してしまいます。話を聞く限り、ギルスはそうではないのでは?」

「それはね、あなた達に限ったことよ」

「どういうことです?」

「ダイヤの理屈はこうよね?誰かを守りたい、誰かを救いたい、その意志があるからこそ花丸の英霊や、あんたのガイアメモリ、千歌のアストロスイッチは力を貸してくれるんだと」

「ええ・・・・・・」

「でもそれは変身を外部の機械やシステムに頼っているからよ。体内に変身システムがあるほのか、海未、花陽は違うわ」

「確かにそのお三方は変身ベルトを持った姿を見たことがありませんね」

「・・・・・・ちょっと簡単にだけど説明するわ」

 真姫は紙とペンを用意する。

「ライダーの変身システムは大きく分けて3つあるの。1つは今言った『体内型の変身システム』。これは海未、花陽、ほのか、ことり。この4人よ。次に『外部のシステムを使用する変身システム』。これは3人以外のライダーと思ってくれればいいわ。そして『生物の力を借りて変身する』システム。一応これはにこちゃんや私だけど、大きい括りとしては外部のシステムを借りる、っていうのと同じね。もちろん例外はあるわね。希なんか体内に変身システムはあるけど、外部の力を借りないといけないし、鞠莉のタイプトライドロンやルビィちゃん、……ウィザードなんかもこの括りの例外にはなるわね」

「で、千歌さんのギルスは『体内型』に入るのですね」

「ええ。で、この海未、花陽、ほのかの3人なんだけどライダーになった時に『強烈な怒り』で覚醒しているらしいのよ」

「強烈な怒り?」

「ほのかは敵への怒りね。怒りと言っているけど、その時は明確な殺意を持ったらしいわ。海未はそのほのかに追いつけない自分自身への怒り、花陽は何だったかしら・・・・・・確か好きなもの侮辱されてその怒りだったはずだけど」

「どちらにしろ、マイナス方向の感情ですわね……では千歌さんも?」

「怒りや悲しみ、ね。だって幼い頃からあんな化け物二人と一緒なんでしょ?」

 ダイヤは納得できてしまった。千歌、曜、果南。曜も果南も運動神経抜群であり、まさしく化け物であった、と聞いている。それは今の状況を見ても同じである。曜はウィザードになる前は、単身でも通常の戦闘員に負けず劣らずの実力者であり、果南はパワーだけでいえばメンバー随一のパワーを誇る。特に相手をホールドしてから様々な技へ繋げられるのも、彼女の特徴である。もちろん千歌は千歌で決して運動神経が悪いわけではないし、戦闘のセンスがないわけでもない。彼女はオールラウンダー。ゲームの説明であれば『オールマイティで使いやすいキャラクター』と称される主人公のポジションだ。身体の能力だけで見れば、比べる対象が化け物過ぎるため、相対的に「普通」もしくは「劣等」となってしまう。それでもメンバーは彼女以外リーダーではあり得ないと確信しているのだ。




千歌ちゃんが何故リーダーか?

彼女はまっさきに私たちを受け入れてくれたんです。場所をくれたんです。

え?それだけかって?

それが、どれだけ大切なことか、あなたにはわからないの?


※今回の活動報告はがっつり書く予定なのでのぞいて頂ければ、と思います。

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