【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~   作:スターダイヤモンド

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「千歌ちゃん、それで…どうするの?」

 

 

 

「どうする…って?」

 

 

 

「1年生と一緒にやるか…ってこと」

 

 

 

「あぁ…それね…。突然のことだから、今すぐには答えられないよ…」

 

バスの最後列のシートに座る千歌は、困惑した表情で…右隣に座る曜…に答えた。

 

 

 

「そうだよね…」

 

千歌の左隣の梨子も、同じような顔をして頷いた。

 

 

 

1年生のスクールアイドル『ふぉ~りんえんじぇる』とラブライブの出場権を懸けた戦いは、引き分けに終わった。

その結果を受け、生徒会長のダイヤは「どちらか片方を選ぶことは出来ない」として両者に出場権を与えると明言。

だがその条件は『2チームがひとつになること』だった…。

 

 

 

彼女たち2年生は戸惑いながら、このバスに乗り込んだ…というワケだ。

 

 

 

「正直言えば…私が歌詞を書いて、梨子ちゃんが作曲してくれて…曜ちゃんが衣装を作ってくれれば『3人で全然いいじゃん!』って気持ちもあるだよねぇ…」

と千歌。

 

「確かに」

 

曜は相槌を打った。

 

 

 

「…でもね…」

 

千歌は腕組みをしながら、遠い目をした。

車内は左の窓から海面に反射した夕日が差し込んでいる。

キラキラとしたオレンジの空間は少し眩しくて…それは今朝経験したなんとも言えない哀しい気持ち…を消し去るような、とても穏やかな空間を作り出していた。

 

 

 

「でも?…」

 

 

 

「私が憧れてるスクールアイドルが『A-RISE』だったら、自分自身をそれで納得させられたかもだけど…やっぱりちょっと、違うんだよねぇ…」

 

 

 

「違うって?」

 

 

 

「うん、梨子ちゃん…それは私の憧れが『μ's』だったってことかな?」

 

 

 

「あっ…」

 

 

 

「生徒会長が1年生と一緒に…なんて言い出さなければ、そうは思わなかったんだろうけど…」

 

「じゃあ6人でやるのはまったく問題ない…ってこと?」

 

「違うよ、曜ちゃん」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「9人でやりたいなって…今、すごく思ってるんだ」

 

 

 

「9人?」

 

 

 

「私たちと1年生と…3年生…」

 

 

 

「3年生?」

 

 

 

「生徒会長と理事長と…果南ちゃんを入れて…9人だよ」

 

 

 

「えっ?…」

 

 

 

「偶然にも、μ'sも各学年の人数は同じ3人ずつだし」

 

 

 

「ちょ…マジ?…」

 

曜と梨子と顔を見合わせたあと、しばしの間、絶句した。

 

 

 

「マジ?…って…何かおかしいこと言った?」

 

「いやぁ…1年生と一緒にやるかどうか…って言ってるのに、いきなりそこを飛ばして3年生の話が出てくるから…」

 

「曜ちゃん、それはそうなんだけどね…今朝のことがどうしても気になっちゃって」

 

「今朝のこと?」

 

「もしかして…μ'sの園田海未さんの…」

 

「梨子ちゃん、正解」

 

「あっ…」

 

曜も梨子の言葉で、どういうことか理解したようだ。

 

 

 

「…私も曜ちゃんも…梨子ちゃんも…ある日突然、この世からいなくなっちゃうかも知れない…って思ったらさ…やらないで後悔するよりは、やって失敗したほうがいいんじゃないかって」

 

 

 

「…」

 

「…」

 

 

 

「さっきの生徒会長の話が本当なら、3年生の3人も不完全燃焼のまま、解散してるんじゃないのかな?だったら…もう一度私たちと一緒にラブライブに参加したらいいんじゃないかな…なんて考えたりして」

 

「なるほど…」

 

「もちろん、まずは1年生と一緒になることからしきゃいけないのはわかってるよ。でも…望みは大きく果てしなく…無理って決め付けたら、何も進まないから」

 

「千歌ちゃん、どうしたの?今朝はあんなに死にそうな顔をしてたのに、急に大人になったみたい」

 

「あはは…死にそうな…は酷いな…」

 

「ううん、曜ちゃんの言う通りだよ、一時はどうしよう…ってほど落ち込んでたから…元気になって本当に良かった」

 

 

 

「曜ちゃん、梨子ちゃん…心配かけちゃってごめんね。でも、もう大丈夫だから」

 

そう言って千歌はニッコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

その2年生の乗るバスの…同じ車内の前方に…花丸、ルビィ…通路を挟んで善子の3人…が座っていた。

 

 

 

「アンタ、この結果について、生徒会長から何にも聴いてなかったの?」

 

「…うん…」

 

「ふ~ん…」

 

「どうかしたズラ?」

 

「いや本当はどっちが勝ったのかなって?」

 

「どっちが勝った…ズラか?」

 

「ちょうど『引き分け』だなんて…あり得ないでしょ?」

 

「…マルも少しだけ気になったズラ…」

 

「アタシたちが負けていた…とは思ってないけど…仮にそうだったとしたら…」

 

「生徒会長がルビィちゃんに忖度した…ってことズラか?」

 

「アンタも知ってるでしょ?普段は見せない妹への猫かわいがり具合…あれを聴いたらそう思っても不思議じゃないでしょ?」

 

 

 

「しっ!善子ちゃん、それは禁句ズラ!」

 

 

 

「?」

 

ルビィはなんのことかわからず、花丸と善子の顔を交互に見る。

 

 

 

「実際、得票数は聴かされてないわけだし…μ'sだっけ?…の『なんとかさん死亡』の件で上手く誤魔化された気がしないでもない」

と善子は何事もなかったように話を続けた。

 

 

 

「いや、死んでないズラよ…」

 

 

 

「アタシは一人っ子だからよくわからないけど…姉妹ってそんなものなの?結果がどうだったとか、こうだったとか、そういう会話が一言もはないわけ?」

 

「う~ん…おうちではそういう話、厳禁だったから」

 

「…にしても…よ!…ズラ丸はどう思う?」

 

「マルも一人っ子だから…」

 

「そうだったわね」

 

「でも、姉妹だから難しい…ってこともあるんじゃないかと思ったりするズラ。お互い思春期だし」

 

「そういうもの?」

 

「…どうなんだろう…」

 

「どうなんだろうって…ってアンタ…」

 

 

 

「…で…ルビィちゃんはどうするズラ?」

 

 

 

「えっ?マルちゃん、どうするって?」

 

 

 

「2年生と一緒に活動することズラ」

 

「う、うん…そうだね…」

 

「前に2年生と『一緒にやろう』って言ってフラれたんでしょ?アタシはそんな人たちが仲良くしてくれるなんて思わないけど」

 

善子はチラリと後ろを振り返り、後部座席に陣取る千歌たちの姿を見た。

 

 

 

「マルは善子ちゃんには訊いてないズラよ」

 

「ヨハネよ!」

 

「それはどうでもいいズラ」

 

「創造主が意見を言って、何が悪いのよ」

 

 

 

「創造主?」

 

 

 

「この『ふぉりえん』はアタシが作ったようなものじゃない」

 

「いや、善子ちゃんは無理やり割り込んできたズラよ」

 

「違うでしょ。ズラ丸たちがグズグズしてたから、アタシが手を差し伸べてあげたの!」

 

「はい、はい、わかったズラ」

 

「なによ、その言い方は…」

 

「不毛な議論は疲れるズラよ…」

 

「不毛ってことはな…まぁいいわ…言い合っててもラチが開かないから…それよりズラ丸はどうなのよ。アンタだって先輩のことは良く思ってないんでしょ」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「ん?…じゃないわよ。アンタだって先輩のことは嫌いなんでしょ」

 

「いやぁ…そうは思ってないズラ…」

 

「あ、裏切ったわね」

 

「裏切るもなにも…マルは別にそこまで嫌ってないズラよ。確かに…厳しいことは言ったかも知れないかもだけど…ただ、あのパフォーマンスを観て、少し感動したっていうかなんていうか…」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

「熱いものを感じたズラ!…飛び散る汗!ほとばしる情熱!…観ていて、とても興奮したズラよ。アレを見たとき『あぁ、この人たちもスクールアイドルを本気で頑張ってるんだ』って思ったズラぁ…。あれがグダグダだったら、一緒にやらなくて良かった…と思ってたかもだけど、今はそうは思わないズラよ」

 

「『手のひらクルー』ってヤツね…」

 

「否定はしないズラ…」

 

 

 

「ふ~ん…で、アンタはどうなのよ」

と善子はルビィに話を振った。

 

 

 

「私は…一緒に出来るなら、お願いしたいかな…って」

 

 「へぇ…」

 

「その…前にも言ったけど…先輩に断られたのも当然だと思ってたから…別にそれで怨んだりとか憎んだりとかもしてないし…そのお陰で…ヨハネちゃんとも仲良く慣れたし」

 

 

 

「善子よ!…って、あっ…」

 

 

 

「ぷふっ!ツッコミ間違ったズラ」

 

 

 

「い、今のはノーカウントよ。アンタが変なこと言うから、調子が狂ったの!」

 

 

 

「でも、本当のことだから…」

 

 

 

「勘違いでしないでよね。さっきも言ったけど、この『ふぉりえん』はアタシの『リトルデーモン』を増やす為に作ったグループなの。つまり『布教』よ、布教。別にアンタたちのために協力したとか、そんなんじゃないんだってば!!」

 

「善子ちゃん、いつまでそんなことを言い続けるズラ?」

 

「知らないわよ!…地球が滅ぶまでじゃないの?」

 

「そ、そうなんだ…」

 

ルビィが真顔で彼女の顔を見ると

「えっ…い、いやぁ…そこは真剣に頷かれても困るんだけど…」

と善子は顔を赤くしてソッポを向いた。

 

「あぁ、わかったズラ!善子ちゃんは先輩たちと一緒になると、そのキャラが出来なくなるのが嫌なんズラ」

 

 「キャラって言うな!誰がなんと言おうと、アタシは堕天使ヨハネそのものなの!」

 

「うんうん、マルたちの前ではそれでいいけど…だけどもう高1になったズラ。これを機にそういうことは卒業した方がいいズラよ。このままだと、社会に出られないズラ…」

 

「うっ…ズ、ズラ丸のクセに偉そうなことは言わないでよ!」

 

「現実逃避はよくないズラ」

 

「アンタには関係ないでしょ!もういいわ…」

 

 

 

ぴんぽ~ん!

 

 

 

「!?」

 

「善子ちゃん?」

 

 

 

「これ以上付き合ってられないから、次のバス停で降りるわ」

 

 

 

「えっ?でも、善子ちゃんのおうちは終点まで行かないと…」

 

 

 

「アタシがどこで降りようと勝手でしょ!とにかく今は、アンタたちと一緒にいたくないの!」

 

 

 

「善子ちゃん…あのね…」

 

 

 

「いいから、黙ってて…」

 

 

 

「ズラ…」

 

 

 

 

 

ぶろろろ…

 

 

 

 

 

「…で、なんでアンタたちも一緒に降りてくるのよ…」

 

 

 

「ここ、マルたちが降りるバス停だからズラ…」

 

「うん…」

 

 

 

「あっ!…」

 

 

 

「むしろ、一緒に降りてきたのは善子ちゃんズラよ」

 

「うん…」

 

 

 

「どうして、そういうことは先に言わないのよ!」

 

 

 

「『黙ってて!!』って言ったのは善子ちゃんズラよ」

 

 

 

「…」

 

 

 

「じゃあ、マルたちはこれで帰るズラ…」

 

「うん…」

 

 

 

「あぁ…そう…さよなら…」

 

 

 

「ちなみに…この時間、次のバスは45分後ズラ…」

 

「うん…」

 

 

 

「…45分後ね…」

 

 

 

「じゃあ、バイバイズラ」

 

「バイバイ」

 

 

 

「ははは…ばいばい…」

 

 

 

 

 

2人のあとを見送った善子は、バス停のベンチに腰を下ろすと

「45分…ここでどうしてろって言うのよ…」

と頭を抱えながら呟いた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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