【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~   作:スターダイヤモンド

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出場権はどっちだ!

 

 

 

 

 

「さて…それでは本題へと参りますわ」

 

 

 

「本題ってなんだっけ?」

 

「千歌ちゃん、それはボケすぎだよ」

と曜は笑った。

 

 

 

沼津駅前で行われたスクールアイドルのイベントに出演した2年生の3人『CANDLY』と、1年生の3人『ふぉ~りんえんじぇる』。

 

生徒会長のダイヤはどちらのパフォーマンスがが良かったか…判断を生徒に委ね「投票数の多かった方にラブライブ予選の出場権を与える」…としていた。

今、ここに集まっている理由は、その結果を聴きに来ているのだ。

 

 

 

「あははは…そうだった、そうだった。『海未さんの事故騒動』で一瞬、それを忘れてたよ」

 

「いえ、それについては私もつい興奮して取り乱しましたので…」

とダイヤは上半身を斜め45°に折り曲げた。

 

 

 

「それで…どっちが勝ったズラ?」

 

花丸の問いに、再び生徒会室は緊張感が高まる。

 

 

 

「それでは発表いたしますわ…」

 

 

 

結果を待ち受ける6人がごくりと喉を鳴らした。

 

 

 

「引き分けです!」

 

 

 

「えっ!?」

 

「引き分け?」

 

 

 

「はい。ドローですわ。まぁ…甲乙付け難い…ということなのでしょう」

 

 

 

「…」

 

1年生も2年生も、それぞれが顔を見合わせる。

予想外の答えが返ってきて、どうリアクションしたらよいのかわからない…そんな感じだ。

 

 

 

「だとすると…どうなるズラ?」

 

「なにがでしょう?」

 

「ラブライブ予選の出場権ズラ」

 

「どちらも出場を認めざるを得ない…ということになりますわ」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「どちらにもってことは…」

 

「2チームとも…ってこと?」

 

困惑の表情を見せる6人。

 

 

 

「いえ、そうは言っておりません」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

「出場するのは1チームです!」

 

 

 

「えっ?」

 

「意味がわからないズラ!」

 

「そうだよ、どちらも出場件を与えるって言ったじゃない」

 

「2チームで…とは申しておりません」

 

「どういう意味ですか?」

 

 

 

「出場は1チームと致します」

 

 

 

「えっと…それは…」

 

 

 

「皆さんはひとつになって頂きますわ」

 

 

 

「なぁ~んだ、そういうことか…って…えぇっ!?ひとつになる!?」

 

 

 

「千歌ちゃん、そのノリツッコミはいくらなんでも…」

 

「いやいや曜ちゃん!そうは言っても…」

 

「うん、お姉ちゃん、ちゃんと説明してほしいです」

 

 

 

「そうですね…これは理事長とも話し合って決めてことですが…まず投票結果の通り、2チームのパフォーマンスは甲乙付け難いものであり、どちらか一方のみ予選の出場権を与えるというのは不公平だと感じました。…で…あれば…2チームとも出場させれば良いのでは…ということも考えましたが、それは学校運営上、効率が良くないと判断したわけですわ」

 

 

 

「効率?…」

 

 

 

「ラブライブの出場にはご存知の通り、学校の承認が必要です。勝手にエントリーは出来ません。サークルとして活動する分においては、各々の責任において、ある程度の自由を認めておりますが…『学校代表』という肩書きが付く以上、当方で管理させて頂くことは、生徒を守るという意味においても当然の義務であるといえます」

 

 

 

「なんだか、難しい話になってきたねぇ…」

 

 

 

「今の私たちにおいて、2チームを同時にコントロールするなど、到底無理な話です」

 

 

 

「コントロールってなによ!」

とそれを聴いた善子が噛み付いた。

 

 

 

「練習場所の確保!スケジュール調整!体調管理!合宿の許可!衣装代や遠征費の資金調達!宣伝活動!」

 

 

 

「わっ…わっ…うわぁ…」

 

ダイヤの『くわっと見開いた瞳』と、その『圧』に6人はたじろぎ…あとずさりをする。

 

 

 

「恋愛禁止!国籍不明!年齢不詳!存在不明!解析不能!その他諸々!!あなたたちだけで、それができるというのですか!!」

 

彼女のバックには稲妻が走り、どぉ~ん!という音がした。

 

 

 

「あ、いや…その…」

 

「最後の方はよくわからなかったけど…なんとなく大変そうなことは理解したズラ…」

 

 

 

「…というわけで…今からは6人1チームで活動して頂きます!!」

 

 

 

「そんな急に言われても…」

 

「そうズラ。そんなことは認められないズラ!」

 

 

 

「あ、あの…」

 

 

 

「はい、高海さん、なんでしょう?」

 

 

 

「ひとつ、どうしても訊いておきたいことがあるのですが…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「どうして生徒会長はスクールアイドルを辞めたのですか?」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「妹さんから、二次予選まで進んだのに…その直前にステージに立つことなく解散しちゃったって聴きました。でもその理由は教えてくれないって…」

 

「千歌ちゃん、その話は理事長に訊いてみるって話じゃなかったっけ?」

 

「でも曜ちゃん、この流れなら教えてもらえそうな気がしたんだもん」

 

「無理、無理!生徒会長が喋るわけないじゃん」

 

 

 

「…」

 

ダイヤは口を一文字に結んでいる。

 

 

 

「どうしてなんですか?」

 

千歌がグイッと一歩前へ、詰め寄った。

 

 

 

「あ…あなた方に…お話することではありませんわ…」

 

 

 

「いえ、それは話してもらう必要があります!」

 

 

 

「梨子ちゃん!?」

 

まさかの言葉に千歌と曜は驚いて、二人同時に声をあげた。

彼女から追求の発言が飛び出すとは思っていなかったからだ。

 

 

 

「生徒会長はμ'sファンだと聞きましたので、ならば、一言、申し上げます!…そのμ'sも…一度は解散の危機を迎えて…ラブライブの出場を辞退したことがありました。でも、そのあと心をひとつに活動を再開して、全国大会で優勝しました」

 

「今更、桜内さんにも教えられなくても存じてますわ」

 

「…であるなら…なぜ、生徒会長たちはそういう風にならなかったのでしょうか?」

 

 

 

「!」

 

 

 

「私たちがこれから活動していくにあたり、教訓とするべき話であるなら、聴いておくに越したことはないですし」

 

 

 

「なるほど、モノは言い様ですね」

 

 

 

「それに…千歌ちゃんがスクールアイドルを始める時に『中途半端な気持ちでやってほしくない!』みたいなことを言ってましたよね?そうまで言う人が、なぜ途中で辞めたのか…みんな興味があると思いますけど」

 

 

 

「本心は興味本位…ということですか?」

 

 

 

「どう、捕らえてられても結構です」

 

 

 

「…かしこまりましたわ…お答え致しましょう…」

 

ダイヤはそう言うと、1回大きく深呼吸をした。

 

 

 

「確かに私は…幼いころからアイドルが好きで…その中でも…とあるキッカケでμ'sに傾倒していきました。そして高校に入り、親友と念願だったスクールアイドルを結成したのです」

 

 

 

「それが理事長と…果南ちゃ…じゃなかった、松浦先輩なんですね?」

 

 

 

「はい。2人は幼馴染でしたし、気心は知れておりました。ですから私の気持ちを理解して、スクールアイドルについては、ふたつ返事で承諾して頂きましたわ」

 

「3人ともスタイルいいし…人気あったんだろうね…」

 

千歌がボソッと呟くと

「もちろんですわ!」

とダイヤが即答した。

 

 

 

「ふふ…」

 

吹き出したのは善子。

 

 

 

「なんですか!?」

 

 

 

「見た目通り…自信過剰な人だと思って…」

 

 

 

「私がですか?…そうですね…仮にも人前でステージの上に立とうという者は、それ相応の自信が無ければ勤まりませんから」

 

 

 

「あっさり肯定したズラ…」

 

 

 

「さて、そんな私たちは地区予選、一次予選を難なく勝ち上がりました。今のお話の通り、この時はもう自信の塊、他校のスクールアイドルになど負ける気がしませんでしたわ」

 

 

 

「それがどうして急に…」

 

 

 

「端的に申し上げれば…方向性の違い…ですわ」

 

 

 

「方向性の違い…」

 

「ミュージシャンが解散するときによく聴く言葉だよね」

 

千歌は曜の言葉に頷いた。

 

 

 

「より高いレベルを望むあまり…音楽であるとか、ダンスであるとか、衣装であるとか…3人の意見がぶつかり合ってしまい…二次予選が始まるまで纏まらなかった…ということですわ」

 

 

 

「それで…解散?」

 

 

 

「元々、私が誘って始めたことです。その私の熱が冷めてしまったら…2人は続ける意味がありませんので」

 

 

 

「…」

 

 

 

「ですから…あなた方がスクールアイドルを始めると聴いた時、反対したのです。一人の思い付きだけで、どうにかなるようなものではないのです」

 

 

 

「思い付き…」

 

 

 

「仮に3人が同じ志や情熱を持っていようと…信念が硬かろうと…そこまでのアプローチの仕方が違えば、目標に辿りつくのはとても難しいのです」

 

 

 

「ふ~ん…それなのに…2年生と一緒にやれ…と言うズラか…」

 

「ズラ丸の言う通り、それは矛盾してるよね?」

 

 

 

「そ、それはですね…」

 

 

 

「学校が廃校になるからデ~ス!」

 

 

 

「鞠莉さん!!」

 

口ごもるダイヤに助け舟を出したのは…理事長こと小原鞠莉だった。

彼女は生徒会長室のドアをガチャリと開けると、つかつかと歩いてダイヤの隣に立った。

 

 

 

「チャオ!」

 

 

 

「チャオ!ではありませんわ。いつから話を聴いていたのですか!?」

 

 

 

「『本題と参りますわ』…あたりから?」

 

 

 

「ほぼ始めからじゃない…」

と善子は呆れたという顔をした。

 

 

 

それはダイヤも同じだった。

 

 「盗み聴きとは趣味が悪いですわ」

と鞠莉を睨み付ける。

 

 

 

それにはまったく意に介さず…という感じで

「ダイヤから聴いてると思いますが…当校は廃校の危機なのデ~ス!みんなの力が欲しいのデ~ス!ふたつの力をひとつに合わせて、叫べ勝利の雄たけびを…なのデ~ス!!」

と鞠莉は声高らかに、彼女たちに説いた。

 

 

 

「そうは言っても…」

 

 

 

「まぁ…その通りですわ。…私たちは…お互いのスクールアイドルの理想像だけをぶつけ合って、空中崩壊してしまいました。ですが…もし、そこに使命のようなものがあったらどうでしょう?きっとそれを乗り越えていたのではないか…と思うのです!さぁ、今こそ、2つのチームが手と手を取り合い、この苦難に立ち向かおうではありませんか!!」

 

ダイヤは拳を固めて、熱く熱く、力説するのだった…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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