逢魔のときに……《更新停止》   作:月白弥音

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調査

そうこうしている内にやってきたゴールデンウィーク初日の夜。

望虹たちは晨明中学に一度集まった。

「ごめん、みこっち遅くなっちゃった」

「ううん、大丈夫だよ、柚㮈ちゃん。だってまだ集合時間前だもん」

地域文化部メンバーがそろっていた、つまり最後だった柚㮈は謝りながら走ってくる。望虹はそんな柚㮈にまだ時間になっていないことを告げる。

「あ、ホントだ。まだ10分前じゃん……ってみこっちが時間より前に来てる!」

「やっぱり驚きますよね……」

「いや、驚くことじゃないと思うんだけど……」

「いえ、驚くべきことですよ、望虹ちゃん」

螢華に笑顔で言われた望虹はとてもショックを受けたような表情をした。しかし、普段から時間にルーズで、いつも約束の時間ぴったりか、遅れてくる望虹が時間より前にいるのだから驚くのは当然のことだろう。

「……さて、みんな揃ったみたいだし、行こうか」

ショックから抜け出した望虹は気を取り直すようにそう言うと帰らずの森に向かって歩きだした。

 

 

帰らずの森は陰陽山の麓に位置する森で依代町から陰陽山に行く最短ルートでもある。だがそこを避けて陰陽山に向かっている理由は知っての通りだ。そのため帰らずの森に行く道は昼間でも滅多に人が通らない場所なのだが今は夜、ということもありより不気味な様子を纏っていた。

そこを歩きながら

「ねぇ、ところでなんで夜なの?」

と柚㮈がかなり今更な質問をした。

「それは出てきた漢文の内容からですよ」

奈津稀が得意そうに答えた。

「内容?」

「はい、『彼らが眠りしその地にて天を仰ぎ宙に輝く光を集めよ』という文があり、そこから『宙に輝く光』が星の光だと判断したからです」

「へぇ、なるほどね」

奈津稀の解説に納得した柚㮈は思っていた以上に予想がしっかりされていることに驚いていた。

その後は何か話すということもなく、緊張した空気と共に帰らずの森に向かっていった。

 

 

 

「着いたね」

歩くこと5分、帰らずの森の入り口に来た望虹達は一度立ち止まる。

「もう一度確認するね」

望虹は後ろに振り返り、自分の仲間と向かい合う。

「今回の目的は帰らずの森に魔物が住んでいるという都市伝説の真偽を確かめること。そして……」

「その魔物と呼ばれている方達に心をあげること、ですね」

螢華が望虹の言葉の後半を確認するように言う。

「うん、そのためにきっとこの小さい宝石みたいなのが役に立つんだと思う」

「その辺りは前に話した通りだな」

「そうだね、他に何かある?」

望虹は哲夜の話を肯定し、他に何かあるかと聞く。

「えっと、もしそれを使う暇なく襲われたらどうする?」

おずおずと手を挙げながら望虹に聞いたのは奈津稀だ。

「う~ん、そうだね……どうしよっか?」

そこまでは考えてなかったという感じで首を傾げた望虹。

「まあ、とりあえずてっちゃんは剣道やってたんだし大丈夫でしょ」

そんな望虹に柚㮈は哲夜に任せれば大丈夫と言い出す。

「そ、それはさすがに哲夜君が大変だよ」

慌てて望虹が柚㮈の案を却下しようとする。その言葉に奈津稀が反応して

「なら僕も手伝うよ。これでも合気道やってたし」

と哲夜に協力すると言った。

「で、でも……」

「大丈夫だ、まだやることが残ってるからな、まだ死ねない、死ぬわけがない」

「そうそう、僕もみんなが傷つくのは見たくないし」

「奈津稀君、哲夜君……」

前に読んだ本の台詞を引用した哲夜は言わずもがな、普段、顔も行動も女子らしさがある奈津稀も、今はとてもかっこよく見え、頼ることができると感じた。

「……じゃあ、そうしようか」

二人の迫力に押された望虹が渋渋ながら折れた。

「でも、これだけは約束して」

望虹が普段見ないような真剣な顔をして付け足す。

「どんなことがあっても必ず生きて、五体満足のままで戻ってくるって。もう目の前で誰かが傷つくところなんて見たくないから……」

最後は目に涙をためながら言った望虹。その事情が分かっている奈津稀と哲夜はあえて何も詮索せずに

「ああ、もちろんだ」

「うん、みんなでしっかり戻ってこようね!」

とだけ返した。それを聞いた望虹は目を涙で濡らしたままだったが、とびっきりの笑顔で笑った。そして、一際大きな涙が一つ、頬を伝い地面に落ちた。

「ほら、行かないのか?」

その理由を知りながらも普通に接してくれる哲夜……

「早く行こうよ、望虹!」

奈津稀……

「さあ、行きましょう、みなさんお待ちですよ」

螢華……

「おーい、置いてっちゃうよ?」

そして柚㮈。みんながいたからこそ望虹は今ここにいる。

「……みんな、ありがとう」

「だから、早くしろって」

「うん!」

望虹は螢華と森に入りそうなところまで行っていた他の地域文化部メンバーと柚㮈の元に走っていった。

森は今まで来た道よりも遙かに不気味で異様な雰囲気だった。でも望虹は確信していた。この仲間となら必ず帰ってこれる、謎を解明できると。

「お待たせ! じゃあ、行こう!!」

 




今回触れた望虹の過去はいずれ語られます。
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