--翌日
学校に着き、まず部室に向かった望虹はそこで螢華と合流する。
「おはようございます、望虹ちゃん。少し遅いですよ?」
「おはよう、螢華ちゃん。え~あたし、そんなに遅かった~?」
「はい、奈津稀さんと哲夜さんはもう着替えに行かれましたので」
「そうなんだ。じゃ、あたし達も急ご!」
「はい」
少し早足で女子更衣室へと向かう二人。ちなみに望虹達が使うことになっているのは第二更衣室、地域文化部の部室から最も近い更衣室だ。そこへ向かう途中、望虹がふと気が付いたように
「そういえば螢華ちゃん。大分あたしに話しかけるの慣れてきたね」
と横を行く螢華を見上げながら言った。
「それはまあ、小学校の頃からずっとですから」
(それに普段のように私が話しかけると睨むように私を見られたではないですか)
言葉に出来ないことを心の中で思いつつ螢華は付き合いの長さを理由にあげる。
「ふ~ん。なんか隠してる感じがするけどまあ良いや。じゃあそろそろタメとか……」
「!? む、無理ですよ! これ以上はさすがに私が恥ずかしいと言いますか……」
心の中を読まれた感じがすることといきなりタメ口にしてと言われた両方で驚いた螢華は慌てて否定する。それを見た望虹は目に涙を溜め上目遣いで螢華を見る。
「え、えっと、とりあえず更衣室に着いたので着替えましょう」
タイミングよく更衣室に着いたことに気づいた螢華はそれを使って何とか望虹の気をそらす。諦めないから、という視線を螢華に投げつつ望虹も螢華に続いて更衣室に入った。
「あいつら、遅いな」
前項の集合場所である体育館では地域文化部の男子メンバーである哲夜と奈津稀が望虹達のことを待っていた。
「まあ、女子の着替えは時間がかかるからしかたないよ」
「大方、望虹が螢華で遊んでて遅くなってるんだろう」
哲夜がそう言うと
--ペシッ
何かが哲夜の後頭部をとても弱く叩いた。哲夜がさっと振り向くとそこには背伸びをしてようやく届いたという感じで哲夜を叩いたままの体勢でいる望虹と、その後ろで何やら顔を赤くしている螢華が居た。背伸びをストンと解除して腕を組み、ほっぺたを膨らませて哲夜を睨んだ望虹だが身長差のため上目遣いになり全く怖くない、というか可愛い。そんな感想を哲夜が持っていると知らず望虹は
「あたしがいつも螢華ちゃんで遊んでるみたいなこと言わないで!」
と哲夜に言った。
「……そ、それは事実だろ」
望虹に見惚れていた哲夜は出来るだけ普通に望虹に返す。それを見た奈津稀が
「はいはい、痴話喧嘩してないで並ぼう」
「「だから……」」
「あのお二人とも早く並ばないと先輩方に迷惑をかけてしまいますよ」
だめ押しで螢華がそう言うと渋々望虹達は列に並んだ。そして部長である望虹が点呼をして鷹匠先生の元に報告をする。
「うちが最後だ。次回からもっと早く動くように」
どうやら最後だったようで望虹は少し怒られてから列に戻った。
そして長い校長先生の挨拶を聞き、健康診断の注意を聞いてやっと健康診断が始まった。
「えっと、まずは女子は保健室、男子はその隣の第二履修室だって。奈津稀ちゃんも保険室だよね?」
「いや、違うから! 僕が行ったらいろいろ大変なことになるから!!」
「ほら奈津稀、さっさと行くぞ」
望虹と奈津稀がいつも通りの掛け合いをした後一度男女で分かれ身長体重を測定しに向かった。
「神端望虹 身長138.6cm」
「はあ、あんまり伸びてないなぁ」
「朱羽螢華 身長165.2cm」
「これくらいでしょうか」
「螢華ちゃんは相変わらずのモデル体型だよね……足長いし」
「そ、そんなこと言われましても……」
「北原哲夜 身長155.8cm」
「ま、こんなもんだな」
「鈴谷奈津稀 身長160.2cm」
「やった、3cmも伸びたよ!」
「奈津稀、それ望虹の前で言うなよ。殺されかけるからな」
「……わかった」
男女それぞれで喜んだり悲しんだりした身長体重測定を終えた地域文化部メンバーは保健室の前で合流し、ほかの検査に向かった。
内科、眼科、歯科、耳鼻科、視力検診を終え、いったん昼食を食べた後最後の足腰の検査をやり、全員がすべて問題なしと診断された。
「ほい、お疲れさま。後は授業もないから部活だ」
「っ! はい!!」
鷹匠先生に報告に行った望虹は今からの時間、全てを部活に使えると聞いて元気に頷き、全力で他のメンバーの元に走っていった。
「みんな~今日あと部活やって良いって!」
望虹が見えてきた部活仲間に叫ぶ。すると
「「「知ってたけど(ました)」」」
と三人に返され望虹は転けそうになった。
「ええ~みんな知ってたの!?」
という望虹の問いに
「ああ、要項に書いてあったしな」
「時間的にも余裕があったし」
「私としては望虹ちゃんが知っていてこんなに早く動いているのかと思っていました」
三者三様でその理由を答える。
「要項しっかり読んでないし初耳だよ」
「まあ、とりあえず部室に行くぞ。どうせ望虹のことだ、『寧愛亞』のこと気になって仕方ないんだろ?」
「えへへ、その通り。じゃ、早く行こ!」
ほかの三人をおいて自分だけ走り出した望虹。
「あ、待ってよ!」
「少し待って下さい!」
「たく、相変わらずだな、望虹は」
そう言いながら三人も望虹のあとを追いかけた。
はい、完全に健康診断だけになってしまいました。
寧愛亞の謎は次回にお預けです。
誰か望虹達より先にこの謎が分かった人っているんですかね?