「吹雪ちゃん、司令官さんってどんな人なの?」
吹雪は少し上を向きながら考える。
「そうですね・・・・・・一言で言えば、天才ですよ」
「頭がいいの?」
「そっちじゃなくて、状況を作り出すのがうまいんです。だって現に」
二人は食堂を見る。既にこの場にいる者は仲良くなっていた。
「この状況、考えられると思いますか?」
「うーん、でもこの場に鞠莉ちゃんやアンク、果南ちゃんがいたら、変わっていたかも・・・・・・」
千歌の顔が凍り付く。吹雪はにこりと笑い
「ね、天才ですよね?}
そう言った。
ほぼ同じ時間に、3人はこの組織のリーダーを待っていた。そしてドアのノブが動くのと共に、座っていた3人は立ち上がる。
「ああ、お疲れ様だね、ライダー諸氏」
会議室に男性が入る。年齢は光太郎ぐらいだろう。人を統べる者としてはとにかく若い。3名は軍服を初めて見る。彼らは迷彩の柄のようなものを想定していたが、その男が着ていたのは、白いスーツ姿の男だった。その胸には13個の勲章。歴戦の猛者を物語るが、それにしてはやはり若い。
「私が提督の代英帝だ」
「黒澤ダイヤと申します」
「桜内梨子です」
「南光太郎だ。君は俺と同じぐらいか?」
「はは、そりゃ情報もほしがるよねー。まあ、見た目から言えばそこまで変わらないだろうね。でも、私は年齢を知らなくてね-」
「知らない?」
「戦争孤児ってやつさ」
「戦争・・・・・・孤児?」
帝はまあまあと言いながら、彼らを椅子に座らせる。戸惑いながら3人は席に座った。
「さて、どこから言おうか」
ふてぶてしく足を組む。
「提督。私に説明させてくれないか?そのために私にしたんだろ?」
「任せた」
すっと立つ女性は大柄で美しいよりかは格好が良いという印象であった。
「私は第十鎮守府、艦隊戦術指揮長の長門だ」
「えーっと・・・・・・」
「平たく言えば提督の側近だ」
「長門と言えば・・・・・・戦艦ですか?」
「戦艦?」
「第2次世界大戦で活躍した、戦艦の名前です。戦術を学ぶ時にちらっと」
「ほう。ダイヤはある程度の知識を持っている者と見た。では、君らの所に行った子は神通、川内、五月雨というが、この子たちにも共通点があるんだ」
「・・・・・・川の名前に雨の名前ですが・・・・・・いや、お待ち下さい。神通は確か武勲艦だったはずです。ということは残りの二つも」
「ああ、戦艦の名前だ」
「偶然かい?」
光太郎は発言する。ダイヤは一切、彼とは目をあわせずに、ため息交じりで
「さすがにこんな偶然は起きませんわよ。この施設が関係しているとしか・・・・・・」
そう発言した。ダイヤとしては、何故この男が時々、どうしようもない検討外れのことを言っているのか、理解に苦しむ場面であった。
「さて、もう正解を言うが、今から言うことは我々目線の真実だ」
「どうぞ」
「私もそうだが、我々は艦娘と呼ばれる生命体だ。艦娘は在りし日の戦船の魂が宿った姿だ」
「何を言っているんですか?」
思わず梨子が言った。長門はふふっと笑い
「まあそうなるな。だが君たちは私たちの能力の一端を聞に触れた、という報告が上がっている」
まるでこの会話を想定していたかのような受け答えをした。長門の体験の意味が3人にはわかる。あの果南の関節技をふりほどいた少女や、川内、神通という鎧武と同じレベルで戦った少女たちだ。
「ああ・・・・・・」
「ちなみに、抑え付けられた子は五月雨というが、『強すぎて人間性を感じなかった』と報告しているぞ」
二人は苦笑いをした。ダイヤは顔が一瞬だけ引きつる。
「で、だ。少なくともここでは『人間ではないもの』と理解してもらいたい。まあ、それ以上からは哲学のような話になるのでな、状況が整理できたら提督にでも聞いてみると良い」
「何時間でも話すよ」
「長門さん、少しいいですか?」
梨子が言う。
「何だ?」
「この説明って誰かにしましたか?随分と手慣れているような感じがするのですけど?まるで自分たちの存在は最初から理解されないものって思っているみたいで」
「ああ、ちょっとその話は後ほどだ」
「簡単に言えば、私たちはこの世界でいう君達、仮面ライダーみたいなものなのだよ」
代英が口を挟む。
「畏怖や忌むべきもの、もちろん彼女らはそれだけじゃないが、そういった目で見る者も多い」
「あら、随分とお詳しいのね」
「なーに、君の父親のお陰だよ、ダイヤさん」
「お父様ですか?」
「聞けば、ここらへんの網本なんだろ?いの一番にここに来て、事情を説明したんだ。そこでライダーのことを知ったんだよ」
帝は話す。黒澤家は漁師を取り仕切る網元の家系である。ダイヤの父親になってから穏便にはなったものの、以前は黒澤家に刃向かう者は海での仕事ができない、とまで言われていたほどだ。それほどの権力を黒澤家は有している。
「……そうでしたか」
ダイヤは複雑な顔をしていた。胸に手を当てる。
「そして、協力できることを我が鎮守府でも行え、と」
「……」
その表情は曇っている。
「えっと、どこまで説明したかな?」
帝は話題をそらす。彼女の情報はそこまで上がっていないが、本能として避ける選択をしていた。
「まだ艦娘という生物についてだけだ。我々の世界についてはまだ、だ」
長門が言う。世界という単語に同じ異世界からの来訪者が言う。
「もしかして、君たちも?」
「我々の海は赤い海の世界から来た。これは比喩とかではなく、このような青い海を見たことがないのだ」
「原因は何ですの?」
「深海棲艦という敵群だ。我々はこれを滅っするために生み出されたのだ」
「……まあ、こちらの世界で何と言うかはわからんが、我々は『赤い霧』と呼んでいる。メカニズムも何もかもが不明なのだが、人間を死においやるものだ」
「毒の霧、ということですか?」
「そうとは言い難い。我々にとっては有害極まりないが……漁場としては良いのだよ。ちゃんとそれらを滅せば問題はないと報告が上がっている。我々の任務はその漁場を適正に保つことなんだ」
「お待ち下さい」
「ああ、もちろん奴らは有害だ。だから国の上や過激な奴らなんかは、滅亡させようと躍起なんだ。だけど我が鎮守府はそうではない」
帝は笑いながら答える。ダイヤは質問を続ける。
「……とにかく、そういう組織というのはわかりましたが、ここにはどのような目的で?」
「我々の調査の1つに、『並行世界での兵器の研究』があるんだ。要は逆輸入してとっちめようって算段だね」
「ちょっと待て。それって、君の方針と逆じゃないのか?」
「……ああ、勘違いしているようだね。僕は『有益なものは利用する』主義でね、根は軍人なのさ。メリットがあるうちは残しておくんだ」
ぐっと拳に力が入っているのを光太郎は見逃さなかった。
「なるほど、複雑なのだな」
「ミスター光太郎、聡明で助かる」
拳がほどけた。
「話を続けよう。僕の鎮守府はそれの研究を主にしているんだ。そして今回はこの世界ってわけさ」
「研究っていうことは、確実に世界に往来する術を?」
「我々は持っている。さっき梨子ちゃんが『慣れてないか?』って質問の回答は、実際慣れているんだ。まさにこの鎮守府自体が通りすがり、って感じだね」
ダイヤはその言葉に聞き覚えを感じた。しかしそれよりも彼女は気になることがあった。
「それは、狙ってできますか?」
「狙って、というのは?」
「例えば、この世界から、あなたたちの知る世界や元の世界に行き、そしてここに戻るというものです」
「それは、時間軸もぴったり合わせるということか?」
「はい」
「提督、どうだろうか?」
「『狙った世界に行く』こと、それは可能だ。ただ時間軸を合わせることは困難だな。おおよその時間しかできない。例えば、『誰かが生きているから、この年に行く』なんて芸当は無理だ」
ダイヤは息をつく。この男は我々の情報を知っているのではないか。その疑問が彼女の中で芽を出す。