【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
「果南ちゃん!!」
「どうしたの?」
「果南ちゃんさ、毎朝、走ってるでしょ?私もこれから一緒に走る!」
「?」
「私、決心したんだ!自分を変えなくちゃ!って」
梨子と別れた千歌は、その足でダイビングショップを訪れた。
電撃訪問を受けた果南は…いや、彼女が突然来るのはいつものことだが…作業の手を止め話を聴いた。
「なにかあった?」
「…うん…あのさ…私…」
と言ったあと、千歌は言葉を詰まらせた。
話したいことは山ほどあるのだが、なにからどう伝えたらいいかわからない。
その雰囲気を察した果南は
「いいよ…落ち着いてからで…ゆっくりしていきなさい。コーンスープでも飲む?」
と言った。
海に中いることが多い彼女にとって、陸に上がった時に摂る温かい飲み物は必需品である。
千歌は黙って頷いた。
彼女が喋れるようになったのは、そのスープを飲み干してからだった。
「あのね…私…μ'sに憧れて…曜ちゃんにお願いして…ステージに立たせてもらって…結果は上手くいかなかったけど…でも、これが私の実力なんだ!って思ってて…」
「…うん…」
「曜ちゃんには、これ以上迷惑掛けられなから、解散するって言ったら、怒られちゃって…」
「そこまでは聴いたよ」
「うん…」
「まだ、仲直りはしてないの?」
「タイミングが難しくて…」
「…そっか…」
「それでね…だけど、この間…後輩が私たちと一緒にスクールアイドルをやりたい!って言ってくれての」
「凄いじゃない!」
「う~ん…私たちのパフォーマンスが認められた…っていうよりは、スクールアイドルに挑んだことに対して、評価してれた…って感じかなんだけどねぇ…」
「でも、それなら…やった甲斐があった…ってことじゃない?」
「うん…まぁ…」
「それで?受けたの?」
「…断っちゃた…」
と言ったあと、その経緯について説明した。
「千歌らしい…って言えば、千歌らしいわね。あなたなりに、相手を気遣って…ってことでしょ?」
「…うん…」
「だけど、それは長所でもあり、短所でもあるのよね…」
「短所?」
「つまり、千歌には『自分がない』のよ」
「自分がない?…うん、そうかも知れない…」
「自己主張とわがままは紙一重だと思うけど…」
「うん…」
「それで?」
「今日、その後輩が練習しているところを見ちゃって…」
「自分たちでスクールアイドルを始めた…ってこと?」
「うん、しかも1人増えてた」
千歌は軽く笑った。
「なるほど。千歌の助言を受け入れたのね」
「だけど、その瞬間、悔しくなっちゃって…」
「悔しくなった?」
「バカだよね…自分で『やりたければ自分たちでやれば』なんて言っておいて…彼女たちの姿を見たら『あぁ、もう私にはできないんだな…』って思ったら、急に泣きたくなっちゃって」
「どうして?」
「やっぱり…悔いが残ってるんだと思う…ちゃんとステージができなかったことに…」
「自分の気持ちを圧し殺してた?」
千歌はゆっくりと頷いた。
「このままで終わりたくない…終わりたくないんだよ…。だって、最初で最後のステージがあんな形で…一生あの時の記憶が付きまとうなんて…悲しすぎるから」
「だったら、解散するなんて言わなきゃいいのに…」
「曜ちゃんに叩かれたのも、それが理由だと思うんだ。失敗したのに、ステージに立てただけで満足だ…なんて言っちゃったから」
「…」
「それだけかな?」
「えっ」
「曜ちゃんが怒った理由」
「さすが果南ちゃん、なんでもお見通しだね」
「当たり前じゃない、何年、千歌の面倒を見てると思ってるのよ」
「えへへ…そうだね…」
「逃げたから…でしょ?」
「うん…。曜ちゃんにこれ以上迷惑は掛けられない…そう言ったのはウソじゃないけど…何もやり遂げてないのに解散するなんて言えば…それはいくらなんでも曜ちゃんだって怒るよね…」
「はぁ…ようやくそこに気付いたか…」
「…だよね…。ようやく…だよね…」
「それで、どうするの?」
「イチからやり直す!」
「イチ…から?…」
「うん。イチから…。差出人不明の…あの手紙にも書いてあったけど…μ'sの海未さんだって、最初から完璧だった訳じゃなかったんだよね。苦労しながらも弱点を克服して…そしてあれだけの輝きを放てるようになったんだ」
「…」
「私ね…μ'sは普通の高校生なのに、あんなにキラキラしてて凄い!ってずっと思ってたんだけど、ちょっと間違ってた。普通の高校生が、ただそのままμ'sになったんじゃなくて…そこからトレーニングして、努力して…『μ'sになっていった』んだ。だから、努力もトレーニングもしてない私が、μ'sと同じ景色なんて見られるハズがなかったんだよね…」
「μ'sになっていった…か…」
「生徒会長に言われたんだ。申請を出しに行った時『あなたはμ'sと景色など見られません』って。その時は『何言ってるんだ!』って思ったけど…その通りだった…」
「…もしかして、それで一緒にランニングをしたい…って?」
「うん。体力を付けるのは、もちろんだけど…自分でこれだけ頑張ったぞ!っていう自信を持ちたいんだ」
「なるほど」
「そして、生まれ変わった私を曜ちゃんに見てもらうの。曜ちゃんに頼らず、自分で努力してる姿を」
「へぇ…」
「それを認めてもらったら…私の本気を見てもらったら…改めて曜ちゃんに、お願いするんだ。『もう一度、一緒にステージになって。今度は何があっても逃げません!って」
「…」
「だから…早朝トレーニング…ランニング…一緒にさせてほしいんだ!」
「…」
「ダメかな?」
「…わかったわ…。別に私が何をするわけじゃないから、勝手に来るのは構わないわよ」
「あ、ありがとう!!」
「そのかわり…」
「千歌のペースになんか、合わせないからね!そんなことしたら、私のトレーニングにならないから」
「う、うん!わ、わかった」
「じゃあ…どうしようかなぁ…明日の朝、6時に淡島神社の階段下に集合ね」
「6時!?」
「あれ、遅い?5時半にする?」
「あ、いや…6時でいいです…」
果南は千歌の顔を見て、クスッと笑った。
「あとね、果南ちゃん…」
「ん?」
「…スープを…もう一杯くださいな!」
果南はブフッと吹き出した。
~つづく~
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