「・・・・・・熱い!」
バースは叫び、ドリルを放棄した。オーズはそれを見ながら剣で攻撃する。後ろに引こうと、飛行形態になろうとしたが、それも翼が展開しない。最悪なのは、これでセルメダルを二つ使ったことだ。
「夕張!あとではっ倒す!」
陽炎はそう決意した。
「さて、ここからは情報交換と行こうか」
帝は話を始める。
「情報?」
「君達の敵についてだ。バックアップをしたいのだよ」
「……報酬は?」
芽がつぼみとなったダイヤは警戒心強く確かめる。帝は少し微笑み、
「勝手にデータは取らせてもらう、ぐらいかな。君らが特別何かをする、なんてことは考えなくていい。それがミスター黒澤とミスター小原からの条件だ」
そう伝えた。ダイヤは考え込む。それはあまりにも、鎮守府側にメリットがなさ過ぎる。契約として、破綻しているのだ。そして、信用していいものかもわからない。めずらしい長考に、梨子も不安そうに見つめる。
「信じてもらえないのかい?」
「ええ……正直なところ、信用していいのかどうか。というよりメリットがあなた方になさ過ぎて、怪しすぎます」
帝はふむと、納得し、まっすぐと3人を見つめる。
「別にそんな心配しなくていい。全面的な協力を得られなければ、僕たちはこそこそ君たちをかぎ回る。君たちには干渉しない」
データを取るのだけが目的。でもそのデータはどこに行くのか。それをこの男は言っていない。敵だとしたらどうする。そんな疑問がダイヤの中に浮かぶ。他の人間は敵であるという警戒心。それがダイヤの判断を鈍らせている。きっと親友ならば、この契約に乗ったはずだ。でも、この実力をしれない男は、何が目的かがわからない。帝は椅子に深く座り、ため息をついた。
「ならば、奥の手を出そう、と言っても別にゆするようなつもりはないよ」
「て、提督。本気でやるのか?」
長門の声色は上づっていた。その声に梨子は違和感を覚える。
「嫌われたら勝手にデータを回収するだけだ。と、言ってもミスター光太郎はこっちに来てくれないか?」
「あ、ああ」
光太郎が帝の隣に座ると、長門が書類をダイヤと梨子に渡した。それを見て二人は赤面する。
「な、なんで!」
「嘘よね!?」
帝はにこにこと笑い
「言っておくが、我々にはこうしたデータ収集の能力と解析の能力があるのだよ」
「こ、光太郎さんは絶対に見ないで下さい!」
「あ、ああ。わかった」
梨子の気迫に光太郎は肯定するしかなかった。
「ちちち、ちなみに代英提督はこの資料を……?」
普段はクールなダイヤが目に見えて動揺している。顔も紅潮し、怒りをはらんだ言い方で述べる。長門は
「それに関しては心配するな。その命を下したのは確かに提督だが、その項目については黒塗りで見せている。さて、というわけで二択だ。我々の支援を受けてデータを取らせてもらうか、我々が隠れて君達のデータを取るか」
長門がそう言う。ダイヤは主題を思い出し、ふうと息を整えた。
「な、何が書かれていたんだ?」
「ミスター光太郎、女性の秘密を知ろうとするのはよくないよ?君のキングストーンも女性にだけは弱いのでは?」
「俺のことも知っているのか?」
「それぐらいのことは、我々もすぐに調べられるということさ。おそらくその石と、おそらく他にエネルギーの源があるのだろう。そこを同時に攻撃しなければまともにダメージを与えられないのではないかな?こちらは推察だが、ね」
「……それで脅しているのかい?」
光太郎の眼光が鋭く光る。RXの唯一の弱点はそれである。
「まさか。そんな奇跡的な瞬間があったらおがんでみたいよ」
光太郎はその発言に黙る。太陽の力を借りて、無限の強さとも言える能力を持つRXだが、その弱点を晒す場面が一つだけある。それがリボルケインである。あの光のスティックはキングストーンの塊である。故にそれを出している状態で腹に攻撃されると、相応のダメージをRXといえども受ける、ということを彼は感覚で理解している。だからこそ、それを抜く時は「必ず相手を仕留められる瞬間」なのである。代英はそこまで理解していないことがわかり、安堵するが、この男の解析能力は的確であることに驚きも隠せない。帝は言葉を続ける。
「それにそれを知っていても君に勝てなかった者もいるらしいじゃないか。これは弱点がどうこうではなく、RXというライダーが『凄まじき戦士』ということさ」
その言葉にダイヤがぴくっと反応する。ダイヤの感じていたものがわかった。この男は既に、ライダー全員を、しかも最近入った二人まで調べている。それは確信に変わる。
「ちなみに、この情報、どれだけのうちに?」
「1週間程度だ」
「ふう」
大きく息を吐く。そしてもう一度、その資料に目を通す。そこには日々のルーティーンやメンバーにすら明かしたことのない秘密などが正確に記載されていた。そしてもう一度考えをまとめる。この情報解析力は使える。そう判断すると
「では、私の見解を言いますわ。貴方がたの真意はとにかく、優秀な諜報員がいることは事実のようですね」
自然と賛辞の言葉が出た。
「おほめにあずかり光栄だ」
「ですので、『金銭のやりとりが双方で発生しない』『必要以上にプライベートを探らない』限りにおいて、協力できるかと思います」
ダイヤはそう言う。彼女は彼が譲歩案を提示することを確信していた。帝は考え一つの手を打つ。
「前者については問題ないが、後者については約束しかねる。ってのは、君達と単純に仲良くなりたいという善意で接する子に、俺は非情にはなれないのでね」
言葉選びは非情に慎重だ。ダイヤも慎重にその譲歩案を受け止める。
「……でしたら、『こうした交渉の席にその情報を用いて有利にしようとしない』にしておきますか」
「ダ、ダイヤさん!それ、最初から破られているじゃん!」
「いいえ。彼は私達の動揺を誘っていましたが……これは有利にしようとは思っていなかったかと思うのです。この情報があれば、我々から金品を奪うこともできたでしょうし、何やらその反応を見て楽しそうにしていました。思うに自分たちはこれだけ調べられるという力を提示したかっただけかと思うのです」
その発言に帝は笑う。意図を見透かされたことに対する敬意とでも言いたいのだろう。
「でも、その情報がなかったら……!」
「いえ、この男は最終的にそうなるように仕向けますわ」
ダイヤはにこりとほほ笑む。
「では、敵についての情報、ですわね」
「頼む」
「その、詳細はわからない、というのはわかりません。それだけ最初に断っておきます。こちらの情報では敵の場所や規模なども一切わかりませんわ」
「構わない。そちらは俺たちがやろう」
帝は言った。
「では、この地方にいる敵は少なくとも3種類いますわ。メモリの力で変身するド―パント、メダルの力で変身するグリード、そしてスイッチの力のゾディアーツですわ」
「ほう、それは君らライダーの力ではないのか?」
「同じ技術で変身している、ということですわ。それ故、私達は心を制御しなければ飲み込まれますの。それは『変身拒否』という形にも現れますわ」
帝は資料をめくり確認する。そこは、彼らでもわからなかった事項だ。起きたこと自体は観測されているが、メカニズム自体の解明までは至っていない。軽くメモをして、続けるようにうながす。
「敵に関しては一般の人でいいそうです。そしてライダー討伐部隊がどこかで募集されているらしいですわ。ただどこで、はわからずしまいですの」
「よし、我々はその周囲から崩していくか。その3種には何か特徴みたいなものはないのかい?」
「特徴、というより個々によって違いますから、種類よりもその能力を見極めることの方が重要です。一応、力の源が欲望というグリードが厄介ですね」
「他は?」
「あとは、クロックアップというシステムを使うワームがいますわ。単純に高速で動くというわけではなく、時間ごと遅らせるので、こちらが高速で動けば同等になるというわけではありませんし、もしかしたら貴方たちは見えないかもしれません」
「ほう、我々の力を見ても、ということか?」
明らかにむすっとした声で長門は言う。
「いえ。通常の高速の敵であれば、あなたがたは捉えられるかもしれませんが、クロックアップというシステムは・・・・・・簡単に言ってしまえば、ライダーの目からは高速で移動しているように捉えることができるのです。他の方はわけもわからずに攻撃されたと思うに違いありません」
詳細を述べても仕方がないと考えたダイヤはこの程度の説明に留めておこうと思っていた。
「確か目についても報告があったな。謎の粒子がある、という報告だ」
ダイヤはその発言に驚き
「どんな機械でデータ収拾しているんですか・・・・・・?」
と尋ねてしまった。
「うちの工廠は優秀でね、お金さえかければあらゆるものができると意気込んでいるんだよ。その粒子の発見もその一つさ」
帝は嬉しそうに話す。よほど信頼しているのであろうということが3人に伝わる。
「では隠す必要もないですね。正確には『タキオン粒子』というものです。これが無ければ視認できません。光太郎さんが反応できた、ということは、これはライダーの目なら見えるということかと」
「俺はそんな粒子のことは聞いたことがないが視認はできた。先ほどの敵の名前も初めて聞く限り、俺たちの世界には存在しない」
「いいや、ミスター光太郎。タキオン粒子自体は一般的な物質さ。そいつは認識できないぐらい速く動いているらしいんだが、おそらく君の世界にもあったはずだ」
帝はそう言う。その後、「やってしまった」と頭をかき
「話を戻そう。つまり、そのワームの高速化状態は艦娘に捉えられるかは不明ということだな」
「あくまで視認できないだけですわ。能力的な差があれば倒すことが可能かと」
「そういえば、曜ちゃんはG1の状態で倒していたわよね?」
「G1?」
帝が聞く。
「曜さんは、ご存じだと思いますが、生身の状態で戦っていました。装備は短銃と短剣。そしてアーマーです。といっても曜さんはごてごてするのが嫌なので、最低限の装備で臨んでいました。私たちの呼び方でフルアーマーをG3、そこから少し兵器を落としたものをG2、最低限の装備をG1と呼称していたのですが、G1では観測することが不可能のはずなんです。でも彼女はそれを倒してしまった。だから能力差があれば倒せるはずですわ」
「だとよ。まずは、そのワームとやらに挨拶するか、長門?」
「ああ、出たら倒させてもらおう」
彼女は拳をガン、と合わせた。
「そういえば、目の関連でもう一つ、君らの目が黒くなるって状態も観測されているな」
「そちらは、先ほど言った心を呑まれた時に発症しますね。ブラックアイ、と呼んでいます。暴走状態ですが、それになれるのは限られています」
「と、言うと?」
「これは真姫さんの分野になりますから、詳細は彼女に聞いてほしいのですが、私の理解で良いならお伝えしますわ」
「どうぞ」
「では、ライダーの変身には大きくわけて二つの変身方法があります。簡単に言えば、ベルトが現れるのか、ベルトを巻くのか。前者は体内型、後者は外付けとなります。ブラックアイになるのは基本的には前者ですが、後者は変身後に強烈な怒りを持つとそうなります。ですが、大抵飲み込まれる前に異常を察知して『力を貸さなくなる』ことが多いです」
「では、ドライブの件はどう説明するんだ?」
ダイヤは考える。そこに梨子が割って入り
「恐らく、なんですが、急激な怒りって一瞬で臨界点まで到達しますよね。彼女は元々、戦闘に感情を持ち込むんです。それで最初の一発目はベルトさんが反応できないくらいになった、と思います」
「ふむ・・・・・・そして彼女は2日程度でそれを克服する、か」
手を組み考えながら、もの音がする外を彼は見つめた。