ウィザード
指輪の魔法使い。変身者は津島善子。
自分の能力に誇りと自信、興味を持っていたため、全ての能力を解放することに躊躇はなかった。
「じゃあ、私が話します」
青髪の海未が立つ。全員が彼女ならば、と納得し、説明を委ねた。
「では、事実を述べます。あちら側にはもう一人津島善子という子がいました。彼女は仮面ライダーウィザードとして戦っていました。そしてこの18人の中でも最強の実力を誇っていたのです」
「指輪の魔法使いだろ?カブトに勝てると思えないんだが?」
「確かに単純なスペックならカブトが勝つでしょう。しかし、彼女は心からウィザードであることに誇りを持ち、研究をし、100%の力を発揮していました。正直、このようなタイプはいないのです」
「それは、ライダーの力を忌むべきものとしてみんな捉えているからなのかい?」
「はい。忌むべきものでした。ですが、彼女はそれを受け入れていたのです。彼女と、あとこちらはほのか、あちらは千歌のおかげで私たちもこの力を受け入れられるようになりました」
「……その言い方だと、二人は完全に力を理解できていないのか?」
「……語弊がありましたね。ここにいる全員、自分のライダーの力を理解できていないのです」
「根拠はある?」
「……そう感じる、感じている、ではダメですか?」
初対面の光太郎はわからないが、少しでも彼女と接した士は、漠然とした彼女の発言に戸惑いの表情を浮かべている。
「データとして、なら説明させてもらうわよ」
鞠莉が説明者として名乗りをあげる。
「私がこんなんだから、小原グループと西木野総合病院、私と真姫の家なんだけど、ライダーの力について研究しているのよ。そしてわかったことは皆『なれていないフォーム』が何個か存在しているってこと。それは技術的なものが原因っていう人もいれば、能力として未成熟な子もいる。だけど善子に関してはそれが無かったのよ」
「理由は?」
海未はちらっと真姫を見る。そして語り手は彼女に移る。髪をくるくると巻きながら
「……善子はイマジナリ―フレンド、ヨハネを宿していたの」
「イマジナリ―フレンド?」
「子どもの時に、一人遊びをする時、見えない相手と遊ぶのよ。それがイマジナリ―フレンド。本来は成長と共にその子は消えるんだけど、彼女は今になっても消えなかったわ。それがヨハネ、なんだけど彼女の場合はそれが人格として表れていたのよ。二重人格と言うよりも、もう一人の津島善子、と言った方がいいわ。で、単純に彼女には頭が二つあると思って。一方ができないことをもう一人がやる、というのでウィザードの能力を引き出せていたの」
「なるほど。二人がかりで理解していったのか」
「その彼女がある戦いを境にいなくなってしまったのです」
元の語り手は変わらぬ口調で話す。
「いなくなった?」
「ええ。ウィザードドライバー一式と曜に手紙を残して……」
彼女はぐっと下くちびるを噛んだ。そして
「ここまででいいですよね?ここからは個人の見解になってしまいます」
そう他のメンバーに尋ねた。
「では、事実としては津島善子のウィザードを曜が受け継いだという形になるのか」
「はい」
曜は、花丸の様子をうかがいながら言った。花丸は表情一つ変えない。
「……1ついいかい?ライダーの力は顕現するのではなかったのか?」
「……その限りではない、みたいですね」
絵理は言った。
「で、事実は確認したずら」
「ええ。士さん、この世界のことを話してくれませんか?」
「ああ。絵理と希以外に言うのは初めてか。では聞いてくれ。この世界は今、実に不安定だ」
「ちょっとお待ちください。世界とは?」
「俺は世界の破壊者として様々な世界を回ってきた。そのときに光太郎とも会った。俺のことを知る限り、あいつもこの世界の住人じゃない」
「ちょ、ちょっと待って。パラレルワールドってこと?」
「ああ。実際に俺はお前達以外のクウガやアギト、そしてあの光太郎以外の光太郎にも会っている。パラレルワールドはお前らが俺のことを知らない、そして光太郎がいることが何よりの証拠だろう。あとWの片割れは星の本棚にアクセスできたはずだ。俺たちの情報は無かったはずだ」
「確かにRXの情報は無かったし、ピンクのライダーも『世界の破壊者』以外はありませんでした」
ルビィはそう伝えた。
「それって世界が違うから、ですか?」
「そうらしい」
「でも、そしたらピンクのライダーの情報は何で?」
「マゼンダ」
果南の発言に、士はまず色で答える。
「そしてあのライダーはディケイドだ。俺の情報はどの世界にもあるらしいが、その一文だけらしい」
「じゃあ、昨日の梨子ちゃんの仮説が証明されたんだ!」
「まだずら。第一、その話を丸ごと受け入れるかは別の話ずら」
はしゃぐ千歌を花丸は冷淡に見る。ルビィは悲しげな表情をしていた。
「実際信じられないよね」
光太郎は笑った。
「で、この世界は俺や光太郎みたいな異世界の連中を呼びやすい状態になっている」
「……つまり、どういうこと?」
「この世界で何らかのことが起きたおかげで、この世界全体が他の世界からバランスを取ろうとしているんだ。世界規模の『自浄作用』だな」
「……」
ほのかははてなを浮かべている。
「……」
千歌もはてなを浮かべている。
「あかん、リーダー二人の頭がパンクしそうや!」
「えっと、整理するね」
ルビィが言う。
「つまり、この世界で何かが起きて、それを補うために新しい世界を吸収しているってこと?」
「そうだな」
「……」
「……」
「あかん。理解してない。あと凛ちゃんも理解できてへんやろ?」
「ばれたにゃ~」
「果南、正直に」
「うん、わかんない!」
ルビィは考える。
「例えば、皆さんはお腹が空いたらどうしますか?」
「パンを食べる!」
「みかんを食べる!」
「凜はラーメンにゃ!」
「お前らジャンキーすぎんだろ」
士は思わず言ってしまった。
「私は梅干しかわかめだなー」
「もっと欲ばれ、お前は」
果南はアンクの言葉を笑顔で流す。
「じゃ、お腹が空く時ってどんな時ですか?」
「運動した後だね」
「今、この世界は運動をしたんです。しかもとてつもなく大きい運動を。だから食べないといけないんです」
「ああ、なるほど」
「そういうことか」
「納得にゃー!」
「うん、何となく」
「……あれ、でも待って。それってさ、すごくやばくない?」
千歌がいち早く気が付く。
「?」
「だってお腹空いて食べるんでしょ?ってことはこの世界、めちゃくちゃ太らない?」
「下手をすれば肥満で世界が終わる」
士が言った。その言葉に会場が一気に冷える。
「だが、その原因がわかれば止まるはずだ」
「そしてその原因は善子だと、私は思うわ」
絵理が言った。
「ないずら」
花丸がそれに反応して言う。
「第一善子ちゃんはこの世界のどこかにいるだけずら。仮にいなくなったとしても、人間のような矮小な存在が世界を巻き込むなんておかしいずら」
「花丸、聞いて。彼女の強さなら、それを引き起こすのに匹敵するのよ!」
「それは、善子ちゃんが消えているっていう前提ずら。善子ちゃんは消えていないずら」
「花丸、受け入れて。これは事実なのよ」
「善子ちゃんはいるずら」
「はな……」
ドンと轟音が鳴る。
「うるさい!今は私情じゃなくて事実を論ずるべきだよ」
果南が机を叩く。二人は黙る。
「……繋がったわ」
鞠莉が言う。
「やたら発言しないと思ったら」
「決める時は決める女なのよ。いくわ」
彼女は立ち上がり言った。
「まず、事実として捉えなければいけないことは2つ。善子の消滅と、二人のライダー。仮に……まあ、善子が変身能力を放棄したとしても、並行世界を巻き込むレベルでの自浄作用なんてあるはずがないわ。だけど、実際問題として二人も異世界のライダーがいる。それが起きている証拠よ」
「マリー。私は士さんや光太郎さんの言うことが信用できないわ」
真姫が不満そうに言う。
「こんな話を信用できる方がおかしいわよ。でも事実として彼らはいる。事実として起きている。彼らを信じられなくても、現象として整合しているはずよ。よって私は彼らの話をあっているもの、として話すわ」
「鞠莉ちゃんも、消えたって」
「違うの。消えたかどうかじゃないわ。ここにいないこと、曜に力を移譲したことを言っているの。落ち着いて」
優しいトーンで花丸に言う。トーンを戻し
「そして失ったものが、善子だけじゃない、としたら?」
「善子だけじゃない?」
「例えば、敵側も同じだったら?例えば、ライダーが本当に私たち以外にいて、彼らが消えていたら?」
「……」
「例えば、敵に巨大なものがいて、その浄化が起きているのだとしたら?もし、その全てが重なりあったなら?敵にも何か動きが絶対にあるはずよ。そして実際、その驚異に私たちはさらされているわ。今の敵の行動は今までとは考えられなかったのよ」
「物量で押す、か。陳腐な奴が考える作戦だ」
「もし、あの喜子が変身能力を失い、敵も主力を失えば、世界のバランスが崩れるわ。きっとそうに違いないわよ」
「待って下さい。好意的に解釈しすぎています」
「いいや、海未」
ベルトはしゃべる。
「それは私も同じ意見なんだ。希望的な観測じゃない。実際敵の攻め方が変化している以上は、指揮系統が変わったとしか思えないんだ」
「それはこちらの目線の希望的観測です。単純に作戦を変更してきた、そう考えるのが無難では?」
「問題は何故そう転じてきたか、だよ。もしかしたら新しい力かもしれない。だけど士の言うように、今回の指揮官はクレバーじゃないんだ!」
「海未、私も鞠莉の意見と同じよ。それに至る根拠もある。そうね、真姫、今の意見を聞いてどう思った?」
絵理が割ってはいり、真姫に聞く。
「筋は通っているけど、それは士さんと光太郎さんの話が正しい場合よ。その前提である限り、怪しいと言うしかないわ」
「じゃあ、彼らが並行世界から来たか否かって所が証明できればいいのね?」
「そんなこと、できるんですか?」
「……正直、自信はないのよ。でも少なくともここのメンバーは納得すると思うわ」
絵里は名刺を出した。そこには『音の木坂女学院 アイドル研究会顧問』と書かれた士の名刺を取りだした。それで、その場にいた8人は納得したようだ。
「えっと、どういうことですか?」
「じゃあ、花丸。夢ってどういうもの?」
「えっと、別の世界に飛んで、自分の行動をすることだね」
「……何それ?」
光太郎が聞く。
「古い迷信なんだけど、夢はそういうものって捉えている人が多いずら」
「そう。そしてここにいるメンバーは最近、共通の夢を見ているの。それがアイドル研究会の夢よ」
「……それが証拠?馬鹿らしいずら」
花丸は言い放つ。
その時、警報が鳴った。千歌たちは急いで身支度をする。
「お話は今度ね!」
鞠莉もベルトさんを握り、外に出た。
ライダーピックアップ
ウィザード
指輪の魔法使い。変身者は渡辺曜。
津島善子の消失後にウィザードの力を継承した。そのスタイルは津島善子そのもの。ただし、インフィニティになったために彼女は消失した、と考えているため、インフィニティにはなれない。
登場人物ピックアップ
津島善子
自らを堕天使ヨハネと言う少女。自身の不幸や自らの中にいるヨハネがその証拠であると信じている。ヨハネが攻撃特化に対して、善子はオールマイティに戦闘をこなす。
ヨハネ
津島善子の中にいる、もう一人の善子。彼女の攻撃的な側面が表面化しているものの、他人を傷つけることは絶対にしない。ライダーに変身する時はヨハネで変身することが多い。「私は一人で二人のライダーよ!」が変身前の口癖