そんなの言い出しっぺだからだよ。
その人間には最後まで行う必要があるんだよ。
そしてついて行く人間には、それを見極めないといけないんだよ。
最後、命を張った時に、その人間についていけるか。
少なくとも、おらは、千歌ちゃんはそれに値する人だと思っているずら。
浜辺に二人が座っている。聞こえるのは波の音だ。
「この時代は、いつでも売っているのか。便利だな」
光太郎は近くのコンビニで飲み物を買っていた。曜は光太郎の飲み物を見て
「それ、お酒じゃない?」
「ノンアルコールビール、というものらしい。口つける前に飲むか?」
「……いい、いらない」
曜は渡された飲み物を飲む。
「曜ちゃん、聞かせてくれるかい?」
「……うん」
曜は深呼吸する。
「私ね、千歌ちゃんがあんなことを思うなんて、思ってなかったんだ。いつもにこにこしていてね、それで私たちがライダーになった時は『一緒に戦おう』って一番に声をかけてくれているの。私にとって千歌ちゃんは希望の象徴なんだよ!」
「……」
「でも、あんな闇を抱えていたなんて。確かに私にそんな感情は無い、なんて言えないし、でも千歌ちゃんを、千歌ちゃんの全てを私は知っていると思って今まで接してきたの!あんな千歌ちゃん、初めてだよ」
「……千歌ちゃんは君にだけは言われたくないって言っていたよね?」
「わからない、です。嫌われたのかな……」
「そっか」
光太郎はうずくまる曜に何も言わずにただ海を眺めていた。その時、砂のザッ、ザッという音が聞こえた。その方向を見ると、見覚えのある顔がいた。顔というより敵だ。
「お前は!」
「ぐう……ようやく出会った知り合いがお前とは!」
忘れもしない黄金の仮面。クライシス帝国の幹部、ジャーク将軍だ。光太郎は戦闘態勢を取るが、曜は驚く。
「お前はこの俺が倒したはずだ!」
「確かにお前に倒された!しかし、余はこの世界に飛ばされたのだ!聞けば、クライシス帝国も!ゴルゴムも!あまつさえ南光太郎!お前の名前でさえこの世界では聞かなかった!それどころか我をライダーとあがめるやつもいる始末……!」
「……もしかして黄金のライダー?」
「ラ、ライダー!?」
光太郎は素っ頓狂な声を上げてしまう。
「うん。たぶんだけど……」
「ならん!余はクライシス帝国将軍ジャークだ!……そんなことより、お主!」
「あ、はい」
「お主、国木田花丸とよく遊んでいるな!あいつはどこにいるのだ?」
「え……」
「今度は何をたくらんでいる!ジャーク将軍!」
怒気をはらんだ声で光太郎が言う。
「この端末が通じないのだ!下宿先の主人の娘を心配するのは当然だろ!」
携帯電話を見せる。
「……はあ?」
光太郎は頭がついていかなかった。曜はくいくいと光太郎の袖を引っ張る。
「あのね、黄金のライダーってスーパーとかでよく見かける人多いんだって。ただそこで悪い人がいたら倒しちゃうんだ」
「……スーパー?」
「でね、その功績を讃えて警察が表彰しようとしているんだけど、一切の素上がわからないんだって!」
「……世界って超えたら人って変わるんだな……」
「何を言う。余は一刻も早く怪魔界を復権したいが、何もない状態では無理だ。だから帰れる機会を伺い……」
「やることが小悪党の討伐か?」
「……南光太郎。一つ言うぞ」
「何だ?」
「この世界には善はない。人も温かくない。だからこそ温かい人に恩を返さなければいけないのだ」
光太郎は爆笑した。この空気が一気に和む。
「お前、この場で倒してやろうか……あ、その前にどうだ?わからぬか?」
「花丸ちゃんなら問題ないと思いますよ、多分、色々あって気が付かないだけだと思いますので」
「うーむ、年はもいかぬ子ども故に夜の外出はあまりさせたくないのだが……ルビィの家か」
「あ、はい……あのジャーク将軍、でしたっけ?もしかして何か花丸ちゃんに言いました?」
「……何か、とは?」
少し警戒をしているようだった。
「ジャーク将軍。この子もライダーだ。そんなに気負う必要はない」
「……ああ。ではもしかして、ヨハネの跡を継いだのは君か?」
「あ、はい」
「ふーむ。お主はお主で何か問題があるな」
曜はビクっとなる。見ただけで、表情だけで、何かを悟る。これは良い上司の鉄則である。光太郎は不思議と見抜けることに対して納得できた。クライシスの4人の幹部はいずれも優秀であったが、非常に個性が強かった。仮面ライダーブラックRXという共通の敵がいるから団結していたものの、バラバラに動くものの、それでも彼らはこの男を慕っていた。この将軍は非常に優秀な男であることを光太郎は知っている。だからこそ、この将軍がクライシス帝国の皇帝に裏切られた時「お前の不幸は邪悪な将軍に仕えたことだ!」と言い放った。逆に言えば、我々の仲間であれば、どれだけ心強い存在であり、敵とすれば厄介きわまりない男だったか。光太郎にとっては最大の賛辞のつもりであり、そんな相手を全力で迎えることも、彼なりの敬意であった。
「……」
ジャーク将軍は光太郎を見てにやける。
「さては、南光太郎!お前、駆け落ちしようとしているな!」
「え、ちょ、ちょっと!」
曜は赤面する。
「待て、どうしたらそんな結論になる?」
「男女が深夜に気付かれずにやることと言ったらそれしかなかろう……でも南光太郎よ」
「……何だ?」
「18歳以下に手を出すのは犯罪だ。辞めておけ」
「……変身!」
光太郎はRXに変身する。ジャーク将軍は慌てる。
「待て!余が悪かった!少し仕返しをしようとしただけだ!」
「……次は無いぞ」
光太郎は変身を解く。
「あの、違うのだ。重い空気が誰かのお陰で嫌いになったのだ」
「……倒されて性格も激変したのか……」
「お主は余の仕事モードの時しか見ておらぬからな。オフの時はこうよ」
「……ダメだ……」
光太郎はその変わりぶりに苦笑する。
「では、その仕事とするかの。花丸になんて言ったか、か」
先程とはうって変わり、真剣な声となる。
「変身できないと嘆いておったな。そこにルビィもいた」
「……」
「必死で英霊にお願いしていた。『善子の替わりを私が務めたい。だから力を貸してほしい』と」
「花丸ちゃんが善子ちゃんの替わりを?」
「……そのうちルビィが止めに入った。『もういいよ』と」
「……」
「私は花丸に問うたのだ。『そもそも、何故戦うのだ』と。『一番の理由は誰かの仇を取ることか、誰かの替わりになることか?』と」
「そうしたら?」
「『守りたい』、そう言っていた。『ならそのためならば、英霊は力を貸すだろう』と伝えただけだ」
「守る……私は、千歌ちゃんを守るために……」
曜は頭をかきむしった。
「違う!並びたくて!だからライダーになりたかった!その存在が!千歌ちゃんを苦しめているの?心の闇なの?」
「……曜ちゃん、君は千歌ちゃんの闇なんかじゃ!」
ジャーク将軍は彼を制した。
「悪の心は悪にしかわからん」
そう言うと静かに語りかける。
「そう。人間は愚かなる生き物よ。自分のことしか考えず、一方しか見ず、二つの面があることを知らぬ。我々の悪はそこをつけ入り、征服していくのだ」
「なら、存在が悪なら!私は!」
曜が涙を流す。
「……同時に人間は強い。その二面性を自由にコントロールできるのだ」
ちらっと光太郎を見る。将軍から見れば、この男はまさに最強の存在であった。どんな作戦でも、優秀な部下の作戦でも、この男のみで全て壊れる。最初は味方に引き入れようとし、彼の力を研究した。当然過去も調べるわけだが、その過去に触れた時、感涙したことを鮮明に思い出す。そのような仕打ちを受けてもなお、ゴルゴムという大きな組織に挑み続けたことは、一人の軍人、一人の男として、尊敬した。だからこそ、宇宙に彼を放った時は一抹の寂しさを覚え、復活したと聞いた時は軍人としてテンションが非常に上がった。それを隠すは黄金の仮面。それ以来この男にとどめを刺されるまで、この男との勝負に誇りをかけていた。自分の計略全てを持って倒せなかったこの男を、裏切られた時に労いの言葉をかけて自分を倒したこの戦士を、そして戦えたことを誇りに思い、倒れたことは言うまでもない。目線を少女に戻し
「人間の世界に悪人などいないのだよ。我々のような外から侵略しようとする者でない限り。では、何故悪がいるか。それは立場以外何ものでもない!」
「立場……?」
「そう!貴様は貴様で譲れないものがあるように、その千歌も譲れないものがあるのだよ!それが立場だ!貴様が悪?笑わせてくれる。悪は人のために涙などせんわ!」
「でも、千歌ちゃんはずっと私達のことを妬んでいたんだよ!」
「だから何だ?妬み、憧れぐらいお主にもあるだろう?それを上手く隠している。違うか?」
「……千歌ちゃんは特別なの……私の大好きな親友なの!一番知っている友達なの!それなのに!ずっといるのに!私は何も……」
「今、知った」
「……え?」
「今、知った。そう思えばいい。そしてそれでもなお気に食わなければ、全力でぶつかればいい」
「……そっか。私は……きっと……でも……」
「あとはお主次第。さあ、明けぬ夜はない」
日がほんのりと登り始めていた。
「ありがとございます!ジャーク将……!」
ジャーク将軍の背後に何かがいた。将軍はそれをパンと弾く。
「人が折角、説法で終わろうとしているのに」
雷撃が背中から走る。敵は吹き飛んだ。ジャーク将軍は振り向くと、そこには大量の戦闘員がいた。
「品が無い悪だ」
「突っ込んでいいのか?」
「この気品あふれる仮面のどこに突っ込むところがある?」
「……オフにしている場合か?」
「言動だけよ」
二人は戦闘態勢を取る。曜も準備をした。
「ダメだよ」
三人の上から声がする。堤防の上に千歌がいた。
「千歌ちゃん」
「これはね、私の獲物なの……」
「み、みんなは?」
「抑えるからね、倒しちゃったよ」
「な……」
「光太郎、ここを頼む」
「大きい屋敷がある。そこだ」
ジャーク将軍は砂浜を走る。
「まあ、いいよ。私の目的はこっちだから。一人残らず……倒してあげるね」
何で彼女がリーダーかって?
そうね、私が入った時も同じ疑問を持ったけど
彼女はね、本当はいろいろできるのよ。
でも幼なじみがあんな化け物みたいな二人でしょ?
私からすれば、彼女もかなり化け物なんだけど。
だからね、いろいろできるくせに、できないこととか悩んでいることをわかってくれるのよ。
だから彼女はみんなの心の支えなんだよ。
もうそれだけで「普通怪獣」なんかじゃないのに、ね。
※ジャーク将軍!お前の不幸は性格を湾曲させて理解した作者の作品に出たことだ!(ジャーク将軍ファンの皆様、ごめんなさい・・・・・・この世界軸ではこんな性格になります・・・・・・)