【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
「おぉ!盛り上がってるねぇ」
「『理事長』が学校あげて応援する…って言ってたから…」
「まぁ、言い出しっぺは理事長なんだもん、それくらいは当然!」
ふぉ~りんえんじぇるのパフォーマンスをステージ横の前室で『聴いていた』千歌、梨子、曜。
彼女たちの姿を観ることはできなかったが、歌声とその歓声は耳に入った。
「1年生…頑張ったみたいだね…」
「うん」
「さぁ、私たちも負けてられないよ!」
「…」
「大丈夫だよ!失敗しても顔に出しちゃダメだからね!」
急に不安げな表情になった千歌に、曜が声を掛ける。
「う、うん…」
「そもそも、今回はオリジナルの振り付けなんだから、間違ったってバレないし」
「そっか…うん…」
「千歌ちゃん!」
「うん?」
「楽しもう!」
「梨子ちゃん…」
「曜ちゃんがやってる高飛び込み…私がやってるピアノ…それと違って『お客さんと一緒に盛り上がれる』のが『スクールアイドル』だと思うんだ。だから、いいところを見せよう!とか、しっかりやろう!とかじゃなくて、まず『私たち、楽しんでやってます』ってなることが大切だと思うんだよね」
「梨子ちゃん、語るねぇ!…でも、その通りだよ。『リベンジしよう!』なんて気負わないでね!」
「う、うん…わかった」
千歌は握り込んだ拳をパッと開き、プラプラとさせた。
「そうそう、リラックス、リラックス!」
曜にそう言われて、千歌は笑顔を見せた。
「あ、そろそろ出番みたい…。大丈夫、千歌ちゃんならきっとやれる!」
と梨子。
「うん…よし!じゃあ…いくよ!」
曜と梨子は頷くと、それぞれ右腕を真っ直ぐに伸ばした。
そこに千歌も右腕を伸ばし、お互いの手を重ねる。
大きく息を吸い込むと、そのすべてを吐き出すように
「全速前進!」
と千歌が叫ぶ。
「ヨーソロー!!」
曜と梨子はそれに負けないくらいの声を出し、伸ばしていた腕を天に突き上げた。
そして曜が考えた…この掛け声…と共に、3人はステージへと飛び出していった。
…
「これが、私たちのオリジナル曲…」
「うん、できたね…」
「時間が無いなかの突貫作業だったけど、なんとかなったね!」
「ありがとう、梨子ちゃん、曜ちゃん!」
「どういたしまして」
「お礼は…『ちゃんとパフォーマンスをすること』…『失敗しても、泣かないこと』…ってことで」
「よ、ヨーソロー!」
「それ、私のセリフだよ!」
「あははは…」
「でも…本当にいい歌詞だね」
「曜ちゃん…」
「千歌ちゃんが苦しんだあと、立ち直ってくれて…見事に復活した!その様子がすごくわかると思うんだ。きっと…学校のみんなにも、生徒会長にも届くと思うよ」
「朝練に付き合ってくれた…松浦先輩にも…」
「曜ちゃん、梨子ちゃん」
…
「さぁ、あの娘たちがどこまでやるか…楽しみですわ」
「まったく…応援してるんだか、してないんだか…」
「か、果南さん!」
「チャオ~!」
「そんなビックリすることじゃないでしょ。私はあの娘たちのフィジカルトレーナーなんだから、教え子の様子を見に来るのは、当然のことでしょ」
「なるほど…物は言い様…ですわ」
「それより、やめろって言ってみたり、フェスティバルに出ろって焚き付けてみたり…あなたたちこそ、なにやってるんだか」
「この件については、鞠莉さんが…」
「イエース!私が理事長権限を行使しました~」
「…まぁ、いいわ…何を考えてるかはわからないけど、今の千歌はこの間までの千歌じゃない。たぶん、あなたも驚くハズよ」
「そうですか…期待していますわ!」
…
「衣装は、こんな感じでどうかな?」
「ジャケットにショーパン?」
「さすがに今からステージ衣装作るのは難しいから、有り合わせのものになっちゃうけど…」
「いや、でも、曜ちゃん。ジャケットを揃えるのも大変じゃないかな?」
「その辺は任せて!私のコレクションから持ってくるから」
「おぉ!さすがコスプレマニア!」
「…曜ちゃん、なんか、凄い…一回、そのコレクションを見せてもらおうかな?」
「いいよ。そうしたら、梨子ちゃんもこの世界に嵌まるかも知れないね…」
…
ステージに3人が現れる。
ふぉ~りんえんじぇるが黒のパーカーだったのに対し、彼女たちは真逆。
千歌は、白を基調としたジャケットに同色のショートパンツ、膝下までのブーツ。
インナーにはオレンジのブラウスを纏っていた。
曜も梨子も基本スタイルは同じだが、若干、ジャケットの裾丈やブーツの長さ、着けているアクセサリーなどが違う。
そしてインナーの色が、それぞれライトブルーとピンクであることや、曜はハンチングを、梨子はキャップを被り『3人のキャラ分け』をしていた。
真ん中に千歌…右隣に曜、左隣に梨子。
3人が所定の位置に付き、スタッフに向かって『準備OK』のサインを送る。
シンプルなギターサウンドのイントロが8小節流れたあと、曲調が一転して、歌が始まった。
…
注:ここに『元気全開 DAY! DAY! DAY!』の歌詞がありました。
…
「振りきったわね!」
果南はニコリと笑い、ダイヤを見た。
「ベリーベリーシャイニーで~した~」
と鞠莉もそう言ってダイヤを見る。
「た、確かに、勢いはありましたわ。それは認めます。…ですが…歌は叫んでいるみたいですし、ダンスも粗すぎ…」
「いいんじゃないの、それで!」
「果南さん…」
「どれを見ても同じなんてつまらないし、この曲ならこんなステージでも、全然あり!…だと私は思うよ」
「…ですが、人前で披露するならある程度のレベルが…」
「そこだよね…私とあなたと…昔から埋まらない溝は…」
「あっ…すみません…つい…」
「別に謝らなくてもいいけど…でも、ほら…あの娘たちの表情を見てごらん」
「とても満足そうですわ」
「そして、応援に集まってくれたみんなの顔も」
「えぇ…いい顔をしています」
「これが答えなんだと思うよ。千歌たちが、もがいて苦しんで…たどり着いたもの。もちろん、これがゴールじゃなくて…ここからがスタートなんだと思うけど…」
「わ、わかっていますわ!」
「そう…ならいいわ…。あっ、じゃあ、私は帰るわね…復学したとはいえ、ショップの手伝いがなくなったわけじゃないから」
「果南…シー ユー!」
「うん、また明後日、学校で」
「果南さん!」
「なに?」
2人の前から立ち去ろうとする彼女を、ダイヤが呼び止めた。
「悔しくないのですか?あなたの教え子たちのステージを観て…」
「…さぁ…どうなんだろう…。あっ!さっきは冗談半分で教え子だなんて言ったけど…私は別に…そんなんじゃないから…。じゃあ…」
果南はそう言い残すと、あっという間に人込みの中に紛れ、姿を消してしまった…。
「私は…悔しいですわ…」
「ダイヤ…」
彼女の独り言を聴いた鞠莉は、うしろからそっと肩に手を掛けた…。
~つづく~
運営から指摘を受けて一部内容を修正しました。
※歌詞の削除
2018/11/14
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