【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
GW明け。
生徒会室に呼び出されたのは…津島善子、国木田花丸、そして黒澤ルビィの1年生…3人。
「これはあなたたち…なのですか?」
そう訊いたのは…黒澤ダイヤ。
ルビィの姉であり、生徒会長でもある。
「はい…」
「そうズラ…」
善子と花丸は、少し不機嫌そうに返事をした。
「お姉ちゃん…」
「ルビィは黙ってなさい!」
「でも…」
「そうズラ!生徒会長に怒られるようなことはしてないズラ」
「いえ、学校に無許可でアイドル活動を行うことは、充分注意するに値しますわ!」
どうやら、彼女たち…『ふぉ~りん えんじぇる』…がサイトにアップした映像を、ダイヤは目にしたようである。
「しかも、なんですか!?あれは!アイドルの品位の欠片(かけら)もありませんわ」
「アイドルの品位?なんですか、それ?」
と善子。
「はい?」
「そんな定義、誰が決めたんですか!」
厨二病を患っているわりには、意外と言うことがまともだ。
「うっ…」
もっとも、ダイヤはそんなことを知る由もない。
生意気な1年生ですわ!という顔をした。
「…まぁ、その…それは…その…と、とにかく、やるからには、ちゃんと活動の申請を出してください」
「わかったズラ…」
「それから、ルビィ…あなたは、この後、ここに残りなさい」
「…」
「返事は!?」
「は、はい!」
…姉妹喧嘩?…
…う~ん…でも、マルは2人が争うところを見たことないズラ…
…ふ~ん…
2人は、後ろ髪を引かれる想いで、ドアを開けた。
生徒会室は善子と花丸が出ていった後、姉妹だけになった。
「ルビィ、お姉ちゃんにも内緒で…どういうことなのですか?」
「ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいから…ちゃんと説明してください。あなたも、私のスクールアイドルに対する想いを知らないわけではないでしょうに…」
「うん、それはそうだけど…」
ルビィはそう言うと、これまでの経緯を話した。
「なるほどですわ。やはり、あの新人歓迎発表会に出た2年生に感化されたのですね」
「ずっと、スクールアイドルをやりたかったから…。この学校でもできるんだ!って思って…」
「ですが…私も彼女たちのその熱意に押されて、渋々許可をしましたが…結果はあのザマでしたわ。あれで当校のスクールアイドルを名乗るなど…」
「お姉ちゃん!」
「は、はい!?」
「そんなこと言っちゃダメだよ!」
「ルビィ…」
「お姉ちゃんのその理屈なら…下手な人はスクールアイドルをやるな…ってことだよね」
「そ、そうですわ。その程度のレベルでは、恥を掻くだけですから」
「でも、それって差別だと思います」
「差別…」
「初めから上手な人なんていないと思うし…お姉ちゃんたちだって、きっとそうだったんだし…だから、それをお姉ちゃんの判断で決めるなんて間違ってます」
「そんな!私は経験者として、後輩に恥ずかしい思いをさせたくないだけです」
「恥ずかしい思い…って、ダメなことなんですか?」
「えっ!?」
「ルビィは人見知りで、誰かに話しかけられるだけでドキドキしちゃうけど…でも、それを克服しなきゃ!…って思ってます。だって『あの花陽さん』も、最初はルビィと同じだったんですから…。だから、ルビィだって…」
「ルビィ!!」
「ぴぃ!!」
「…大人になったわねぇ!!」
「ぴぎぃ!」
「うん、うん!そうか、そうか!いや、いや、ルビィも立派になったねぇ!世は満足じゃ!」
姉は妹を抱き寄せると、頭をナデナデした。
「もう!お姉ちゃん、キャラ変わりすぎですぅ…」
「はっ!誰も見ていませんね?」
とダイヤは、周りをキョロキョロと見る。
…こんな時、鞠莉さんがひょこり現れたりしますからね…
「そういうことでしたら可愛い妹の為、お姉ちゃんは全力で『ふぉ~りん えんじぇる』をサポート致しますわ!」
誰もいないことを確認したダイヤ。
安心したように言い放った。
…職権乱用…
…そうズラね…
…それと…妹の前だと、あんな風になるのね…
…あそこまでとは知らなかったズラ…
ドアの外でそば耳を立てていたのは、善子と花丸。
…でも、これで生徒会長のお墨付きはもらったようなものじゃない…
…そうズラね…
…だけど…『経験者』って…なに?…
…それはわからないズラ…
…アンタ、ルビィとずっと一緒にいるんでしょ?なんで知らないのよ…
…ごめんズラ…
…ふ~ん、アンタにも秘密にしてるってこと?…
…かも知れないズラ…
…でも…裏を返せば…そこが生徒会長の弱みなのかも知れないわね…
…弱み…
…さて、盗み聞きがバレないうちに、ズラかるわよ!ズラ丸だけに…
…意味わからないズラ…
2人は、音を立てずに、忍び足でその場を去っていった。
「元気ないじゃん!?」
「えっ?あ、うん…」
クラスメイトに訊かれ、曜は少し伏し目がちに答えた。
彼女の名は『むつ』。
いつも『よしみ』『いつき』つるんでいるため、仲間内では、3人のことを『よいむつトリオ』などと呼んでいる。
千歌と曜とは…親友…というほどではないが、それでも、行動を共にすることも多く、仲は悪くない。
「なにかあったの?」
珍しく単独でいる彼女が、心配そうに声を掛けた。
「べ、別に…。ほら、私は今、部活が忙しいから…」
「ふ~ん…」
「なに?」
「いや、それだけじゃないでしょ?」
「えっ?」
「嫉妬…」
「嫉妬?」
「千歌を…桜内さんに盗られた…とか思ってない?」
「そんなこと…」
「ここのところ、ずっと一緒だもんね!あの2人…」
「…それはそれで、いいんじゃない?私がとやかく言うことじゃ…」
「朝練も一緒にしてるでしょ?」
「朝練?誰が?」
「えっ?だから…千歌と桜内さん…知らないの?」
「…」
「この間、たまたま用があって『いつき』が朝早く淡島神社の側に行ったら…2人がランニングしてたらしいの。それで…どうしたの…って訊いたら『朝練だ』って…。何の朝練かまでは知らないけど、ここのところ、ずっと走ってるんだって」
「そう…なんだ…」
「本当に知らなかった?」
「…さっきも行ったけど…ここのところ部活が忙しくて…」
「…そう…まぁ、2人のことだから、私は口出ししないけど…まぁ、何か悩みがあるんだったら、相談しなさいな」
「えっ?あっ、うん…そうだね…」
「曜が元気ないと、こっちも調子狂うんだよねぇ!」
「ありがとう」
「いえいえ、困った時はお互い様ってね!」
「うん」
「じゃあ、帰るね!部活頑張って!」
「うん、バイバイ!」
…2人が朝練?…
…いつから?…
…あっ!そういえば…授業中、すごく眠たそうにしてる時があったっけ…
…っていうことは…
…あの頃から?…
…あれ、なんでだろう…
…こんなに悲しい気持ちになるのは…
…別に千歌ちゃんが何をしててもいいじゃない…
…なのに…
…どうしてこんなに切なくなるの…
「渡辺、大丈夫か?」
水着に着替えた曜に、注意したのは部活のコーチだ。
「は、はい!」
「まったく集中してないみたいだが…」
「すみません」
「調子悪いなら、帰れ」
「いえ…」
「怪我されても困る」
「…」
…曜、最近、ずっとあんな感じじゃない?…
…スランプ、長いわね…
…このままじゃ、強化指定も外されるんじゃない?…
先輩部員の囁く声が、曜の耳にも届く。
…私、何してるんだろう…
彼女は大きく溜め息をついて、プールをあとにした…。
~つづく~
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