とあるレストランにて、俺とストレアはクエストクリアの祝い。もといストレアへの奢りで飯を食っていた。窓際のテーブルに二人で座り俺はコーヒーを啜る。中から見る街の光景は綺麗な街並みが広がり、広場の中央には噴水があるとても風情のあるものだった。朝方にのんびりコーヒーでも飲んでこの光景を眺めていたならば、さぞかし爽やかな朝を迎える事が出来たであろう。テーブルの上にそびえ立つ皿の塔が無ければ。
「あっ、店員さん。あとこれとこれもお願いしま~す」
「か、かしこまりましたぁ!」
まだ食べるの!? といった風に厨房へと消えていく店員。連れがすまない、迷惑を掛ける。
皿を片付けに来た店員が俺に同情の目を向けて来る。やめろ、俺にそんな目を向けるな。まるで俺が惨めじゃないか。
俺は一つため息をつき、コーヒーカップをソーサーに置く。そして目の前で幸せそうに食事をしているストレアを見つめる。
「ん~、おいしいー♪」
「……はぁ」
「ん?どうしたの?セタンタくん」
ため息をついた俺にストレアが不思議そうな顔をして瞳を覗いて来る。
「いや、何でもねぇ。続けてくれて構わねぇよ」
俺はそれを手で払いのける事でストレアに食事を促す。やめだやめだ。金の事なんか気にするのはやめだ。思えばこいつは娯楽を知らない生まれたてのAI。そんな奴に金の心配をするなんざ男としてだ、腐っちまう。それにあんな顔して食ってたら止められねぇよ。まぁ、この後迷宮区でモンスターを倒しまくればチャラだ。食後の運動になるしな。
「ストレア、食い終わったら迷宮区に行くぞ」
「ふぁんふぇ?(なんで?)」
「食いながら喋るんじゃねぇ。まぁ、食後の運動だ」
「んむきゅ…。そっか、ここ七十四層だけどまぁ、大丈夫だよね」
そう、この階層は現在最前線である七十四層。解放されたばかりでまだ設備が整っていないと思われたりもするが、そこは流石は商人達。新しい事業に手を出すのが早い。
現在、このソードアート・オンラインではゲームを攻略する攻略組と、攻略組に攻略に役立つアイテムを提供したり、非戦闘員の市民達に娯楽を提供する商業組合が存在する。過去、商業組合はアインクラッド解放軍によってその活動を恐喝、活動の妨害等によって抑制されていた。だが、俺とアスナ、キリト達を含めたギルド連合(キリトはソロ)によって摘発され壊滅。必然的にその自由を奪われていた商業組合は活動を活発化させ、以前よりも攻略の装備、アイテムも整い易くなり、攻略の効率も捗る様になった。
因みに情報屋のアルゴや、鍛冶屋のリズベットもその組合に入っている。この組合に入るメリットは店の宣伝を組合で行ってくれると共に、定期的に資金を提供してくれるというモノだ。主な資金元は攻略組、または組合が主催した娯楽イベントで得た利益が元手。
今食事をしている店も組合が経営している店舗だ。だからメニューも豊富だし、そこら辺のNPCが作る飯よりは上手いモノを食える。
「ふぅ~。美味しかった~」
「腹は一杯になったか?」
「うん。いや~こんなに食べたのは初めてだよ」
満面の笑み。ストレアとしては、とても満足してくれたみたいだな。
「そうか、ならもう行くぞ。店に入ってから二時間は経ってるからな」
席を立ち、会計に向かう。そして店員を呼び、金額を提示させて貰う。
「お会計、十一万四千五百十四 コルを頂戴します」
「………」
「ありがとうございましたー」
無言で金を払い、店を後にする。その後迷宮区にて、
「おらぁ!金落とせやおらぁん!」
「セタンタくん!キャラ崩壊してる!キャラ崩壊してるって!」
一人金の亡者になった男の声が迷宮区に響き渡ったという。
「とう!」
ストレアの両手剣がモンスターの胴体を深々と切り裂き、HPを多く削り絶命させる。
「せいや!」
そしてストレアは後ろに大きく振り返りながら、回転の遠心力を使って後ろにいたモンスターの胴体を斬る。クリティカルが入りHPがごっそりと削られる。レベル差もあってかモンスターは一撃でポリゴンと化した。
一方、セタンタの方では。
「ふっ……!はぁ!」
槍に力を込め、振るう。すると周りにいたモンスター達は一瞬の内に切り裂かれ、ある者は胴体を袈裟斬りに、あるものは四肢を斬り飛ばされた挙げ句、首を飛ばされた者もいた。やがてモンスター達は一斉にポリゴンと化し、辺りは輝く光の破片が舞う少し幻想的なキラキラしたものへと変化した。
「うは~、やっぱり反則的だね。それ」
「そうだな。まさか自分が当然だと思っていたことが心意システムというものだったとはな」
以前に少し話した俺の心意システム。良い機会だから話させて貰うとするか。
俺の心意システム。名前を『
「ストレア、俺以外にも
「ん~、まぁ居るけど誰がとか何人とかはわかんない。私はクエストの事とかの情報の権限を持っててもそこまで調べられる権限は無いからね」
「正確な事は分からない、か」
俺以外の奴も気になる所だが、直接出会う以外に知る方法がないなら仕方ない。今は適当に狩りでもしますかね。
と、俺がモンスターの姿を見つける為に辺りを見渡していると、ストレアに背中をちょんちょんと指でつつかれる。
「なんだ?ストレア」
「ねぇ、セタンタくん。あれってボス部屋の扉じゃない?」
ストレアが指差す先に視線を向けると、其処には大きな扉が。第一層の時に見た扉と少し似ており、無骨さが目立つ。そして今回は閉まっているという事はなく、扉は開いていた。中では誰かが戦っているのかソードスキルの光が舞うように輝いている。
「行くぞ、ストレア」
「はいは~い。誰か戦ってるみたいだし、ピンチなら助けてあげないとね!」
俺達は、ボス部屋へ向け走り出した。
心意システムについては、多少の自己解釈が混じっているため、原作の心意システムとは乖離しているかもしれません。