鹿児島のとある神社、神代一族が治めていたその神社はアリー=アル=サーシェスとネームレスの二人の襲撃によって廃墟同然となっていた。
名家の姫であり、牌に愛された子の一人である神代小蒔が連れ去られたという出来事は大きなニュースとなり、神社には毎日のように大勢のテレビや新聞の記者が来て関係者から話を聞こうと待ち伏せや突撃取材を行っていた。
そんな無礼な連中に困り果てた神代家は神社には関係者以外、立ち入り禁止にさせマスコミや野次馬達を寄せ付けないようにしたのであった。
そんな神社に深夜、三人の男が闇夜に紛れて侵入し何かを調べているかのように歩いていた。
「こりゃあ酷い有り様だなぁ……よりによって神社を焼き払うとは罰当たりにも程があるぜ」
黒焦げとなった柱を擦りながら大柄な体格に特徴的なモミアゲの男が眉をひそめる。その後ろで褐色の肌にサングラスをかけた男が両手をズボンのポケットに入れ、気だるそうに首をポキポキと鳴らしている。
「おいおい相棒、お前さんも少しは手伝ってくれよ。俺達は観光をしに鹿児島まで来た訳じゃないんだぜ?」
全くやる気を見せないサングラスの男に大柄の男――マキシマは言葉をかける。それに対しサングラスの男はチッと舌打ちをしながら足下に落ちていた石ころを踏み砕いた。
「……こんな廃墟を歩き回った所で得るモノなんて何一つねぇと思うがな……」
「まぁ、お前の言いたい事も分かるが……今は奴等に繋がる手掛かりを一つでも多く探し出していく事だ…チリも積もればなんとやら……だぜ相棒?」
不満を漏らすサングラスの男をなだめつつマキシマは手についた煤を払う。宝石を散りばめたように星々が輝く夜空をサングラス越しに見上げながら、褐色の男――K'(ケイダッシュ)は「俺は派手にいきてぇんだが……」と呟く。
そんな物騒な相棒にマキシマは半ば呆れながらも、その口元には笑みを浮かべていた。
「K'、マキシマ。こっちに来てくれ」
そんな二人の耳に自分達を呼ぶ若い男の声が入った。すぐさまK'とマキシマは声の主の方へと駆け付ける。
二人が移動した先には珍妙な出で立ちをした男が一人、無言で仁王立ちをしていた。
そう、珍妙な出で立ちで。
金色の髪に緑を強調した軍服、そこまでは良い。しかし、赤い羽織に武者のような仮面、左右一振りずつ腰に差した刀を装着したその姿は明らかに珍妙、これが珍妙で無くてなんになるというのだ。
「どうしたMr.ブシドー!何か、手掛かりになるモノでも見つかったのかい?」
そんな異端そのものの姿をした彼に相応しい呼び名と共にマキシマは男に話しかける。 珍妙な男改めミスター・ブシドーはコクリと首を縦に振った後、下り坂の先を指差す。
ブシドーが指差した先にあったもの、それは地面に深々と残された爪の形をした巨大な穴。それを見たマキシマの顔から笑顔が消えた。
「おいマキシマ、コイツは……」
「ああ……!残留エネルギーも完全に一致……間違いなくあの男……アリー=アル=サーシェスが放った衝撃波によって作られたモンだ……!しかも、あの時よりも威力が上がってやがるぜ……!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら拳に力を入れるマキシマ。K'もまた、マキシマほどではないにしろ苛ついた様子でチッと舌打ちをした。
ブシドーはそんな二人を無言で見ていたが、何かに反応するかのようにピクリと眉を動かすと後ろを振り向き口を開く。
「どうやら今回はここまでにした方が良さそうだ……」
ブシドーの視線の先にいるのは右手に警棒を構えた数名の男、どうやら神社の警備にあたっている者達のようだ。
「チッ……あんな奴等、気絶させれば良いだろうが……」
今だに苛ついているK'が赤いグローブを装着した右手をバキバキと鳴らしつつ、今にも警備員達に襲いかからんと身を屈める。
しかし、それを制止するかのようマキシマがK'の肩を叩いた。
「止めとけよ相棒、ここで警備員の皆さんに八つ当たりしたって仕方ないだろう。……お前のその怒りの炎は奴と、アリー=アル=サーシェスと戦う時まで取っておけ」
「…………」
しばし無言になり警備員達を睨み付けるK'だったが、チッと舌打ちをするとしぶしぶといった様子で右手をポケットの中に入れる。
K'をなだめたマキシマだったが内心ではK'と同じくひと暴れたい気分であった。マキシマの脳裏に映るは、炎の中で血に染まったような赤い剣を振るい、愉快そうに笑うサーシェスの姿。
『どうしたどうしたぁ!? てめぇらの力はそんなんじゃあねぇはずだろーがぁ! もっと抵抗して俺を楽しませてみろやぁ……なぁ!』
まるでゲームのように、人を斬り刻み笑い続けるアリー=アル=サーシェスの姿を思い出すだけでも胸糞が悪くなる。
己の胸の中で燃える憤怒の炎、それをどうにか抑えつけたマキシマは大きく息を吐き出しブシドーとK'に視線を送る。
ブシドーとK'は無言で頷くと警備員に見付からぬようにマキシマと共に走り出していった。