【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~   作:スターダイヤモンド

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2から3に?

 

 

「鞠莉さん、いったい何を考えてるのですか?」

 

千歌たちが退室したあと、生徒会長は理事長を問い詰めた。

 

 

 

「ホワッツ?」

 

彼女は右耳に手を添え『なんですか~』と言う仕草だ。

ダイヤには、それが『おちょくられている』ように感じられ、鞠莉をグッと睨んだ。

 

 

 

「フェスティバルに参加などと…」

 

「アピールで~す!」

 

「はい?」

 

「ここ…浦の星女学院の…」

 

「えっ?」

 

「ここまで言えば、ダイヤさんなら…アンダースターンドですね?」

 

「あっ!ま、まさか…」

 

「イエース!」

 

 

 

「状況は…それほど深刻なのですか?」

 

ダイヤの顔が『怒』から『哀』へと、シフトする。

不安でいっぱい…そんな感じだ。

 

 

 

「…」

 

鞠莉は返事をしなかった。

その表情に笑みはない。

彼女の瞳をジッと見つめたダイヤは…それが、どれほど真剣なものかを読み取った。

 

 

 

…どうやら、ふざけているワケでは無さそうですね…

 

 

 

「そうなのですか…。で、ですが…それでも、当校の生徒をラブライブに引っ張り出すなんて、私は反対ですわ!」

 

「ホワ~イ?」

 

「音ノ木坂のケースは『奇跡』なんです。レアケースです。環境が違いすぎますわ!」

 

「じゃあ、鞠莉さんは…この学校が『無くなってもOK』なので~すね~?」

 

「なっ!…そ、そんなことはありません!!…ありませんが…何か別の方法があるハズですわ!それに…」

 

「それに?」

 

 

 

「妹にも、後輩たちにも、私たちのような思いをさせたくはありません!」

 

 

 

「どうして、同じだと決めつけるので~す?」

 

 

 

「うっ…それは…その…ですが…わかってるハズです、鞠莉さんも。こんな地方のスクールアイドルなど、大都市の人たちには敵わないことを!!」

 

 

 

「…私たちが負けたのは…それが理由だとでも?」

 

鞠莉の口調と表情は、一段と厳しくなった。

 

 

 

「そう割り切らなければ、やってられません!!」

 

バンッ!と机を叩き、ダイヤは部屋を出て行った。

 

 

 

「ダイヤはいつでも『アノ日』みたいで~す…」

 

その様子に鞠莉は、肩を窄(すぼ)めて、何度か首を横に振ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌は放課後、例のダイビングショップを訪れ、鞠莉の話について…店を任されている…果南に報告した。

 

 

 

「へぇ…鞠莉がそんなことを…」

 

「うん!相変わらず生徒会長は厳しい顔をしてたけどね」

 

「そう…鞠莉が…そんなことを…」

と彼女は、もう一度同じ言葉を呟いた。

 

「どうかした?」

 

「えっ!?ううん…別に…あ、でも良かったじゃない。出たかったんでしょ、ラブライブ」

 

「ラブライブ…かぁ…考えたことなかったなぁ」

 

「そうなの?」

 

千歌のセリフに、果南は『意外』という反応をした。

 

「えっ?いやぁ、それは『出てみたいなぁ』って思ったことはあるよ。でも…そもそも自分がスクールアイドルをすること自体、夢のまた夢だったし…だから…」

 

「なるほどね!じゃあ『道は開けた!』…ってとこかな?」

 

「えっ!?」

 

「キッカケはどうであれ、目指すものができた。漠然と歌って踊るよりは、何か目標があった方がいい!ってこと。もちろん一朝一夕で、どうなるものじゃないと思うけど」

 

「う、うん…そうだね…」

 

「あら?あんまり乗り気じゃない…って感じね?」

 

「そういうわけじゃ…」

 

「何か不安があるなら言ってごらんなさい」

 

「不安ってわけじゃないけど…」

 

千歌は一拍置いてから

「1年生と競わなきゃいけないのって…何か違うんじゃないかな」

と言った。

 

「?」

 

「同じ学校の中で『勝った』とか『負けた』とか…その…戦うことから逃げてるとか、そういうんじゃないよ。メンバーも増えたし、私も真剣にやろう!!って思ってるんだから。それにコンクールに出るなら…それは実力のある方がふさわしいに決まってるもん!…でも、それはわかるんだけど…」

 

「けど…」

 

「なんか、モヤモヤするんだよねぇ」

 

「それは…負い目じゃない?」

 

「負い目?」

 

「一緒にやりたい!っていう依頼を断っちゃったこと…にも関わらず、活動を再開させたこと…それなのに、自分たちが学校代表になっちゃたらどうしよう…そういうマイナスな気持ち」

 

「うん…それはあるかも…」

 

「じゃあ、一度、話をしてみれば?」

 

「ん?」

 

「1年生が、どう考えてるのか…。もしかしたら、彼女たちの目標に『ラブライブは無い』かもしれないじゃない。それなら、代表を争うこともないでしょ」

 

「そ、そうだね…。うん、ありがとう。まずは、謝ることからしてみるよ」

 

「少しは役に立ったかしら?」

 

「バッチリだよ!!」

 

「なら、良かった」

 

果南は、ホッとした顔をした。

いや、安堵の表情…と言うよりは、敢えて微笑みかけているようにも見えた。

もちろん、その相手は千歌に向かってである。

自主トレを始めてから、彼女から前向きな言葉が増えてきたことを喜ばしく感じていたからだ。

 

 

 

「でもさぁ…理事長も思い付きで、勝手に決めないでほしいよね」

 

「ん?」

 

「イベントの出演とか、ラブライブへの出演権とか」

 

 

 

「何か考えがあるん…」

と果南は言いかけて、慌てて口を噤んだ。

 

 

 

「考え?」

 

 

 

「ごめん、ごめん!間違えたわ。『何も考えてない!』って言おうと思ったの。鞠莉のことだから…思い付きって言うより、気まぐれ?彼女は割とラテン系な性格だから、それは充分あり得るわ」

 

「だよねぇ!理事長って何でも『ノリ』で決めちゃいそうだもんね!」

 

「まあね…」

 

「良かったぁ!あのμ'sみたいに、統合阻止の為に、宣伝するのかと思ったよ…」

 

「えっ?」

 

「…だけど、いくらなんでも、さすがにそれはないよね…。音ノ木坂とウチとじゃ、環境も条件もまったく違うし…」

 

「そ、そうね…それは…」

 

「もし、そんなことだったら、私たちには荷が重いと言うか、なんと言うか…純粋にスクールアイドルを楽しめなくなるよね?」

 

 

 

「う、うん…まぁ…あ、それより、私、来週から学校に行くから」

 

果南にしては歯切れの悪い相槌を打ったあと、何かを誤魔化すように話題を切り替えた。

 

 

 

「まったく、果南ちゃんは忙しいねぇ。早くしないと、ホント、留年しちゃ…えっ!?…今、なんて?」

 

耳に手を当て、千歌が訊き直す。

 

 

 

「だから、来週から復学するって言ったの」

 

 

 

「わぁ!!」

 

彼女は、大袈裟に両手を挙げて驚いた。

 

 

 

「お父さんがね、ようやく仕事に復帰できることになって…当分、手伝いは必要だけど…」

 

「わぉ!おめでとう!良かったねぇ!」

 

「ありがとう。永らく心配掛けたわね」

 

「いえ、いえ…なんのなんの。…でも、そうすると…果南ちゃんの『カラダ目当て』で通ってるお客さんは寂しい想いをするねぇ…」

 

 

 

「『カラダ目当て』って何よ!…それはちょっと卑猥じゃない?」

 

果南は、ムッとした顔をして千歌を睨んだ。

 

 

 

「あっ…」

 

顔を赤らめる千歌。

 

 

 

「言葉に気を付けてよ」

 

「もちろん、そんな意味で言ったんじゃ…果南ちゃんのナイスバデーが拝めなくなるっていうことだから…」

と千歌は訂正した。

 

「まぁ、手伝いを辞めるって訳じゃないし、土日は出る予定だから、それはあんまり変わらないけど…」

 

「そっか…」

 

「それより、学校であんまり変なこと言わないでよ。おかしな噂が立っちゃったら、復学してもすぐ休まなきゃいけなくなっちゃうんだから」

 

「あははは…ヨーソロー!」

 

曜の真似をして敬礼をする、千歌。

 

「本当にわかってる?…あと、学校ではちゃんと『松浦先輩』って呼ばなきゃダメよ」

 

「ん?」

 

「いくら幼馴染とはいえ、そこはケジメをつけないと」

 

「う、うん…わかった」

 

「わかりました!でしょ?」

 

「え~…今はいいじゃん!!」

 

「ダ~メ!」

 

「うぅ…」

 

「…なんて…」

 

果南は千歌の顔を見ると、プッと吹き出した。

 

「な、なに?」

 

「ううん…別に…やっと千歌が普段通りになってきたな…って思っただけ」

 

「普通怪獣に戻った?」

 

「少し違うかな。フ『ツー』じゃなくて、フ『スリー』くらいになったんじゃない?」

 

「ツーじゃなくて、スリー?なにそれ」

 

「成長してる…ってこと」

 

「レベルアップした?」

 

「ほ~んのちょっとだけね」

 

果南は右手の親指と人差し指の先に、わずかに隙間を作って千歌に見せた。

 

「ほ~んのちょっとだけ…かぁ…。でも、それは果南ちゃんのお陰だよ。色々、助けてくれたから」

 

「まぁね!」

 

果南は豊かな胸を突き出して、自分の手柄を誇示する。

 

「いやいや、そんなに威張らなくても」

 

千歌は彼女が強調した部位をガン見しながら、苦笑いを浮かべた。

 

 

 

「だけど…これからは、あんまり頼らないで…」

 

 

 

「えっ…」

 

不意を突かれた言葉に、戸惑う千歌。

 

 

 

「自分のことは自分で解決する!そうしないと、いつまで経っても大人にはなれないぞ」

 

 

 

「あっ…」

 

「余計なことだったかな?」

 

「いえ…『松浦先輩』、貴重なアドバイスを頂き、ありがとうございます!!」

 

「現金ねぇ」

 

「あっ、そろそろ時間なので…それでは、今日はこれにて、失礼しま~す」

 

「うん、じゃあね」

 

千歌はペコリと頭を下げ店を出ると、走って家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

「鞠莉…あなた、本気でラブライブなんて…」

 

その姿を見送った果南。

そう呟きながら、夕日が沈み行く水平線に視線を送った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南との話を終えた千歌の家に、曜と梨子がやって来た。

3人とも夕食は摂ったのだが、お菓子を食べながら…しかし何やら神妙な面持ちで、打ち合わせを始めた。

フェスティバルに向けての曲の選定会議のようだ。

 

 

 

「やっぱり、μ'sの楽曲から借りてくるのが、一番てっとり早いかな?発表されているやつなら、だいたい頭に入ってるし」

 

「まぁ、そうだよね」

 

曜も千歌が歌っているのを聴いている為、耳馴染みはある。

 

「でも、それは他のスクールアイドルも同じだと思うんだよね…。新鮮さはないかな…一般の人は別としても、μ'sはやっぱり特別な存在だから」

 

「うん」

 

「だから、できれば、みんなが知らない曲の方がいいかな?って」

 

「なるほど」

 

曜が相槌を打つ。

 

「ねぇ…梨子ちゃんは、どれくらい知ってるの?」

 

「えっ!」

 

「μ'sの曲」

 

「私?…たぶん、千歌ちゃんよりは詳しくないかも。意識的に避けてたところがあったから…。聴けば『あぁ…』ってなるくらいかな?」

 

「そっか…」

 

「ごめんね、役に立たなくて…」

 

「そ、そんなことないよ!…でも、ちょっと、私が知らないような曲も知ってるかな?っていうのは期待してたけど」

と千歌は素直な気持ちを吐露した。

 

「そうだね…」

 

梨子はそう返答したが、ふと思い出したように

「あっ!でも…」

と言葉を続けた。

 

「ん?」

 

「そういうことなら、なくはないかな…」

 

「ん?」

 

「ほら、この間の…おまじないみたいな曲、覚えてる?」

 

「『♪頑張らね~ば、ね~ば、ネバギブアップ、ら~らら、な~りたいな!』…っていうやつ?」

 

梨子が千歌を励ます為、窓越しに歌った曲だ。

全体の歌詞は不明だが、μ'sの未発表曲であるらしく、その中毒性の高いフレーズだけが、音ノ木坂の後輩たちに『応援歌』として受け継がれている。

 

「そういう類いのは何曲か、知ってるよ」

 

「へぇ…」

 

「例えば?」

 

「例えば?…そうだなぁ…『♪足りないよ 足りない もっと 時間がね 欲しいんだぁ!』…とか」

 

「うん、うん。あるよね、そういう気持ちになること」

 

「あとは…『♪一生懸命やったよ!』…とか。これはホント、ワンフレーズだけなんだけど…テストとかで『どうだった?』なんて訊かれたときに、これで答えたりするの」

 

「一生懸命やったよ…か…。なんか、ドキッとさせられる歌詞だね…」

と千歌。

 

「ん?千歌ちゃん?」

 

「…これまでの自分を思い返すとね…やっぱり、そうじゃないから…」

 

「おぉ!千歌ちゃん、変わったねぇ!」

 

「曜ちゃん…」

 

「私はそれだけで、もう満足なんだけど」

 

「ダメだよ、こんなんで満足しちゃ!もう普通怪獣は卒業するんだから!」

 

ふふふ…と曜は笑った。

 

 

 

「でも、そうなると、歌詞の全体が知りたいねぇ」

と千歌。

 

「そうだねぇ…。梨子ちゃんの友達とか、先輩とかを辿っていけば…誰か知ってる人にぶち当たるんじゃないかな?」

 

「それはゼロじゃないけど…でも、どうかな?…音ノ木坂のアイドル研究部に、知り合いはいるけど…彼女たちでも難しいんじゃないかな…」

 

「直接、本人に訊ければいいのにね?」

 

「あはは…それね!」

 

曜の『どストレート』な呟きに、千歌は思わず笑った。

 

 

 

「…」

 

 

 

「ん?梨子ちゃん、どうしたの?」

 

 

 

「あるかも!!直接、本人に訊く方法!」

 

 

 

「そうだよね、そんな簡単には…えっ!?今、なんて!?」

 

千歌は、さっき果南にも同じようなリアクションをした。

 

 

 

「ゼロじゃないかも…運が良ければ会えるかも!だよ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「行ってみよう!今週末!」

 

 

 

「行くって…どこへ?」

 

 

 

「東京だよ、東京!」

 

 

 

「東京?…あっ!まさか…」

 

千歌は何かを悟ったようだ。

 

 

 

「たぶん、あそこが、一番会える確率が高いと思う」

 

 

 

「なるほど!さすが梨子ちゃん!」

 

 

 

「?」

 

 

 

曜は怪訝な顔をしているが

「大丈夫!ちゃんと『曜ちゃんも楽しめるよう』に計画するから!」

と千歌は、彼女の両肩をガッチリ掴み…私に任せなさい!とばかりに大きく頷いた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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