SPEAR OF DEATH   作:夜廻

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懲りもせず新たな小説……。だってネタが浮かぶんだもん!


SAO編 セタンタ
第一槍


『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。……プレイヤー諸君の、健闘を祈る。』

 

少し中世を思わせる街並みの広場に佇む全身を覆い隠す程のローブ纏った巨人が言を告げると激しいノイズと共にその姿を消した。後に残るのは現実世界に帰れない事への憤怒の篭った罵声。死と隣り合わせの世界に閉じ込められた恐怖からの悲鳴など様々だった。

 

「……不味ったな」

 

それとは対照的に、俺は現実世界に残して来た大学での卒論を提出出来ない事を焦っていた。実の所、明日提出する予定だった。

 

俺は天司御子(あまつかみこ)、女みたいな名前をしているがこれでも男だ。歳は二十一、現在同居人と二人暮らしをしている社会人に成りかけの大学生だ。両親は俺が小学生の時に事故で他界しており、その時から叔父の家に引き取って貰っていたが俺が高校に上がるのを機に、家を買って一人暮らしを始めた。

 

別に叔父に厄介払いを受けた訳ではない。むしろ可愛がられていた。前述に家を買ったとあるが、これは自分の金で買った物だ。死んだ両親の遺産ではない。

 

俺の叔父はその筋では有名な資産家で、株などで儲けていた。中学の頃、俺は叔父から貰ったお年玉とお子遣いでちょっとした好奇心で株というものを買った。叔父から聞いていた話で、株は失敗すれば金が紅茶に溶ける砂糖の様に一瞬で溶けると言っていたので社会勉強の一環と考え、半ば金を溝に棄てるような感覚で株を買った。そして運良くその株の値段が買った後に急上昇し、人生を遊んで暮らせる程の金額を稼がせて貰った。買った株はVRMMORPG「ソード・アート・オンライン」というゲームの株で、このゲームが完成するまで大株主としてかなり出資していた。

 

話を戻そう。

 

今はこの状況をどうするかだ。幸い大株主でかつ製作者と年が近く、そのよしみでプレイしているので身体の動かし方は慣れている。それに、現実でも槍術を修めていたから戦いの心得は出来てる。……夕方だが草原でレベリングするかねぇ?

 

思い立ったら吉日。まず俺は元に戻った顔を隠すべく装備品の売っている店に向かう。顔を隠す理由?実は俺、社会的に結構顔が知れていてな。『ソード・アート・オンライン』のゲームで多くの金を出資している大株主として知られている。もし他のプレイヤーに気付かれたらそれこそ面倒だ。きっと此処から出せとか言って迫って来るに違いない。

 

「いらっしゃいませー、何をお探しでしょうか?」

 

店主のNPCが設定されている言語で接客をする。中身は只の0と1の羅列だが声の息づかい、仕草、豊かな表情はほぼ人間に近い形で作られている。

 

「なんか顔を隠せるもんはねぇか?」

「それならば此方は如何でしょう?」

 

そしてこの機械とは思えぬ接客。まるで魂が入っているかの様に人間臭い。俺はNPCに提示された兜を選択し購入する。

 

「ありがとう御座いましたー」

 

NPCの言葉を背に店を出る。そして早速購入した兜を装備欄から装着する。

 

「おし、そんじゃあ行くとしますか!」

 

俺は意気揚々と草原に出掛けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

『現在。ソード・アート・オンラインへログインした一万名程の方々がログアウト出来ない状態となっており、既に数百名程、死者が出ている模様です。尚、製作者である茅場晶彦は……』

 

私は急いで走る。自らの家に、唯一自分を受け入れてくれた大切な人の安否を確認するために。

 

家の門の前に着く。暗証番号を入れ、門を開き家に入る。靴を脱ぎ捨て階段を登り二階に上がる。そして彼の部屋の扉を開け、目の前の光景に絶望する。

 

そこには頭にナーブギアを被り、眼を閉じてベットに横たわる彼……天司御子の姿が。

 

「あぁ、あ、あ」

 

私は泣きそうになりながら彼に寄る。

 

「貴方が居なかったら、私はどうすればいいのよ……」

 

彼の手を取り強く握る。私、朝田詩乃は全力で彼が無事に帰って来ることを祈った。

 

「絶対に帰って来て……御子さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そらよッ!」

 

現在俺は迷宮区にいる。あ?草原でレベリングをしていたんじゃなかったのかって?……俺は重度の方向音痴なんだ、勘弁してくれ。まぁ、そんな事はどうでも良いだろ?大事なのは今だ(キリッ)。

 

てな訳で現在レベル9に成った。それにやはり迷宮区とあって敵も中々に経験値やらアイテムやらを落としてくれる。武器も落とすは落とすのだが剣やナイフ、ダガーしか落としてくれん。槍を置いていけ!槍を!

 

そんな事を心の中で思いながら敵を倒して行くと入って来た入り口に辿り着いた。良かったぜ。このまま帰れないのかと思ったんだが、案外上手く行くもんだな!

 

「……夜か」

 

そして気付けば迷宮区の外は夜だった。まぁ、夕方からこの迷宮区でレベリングしていたからな。仕方あるまい。

 

取り敢えず、近くの街で宿をとって休もうと思う。この世界の通貨であるコルも貯まったし。不自由はないだろう。

 

さて、いつになったら辿り着けるんだろうなぁ?

 

 

 

 

 

 

辿り着きません。現在モンスターと戦闘中です。

 

「おっと!」

 

目の前の醜悪な植物、『リトルネペント』の蔦の攻撃を後ろに飛び退いて避ける。さっきからこいつ殺しまくっているが一向に減る気配が無い。なんか大事そうな『実』を壊したのがいけなかったのだろうか?

 

もう何十体目になるか分からない『リトルネペント』に手持ちの槍を突き刺した所で、使っていた槍がポリゴンとなって砕け散って行った。迷宮区でも使っていたからなぁ、ガタが来ていたんだろう。替えの槍はあと二本あるが目の前には十数体のリトルネペントがおり、そう簡単には武器を取り出させてはくれそうに無い。

 

「どうしたもんかねぇ」

 

リトルネペイントの攻撃を踊るように避けていると黒い人影が一体のリトルネペントをポリゴン化させた。

 

「あんた!早く逃げろ!」

 

その黒い人影はまだ幼さが残る女顔をした中学生位の少年だった。恐らく俺が一方的に襲われていると思って助けに来てくれたのだろう。こんな状況の中で大した精神力だ。自分の身も危ないのに人助けとは。

 

まぁ、武器を取り替える隙を作ってくれたからそんな事はどうでも良いんだけど。

 

「サンキュー、少年」

 

前傾姿勢を取り勢い良く飛び出す。そして手に取った槍でリトルネペントの頭部(?)の部分を走りながら器用に刈り取って行く。普通なら切られただけでは数値上でしかダメージを与えられないようだが、中々どうして現実に忠実に基づいて出来ている。完全な急所を撥ね飛ばす……人形のモンスターで言えば首か。そこを突けば問答無用で殺せる様になっている。つまり、このゲームは技術とそれなりの武器さえあれば一撃で格上、もしくは同等の敵を屠れるって事になる。だから急所を切り取られたあリトルネペイント達は、その一撃だけでポリゴンの欠片と化した。

 

「いやー、助かった。少年が来なければ死んでいたかもな」

 

目の前の少年は唖然とした面持ちで此方を見上げる。……大体165cm位か。俺が185cmだから見上げる形は仕方ねぇか。まぁ、それよりも目の前の少年の気を付けないとな。

 

「おーい。少年ー?」

 

固まっている少年の目の前でてをヒラヒラさせる。すると気が付いたのか普通の状態に戻った。

 

「あ、ああ。どういたしまして。それより今のは?」

「あ?ありゃあ首を撥ねただけだが?」

 

少年の顔がひきつる。……何か変なこと言ったか?

 

「いや、大丈夫だ。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はキリト。あんたの名前は?」

 

自己紹介ね。プレイヤーネームを自分の名前からなぞらなくて良かったわ。感付かれたら面倒だからな。

 

「俺はセタンタ。よろしくな、キリト」

 

セタンタ。俺が幼少期に読んだ本の主人公。現在でもその本を読み返す程に憧れ、尊敬している英雄の幼少期の名前。

 

そしてこれが後に『黒の剣士』と呼ばれる少年と、『光の御子』と呼ばれる男の出逢いだった。

 

 

 

 

 




オリ主の容姿はプロトニキです。
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