望虹達が帰らずの森のことを調べ始めて一週間。五月に入り探索も二日後に迫ったこの日、望虹は学級委員として哲夜と共に代表委員会に出席していた。
「はぁ~早く終わんないかなぁ。調べる時間無くなっちゃう」
「そんなこと言うな、これも仕事の内なんだから。そもそも、大方帰らずの森のことは調べがついてるはずだろ?」
「そうなんだけど、あれしか情報がないのかな、って思ったりもするんだよ」
ここまでの調査で分かったことは
・帰らずの森から帰ってきたのは都市伝説に出てきた人だけだということ
・かつては迷いの森とも呼ばれ、中は迷路のように入り組んでいること
・人が殆ど入らないため、豊かな生態系が作られているらしいこと
くらいなものだった。帰らずの森に魔物が住んでいるとされてから人が殆ど近寄らなくなったため新しい情報がないのはしかたないことなのかもしれないが、それにしても少なすぎる、望虹はそう考えていた。
「でも今日は図書館行く時間ないかぁ」
時計を見上げながら望虹はそう呟いた。
「はい、では以上で代表委員会を終了します。今日の議題を明日クラスにおろして下さい」
ようやく代表委員会が終わりぞろぞろと部屋を後にしていく出席者達。望虹達もその流れにのって部屋を後にする。
「とりあえず教室だな、この紙を置いてこないと」
「うん、そうだね。とりあえず13HRに行こうか」
二人は自分達の教室に向かいながら箱から出てきた小さな紙に書いてあった文の後ろ半分のことや、帰らずの森のことを話した。しかし、たいした答えは出ないまま13HRの教室についた望虹達は教室の扉を開け驚いた。望虹のクラスメートが一人教室で何か読んでいたのだから。望虹が扉を開けた状態で固まっていると気配に気づいたのか残っていた子が読んでいた本から顔を上げ
「あ、神端さん、代表委員会お疲れさま」
と望虹の目を見ながら言った。
「あ、うん、ありがとう、歌梨ちゃん。歌梨ちゃんは何してたの?」
残っていたクラスメート--宮辺 歌梨《みやべ かりん》--に望虹が何をしてたかを聞き返す。
「別に特にやることなかったから学校で本でも読んでよって思っただけ」
「へぇ、なんていう本?」
いわゆる二次元おたくである歌梨の読んでいる本は時々望虹に貸されていた。推理系の小説や魔法、超能力が出てくるものをよく望虹はよく借りていた。
「今日のはね、学校に閉じこめられたすごい才能を持つ15人の生徒が外に出るために校内を調べたり殺し合いをしたりする話」
「どんな話だよ」
哲夜はそうつっこんだが
「それ面白そう! 読み終わったら貸して!!」
「はいはーい。なかなか面白いよ~早めに読むね」
「うん、ありがとう」
「そういえばこれゲームが原作で今度新作が発売されるんだって! ああ~やりて~」
「そうなんだ。あたしも面白かったらお母さんに頼んで買ってもらおうかな」
「いいなぁ、そうやってすぐ買ってもらえるなんて。でも私も誕生日プレゼント前倒しでゲーム機本体と一緒にもらうからいいんだ」
「へぇ~いいなぁ~」
望虹が歌梨との会話に夢中なっていることが分かった哲夜は
「先行ってるからな」
と言ったが望虹はそれに全く気づいていなかったが、哲夜はたまにはそういう話も必要だろうと思ってそのまま離れ部室に向かった。
「この前の小学生の魔法使いのやつも良かったよね」
「うん、最後の周りの魔力を集めるのなんて本当にやったら星の光が集まるような感じなんだって」
「きっと綺麗だけど……あの受けた方の子、よく死ななかったよね」
「まあ物語だから」
「確かに」
そうやって二人で笑い合いながら話してる内に完全下校時間になってしまい、家の方向が全く違う二人は昇降口まで話しながら行き、そこで別れた。
そしてふと、望虹は哲夜が居ないことを思い出す。
「どこ行ったんだろ? 部室かな?」
そう思った望虹は部室に戻ろうとするがそこに
「あ、神端さん」
と後ろから声をかけられた。
「あ、彩加ちゃん」
望虹が立ち止まって振り返るとそこには望虹のクラスメートである舞園 彩加《まいぞの あやか》がバトミントンのラケットをもってそこに居た。螢華と同じモデル体型で、ある歌手グループのセンターマイクを勤めている正真正銘のアイドルだ。ちなみに、螢華と彩加を合わせて13HRの二大美女と呼ばれていたりもする。
「彩加ちゃんは今日は部活?」
「うん、せっかく自分がやりたいことを見つけられたから、しっかりやりたいんだけど時間がなくて……」
「でも、彩加ちゃんならきっと大丈夫だよ! お仕事も部活も頑張ってね」
「うん、ありがと」
少し俯き照れ臭そうにお礼を言う彩加を見て望虹は思わず可愛いと思っていた。
「じゃあ、またね」
「うん、じゃあ」
彩加と別れ部室を見に行こうとした望虹に今度は前から声がかかった。
「望虹、久しぶりにガールズトーク出来たか?」
哲夜だった。そこで望虹は哲夜がわざといなくなったことに気づく。
「哲夜君……」
「ん? 何だ?」
「ありがとね」
年相応のあどけない、満面の笑顔で望虹はそう言った。