自分だけの力が偽りと知った。
自分だけの力に適していると思っていたのに。
結局は、違った。
でも、だからと言って
私が、ウィザードにならない理由にはならない。
唯一の幸運は
その適合者が近くにいて
「戦闘の天才」なんて言われていることかな。
「……どういうことずら?」
花丸が突き刺すような瞳で曜を見る。彼女はその気迫に押されながらも、話を続けた。
「私ね、病院に入院していたことがあったの。小さいときに。骨折だったかな?その時にね、ものすごい病気と闘っている女の子に出会ったの。それが善子ちゃんだよ」
「本人から聞いたことありますわ。何でもその病気のせいで、ルビィや花丸さん達と一緒の学校に進学できなかったそうです」
ダイヤはそう言った。彼女が住んでいた地域は内浦に近かったため、彼女らと同じ学校に行くはずだったが、病気のために沼津の方に引っ越したという話を彼女は聞いたことがある。
「病名ってわかる?」
「さあ……そこまでは……てっきり今まではヨハネさん関連で入院していたと思いましたが、骨折した曜さんに会う機会なんて無さそうですわ」
ダイヤは遠くを見つめる。
「私も難病としか聞かされていなかったの。でも、何とか彼女を助けたいと思って魔力のほぼ全てをあげたの」
「……待って、曜ちゃん。確か骨折って私達が幼稚園ぐらいの時だよね?その時、ドラゴンはいたの?」
「うん」
「ドラゴン?」
光太郎は声を上げる。
「ウィザードの力の源ですわ。簡単に言えば、光太郎さんのキングストーンですわね。ジャークさんから聞きましたわ」
「ダイヤ、キングストーンって?」
果南の質問に、今の話を聞いていなかったのかとあきれつつ彼女は言った。
「ウィザードのドラゴンと同じですわ。話を聞く限り、アギトのような無限の進化を秘めているようですが……」
「え?ということはRXってまだ進化できるの!?」
ルビィが驚く。
「……俺はキングストーンが俺の源ってぐらいしかわからないんだ。おそらくジャーク将軍が知っている……はずだ」
「ジャークさんが?」
「あいつは俺の敵だったクライシス帝国、その幹部だった男だ」
その発言に一番驚いたのは花丸だ。
「そうなんですか?」
そう聞くと光太郎は続けた。
「すっかりとその牙は落ちたみたいだけどね、黄金のライダーとか言われている限り……彼は俺の能力を徹底的に調べたんだ。そして一度不覚を取って捕らわれた」
と光太郎は答えた。それでも、その発言を聞いたダイヤは納得がいかない。
「RXの力を持ってもですか?」
彼女はそう聞くと
「その時はまだRXじゃなかったんだ。ブラックというライダーだった。ただ捉われた時に変身ベルトもやられ、宇宙に放り出されたんだ。あとは、キングストーンのお陰でRXになったんだ」
彼は答えた。
「何だろう、その間がすごい気になるんですが……」
「その時不思議なことが起こった、ということでしょう。話を戻しますわよ。ウィザードはその力、ドラゴンを制することによって能力を発揮するのですが……それが曜さんの中にいたということは……」
「私が本来顕現するライダー、だったみたい」
「は?」
花丸はさらに敵意を向けた視線を曜に送る。その視線に気が付きながらも、曜は続ける。
「ドラゴンから聞いたの。そして善子ちゃんは魔力の生成が不完全だったみたい」
「不完全?」
「出す技術は私よりも優れているらしいんだけど、生成は強引に行っていたみたいなの。だから無理が生じた。インフィニティになったら彼女たちで魔力を生成するのは不可能だったみたい。そしてそれを彼女たちは知っていた、というよりドラゴンが話したみたいなの」
「それはドラゴンが全て食いつくすってイメージなのかい?」
「えっと、ドラゴンは体内で消費した分の魔力を食べるんだけど、インフィニティは膨大な量を消費するから、善子ちゃんの中での生産が追い付かなかったって感じ」
「それは例えば、感覚としてわかるものなのですか?」
「うん、多分彼女も感じていたと思うよ」
「ごめん、曜!ちょっと待って!」
果南は考える。
「直感なんだけど、曜の話って変じゃない?なんか変なんだけど……アンクー!」
アンクは彼女を鼻で笑い、
「無い頭使おうとするからだ。おい、曜。お前は善子に魔力を分け与えた、と言ったよな?」
「うん」
「なら、ドラゴンはお前の中にいたはずだ。なのに何故、ウィザードが善子に顕現した?」
「ああ。私、ドラゴンごとあげたみたいなの」
「それでドラゴンが住み着いたのか?では今、お前の中にいるドラゴンは何だ?飢えて善子から移住してきたのか?」
アンクのたたみかける質問に曜は困惑しながら
「え?えーっと……うん。どうやら私と一緒に成長してきたみたい。そのあげたドラゴンは……消滅しちゃったみたい。でも、兄弟のような感じだから、わかるみたい」
アンクは呆れた顔をして
「……果南、こいつは曜もわかってないみたいだ」
そう発言した。
「ベルトさーん」
「OK!では仮に元々曜にいたドラゴンをA、今曜にいるドラゴンをBとしよう!そしてAのドラゴンは曜によって善子の体内に移った。その際にそのAのドラゴンは保険をかけたのさ!自分の魔力を極限まで小さくしたもの、それを体内に残した!そしてBは曜と一緒に成長。Aは善子と共にウィザードとして活躍していた……そして魔力を全て使いはたして、善子にいたドラゴンAは消滅。この世界にはBのドラゴンのみ残り、そこでウィザードを継いだ、ということで良いのではないかな?」
「……うん、だいたい、いいって」
「だが、ドラゴンが消滅したと言っても、残りの足跡はある程度たどれるようだね。だから曜はドラゴンに言われた通りに『善子は生きている』と言ったのさ」
「……えっと、インフィニティになった時点で、AとBのドラゴンは記憶が共有できているみたい」
彼女は自分の中にいるドラゴンと確認しながら発言する。
「……そのまま伝えるね。彼女の病気は「ゲーム病」。それの治療をしなければいけなかった。そして他の世界があることを知って、彼女はその世界に行った。そこにはライダーがいて、戻ってくる予定……?」
「なんですの、その話」
「ドラゴンはその発見の過程を知っているか?」
アンクが問う。曜は話を聞きながら
「えっと……ヨハネの牢獄に閉じ込められていた時に発見した?そのやり取りは見ていない。だが彼女は生きている」
この発言を聞いて幼馴染み二人が発言する。
「……曜ちゃん、もしかして」
「あんまりドラゴンの話を聞かないで生きている、なんて言ったんでしょ?」
「うぐ」
図星のようだ。
「だって!こんな話とは思わなかったんだよ!でもドラゴンが絶対に生きているって!」
「思ったんだが、そのドラゴンと話は?」
「できませんわ。我々には雄たけびをあげているようにしか聞こえません。それができるのはウィザードのみです」
「……光太郎。君はどう思う?」
ベルトは彼に話をふる。
「……まずは今の話と現在の善子ちゃんの状況をまとめてみないか?」
「今の話を信じるの?」
「それを含めて、整理が必要だ」
光太郎はホワイトボードにマジックで2つの線を引き3つに分けた。それぞれ、『事実』『行動』『未確定』と書き、これに今の話を照らし合わせようとした。
事実
・善子と曜は一緒の病院に入院し出会っている。
・善子はウィザードとしての能力を開花させていた。
・善子は姿を消した。
・曜はウィザードの能力を継承した。
・曜はインフィニティとなった。
行動
・曜は善子に魔力のほとんどを分け与え、ドラゴンごと移動させた。
・善子はウィザードとなり敵を倒した。
・善子は姿を消した。
・曜がウィザードとしての能力を継承し、敵を倒した。
・曜がインフィニティとなり記憶を思い出した。
未確定
・ドラゴンを移動させた際に曜へ保険をかけた。
・曜が本来先にウィザードとなるはずだった
・善子が姿を消した理由は異世界で治療、ライダーを集めるため。病名はゲーム病
・異世界を発見した過程をドラゴンは知らない。
・善子のドラゴンと曜のドラゴンが記憶を共有している。
「……さて」
一通り書き終わったものを見ると
「ドラゴンの話が入ると筋自体は通っている」
「綺麗なほどにね。ただ裏を取らない限り、ダメよ」
「だから、まず直近の問題から解決していこう」
光太郎はそう言った。それにダイヤはすぐに反応して尋ねる。
「ええ。ドラゴンさん、曜さんはインフィニティスタイルによって消えないのですね?」
「……消えないって」
ここにいる全員がほっと胸をなでおろす。
「それだけ確認できれば良いとしましょう。あとのことは、確認できませんもの」
「曜、一ついい?」
ここまで沈黙を貫いた鞠莉が問いかける。
「インフィニティになった時って、過去や未来も見通せるのよね?」
「うん、一種の未来視に近い状態なのかな」
「・・・・・・わかったわ」
その疑問の真意がわからずに、部室の部屋の誰もが「?」を浮かべる。鞠莉はその様子を見て
「いや、善子もその過去を見たってことでしょ?でも、そのままインフィニティとして戦ったのはすごい精神力だな、って思っただけよ」
そう言った。彼女たちは、彼女が不器用であることを知っている。だからこそああいう去り方しかできなかったのだと、今になって思う。本当に不器用な堕天使だと、彼女たちは思った。誰も口にはしない。しばらくの沈黙の後、梨子はホワイトボードを見ながら、ある案を思いつく。
『私は不幸だ。
自分だけの力が偽りと知った。
自分だけの力に適していると思っていたのに。
結局は、違った。
でも、だからと言って
私が、ウィザードにならない理由にはならない。
唯一の幸運は
その適合者が近くにいて
「戦闘の天才」なんて言われていることかな。』
その手記をダイヤ姉はそっと閉じた。そして、視界が霞んでいた。きっと彼女は後悔したのだ。その状態で頼ってしまっていた自分たちのこと。そして許せなかったのだ。目の前で彼女が消えたことに、何もできなかった自分と気がつけなかった自分に、腹が立ったのだ。