【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
「花丸ちゃんは、部活、どうするの?」
「マルは…まだ何も考えてないけど…たぶん帰宅部ズラ…。ルビィちゃんは?」
「う~ん…わかってはいたけど、ここにアイドル研究部はないから…」
「あったところで、お姉さんが許可してくれないんじゃ…」
「うぅ…それは確かにそうなんだけど…」
普通の学校であれば、入学式が終わった直後から、新入部員の勧誘活動は始まり、各部から熱気を帯びた掛け声が飛び交うものだが、ここは少し様子が違う。
彼女たちが入学した…浦の星女学院…は、数年前から生徒数が減少しており…2年前からは近隣の高校への統廃合の噂が立ち始めていた。
そのせいもあってか、今年の入学者は、わずか12人しかいない。
ちなみに…3年生は38人、2年生は24人(+1人)…つまり全校生徒を合わせても75人…100人にも満たないのである。
従って普通であれば、この12人は…部活経験があろうとなかろうと…喉から手が出るほど欲しい超貴重な人材。
故に、各部、激しい争奪戦を繰り広げられる…ハズだった。
しかし、そうはならなかったのである。
ひとつには、学校自体の部活動が盛んでないことが挙げられる。
何せ、学生数が圧倒的に少ないのだ。
下手したら球技などは、1チーム組めない…ということにもなりかねない。
一昔前までは、そうでもなかったようだが…これでは自然と規模が縮小していくのも、致しかたない。
ふたつめは…だからというべきか…在校生に『無理にでも部活を存続させよう』という意志がないのだ。
当然といえば当然かもしれない。
ただでさえ、学校の統廃合の噂が立っている中、新入生はわずか12名。
もちろん、入部したいという者がいれば拒む理由はないが、どんなに頑張っても、この先はそう長くはない。
それなら、今いる面子(めんつ)で、最後まで気兼ねなく楽しんだ方がいい。
県民性、地域性…そういったものも相まって、どことなく『なるようにしかならない』という、諦めムードみたいなものが、在校生にはあった。
「あっ、善子ちゃん、おはよう!昨日、突然帰っちゃったから、心配したズラ…」
「別に…いいわよ、心配なんてしてくれなくても…」
と彼女は軽く睨むようにして答えた。
…はぁ…
…どうして『ズラ丸』と同じ学校になっちゃうかな…
先に席に座っていた…『津島善子』…は心の中で、深くため息をついた。
彼女の自宅は沼津の中心地にあり、本来であれば、わざわざ遠方にあるこの高校まで通う理由はない。
つまり、逆の言い方をすれば、敢えて『ここ』を選んだことになる。
それなのに…
挨拶をしてきた…『国木田花丸』…とクラスメイトになるとは夢にも思わなかった。
彼女にとっては、まさかまさかの展開で、昨日は相当、気が動転したのだった。
「あ、あの…お…おはようございます…」
花丸と一緒に会話しながら教室に入ってきた友人…『黒澤ルビィ』…が、少しオドオドした感じで善子に挨拶をした。
「えっ…あっ…おはよう…」
「ルビィちゃん、そんなビクビクしなくてもいいズラ。確かに少し変わってるけど、中身は至って普通ズラ」
「えっ…あ、うん…」
「あのねぇ、ズラ丸。私があの頃のままだと思って調子に乗ってるんじゃないわよ!」
「まぁまぁ…善子ちゃん、落ち着くズラ。昨日は、善子ちゃんがすぐに帰っちゃったから、ちゃんと紹介できなかったけど、改めて…この人はマルの友達のルビィちゃんズラ」
「く、黒澤ルビィです。よ、宜しくお願いします」
「ふん!気に入らないわ」
「えっ?」
「名前よ、名前!」
「名前…ですか…」
「それって芸名?」
「い、いえ…本名ですが…」
「あっ、そう…」
「?」
「私、シャレた名前の人って嫌いなの。まぁ、私のリトルデーモンになるって言うなら、付き合ってあげていいけどね…」
「リトルデーモン?」
…しまった!つい、口走っちゃった…
「な、何でもない!何でもないから…」
「クスッ、善子ちゃんは相変わらずズラ」
「ズラ丸も気安く、私の名前を呼ばないで!」
「善子ちゃん…」
「善子言うな!ヨハ…あっ…と、とにかく、私には関わらないで…そっとしておいて」
「…」
「…」
善子の言葉を受け、2人は黙りこんだ。
それでも、すぐに
「わかった。だけど1年生は12人しかいないから…みんな仲良くしないといけないズラよ…」
と花丸は言って、席に着いた。
…わかってるわよ、そんなこと…
…だから私はここに来たんじゃない…
花丸の姿を見ながら、善子は唇を噛んだ。
その日の放課後…。
花丸とルビィが並んで歩いている。
「マルと善子ちゃんは、幼稚園が一緒でね…」
「うん、そう言ってたよね…」
「その頃から少し変わってて…善子ちゃんは『自分の名前が平凡過ぎる』って、凄く嫌ってたズラ」
「そうかな?」
「それで、ある日突然『私の本当の名前は、ヨハネ!あまりにも美し過ぎて、天上界から追放された堕天使である』とか言い始めて…」
「それって今で言う『中二病』?幼稚園の時に?…」
「自意識過剰なんズラ」
「でも…名前が嫌い…っていう気持ちはわかるかも。私もルビィ…って恥ずかしいもん。別にハーフでもないのに」
「それはマルも一緒ズラ。花丸なんてダサいズラ…。でも…だからかも知れないけど…善子ちゃん、マルには心を許してくれてて…よく2人で『悪魔ごっこ』をして遊んだズラ」
「悪魔ごっこ?」
「占いの真似事とか、そんな類いのことだけど…」
「ふ~ん…」
「善子ちゃんが小学校の時に市街に引っ越しちゃって…それっきりになってたんだけど…まさか高校になって再会するとは…」
「10年ぶりくらい…ってこと?よくわかったね」
「それは…名前見ればわかるズラ」
と花丸は笑った。
「それはそうだけど…よく覚えてたね」
「顔も変わってなかったし」
「なるほど…」
「でも…ちょっと心配ズラ」
「?」
「10年経っても、性格は変わってないズラ…。クラスに溶け込めるかどうか…」
「うふ…」
「?」
「やっぱり花丸ちゃんは優しいなぁ」
「えっ?」
「そんなに久しぶりに会っても、ちゃんとお友達のことを思いやれる…。さすが花丸ちゃん!って思っちゃった」
「そ、そんなことないズラ…」
花丸は少し照れながら、学校を出てバス停へと向かった。
その2人をあとを、そっと尾行するような人影が…。
付かず、離れず…一定の距離を保って歩く。
「…花丸ちゃん…さっきから誰かにつけられているような…」
「…やっぱり、ルビィちゃんも気付いてたズラか…」
「ど、どうしよう…」
「こういう時はハッキリ言うズラ…」
「う、うん…」
「いくズラよ…せ~の!」
花丸とルビィは、歩みを止め、勢いよく振り返った。
「わっ!な、なによ!急に怖い顔して振り向かないでよ!」
そう後方から叫ぶのは善子であった。
「な~んだ…善子ちゃんズラか…」
「あ、怪しい人につけられてるのかと…」
「帰る方向が同じなんだから、仕方ないでしょ!」
「なら、コソコソ歩かなくてもいいズラ」
「べ、別に…コソコソなんて歩いてないわよ…」
「なら一緒に帰るズラ」
「えっ?い、いや…私は1本あとのバスに乗るから…」
「でも、善子ちゃんちは沼津の市街でしょ?そうしたらマルたちよりも帰るのが遅くなるズラ」
「そんなこと、アンタには関係ないでしょ!」
「ふぅ…相変わらず天の邪鬼ズラ…」
「ふん!」
「じゃあ、ルビィちゃん…行こう」
「えっ?いいの?」
「善子ちゃんは、ああいうことを言い出したら、訊かないズラ」
「う、うん…」
「それじゃ、善子ちゃん、また明日!」
「さようなら…」
2人はやって来たバスに、善子を残して乗り込んだ。
その後、バス停にはバラバラと帰宅する生徒が集まってきたので、彼女はひとりではなくなった。
しかし、話し相手はいないようで…黙ってスマホの画面を見つめていた。
…はぁ…
…高校生になったら、変わらなきゃって思ってたのに…
…どうしてこうなるのかしら…
…このままじゃ、一生友達なんて…
善子は、周りにも聴こえるくらい大きく息を吐くと、そのまま天を仰いだ。
~つづく~
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