【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~   作:スターダイヤモンド

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【お詫び】
昨日3月19日22時に、同時進行で書き進めている別作品の話を、誤ってUPしてしまいました。
その後、読者の方からご指摘頂き、22時40分頃に削除致しております。
お読み頂いた方に、慎んでお詫び申し上げます。





嘘つき

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!…って…なんだ、千歌か…」

 

「なんだ…はないでしょ?」

 

「ん?そちらは?」

 

「あっ、この間話した…隣に引っ越してきた同級生の…」

 

「こんにちわ。桜内梨子です」

 

「…で、この人が果南ちゃん」

 

「果南先輩でしょ!」

 

「えへへ…」

と千歌は、ペロッと舌を出した。

 

 

 

ルビィと花丸から『逃げてきた』千歌は、そのまま梨子を連れて、果南のいるダイビングショップを訪れた。

 

 

 

「ダイビングの予約をしに来た…って、感じじゃないわね…」

 

「わかる?…ごめん、今日はそういう気分じゃないんだ…」

 

「…何かあった?」

 

「うん、実は…」

と千歌は、昨日、今日の顛末を話した。

 

 

 

「…なるほどねぇ…」

と一通り話を聴き終わった果南は、腕組みをしながら、そう呟き…続けて

「それで千歌は、どうしたいの?」

と訊いた。

 

「それが…よくわからないんだ…」

 

「わからない?」

 

「ステージに立てた…ってことに対しては満足してるの」

 

「満足?」

 

「もちろん、上手くいかなかったことについては残念だったし、悔しいけど…でも、それが私の実力だっだんだ…と思えば納得もできる」

 

「ふ~ん…」

 

「だけど…曜ちゃんには、どうやって謝ったらいいか…凄く期待してくれたのに、裏切っちゃって…」

 

「曜ちゃんが怒ってるのは、失敗したことじゃないんじゃない?」

 

「えっ?」

 

「千歌の話を聴く限り…私も曜ちゃんと同じ気持ちだから」

 

「えっ?」

 

「今すぐ千歌をひっ叩(ぱた)きたいくらい」

 

果南の顔が厳しくなった。

 

 

 

「ひっ!」

 

千歌は反射的に後ろに飛び退(の)いた。

 

 

 

「なんて…私は叩かないけどね」

 

「何がそんなにダメなのかな…」

 

「それは自分で考えなさいよ。曜ちゃんとは長い付き合いでしょ。彼女の性格やこれまでの言動を遡れば、おのずと答えはわかるんじゃないかしら」

 

「…」

 

「あっ、そうそう…千歌に手紙を預かってるんだ」

 

「手紙?…」

 

「はい、どうぞ…」

 

「えっ?2通も?」

 

果南が千歌に手渡したもの…1通は縦書きの白い封筒、もう1通は横書きのレターセットだった。

縦書きは毛筆で、横書きは万年筆で…共に宛名は『CANDY様』と書いてある。

しかし、差出人の記載はない。

 

「誰から?」

 

「さぁ…」

 

「さぁ…って…」

 

「気が付いたら、外のテーブルに置いてあったの」

 

「そんなことってある?」

 

 

 

…まさか、曜ちゃん?…

 

 

 

千歌は早速、縦書きの封筒を開いてみた。

 

 

 

「『拝啓…CANDY様。新入生歓迎発表会でのステージを拝見させて頂きました。正直申し上げてガッカリ致しましたわ。あのようなステージを観せられて終わり!では、私たちは納得できません!次回は完璧なパフォーマンスを披露して頂けますようお願い致します…敬具。追伸…貴女にその意地があれば…ですが』」

 

 

 

毛筆で書かれていたその文章は、CANDYを叱咤激励するものだった。

 

 

 

「次回…意地…」

 

読み終わった千歌は、そう呟いたあと、しばし無言となった。

 

 

 

「千歌ちゃん、もう一通は?」

 

「えっ?あっ…」

 

梨子に促されて、彼女は横書きの封筒を開けた。

 

 

 

「『拝啓…CANDY様。新入生歓迎発表会でのステージを拝見させて頂きました』…あれ?同じ人?」

 

縦横と毛筆、万年筆の違いこそあれ、書き出しはまったく一緒だった。

 

 

 

…はぁ…

 

…そこまで変えたなら、文章も少しは考えなさいよ…

 

 

 

口には出さないが、果南は心の中でそう思った。

 

 

 

「『結果は伴いませんでしたが、ステージに立った勇気には敬意を表します。そこで、老婆心ながら、私からお伝えしたいことがございます。お二人が披露されたSTART:DASHですが、本家μ'sが初めて発表した時は、ほとんど観客はおりませんでした。人がいなければ、練習と変わらす、普段通りにパフォーマンスができたのではないかと考えております。しかし、お二人のステージは百人ほどの観客がおりました。初めてのライブですし、緊張しないわけがございません。ですから私は、その二つを単純に比較してはいけないと思うのです。最後になりますが、今後の活動、頑張ってください。期待しております…敬具』『追伸…μ'sの園田海未様は、とても恥ずかしがりやだったそうですが、様々な特訓により、それを克服したと聴いております。千里の道も一歩から…ローマは一日にしてならず…ですわ』」

 

 

 

…ですわ?…

 

 

 

千歌の脳裏にある人物が思い浮かんだ。

 

 

 

…いやいや…まさか…

 

 

 

彼女が、自分たちにこんな言葉を掛けるとは思えない。

千歌はその人物を頭から消去した。

 

 

 

「随分μ'sに詳しい人だね。確かに園田先輩は、極度の恥ずかしがりやで…ミニスカートの衣装も着るのがイヤだ』って駄々を捏(こ)ねたみたいだよ…それを治す為に、秋葉原でビラ配りをしたとかしないとか…」

と梨子。

 

「へぇ…そうなんだ…。ステージの上じゃ、投げキッスとかしてるのに…ね」

 

「だから、そこまでなるのに、相当努力したんじゃないかな?」

 

「そう…なの…かな…」

 

梨子の言葉に、半信半疑な千歌。

彼女も、園田海未が恥ずかしがりやだった…という情報くらいは知っている。

しかし、そこまで極端だとは思っていなかったのだ。

 

 

 

「どうするの、千歌?どっちの手紙も次回を期待してるってさ…」

 

果南は千歌の顔を覗き込む。

 

「あっ…うん…」

 

「そういうこと…なんじゃないかな?」

 

「えっ?」

 

「曜ちゃんが考えてること…って」

 

「あっ…」

 

「これは2人の問題だから、私は口を挟むつもりはないけど…あとは千歌がどうするかじゃないの?」

 

「う、う~ん…」

 

 

 

実は梨子にも同じようなことを言われた。

頭ではわかってるつもりだ。

だが、行動が伴わない。

何故ならそれは、自分に自信がないから。

 

 

「口で言うのは簡単だよ…だけど…」

 

「それで千歌が、大事な親友をひとり失ってもいい…って言うなら、それはそれで構わないけど…」

 

 

 

「…親友か…」

 

 

 

…曜ちゃんは私のこと、どう思ってるのかな…

 

 

 

「私から言えるのはこれくらい。あとは自分で考えなさい…自分のことなんだからさ」

 

「う、うん…」

 

「じゃあ、そういう訳で…。仕事を手伝わないんだったら、今日は家に帰りなさい」

 

「…ねぇ、果南ちゃん…最後にひとつだけ訊いていい?」

 

「なぁに?」

 

 

 

「もし、果南ちゃんが千歌の立場だったら、どうしてる?」

 

 

 

「えっ?私が千歌の立場だったら?」

 

 

 

「どうやって、謝る?」

 

 

 

「…そうねぇ…まず、なんで曜ちゃんに叩かれたか、もう一度考える…かな?」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「だって、あの曜ちゃんが千歌に手を出すなんて…よっぽどのこでしょ?それがどういうことか考えて…信頼回復に努める。それも言葉じゃなくて、行動で!…私ならそうするかな…」

 

 

 

…なんて、自分のことを棚に上げて、何を言ってるのかしら…

 

…千歌、こんな嘘付きにはなっちゃダメだぞ…

 

 

 

「だから…自分の気持ちに正直になりなさい!」

 

 

 

「自分の気持ちに正直に…か」

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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