SPEAR OF DEATH   作:夜廻

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連日投稿(珍しい)


第五槍

 

「十秒以内に取り巻きを潰すぞ!勝負は電撃戦、速攻でカタを着ける!」

 

三人同時に飛び出し、ロードのもとへ向かう。だが、それを取り巻きのセンチネルが許す筈もなく足止めを行う。

 

「ギィィ!」

 

初めて耳にしたセンチネルの声。だが、そんな事知ったこっちゃない。

 

(うる)せぇ!!」

 

すれ違い様に手足全てを飛ばし次へ向かう。そして二匹目、また一匹と潰していく。センチネルが湧く気配は無い。恐らくロードがパターン変更したと同時に無限湧きしなくなったのだろう。

 

好機だ。一気に決着(ケリ)を着けるッ!

 

二体のセンチネルが同時に向かってくる。横並びのそれは俺に殺してくれと言っているようにしか思えない。

 

「そらよッ!」

 

槍を思い切り横薙ぎにし、センチネル達の首を一斉に飛ばす。センチネルの頭には首の部分まで兜が覆われていたが、硬度で勝つ此方に斬れない道理はない。後ろではキリトとアスナが一体のセンチネルを相手しているので残りはロードだけだ。

 

一気に駆け抜ける。ロードの間合いに入った所でロードが野太刀を俺を狙い横薙ぎに払う。だが、それは俺が前に高く飛ぶ事によって避け、飛んだままロードへと接近する。

 

「御対面だぜ、ロードさんよぉ」

 

此方の間合いに入った所で槍をつがえロードの眉間に狙いを定める。そして思い切りそれを突き出す。槍の矛先がロードの眉間を捉える。だが、後少しで当たるという所でロードは顔を僅かに反らし眉間から左目へと槍の当たりをずらした。当然、槍の矛先は致命傷となる眉間を外れ、比較的傷が軽い左目に突き刺さり、ロードは呻き声を挙げながら暴れる。

 

「……チッ」

 

即座にロードの胸部を蹴り後ろに後退する。予想はしていた。だが此処までとは思って無かった。敵が俺に対してだけAIレベルが跳ね上がる。そんな俺専用の特殊なハンデ、縛りが設定されているなんて。

 

「どんだけ俺に鬼畜プレイをさせたいんだ。茅場」

 

これMust Dieモードじゃねぇんだぞ。と、内心愚痴りながら槍を構え直し、ロードのHPを確認する。流石にロードも無傷とはいかずそれなりにダメージを負った様だ。黄色だったHPは赤色に変色しており、ロードは左目を失った。部位破壊はちゃんと効果あるみたいだな。

 

暫く経って(とは言え、2秒3秒の間だが)気を取り直したロードは怒りを顕にし、怒れるまま俺に突進してくる。野太刀を上段に構えている、恐らく一文字に一刀両断する気だろう。一瞬、後方を確認する。来るであろうものを確認した俺はロードの斬撃を待ち構えた。

 

ロードが俺に向かって野太刀を振り下ろす。ロードが放ったそれには光が篭っており、それがソードスキルであることが容易に解かった。

 

槍を横にし、柄で受け止める体制を取る。馬鹿正直な選択だがこれで良い。

 

あの斬撃は強そうだ。当たれば即死だろう。一つ力の掛け方を間違えたら、死ぬだろう。だが、そんなもの……

 

「翁と比べたら、塵芥だぜ」

 

俺は既に構えていた槍の柄で振り下ろされた野太刀を受け止める。身体が軋むが無視をする。そして少しの間、ロードの動きを止める。その少しの間があれば、終わる。

 

「「はあぁぁぁ!!」」

 

俺の後ろから前傾姿勢で飛び出し、剣を淡い光に染めたキリトとアスナがロードのがら空きの懐に潜り込む。そして一気呵成にその剣撃を繰り出す。ロードHPが削られる。だが、後少しの所で減りは止まり、足りない。

 

「ぜあぁぁぁ!!」

 

トドメと言わんばかりにキリトがソードスキルをダメ押しで突き刺す。HPはそれを最後に0となり、ロードはその身体をポリゴンへと変えた。

 

Congratulations!! その文字が大々的に表示され、第一層が攻略された事を示していた。

 

「「「うおおぉぉぉ!!」」」

 

後ろで事の成り行きを見守っていたプレイヤー達が大歓声を挙げ、喜びを分かち合った。

 

「……ふぅ」

 

犠牲者は幸いな事にゼロ。間一髪な所があったがノーカンだろう。そして決定打を最後に打ったキリトとアスナは、その場にへたり込んでいた。

 

「おいおい、もうへばったのか?」

「しょうがないだろ、こういうの初めてだったんだ。……あんたは凄いよな、あれだけやってまだ余裕そうだ」

「要は慣れだぜ、少年。経験を積むこった」

 

キリトにちょっと先人の教えみたいな事を言ってまた別にへたり込んでいる少女に話し掛ける。

 

「お疲れさん」

「あっ、セタンタさん。お疲れ様は此方ですよ、セタンタさんが一番活躍したんですから」

「おー、そいつはありがてぇ言葉だ」

 

アスナと少し雑談した所で次の階層の扉が開いた。それを確認した俺は扉の方へと歩き出す。

 

「さて、行きますかね。無理だけはすんじゃねぇぞ、お前ら」

 

ヒラヒラと手を振りながら呑気に歩いていく。

 

「セタンタ!また会えるか?」

 

俺はキリトの問いに歩みを止めず手を挙げるだけで答える。

 

「待ってくれ!」

 

後ろからキリト達とはまた別の声がしたので振り返る。そしてそこには、ディアベルがいた。

 

「助けてくれてありがとう。お陰で、今こうして生きていることが出来ている」

 

ディアベルは自らの行いを恥じるように、俺へ感謝の言葉を述べた。俺はそれに対し、頭を描きながらそれに応えた。

 

「……生きていてこその今だ。自分の欲で死んだら元も子もない。もっと慎重に、強く生きるこったぁな」

 

俺は踵を返し次の階層の階段を上がっていく。さて、次は何が待っているんだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層の戦いから約二年。それから順調に俺を含めた攻略組は階層を進めて行き、とうとう七十四層目まで進むことが出来た。とは言え、俺が攻略に関わったのは六十層までだが。あ?何をしていたのかって?所謂ユニークスキルの取得をしていたっていうわけだ。取得には数ヶ月掛かったがな。まぁそこんとこの話はまたいつか話そう。とは言え、他にも色々あった。アスナとキリトが結婚したり、実質キバオウが率いていたアインクラッド解放軍が壊滅したり、バグの狭間に落ちてストレアという人工知能に付きまとわれ始めたり、ギルメンが二人だけのなんちゃってギルドを設立したりと本当に色々あった。そして今、俺はユニークスキルを修得し、その他新しい槍、剣など持ち、あるクエストを受ける為、移動していた。……後ろに鬱陶しいAIを連れて。

 

「セタンタくん、まだぁ~?」

「うっせぇぞ。後少しで着くから大人しく待っていやがれ」

 

てめぇが教えたクエストだろ。と、ぼやきながら歩を進める。

 

俺が今から受けるクエスト、名前を『ヘクトール7つの試練』と呼ばれるものだ。このクエストの報酬はとある盾で、エクストラアイテムと呼ばれる特別なものの中で伝説級(レジェンダリー)と呼ばれる物らしい(ストレア曰く)。盾は既に持っているのだが、一つだけだと心許ない。なのでこのクエストを受けに来た訳だ。

 

因みにまだ未発見のクエストらしいので情報をアルゴに売れば金になりそうだ。あ、後兜は外してある。

 

と、目の前に頭上にアイコンを付けた中年の槍を持ったおっさんが立っていた。

 

「おい、あんた」

 

クエストには話し掛けてからフラグを建てる物と、あちら側から持ち掛けて来る物、そして条件を満たして話し掛けやっと受けられるものがある。このクエストは後者で、レベルが100を越していないと門前払いを食らうらしい。俺はユニークスキルを修得する過程で100レベルを越していたので受けられる。

 

俺が話し掛けると、中年の男……おっさんは一瞬、此方を値踏みするような目をしてから、口を開いた。

 

「なんだい?お兄さん。オジサンに何か用かい?」

「あんたの試練を受けに来た」

 

俺がその言葉を言うと、おっさんは目の色を変え、好戦的な笑みを浮かべた。

 

「へぇ、お兄さんアレが欲しいのかい?良いぜ、まず自己紹介しようか。おじさんはヘクトール。しがない槍使いのおじさんさ」

 

しがないってオメェ。トロイヤ戦争における大英雄じゃねぇか!

 

ヘクトールはトロイヤ戦争においてトロイア陣営最強の戦士であり、将軍であり、政治家でもある、あらゆる面に秀でた文武両道の秀才。相手を油断させる話術もあってか特に防衛戦に特化しており、ありとあらゆる手練手管を駆使した籠城戦においては最強を誇る。

 

そして中世ヨーロッパにおいてジャック・ド・ロンギオンは九偉人の一人に挙げている。ジェームズ・レッドフィールドは「国に殉じた男、かけがえのない日常生活を守るため死んでいった英雄」と述べられている。

 

実際の所、俺はヘクトールを尊敬している。打ち負かした敵国の妻子の処遇を案じたり、トロイヤ戦争の原因になった実の弟を叱りはするが見放しはしないという優しさを持っている。

 

そして今、ゲームの中で造られた存在とはいえ、その英雄が目の前にいる。俺のテンションは内心ハイになっていた。

 

「俺はセタンタ。それで後ろの奴がストレアだ」

「はーい、ストレアです。よろしくヘクトールさん♪」

「よろしくお嬢さん。いやー、こんな可愛い子に挨拶して貰えるなんておじさんも捨てたもんじゃないね」

「やだー!ヘクトールさん、お上手!」

 

ハハハハハ!、フフフフフ!そんな茶番を繰り広げる二人。お前らAIとNPCだろ、何でそんな親しげなんだよ。

 

「それで、ヘクトール。あんたの試練はなんだ?」

 

茶番を打ち切らせる為に本題に入る。ヘクトールは忘れてた忘れてたと、話題を切り替えてくれた。

 

「そうだなぁ、まず断っておくけど試練は7つ受けてもらうぜ。まぁ、最初と最後だけしかちゃんとしてないからそんな身構えなくて良いぜ」

 

ヘクトールはそう言うと森の奥に歩き出した。

 

「じゃあおじさんに着いてきてくれるかな、試練を行う場所が奥にあるんだ」

 

俺とストレアは言われるがままに着いていった。そして森を抜けた先にあったのは、大きく開けた広場と、とても大きな投石機だった。

 

「さて、まず最初の試練。あの投石機から放たれる石を全て防ぐ事だ」

 

最初の試練、それは。あのぶっ飛んだ投石機からからのプレゼントを防ぐ事だった。

 

「「でけぇ」」

 

だがその事よりも、俺達は投石機のデカさに驚いていた。

 

 

 

 




ヘクトールおじさんしゅき。この小説のストレアは情報に関してある程度権限を持っているのでそこんところよろしくお願いします。
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