【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
「今日は本当にありがとうございました」
「あはは…こっちこそ、押し売りみたいに色々買わせちゃって…ごめんね」
とレジに立つ雪穂。
本人は否定するだろうが、こういった時の表情や口調、仕草の一つ一つは、やはり姉に似ている。
血は争えないものだ。
「いえ、一度は『穂む饅』も食べてみたかったですし」
「先ほど頂いた、柚子味噌団子もすごく美味しかったので」
「なによりも…すごく貴重な事を教えて頂きましたから…」
会計を済ませ、手に紙袋をぶら下げた3人は、口々に彼女に礼を言たった。
「役に立ったのなら、何よりかな」
「はい。早起きして来た甲斐がありました」
「そう…良かった。えっと…これからどこか寄っていくの?」
「そうですね…このあとは、まず神田明神です」
「そりゃそうだ!外せないよね…是非、男坂の階段登りに挑戦してみてね!」
「もちろんです!」
「でも、周りの人には充分注意して」
「はい」
「神田明神だけ?」
「いえ…あとは時間を見ながらですけど…やっぱりここまできたら、秋葉原を散策してみようかと…」
「なるほど、なるほど」
「メイドカフェとかも行ってみたいし…アイドルショップでμ'sのグッズも買いたいし…色んなコスチュームが売ってるお店も行きたいし…」
「コスチューム?」
「ライブの参考にしたいかな…と」
「あぁ…」
「彼女、裁縫がすごく得意で…衣装作りを担当してもらおうかな…って思ってるんです」
と千歌が曜を紹介した。
「そうなんだ」
「それに…実はコスプレマニアなんです!」
「ちょっと、千歌ちゃん、それは言わなくていいよ!」
「えへへ…さっき私の事を暴露したお返しだよ」
「コスプレマニア?」
「はい。正確に言うと…ユニフォームとか制服マニアって言うのかな?」
「あ、父がフェリーの船長やってて…その服装が素敵だな…っていうところから始まって…」
「本当に好きなんですよ~。そういうのを見ると無性に着たくなっちゃうみたいで…人が変わったように、急にテンション高くなっちゃうんです…」
「ち、千歌ちゃん!」
曜は顔を赤くして俯いた。
「…μ'sにもそういう人がいたから、その様子はなんとなく想像が付くなぁ…」
と、雪穂はひとつ上の先輩の顔を思い出し、表情を崩した。
「もしかして…小泉花陽さんですか?」
「うん。普段はフワ~ンってしてるんだけど、お米とアイドルの事になると人が変わっちゃうの」
「その噂はネットとかで見たことはありますけど…」
「でも、なんでも『極める』ってスゴいことだと思うよ」
「はい、ありがとうございます」
と曜は恥ずかしげに頭を下げた。
「ところで…そのコスプレのお店ってどこのこと?」
と雪穂が問う。
「確か…秋葉原の駅前のビルだったよね?」
「!!」
…えっと…
…そこは…
…もしかして…と思ったけど…
…3人には刺激が強すぎるんじゃないかなぁ?…
…まぁ、何事も経験かな…
「そ、そっか…あそこに行くんだ…」
「?」
「ううん…なんでもない。まぁ、折角だから、楽しんできてね」
「はぁ…」
「じゃ、じゃあ…買ってもらったものはみんなナマ物だから、早めに食べて」
「あ…はい!!」
「スクールアイドル…苦しいこととか、辛いことととか、いっぱいあると思うけど…逃げずに頑張れば、絶対その先にいいことがあるから…」
「あ、ありがとうございます!!」
3人はそう礼を言うと、何度も頭を下げながら店を出た…。
「よ…世の中には…あんなにエッチな服があるんだね…」
東海道線の車中。
ボックス席に座った3人は、囁くように話をしている。
「まだドキドキが止まらない…」
「え~梨子ちゃん、ガン見してたでしょ?」
「してないから!!」
千歌が梨子をからかうと、彼女は真っ赤な顔をして否定した。
「…とか言って…千歌ちゃんこそ、あそこで何か買ってたりして…」
「曜ちゃん!!」
今度は曜が千歌をからかう。
彼女たちは最後に訪れた…秋葉原の駅前のビル…が、想像以上に『アダルトな店』だったことに興奮を隠せずにいた。
「えっと…とにかく一旦冷静になろう…」
「う、うん…まず、その事は忘れよう」
「そ、そうだね…」
千歌は恥ずかしさのあまり、火照って汗ばんだ身体を冷ますように、ペットボトルのお茶をゴクリと飲んだ。
曜も梨子もそれに併せて水分補給する。
「そ、それよりも…雪穂さんが落としてくれた曲、もう一回聴いてみない?」
「うん、そうしよう」
千歌と曜は、それぞれの片耳にイヤホンを差し込むと、携帯音楽プレーヤーに落とした『雪穂からのプレゼント曲』を再生した。
「この曲…『デモ』って言ってたけど…3人が凄く楽しそうに歌ってるのが伝わってくるよね!」
と梨子。
「うん、なんか弾け飛んじゃってる感じがいいよね。この曲聴いて、嫌な気持ちになる人はいないと思う」
曜も気に入ったようで、ニヤニヤしている。
「確かに…私が知ってるμ'sの感じとは全然違う!そして『♪わ~おわお…』のバックコーラスが、可愛すぎる!」
「千歌ちゃんのイメージにピッタリ」
「そうかな?」
「雪穂さんが言ってたけど『元気』がいっぱい溢れてる!っていうか」
と曜。
「うん、わかる。でも…どっちかっていうと、元気いっぱいな感じは、私より曜ちゃんの方じゃないかな?」
「つまり…2人にピッタリの曲…ってことでしょ?」
「梨子ちゃん…」
「さすがにμ'sのリーダーの妹さんだけのことはあるなぁ…2人のことを見てパッて『これ!』って曲を選んでくれたよ」
「そんな…梨子ちゃんだけ、違うみたいな言い方しないでよ」
「そうだよ。きっと梨子ちゃんも含めて…3人のイメージから選んでくれた曲だよ」
「…私は…そんなに明るくもないし、元気でもないし…」
「急にそんな顔しないでよ。ピアノを弾いてる梨子ちゃんは、すごくキラキラしてて、凄く輝いてるよ」
「たぶん、あれが本来の梨子ちゃんのキャラクターなんだよね」
「あと、エッチなおもちゃとか見てるときの顔も…」
「だから見てない!!」
「明日、クラスのみんなに教えちゃおう!」
「きゃぁ~やめてぇ~」
梨子は大きな声を出して、立ち上がった。
「?」
「あ、いえ…なんでもないです…お騒がせしてすみません…」
周りの視線が集まったのに気付き、彼女はそう言い訳をすると、ゆっくりと身体を沈め席に戻った。
「も、もう!!」
「ぷふっ…」
「ふふふふ…」
「わ、笑いごとじゃないから!」
「ごめん、ごめん…梨子ちゃんって結構弄ると面白いな…って」
「あぁ、そういうことするなら、もう、協力してあげないから」
「あ、うそうそ冗談だよ、冗談!!」
その様子を見ていた曜は
「よかったね、千歌ちゃん」
と、ふとそんな言葉を口にした。
「えっ?」
「…ん?…ううん、なんでもない!。冗談が言えるような友達ができてよかったね…って単純にそう思っただけだから」
「うん…そうだね…。ほんのちょっと前までは…私の唯一の親友を失うところだったのに…今はこうして2人もそばにいてくれてる…。曜ちゃんにも、梨子ちゃんにも感謝、感謝だよ」
「千歌ちゃん…」
「えへへ…」
外はすっかり日が暮れて、窓に自分の顔が映る。
それは1ヶ月前とは明らかに違う顔だった。
「聴けば聴くほど、忙しくても、充実してた日々を送ってたんだろうな…ってわかるよね!」
「うん!」
「…だけど…」
「千歌ちゃん?」
「それと同時に『頑張れ!』って言われてるみたいだよね!『まだまだ、始まったばっかりだぞ!』って」
「そうだよ。もう、普通怪獣チカッチは卒業するんだから」
「曜ちゃん…うん!今度のフェスティバル、一所懸命練習して、精一杯頑張るよ」
「千歌ちゃん…」
「だから、改めてお願い!ふたりとも、私に力を貸して!」
「ヨーソロー!!」
「うん!」
そして3人は、沼津に着くまで、雪穂に貰った曲を代わる代わる聴いて帰った…。
…
注:ここに『WAO-WAO-Powerful day!』の歌詞がありました。
…
~つづく~
運営から指摘を受けて一部内容を修正しました。
※歌詞の削除
2018/11/14
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