【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
リスタート!
「…ひとり増えた…とおっしゃるのですか?」
ダイヤは目を丸くして驚いた。
「はい!ここにいる桜内梨子ちゃんが、仲間になりました!」
千歌が差し出した申請書には『3人目の名前』が記載されていた。
「あなたたちの活動は終了したものだと思ってましたわ…」
「えへへ…そうですね。でも、そう簡単に終わらすわけにはいきません。だって…♪諦めちゃダメなんだ その日は絶対来る…ですから」
と千歌は…自らが体育館のステージで歌った曲の一節…を口ずさんだ。
その後ろで、曜と梨子はにこやかに微笑んだ。
先の『行方不明事件』をきっかけに、それぞれの想いを綴った手紙を交換し、2ヶ月弱続いたギクシャクした関係に終止符を打った千歌と曜。
そこに梨子が加わり、新たなユニット名を引っさげて「スクールアイドル活動を再開する」と生徒会長に告げたのだった。
「新しいユニット名…『CANDLY』…ですか?『ろうそくのような』…ってとこでしょうか」
「はい」
「…あまり意味はわかりませんが…」
「えへへ…『Chika AND Liko,You』の略なんです」
「本当は私は『L』じゃなくて『R』なんですけどね…」
梨子は恥ずかしそうに俯いた。
「いいの!Lの方がカッコいいんだから!」
と千歌は気にも留めていない。
「C…AND…L…Y…なるほど…ですわ」
…吹けば消える…ということにならないようにして欲しいものです…
「それはそれとして…ひとり増えても、ふたり増えても、あなたたちではμ'sにはなれませんよ」
その言葉はユニットを結成した時にも聴かされた。
「それはわかっています。でも、気が付いたんです。μ'sだって最初から完璧じゃなかったハズなんです。苦しんだり、悩んだり…色々、試行錯誤しながらお互いを高めていって、ラブライブで優勝するまでになった。だから、私たちも一歩づつ、頑張っていこう!そう決意したんです」
「…わかりましたわ…とりあえず申請書はお預かり致します」
前回と違ってダイヤはアッサリOKを出した。
「それと、ついでにもうひとつお願いが…」
「なんでしょう?」
「私たちの練習場所として、学校の屋上を貸して欲しいんです」
「屋上…ですか?…しかし、あそこは…」
「妹さんたちが、使われてるんですよね?」
千歌は少し意地の悪い言い方をした。
彼女が「スクールアイドルを始めたい!」と言った時には、頑なな態度で拒否をしたダイヤ。
そうまでして反対する理由は定かでなかったが、妹たちの活動には寛容だったようだ。
当初、中庭で活動していた彼女たちの練習場所は、いつの間にか屋上へと格上げされていた。
それを逆手に取った千歌の交渉。
μ'sを愛するものとして『屋上で練習する』というのは、やはり憧れであり『外せないシチュエーション』なのだ。
「えぇ…まぁ…その…」
「ウチの学校の屋上は広いし…大丈夫です、邪魔にならないように練習しますから…お願いします!」
「お願いします!」
千歌が頭を下げたのを見て、曜と梨子それに続いた。
「えぇ…まぁ…仕方ないですね…」
この件に関しては、ダイヤの方が形勢は不利。
押し切られた格好だ。
「チャオ!」
「鞠莉さん!…いえ、理事長!ノックぐらいはして欲しいですわ!」
ダイヤは、彼女が肩に掛けている『襷』を目にして、呼び名を言い直した。
「ソーリー!」
口ではそう言ったものの、彼女の表情を見ると、正直あまり意に介していない様子だ。
むしろ、浮かれているようにも見える。
「なにか?」
ダイヤは、怪訝な顔をして鞠莉を見た。
「沼津の駅前で行われるフェスティバルに参加することにしま~したぁ」
「は、はい?なんですか、突然!?」
鞠莉の言葉に、ダイヤだけでなく、2年生の3人も『?』の目をして彼女を見た。
「はぁ…」
「だから、本校もそれに参加することにしましたぁ」
鞠莉は同じ言葉をを繰り返した。
「はぁ?」
4人が鞠莉を見る。
「ステージでパフォーマンスで~す!」
「な、何故、そのような勝手なことを!?」
動揺するダイヤ。
「ホワット?」
「ですから、何故そのような大事なことを勝手に決めてくるのですか!?」
「ビコーズ…アイ アム ア リジチョー」
と、彼女は肩から掛けている襷を指差しながら言った。
「…」
それを言われてはグウの根も出ない。
「イズ ゼア ア プロブレム?」
「い、いいえ、問題ありませんわ!!」
からかうように、英語で質問した鞠莉。
それを承知で、ダイヤはわざと日本語で返事した。
「…ですが…ステージでパフォーマンスと申しましても…今の『浦の星』にはそれが出来るような部活はありませんわ」
「そうだよね…他の高校みたいに吹奏楽部とか、ダンス部とかないもんね」
「サークルとかでいいなら、バンド組んでる先輩とかはいるけどね…」
話を聴いていた千歌と曜が、ボソリと呟いた。
「出演するのはユーたちです」
「あははは…違いますよ理事長。曜ちゃんはユーじゃなくてヨウですよ。確かにYOUで同じスペルだけど…」
「ノー、ノー、ノー、ノー…ステージに立つのは、ユーとユーです」
と鞠莉は、千歌と曜を見た。
「えっ?」
「ステージに立てるのは各高校の『スクーアイドゥ』なので~す!!」
「な~んだ、そういうことか…」
「…」
「…」
「…」
「え~っ!!」
「わ、私たち?」
「イエース!!この学校にもスクーアイドゥーならありま~す!確か…『パンティー』でしたね?」
「『キャンディー』です!!」
「オー、ソーリー!」
「でも、1人増えて、『キャンドリー』になったらしいですわ」
「ホワッツ?」
さっきまでの経緯を知らない鞠莉は首を傾げる。
しかしダイヤはそれには答えず
「ですが、理事長。スクールアイドルでしたら、もう1チームござますわ」
と言葉を続けた。
「知ってま~す!…なので、フェスティバルには両方出ればいいと思いま~す!ノープロブレムで~す」
「理事長…」
…何が目的なのですか?…
ダイヤは…睨む…というより、鞠莉の心を透視するような目で、彼女を見た。
「どうしよう!どうしよう?」
「千歌ちゃん、少し落ち着こうよ」
曜はパニクっている彼女の肩を、二度ほど叩いた。
「う、うん…わかってるけど…いきなり沼津デビューだよ!突然すぎて」
「うん…ちょっとビックリだよね…」
梨子も多少困惑気味である。
「でも、いいタイミングじゃない?梨子ちゃんが入って、再始動する!って言ってはみたものの、その先のことは正直決まってなかったんだし…まずは目標ができた!ってことでしょ」
「それはそうだけど…」
「何組出るのかな?」
と千歌。
「それは私に訊かれても…」
曜と梨子は声を合わせて、そう答え、思わず吹き出す。
だが、2人ともすぐに真顔になった。
「でも、今回は他校のスクールアイドルの云々じゃなくて…」
「1年生に勝たなきゃ意味がないんだよね?」
その言葉を聴いた千歌の顔は、一瞬で引き締まった。
「マルたちが…」
「沼津デビュー?」
姉のダイヤから聴いた情報を、妹のルビィが花丸と善子に伝えた。
「ふふふ…ついにこの時が来たのね!このヨハネの進化した姿を、下界の者どもに知らしめる時がやってきたんだわ!」
「アホくさ…」
仰々しく両手を広げ、ひとり悦に入る善子を見て、花丸は冷たい視線を注いだ。
「でもね…善子ちゃん…」
「ヨハネって呼びなさいよ!それから、いい?アンタは『べリアル』!ズラ丸は『アザゼル』!!いい加減に覚えなさいよ」
「う、うん…ごめんなさい…」
「それで…何?」
「…えっと…その…理事長さんが『でも、ひとつの学校にふたつのスクーアイドゥはいりませ~ん!』って」
ルビィは鞠莉の口調を真似ながら告げた。
恐らく、ダイヤが彼女にそう伝えたのだろう。
「どういうことズラ?」
「そのステージで人気が高かった方に『ラブライブの予選参加を認めま~す!』って」
「ん?」
「…ってことは…先輩たちと…対決するズラか?」
ルビィは黙って頷いた。
~つづく~
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