私はこの子の友達として、生まれた。本来はあるべき存在ではない私は、この時空を漂う少女に「ヨハネ」と名付けられた。そしてヨハネはこの少女、善子と一緒に生きてきた。この子にとって私は善子よりも大人になっているらしい。私はこの子の願いであり、この子。だから、この子の願いは叶えてあげるの。私は堕天使ヨハネ。
あら、もう消えるのね。いいえ、間違えた。少し魔力を使いすぎたみたい。だから私はいつものようにこの子の中で眠るわ。
「――」
何か言っている。私は・・・・・・またね。あなたならきっとできるわ。16年間一緒にいたのだもの。あなたが絶望しないことなんてわかりきっている。
俺の名は南光太郎。クライシスを倒してから世界を回っている。困っている人がいないかどうかを見て、必要なら手助けをしている。
先輩ライダーたちと協力して世界征服を企む組織を何回か潰したことは潰した。でも、人の闇や世界をよくない方向にもたらそうという輩はたくさんいる。そんな中で本郷さんからこんな話を受けた。
「時空の歪み、ですか・・・・・・」
「ああ。まずはこれを聞くんだ」
聞こえたのは少女の声。
「助けて!みんなを救って!」
悲痛な叫び声。
「これをたどる富士山の麓の霊樹から聞こえてきたんだ」
「霊樹・・・・・・異次元の世界に繋がっているという・・・・・・?」
「うむ。我々は原因を調査せねばならない。そこで光太郎君。君のRXの力ならばどんな状況でも大丈夫のはずだ。放っておいたらこちらの世界にも影響が出るかもしれない」
「影響?」
「門矢君から聞いたが、世界に異物が入ると排除する働きが活発になるようだ。私はそう見ている。おそらく繋がっている世界の問題を解決すれば良い。そして何が起こるかわからない状態では君が適任だ」
「わかりました」
「頼んだぞ」
俺はバイクでその富士山の麓までいく。樹海の奥にその木は立っていた。そしてその木の前には明らかに異質な空間に繋がるものがあった。この先には森しかない。なのにその銀色の幕の先には街が見えている。その街の者は攻撃してくることはなさそうだ。むしろ、この異質な光景に気がついていないようだ。俺はすぐにRXへと変身し、バイオライダーに変身する。慎重になった方が良い。そう告げられたからだ。その空間の中に入る。あっさりと入ることはできた。しかし、銀色のカーテンは消えた。元の世界に戻ることはできなさそうだ。
無害であることを確認し変身を解除した。海の綺麗な街だ。しかし、所々、人を見ると何やら手元に小さな端末のような、機械に触っている。下を見ながら器用に歩けるものだ、などと関心していると
「あの」
みかん色の髪の女の子に話かけられた。大学生ぐらいだろうか。いや、大学生は制服など着ないか。少し大人びたように感じる。
「どうしました?」
「いえ、めずらしい人だなって」
「めずらしい?」
「なんか、こう、昔チック!みたいな……」
ああ、洋服や髪型のことかと察した。どうやら、ここは俺が思っている以上に未来らしい。
「今、10年前ぐらいのファッションが人気なんだよ」
「そうなんですか?」
見た目こそ大人のように見えるが、このような見え透いた嘘に騙されるあたり、本質は変わっていないのかもしれない。彼女と一緒にいた銀色の髪の子が
「いや、お兄さん、それもっと昔じゃない?」
「そうかな?」
「うーん80年代!って気がするから、30年前ぐらいじゃないかな……」
ということは、ここは2010年代の世界なのか。格別、異世界に来たので驚きはしない。
「それより、人をじーっと眺めていましたよね?」
物珍しかった、なんて言えない。とりあえずこの子たちと話を合わせるか。願わくば、この時代と世界について聞きたいものだ。
「いやー、よく端末を見ながら歩けるなあ、なんて思ってね」
「端末?ああ、スマホのこと?」
「そう言うのかい?前の職業柄、そういうのが自然でね」
「前の職業?」
「……まあ、それより、ここはどこだい?気分のままに流れついたから、忘れてしまったよ」
「えーっと、旅人さんなんですか?」
「ま、そんな感じ」
間違ってはいない。
「……」
「ここは内浦っていう街ですよ。きっと沼津って所を通ったと思います」
「そうだったかな。自由気ままに旅をしてるからね」
「そうですか」
銀色の髪の子はやけに冷たい。俺は「もう行こうかな」と言い、その場から立ち去ろうとした。
「ああ、待って下さい」
銀色の髪の子は俺を止めると、いきなり殴りかかってきた。咄嗟のことだったが彼女の攻撃をかわし戦闘態勢を取る。
「嘘、曜ちゃんの攻撃を見きったの?」
「どういうつもりかな?」
「それはこっちのセリフ!」
全く状況が掴めない。攻撃自体は女の子にしては速いが、一撃が重い。重く感じさせているのだろうか。的確に同じ場所を狙っている。
「早くなりなよ、ライダーに!」
「何!?」
「ならないのなら私から……」
「お待ちなさい」
そこに入る黒髪の女性。
「曜さん、千歌さん緊急事態ですわ」
「……わかった!」
「ふん!」
3人は去っていく。彼女の緊急事態とは何なのか。
「アクロバッター!」
俺は愛車の名前を呼ぶとそいつはすぐに来た。それにまたがり、彼女たちを追う。しばらくすると海辺でライダーたちと戦闘員が戦っているのを目にする。見たこともないライダーだ。
「これは一体……」
それにしても敵の数が多い。8人のライダーが総出で対処しきれない。その様子を見ていると俺の背後にも戦闘員が表れていた。その気配に気が付き楽にその戦闘員を海岸へ落とす。するとメダルのようなものをばらまいた。こちらも数が多い。すると背後から光弾が飛んできた。その光の弾は無数の蛇のように曲がりながら相手に当たる。それを放ったのは一人のライダーだった。
「あなた、どうしてここに!?」
「知り合い、お姉ちゃん?」
一人のライダーから二人の声がする。
「とにかく逃げなさい!」
「待て!この戦い、勝ち目はあるのか?」
「……勝ち目のあるなしではありません。勝つしかないのです!」
ライダーは再び飛び戦地に戻る。
その状況を見極めた。一人のライダーが残ることに決めたようだ。しかし、そのライダーは程なくして変身が解けてしまう。
「……」
この世界に干渉すべきかどうか、迷っていた。すると
「ねえ!」
さっきのみかん色の子だ。
「あなたライダーなの!?だったら助けてよ!私の友達なの!もう失いたくないの!」
「……」
馬鹿なことを考えていた。ここが世界かどうかなんて関係ないじゃないか。その時に、俺はもう次の愛車を呼んでいた。
「ライドロン!」
光の速さで来た車に乗り込み、そして攻撃を受けようとする少女の前で車を止める。攻撃を一度受け、彼女をライドロンに乗せた。ライドロンは彼女の仲間の車の横につける。
「おい!お前は何だ?何ものだ?どうしてあいつを助けた?」
漂っている赤い手に
「困っているものを助けるのに理由はいるかい?」
そう答えた。
「ち……おい、お前時間稼ぎはできるか?」
「……」
「俺達が退避する間に時間を稼いでくれ!」
「時間を稼ぐ必要もないさ」
「ああ?」
ライダーである我々は人間の自由と平和を守る。それは仲間を守ることでもある。
「君達は俺が守るからな」
敵と対峙した。手を上に構えそれを視線の先に持ってくる。その右手を半回転させると手を大きく振り回し、そして叫ぶ。
「変身!」
黒いボディに真っ赤な目。
「俺は太陽の子!仮面ライダーブラックRX!この俺がいる限り!悪を栄えさせたりはしない!」
そう、どんな世界であろうが目の前の悪は、俺がいる限り叩き潰す。たとえどんな世界だろうが。きっとこの子たちは、あの子の仲間だ。