夢オチばかりの夢宮くん   作:FAKE MEMORY

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 夢オチばかりだと引き出しがなくなるからね。
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土砂降りと少女

 雨が降る日のことだ。放課後、暇で暇で死にそうになっていたので仕方なく外へ出ることにした。

 外に出るとはいえ、やることが無さすぎるのには変わりはないが、歩くだけで気が紛れる気がしたのだ。

 決して夢のときみたいに、何か出会いがあるのではないかと思って出たわけではない。断じて、無い。

 

 いやー何か起きないかなー。

 

 

 

 

 

 20分ほどたっただろうか。スマホを見てみると、丁度20分経っていた。やったぜ。

 

 ふっ、遂に俺は野生の勘を取り戻し始めたか。さすが俺。

 

 ...そろそろ現実逃避をやめるか。時には現実に戻らなければならないときがある。

 普段から夢が現実になるなんて簡単なことを考えてはいけない。夢が現実になるように努力しろ。ただ願うだけなら、それはただの妄想だ。確かに逃げるのも大切だが、今はその時では無いだろう?と、マスターもそう言っていた。

 

 しかしこれは不味いな。

 

 「うおぉぉぉぉ!!雨が、雨が強いッッッ!!」

 

 絶賛土砂降り中。

 

 俺は必死に雨宿りする場所を探していた。やべっ靴下が崩壊した。靴、浸水ッッ!!

 

 なんてアホみたいなこと叫んでると、丁度駄菓子屋を発見した。

 勿論直行。直ぐ様傘を閉じ、既に錆びてきている傘立てにいれる。漂う昭和の香り。近所にこんな店があるとは思いもしなかった。

 

 中へ入ってみると、様々な駄菓子や、カップ麺、アイス、安いジュース等、かなり品揃えは豊富。

 奥には鉄板のついている机があり、メニューを見てみると、どうやらもんじゃ焼き等を食べれるようだ。

 

 「いらっしゃいませー。失礼かもしれませんが、もしかして高校生ですか??」

 

 店員の女性に声を掛けられる。高校生が来るのは珍しいのだろうか。

 前、適当に旅行をしたときは駄菓子屋に高校生が群れていたが。

 

 見た感じ、店員はセーラー服の上にエプロンの姿だった。中学生くらいだろうか...恐らく、放課後に親の手伝い、といったところだろう。

 

 「ああそうだけど。適当に外歩いてたらめちゃくちゃ雨降って来ちゃってね。死んだ」

 

「んな大袈裟な...」

 

 いや、割りと大袈裟じゃない。

 それにしても、雨弱まんねぇな。此れじゃまだ帰れそうにない。

 

 「あ、そうだ。自己紹介!私は国府津彩音、中1だよ」

 

 突然店員に自己紹介をされる。やはり中学生だったようだ。

 おい、敬語どうした。

 まあ、むしろこっちの方が接しやすいしいいけど。

 

 「おう、俺は夢宮、高1だ。よろしくな。...にしても、良かったのか?急に名前まで教えて」

 

 「うん、何て言うか...いつも店番するときは小学生ばっかりで...友達はショッピングモールとか行くから」

 

 ああ、なるほど。近くにあるもんな。そりゃそっち行くわ。

 だからか、高校生とかが珍しいってのは。

 

 「なるほど、話し相手が欲しいと」

 

 「そう!そういうこと!今日は雨だし、人も来ないから退屈で...」

 

 ふむ、確かに退屈だよな。俺も暇だし。

 

 「よし、じゃあさっそく、あのゲーム、どうやってやるんだ?」

 

 そう言って指差すのは、いわゆるパチンコ。

 カーレースと書いてある。景品は、ここの買い物券って感じか。確かテレビで見た。

 

 「ああ、あれね。そのまんまだよ。お金入れて弾くだけ」

 

 「オーケー、じゃ早速やるか」

 

 お金を投入すると。スタートする場所に10円が設置される。

 ほう、これを一番下のゴールに入れると買い物券が貰えると。

 

 早速打ってみる。最初は適当に思いっきり打つと穴を通り抜けてくれるが、進むにつれ壁がなくなり、力加減が難しくなっていく。

 2回、3回と挑戦していくが、壁を突っ切ったり、穴に落ちたりと、大分苦戦する。

 だが、あまりこの手のゲームはやったこと無いので、思ったより楽しく、何度もやってしまう。

 

 4回

 

 5回

 

 6回

 

 「ぬおぉぉぉ!!できねぇぇぇ!」

 

 8回目で最後まで行くようにはなったが、最後がどうにも出来ない。

 

 「はぁ、最初はまぁそんなもんだよ。最後のところはごり押しで全力で打てば簡単に入るよ」

 

 「そうなのか?じゃあやってみるか」

 

 10円を投入そして弾いて弾いて。あ、やべ。

 

 「そこ失敗したらどうにもなんないんだけど...」

 

 「うるせぇわ」

 

 

 

 

 15回目、なんとか最後までたどり着くことが出来たのて最後の弾きに挑戦する。

 全力で引っ張って、打つ!

 

 そうすると、上手くかべに跳ね返り、戻ってきた10円玉がゴールへ入り、カタっと音がする。どうやら成功したようだ。早速景品の取り出し口に手を入れると、20円分の買い物券。

 

 「うぉい。あんだけやってこれだけかよ」

 

 「ふふっ。毎度ありー。ふつうはこんなに失敗しないんだけどね。まさかここまで下手だとは...」

 

 くっ可愛い顔しやがって。この小悪魔が。

 

 「20円か...んーチョコでも買うか」

 

 そうして、10円のチョコを2つ買い。口にいれる。うん、ふつうのチョコだ。

 

 「他にも色々ゲームあるのか。ちょっとやってみるか」

 

 そうして、どっかのテレビでも見たことのある。ピエロのゲームや、レトロなアーケードゲーム等で遊んだ。

 

 やっべ、金使いすぎたな。

 

 

 

 

 

 

 「んーなんか腹減ってくるな」

 

 色々なゲーム等で遊んでいたからか、時間のことをわすれていた。

 だが土砂降りは続く。

 

 「...じゃあさ、良かったらお好み焼きでも食べる?」

 

 めっちゃ食いたい。

 

 「んー、でも結構お金使っちゃったからなー」

 

 「お金なんて良いよ!あんなに落としてってくれたんだし」

 

 甦る負けまくった記憶。金銭的な意味でも、格闘ゲーム的な意味でも。

 俺は迷わない。

 

 「そうか、なら食べてこうかな」

 

 「わかった!じゃあ早速つくってあげるよ!」

 

 そう言って、鉄板のスイッチを入れ、カウンターの奥へ何かを取りにいく。すると数分後、お好み焼きの具が入ったボウルを持ってきた。

 

 「よし、それじゃあ鉄板にどーん」

 

 手慣れた手つきでお好み焼きを作る、いつも作っているのか、綺麗にひっくり返し、焼けるとソースやマヨネーズをかけ、鰹節をかける。

 

 

 

 「おおー、良い香りがする」

 

 お好み焼きが完成すると、お好み焼きを網目に切っていき、皿を2つ置く。

 

 「あ、食べるのね」

 

 「当たり前でしょ、全部な訳無いじゃん。タダなんだし」

 

 そうだよな。

 

 早速、1つ取り食べる。熱々で旨い。久し振りに鉄板の良さを味わった気がする。

 

 「んー!美味しい!やっぱり美味しいなー」

 

 国府津はそう言って1つ、もう1つと食べていく。俺もまた1つ取り、食べていく。数分すると、国府津の手が止まり、こちらをじっとを見てくる。どうしたのだろうか。

 

 「あのさ...」

 

 「うん?」

 

 「良かったらで良いんだけど...夢兄って呼んでもいい?」

 

 思わず冷めるまもなくお好み焼きを飲み込んでしまった、熱い。

 

 「ぐほぅっ!ヴ、うん。おう?急にどうしたん?」

 

 「今日、初めて会ったけどね、こうやって遊んでみて、お兄ちゃんがいればこんななのかなって思って。私妹はいるんだけど、妹も良くどこか遊びに行っちゃうし...」

 

 「そっか...俺で良ければ別に良いぞ。いつも遊びにこれるわけでもないけど」

 

 「本当に?じゃあ、改めてよろしく!夢宮くん」

 

 呼ばんのかい。

 

 

 

 

 

 辺りも暗くなってきた頃。やっと雨も弱くなり、俺は家に戻ろうとしていた。

 

 「よし、それじゃそろそろ帰るか。ありがとな。んじゃまた」

 

 「うん。またね、夢兄!」

 

 その笑顔、破壊力抜群。

 絶対狙ってたろ。

 

 

 

 

 後日、鈴木との登校中に偶然国府津と会い、夢兄と呼ばれて鈴木に通報されそうになったのは別のはなし。

 

 

 

 

 

 

 ※これは夢ではありません。




 いつもより長く書けた。

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