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「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル。先日ボス部屋を見付けたパーティーのリーダーだ」
青髪の青年が広場の中央で立ち、集まった者達へ向けその声を挙げる。
集められた者達の表情は険しい。理由は先程ディアベルが言ったボス部屋という言葉。
現在、このソードアート・オンラインでは一週間経った今でも第一層から突破出来ていない現状が続いている。そしてその中で次の階層に続くボス部屋を見付けた。との情報が入ればこの様な雰囲気になるのは必然だと言えるだろう。
だが、その中で一つ抜けた雰囲気を醸し出している男が一人。
「ふあぁぁ~……あ?」
そう、我等が天司御子ことセタンタである。相変わらず彼は顔を隠す為の兜を被っており、外見からは彼がこの状況下であくびなんぞをしているなど皆目検討がつかない訳である。そして彼の兜は、彼がこのゲームに閉じ込められて以来に買った兜とは別の兜を着けていた。猛牛の様な双角が付いている少し目立つ兜。
『不貞隠しの兜』。それが彼の着けている兜の名前である。名前からして彼が不貞行為を働いたと思わせる装備だが、断じて違う事を此所に言及しておく。
…………………………
何か失礼な事を思われた気がするが気にしないでおこう。さて、俺だ。現在ボス部屋を攻略するための集まりだとかでこの広場に集まっている。そして俺を此所に呼んだ張本人、キリトが見当たらない。あいつ俺を呼んどいて居ないとか何やってんだ。
と、そんな事を思いながら目の前の人だかりを眺めているとサボテン頭の男がディアベルという男に何かを言い始めた。………面倒くせぇ、寝るか。
サボテン男のやけに耳障りに感じる声をBGMに俺は壁を背に瞼を閉じた。
「……んあ?」
辺りがやけに騒がしくなった所で俺は眼を覚ました。どうやらサボテン男の云々は終わったらしい。周りを見てみるとそこらかしこで六人でペアを作っている。何をするのか話を聞いていなかった俺は近くのプレイヤーに事情を聞いてみた。
「なぁ、あんた」
「な、なんだ?俺に何か用か?」
俺に声を掛けられた男は俺の姿にビクビクしながらもちゃんと応答した。
「今、何をしてるんだ?」
「へ?あ、ああ。六人構成の攻略のペアを作ってるんだ。悪いな、もうこのペアは六人だからあんたは入れられないんだ」
露骨に俺をペアに入れられないとアピールされ「そうか」と切り返しその場を後にする。元々声を掛けただけの男だったからペアになるつもりなんぞ無かったし、いても足を引っ張るだけだったから何も思う所はない。そう思い辺りを見回す。すると先程まで居なかったキリトの姿が、その隣にはローブを目元まで深く被った少女が。端から見ればキリトが少女にナンパしてる様にしか見えないが今はペアを作る時間。そしてペアを作ったら早速ボス部屋に攻略しに行くみたいなのでキリトがナンパをしている訳では無いだろう。
なので、早速キリトに声を掛ける。
「キリト」
キリトと少女は一瞬俺を見てギョっとしたがキリトは直ぐ俺だと分かって平常に戻る。
「なんだ、セタンタか。何か用か?」
「いや、キリトがナンパをしてるのかと思ってな」
「ナンパって……ペアを組んでいただけだぞ。そういうあんたは何をしてるんだ?」
ナンパという言葉にキリトは肩を落としそれを否定する。
「俺か?寝てて説明聞いて無かったんでな。事情を聞いて来た所だ」
「寝ていたって、それじゃあペアは居ないのか?」
そのキリトの問いに肩を竦める事で答える。
「まぁ、そんな所だ」
「そうか……じゃあさ、ペアを組まないか?」
「俺は良いが、後ろの嬢さんは良いのか?」
後ろの少女は俺の問い掛けにビクッと反応しながらも返答してくる。
「え、えと。私は大丈夫です。人数が多い方が安全そうですし」
育ちが良さそうな子だな。言うなれば箱入り娘みたいな感じか。家の詩乃みたいな感じだな。……詩乃は大丈夫だろうか。ちゃんとご飯は食べてるだろうか?……止めよう、今は攻略だ。この事を考えている場合じゃねぇ。
「そうか、なら行こうぜ。他の奴らはもう行ってる様だからな」
俺達がこうしている間に周りの組んだペアは迷宮区のボス部屋へと既に向かっていた。そして俺は少女に自己紹介をしてなかった事を思い出し、少女に向き直る。
「遅れたが、俺の名はセタンタだ。よろしくな、嬢さん」
「私はアスナです。これからよろしくお願いします。セタンタさん」
他と比べて三人という少ないパーティの俺らは、先に進んで行った人達の後を追い、ゆっくりながらも、そこから歩いて行った。
…………………………
迷宮区。次の階層へと進む為の謂わば試練の様なもの。そしてその迷宮区のボス部屋の巨大な扉の前に、約一名を除いた総勢33名の男女が険しい面持ちで佇んでいた。
その集団の中で戦闘に立つ男、ディアベルが振り返る。
「俺から言える事はこれだけだ。勝とうぜ」
一言、それだけで皆の士気が高まる。
「行くぞ!」
重々しい扉が開く音と共に多くの足音が部屋の中に反響する。扉を越えた先には、暗い空間が。
「暗いな……」
誰かがそう呟き少し進んだ所で、それはいた。
「止まれ!前に何か居るぞ!」
プレイヤー達は直ぐに自らの得物を構え、前方を凝視する。そして其処には、気味の悪い赤く輝く二つの光源が。
突如、何の前触れもなくボス部屋に設置された松明とその他の灯りが光を発した。そしてその光は、赤く輝く二つの光源の正体を照らし出した。
通常の人間の二倍以上はあるであろう身長。肥えた腹部に丸太のように太い筋肉の手足、近付く者は容易に叩き飛ばされるであろう尻尾。そして血に塗れたかの様な赤い肌。その右手には無骨な斧、そして左手には人一人を容易に覆うが如く大きな円盾が握られていた。そしてその周りには人間と同じくらいの大きさのコボルトが六匹。
第一階層フロアボス、『イルファング・ザ・コボルドロード』とその取り巻き、『ルインコボルド・センチネル』がその姿を現した。
「グオオオオオォォォォ!!!」
コボルトロードの咆哮を合図とし、センチネルとロードが突進してくる。
「勝つぞッ!!!」
その言葉と共に戦いの火蓋は切って落とされた。
…………………………
ボス部屋の扉を前にして、俺は周りの険しい顔をしているプレイヤーとは対照的に、兜の下で口元が吊り上がるのを抑えられないでいた。
解っている。これは普通の感情ではない事を。知っている。この心の底から沸き上がる今にも爆発しそうな感情の正体を。
闘争心。それがこの感情の正体。今までの話にならなかった相手よりも強い相手と戦える悦び。現実世界では両手で数える程しか表に出さなかった俺の闇の部分。
戦闘狂、バトルジャンキー。呼び方は色々ある。だが、俺はその中でも程度が酷い
槍を握る力が強くなる。ディアベルの声が聞こえ、扉が開く。嗚呼、漸くか。待ち侘びたこの瞬間。少しは、楽しませてくれよ?
表には出せないこの感情。今だけは、その
主人公はバーサーカーだった、まる。戦闘は次回です。更新をお待ちくだされ。