SPEAR OF DEATH   作:夜廻

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テストが終わったので投稿。


第四槍

 

 

「ぜあぁぁぁ!!」

 

剣を持った少年が目の前の怪物にその剣を振るう。程無くして切り裂かれた怪物の腹からは、通常は出る筈の赤い血は出ず、代わりに赤いポリゴンのエフェクトが出るばかり。斬りつけられた怪物は憤怒の雄叫びを挙げ、その手に持った石槌を振り上げ、自らを傷付けた少年に振り下ろす。

 

「スイッチ!」

 

少年は振り下ろされた石槌を後ろに後退することによって避ける。必然的に振り下ろされた斧は少年には当たらず地面に叩き付けられる。その反動で怪物の動きは少しの間止まる。

 

「はあぁぁぁ!」

 

間髪入れずにレイピアを持った少女が動きを止めた怪物を切り刻む。

 

そして俺はその光景を後方から見つめていた。

 

(あ、次は俺か)

 

と、間抜けた思考をしながら。

 

少女、アスナがセンチネルの体力を削って行くのを見ながら俺はスイッチの言葉を待っていた。あの集団を追いかけている最中、キリトにレイドバトルという集団でボスを倒す方法を聞いていた。だからスイッチの意味は知っているし、攻略の進行に差し支えは無い……はず。

 

「スイッチ!」

 

アスナの合図で弾丸の様に飛び出す。そしてそれと同時にセンチネルが待ち構えていたように手に持った石槌を俺に振り下ろす。……俺だけ難易度高くね?

 

手に持った槍でセンチネルの武器を持った方の手首を斬り飛ばし、間髪入れずにその喉仏に槍を突き立てる。槍の鋒は硬い兜の装甲を突き破り、喉仏を貫く。急所を潰されたセンチネルは少しの間硬直し、やがてポリゴンとなって散って行った。

 

「グオオオオオォォォォ!!!」

 

そしてまた新しいセンチネルが湧く。ロードの取り巻きのセンチネルは無限湧きらしく、ボス担当班にセンチネルが寄り付かない様に足止めが他の班の役割だ。

 

「キリト、スイッチ」

「もうあんただけで良いんじゃないか?」

「さっきまではそうするつもりだったぜ。だが萎えたからお前らに任せようと思ってな」

 

我ながらめちゃくちゃな理由だな。だがまぁ萎えたのは本当だしキリト達の良い経験になるだろうよ。

 

「萎えたって、これ一応デスゲームなんだぞ?」

「デスゲームだろうがなんだろうが現実と変わりねぇだろ。弱ければ死ぬ。現実世界でも同じだぜ」

 

俺の言葉にキリトは難しい顔をする。そして直ぐに後ろからアスナの声が聞こえた。

 

「ちょっと!!キリト君にセタンタさん!前から来てます!」

 

そういえばもうセンチネル湧いてるんだった。その事を思い出し、俺とキリトが前を向いた時にはもうセンチネルはその得物を振り上げ、此方を潰さんとその得物を振り下ろした。

 

(……やはり、他の奴と比べて俺に対しての攻撃が数段速い)

 

俺は振り下ろされた石槌を身を捻ることによってそれを避けると槍を突き出し、槍は吸い込まれる様に兜の隙間に入り込みセンチネルの脳天を貫いた。そしてセンチネルはいつもの様にポリゴンとなって散っていった。

 

「……なぁ、セタンタ」

「なんだ?キリト」

 

不意にキリトが俺に話し掛けて来た。

 

「あんたの様な奴が居るって解って少し安心したよ。ありがとう」

「あ?お前何言って……」

 

「皆下がれ!」

 

言葉を繋ごうとした瞬間、ディアベルの声が俺の耳に響き、繋ごうとした言葉を遮った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デスゲームだろうがなんだろうが現実と変わりねぇだろ。弱ければ死ぬ。現実世界でも同じだぜ」

 

現実と同じ。その言葉が妙に反芻する。そして不思議と納得した。目の前の周りと浮世離れした風貌の男、セタンタが言ったこの言葉。何故納得したか、それはセタンタが纏うカリスマ的雰囲気だ。こいつが言うならそうなんだ。そう思わせる程の、本能的な納得。そしてあたかも経験してきたかの様な言葉の重み。

 

納得するのと同時に、安心することも出来た。自分が得体の知れない絶望(デスゲーム)に晒される中、豪胆にそれを受け入れ突き進む。そんな事ができる強い奴なんだと。

 

強くなりたい。目の前の男の様に。そんな憧れが、セタンタに言われるまで持っていた焦りの心を塗り潰し、心の余裕を生んだ。

 

「……なぁ、セタンタ」

「なんだ?キリト」

 

セタンタが振り返る。表情はその兜の下に隠れていて解らない。

 

「あんたの様な奴が居るって解って少し安心したよ。ありがとう」

 

自己完結、一方的な感謝。だが、セタンタのお陰で人に感謝出来るほどの、心の余裕が出来た事は確かだった。

 

「あ?お前何言って……」

 

兜越しでも解る明確な戸惑い。そしてセタンタが言葉を繋ごうとした直後、

 

「皆下がれ!」

 

波乱の幕開けを告げる言葉が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

ディアベルの声が響きロードを相手しているディアベルの班の方を見る。

 

ディアベルの班のパーティーはディアベルの合図で後ろに後退する。だが、後退していないどころか突撃している男が一人いた。ディアベルである。

 

「なにやってんだ。あいつ」

 

一人ディアベルが自殺行為を繰り広げているのを疑問に思いながら俺は思った事を口にする。

 

「ラストアタック狙いか。だがアレじゃあ不味いな」

「何が不味いんだ?確かに自殺行為だが」

「セタンタ、ロードの体力バーを見てみろ」

 

キリトに促され見てみるとボスの体力は黄色の色に変色しておりあと少し攻撃すれば倒せるであろう体力量まで減っていた。

 

「ロードは体力がある程度まで下がると攻撃パターンを変えるんだ。あの斧から太刀に」

 

ほぉ~、となると従来のロードの動きに慣れて油断してラストアタックを狙いにトドメを刺そうとするディアベルはあのままだとパターン変更というカウンターを喰らって死ぬ訳か。

 

「………」

 

今このままディアベルを行かせてこの攻略のリーダー的存在を失ったらこの集団の大部分の統率が確実に乱れる。ともすればディアベルだけでなく犠牲者も一人や二人連鎖的に増える。

 

恐らくそれに気付いているのは俺とキリトだけ。つまり今ディアベルを止められるのは此所にいる二人だけだって事になる。

 

「……はぁ~」

 

策士策に溺れる。もし死ぬのがディアベル一人なら、俺は無視して成り行きを見守るだろう。だが、奴が死んで他の奴が死ぬような事があればとても目覚めが悪い。それに・・・そんな事をしたら詩乃に怒られそうだ。

 

「キリト、少しの間二人でセンチネルを頼むぞ」

「……分かった。早く戻って来てくれよ」

 

飛び出す。ディアベルとの距離はそれほど離れていない。直ぐに追い付く。

 

手を伸ばせば首元を掴める距離まで来たところでロードが動き始める。

 

持っていた斧と盾を捨て、左手を引き腰に刺さっている得物に当て、右手をその柄に添える。所謂、居合いの構えだった。その動きは今にも刀の鍔を斬り、ディアベルの胴体を泣き別れさせようとしていた。

 

瞬時に俺はディアベルの首元を掴み、後ろに投げる。何かディアベルが言っている様だが気にしている暇はない。

 

ロードの太刀からその刃が姿を現し、高速で俺の右横腹に向かってくる。俺は槍を縦にし、柄で刀を迎え受けた。そして柄が刀に当たった瞬間、槍が折れた。

 

「チィ!」

 

俺は直ぐに身を翻し、ギリギリで避ける。後ろに宙返りしながら後退し、ロードの間合いから外れる。

 

俺が間合いから外れた直後、ロードが咆哮を挙げる。すると今まで分散して戦っていた六体のセンチネルがロードの元に集まり始めた。

 

「き、君は……」

「喋っている暇があったらさっさと体制を立て直して撤退しろ。後は俺がやる」

 

ディアベルが何か言おうとしたがそれを遮って撤退を指示する。当初の作戦が破綻した今、大人数で無理に戦えば犠牲者を出しかねない。それならば気兼ねなくやれるソロでやった方が幾分かは楽だ。

 

「ふぅ~……」

 

一つ深呼吸をし、ウィンドウから槍を取り出す。先程の槍とは耐久が高い代物でこれならば野太刀を受け止められるだろう。

 

「セタンタ!」

 

キリトの声がし、視線だけ後ろに向ける。

 

「キリトとアスナか。撤退の指示は聞かなかったのか?」

「俺らも戦う。あんたは俺らのパーティー、仲間だ。仲間が戦っているのに俺らだけ逃げる訳にはいかない」

「セタンタさん。たかが短い間の付き合い、そう思うかも知れませんが、その間でも助けられたこともありました。ですから、少しでも助けになりたいんです」

「………」

 

本っ当に、コイツらお人好しだな。意味がわからねぇ。だがまぁ、悪い気はしねぇ。

 

「なら、足引っ張るんじゃねぇぞ?」

 

兜の下で、ニヒルに笑う。

 

 

 

別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?

 

 

 

 

 




さて、次はいつになるんでせうか。
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