彼女のことをわかっていなかったのかもしれない。
それは親友として情けない。
だから、彼女は私が止める。
喧嘩
黒澤家にジャーク将軍は到着した。しかし、そこに人気はない。くまなく調べても、人一人いないのだ。そのうち銀のカーテンが現れ、少女たちをどさどさと置いていく。
「全く、使えない奴らだ」
「お主はディケイドか?」
「ほう、俺も有名になったもんだ、ジャーク将軍。で、何の用だ?」
「……まずは敵として見るのは辞めてくれ」
ジャーク将軍は彼女たちを見る。そして手をかざす。すると先程まで倒れていた者がすくっと立ちあがった。
「一体、何が……」
「それはこちらのセリフだ」
その場にいた2名以外は戦闘態勢を取る。
「ああ!ジャークさん!」
花丸が言う。
「ジャーク……さん?」
「助けてくれたの?」
「ルビィ、花丸さん、その人は?」
「ジャークさんずら!うちのお寺で下宿しているずら!」
「つまり、お坊さん?」
「そう見えるのだったらこの世界のお坊さんはさぞ裕福なのだろうな」
「えっと、お仕事してもらうかわりに下宿しているずら。給仕さん、かな」
「花丸!」
ジャーク将軍の一言に一同びくっとなる。
「まずは主人に連絡を入れなさい」
「あ、忘れていたずら……」
「他の子も、だ」
「あ、はい」
全員が連絡し終えた上でジャークは何が起きたかを尋ねる。
「あれは、悪夢だったわ……」
「『黒い目の』ギルスだなんて、しかもあの子、暴走気味だったよ」
「その話、本当なの?」
銀のカーテンからもう一人少女が出て来る。オレンジの髪の少女は表情を強張らせながら言った。高坂ほのかである。
「ほのかさん」
「千歌ちゃんの話は大体聞いている。果南ちゃん、それ本当の話?」
「ええ」
「だったら止めないと!」
「待て」
士が制止する。
「ここにいる全員で倒そうとして倒せなかった相手だ」
「む?全員で挑んだのか?」
「止めようとしました……でも」
「……みんなは止めようとしたんだよね?」
6人はうなずく。
「士さんは?」
「あいつから巻くために奮闘していた。じゃあほのか。俺はこっちでやることがある」
「夕方ぐらいにね」
「はいよ」
士は去っていく。
「……私は黒い目のギルスを敵とみなすよ」
「待って下さい!まずその状態は何なの?」
「ブラックアイ。理性を保てなくなったものの末路だよ」
ほのかは凍り付いた表情を直さない。
「……あなたが、究極の戦士になろうとして失敗した姿ですね。ついでに鞠莉さん、つい最近あなたもなりましたわ」
彼女はぐっと唇をかむ。そして怒りを放つように叫ぶ。
「そうだよ。だから決めたんだよ。あの姿になる時は、みんなを守る時って!殺す気でやれば!」
「……ほのかさん、私たちがそれを認めるとでも?」
他のメンバーは当然止めに入る。
「認めてもらえなくていいよ。私一人で!」
その言葉を聞き、ジャーク将軍は息を吐く。花丸もそうだし、先ほどの少女もそうなのだが、悪役でもないのに、何故そのような役を引き受けているのかと。
「ほのかとやら。余と戦おう」
「そんな時間は!」
ジャーク将軍は回り込んで先制攻撃をする。ほのかは吹き飛んだ。
「浜辺に敵がいる!今、光太郎と千歌、それと銀髪の少女が交戦中だ!」
「わかりました!行きますわよ!」
6人は走り去る。
「……何?」
「言ったであろう。そのような怪物と相手するに余に勝てないようでは、お主も勝てぬ!」
「違うよ。彼女たちも本気でかかれば!」
「余は悪だが、仲間に本気になるのは、不可能だ」
「だからこそ私が!」
「彼女らはそれを望んでいない」
「あの子を放っておけば、他の子は!」
「……」
その表情で将軍は察する。彼女は優しすぎる。だからこそ、尚更、悪を統括してきた者として引くわけにはいかない。それをこの少女に背負わすには、あまりにも若い。
「どく気はないんだね」
ほのかは変身をする。古代の超戦士クウガ。
「諦めろ、先の一発を喰らうようでは余に勝てない」
「……みんなを救うんだよ!超変身!」
赤の戦士の状態から黒くなる。黒いクウガ。しかし、それは究極の闇の姿ではない。不完全な、優しさを持つ。究極の力『アルティメット』。それに限りなく近いが、限りなく遠い。黒いクウガはジャークにとびかかるが、彼はそれを簡単に止める。
「先ほどよりパワーは上がっているが」
クウガを庭に投げる。確かに、パワーはある。しかし、パワーだけで、戦闘は勝利できるかと言えば、そうではない。その力をいなす技。将軍たる彼には当然のように備わっていた。
「それでは勝てんぞ」
クウガに言い放つ。
「あなたは一体……」
浜辺に行ったメンバーは壮絶な光景を目の当たりにしていた。周囲が炎の海と化していたのである。
「炎?どういうこと?」
そこには黒い目のギルスがいた。
「進化したの?」
敵はいない。既にギルスが蹴散らした後だった。ギルスはゆっくりと後ろを向く。
「次は曜ちゃんと光太郎さんの番だね」
「千歌ちゃん」
変身しようとする光太郎を曜は制止した。曜の腰にベルトが出現した。
「私に本気で勝てると思っているの?曜ちゃん?」
仮面越しに彼女が暗く笑うのが見える。
「……千歌ちゃんこそ、私の本気に勝てると思うの?」
曜の雰囲気が一変する。目が光る。指輪をはめて腰に魔力を与える。
「全力で叩きつぶす!」
『シャバドゥビ・ダッチ・ヘンシーン!フレイム!』
曜の右側から赤い紋章が体を通る。そこにいたのは指輪の魔法使いだった。
「千歌ちゃん、私があなたの希望だよ」
「そう。でも曜ちゃんはね、まぶし過ぎたんだよ」
曜は黙る。そこに光太郎が
「彼女は操られている」
と、そう言い、どこかに去って行く。
「わかってますよ」
そう彼女はつぶやくと、敵をゆっくりと見つめる。誰かに操られているかもしれない。でも彼女はそれに勝つ。指輪の魔法使いはそう確信していた。だからこそ、彼女と本気でぶつかる必要性がある。これは戦いではない。
「だからって、ひがむの?なんでできるようにしないのさ!」
「何でもできるあなたに言われたくないよ!」
「違うね、私と差があるのは、普通ってことをいいわけにして、やって来なかった千歌ちゃんの責任だよ!」
「努力して、何でもできる天才じゃないんだよ!」
「努力すらしない子に言われたくないね!」
「うるさい!もうここで、終わりなんだよ!」
「悪いけど、そんな子に、負けないよ!」
「わかった口を聞くなあああああああああ!!!!!!」
ギルスは咆哮しながら飛びかかる。
「この怠け者おおおおおおおおおお!!!」
叫びながらウィザードも飛びかかり、最初の一撃を当てる。
彼女らにとっては、命をかけた喧嘩だ。
彼女に勝つには俺を利用するしかない。
この体で勝つんだ。
それがお前の欲望だ!