【ラブライブ μ's物語 Vol.5】アナザー サンシャイン!! ~Aqours~ 作:スターダイヤモンド
「抜ける…ズラか?」
「だって、アタシがスクールアイドルを続けることに意味がないことは明白でしょ」
「そんなぁ…」
ルビィは泣き出しそうな顔をして、善子を見る。
「元々、そっちの世界に興味があったわけでもないし…」
その表情に気付かないフリをして、彼女は答えた。
生徒会長から1年生と2人生の合流を指示された翌日…の放課後。
善子は自ら『脱退』を申し出ていた。
「『ふぉ~りんえんじぇる』の名前はどうするズラ?」
「アンタたちにあげるわ。いや、そもそも先輩たちと一緒になるんだったら、その名前は要らなくなると思うけど」
「逃げるズラか?」
「…!!…」
花丸の放った一言に、善子は険しい顔をした。
「また…ぼっちに戻る…ズラ?」
「花丸ちゃん…そんな言い方は良くないよ」
「ぼっち?…上等よ…。まぁ、アンタたちがスクールアイドルを愛するように、アタシはアタシで趣味があるから…。人間、そうは簡単に変われないのよ」
「…」
「…」
「アンタたちのことは…草葉の陰から見守っててあげるわよ」
「それじゃ善子ちゃん、死んでるズラ…」
「う、うん…そ、それなりに…まぁまぁ、楽しかったわ。じゃあ」
と、それを無視するかのようにそう告げて…彼女は教室を出て行った。
「ヨハネちゃん!」
「よすズラ!」
その姿を追おうとするルビィを、花丸が制した
「!?」
「放っておくズラよ」
「でも…」
「善子ちゃんは、あぁ見えて頑固ズラ。今は何を言っても無駄ズラよ」
「…」
「そう悲しい顔はしないで欲しいズラ。ルビィちゃんにはルビィちゃんの夢があるズラ。人の心配はしてるヒマがないズラよ!」
「う、うん…」
「大丈夫…そのうち、きっと戻ってくるズラ」
「うん!そうだよね!」
花丸の確信に満ちた表情に、なんとなくそんな気になったルビィは大きく頷いた。
一方、同じ頃…2年生の教室…。
「えっ?一旦、離脱する?」
曜の発言に、千歌と梨子は一瞬言葉を失った。
「うん…とっても言いづらいんだけど…」
「部活?」
「もうすぐ大きな大会があって…私は調子を崩してたから辞退しようかと思ってたんだけど…やっぱり、出なきゃ出ないで後悔しそうだから…」
「いや、それはそうだよね!仕方ないよ。こっちはさ…私のわがままで付き合ってもらってるわけだし…」
「やるからには中途半端にしたくないって言ったのは私なんだけど…」
「全然、全然…気にしないで!…ほら、始めた時と違って、今は梨子ちゃんもいてくれてるし」
「うん!だからこそ、安心してるんだけど…ってことで…梨子ちゃん…しばらく留守にするけど…」
「…えっ?…あ…うん…」
梨子の顔に動揺が見える。
「梨子ちゃん?」
「あ、曜ちゃんがいてくれないと、やっぱり不安があるっていうか…」
「大丈夫だよ。この先は1年生も一緒になるんだから」
「そうだけど…だから不安で…。1年生…結構、恐そうなんだもん」
「えっ?怖い?面白いとは思うけど、怖いとは思わないなぁ…。練習中はコントやってるし」
「でも千歌ちゃん…」
「確かにああいうことがあったから、私たちには少し反抗的かな…とは思うだけど…」
「…うん…」
「キャラは掴みきれてないところがあるけど…同じ趣味を持つもの同士だよ!すぐに打ち解けるって!」
「ならいいけど…」
「ははは…大丈夫だって!」
曜は笑って梨子の肩を叩いた。
続けて
「ラブライブの一次予選は…10月からだっけ?」
と彼女は千歌に訊く。
「うん…10月に地区予選、11月に県大会、12月に地方大会があって…3月に全国大会…だね。…で…エントリーは8月中までみたい」
「もう6月も終わろうとしてるから…あと2ヶ月ちょい?」
「いやぁ、実はその前から戦いが始まってて…有力どころっていうか、そういうグループはもう、ライブとかガンガンにやって、映像流したりとかして、ファンにアピールしてるんだよ。ラブライブの勝敗って審査員の採点じゃなくて、結局は人気投票みたいなもんだから」
「そっかぁ…そうすると…ちょっと出遅れた感が強い感じ?」
「だいぶね…」
「なるほど…」
「だから…本当言うと、この期間に曜ちゃんがいなくなるのはキツイんだけど…」
「ごめんね…わがまま言って」
「いや、それはもう、仕方ないことだし…その間、1年生と協力して頑張るよ!」
「よし、任せた!」
「…と盛り上がってるところ、申し訳ないズラ…」
「あら?国木田さんと黒澤さん?」
そこに現れたのは『ふぉ~りんえんじぇる』の話し合いを終え、2年生の教室に移動してきた花丸とルビィだった。
…
「…ということズラ…」
花丸が『ついさっき善子がメンバーから外れた』ことを説明した…。
「そうなんだ…」
2年生の3人はそう言ったまま、言葉が出ない。
千歌にして見れば、どちらかというと花丸とルビィを引っ張っていったのが善子だと思っていたので、その報告はとても意外に感じられた。
「じゃあ、当面4人での活動ってことになるのか…」
自分も一時、離脱する。
曜も、その旨を彼女たちに事情を説明した。
「いや、待つズラ…まだマルたちは先輩たちと一緒にやるとは言ってないズラよ」
「えっ?」
「やらないの!?」
2年生の3人は、驚きの声をあげた。
するとルビィは精一杯深呼吸をすると、吸い込んだ息を大きく吐き出すように
「背も小さくて、人見知りで、得意なものも何もないですけど…でも…アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!」だから…改めて…『CANDLY』のメンバーにしてください!」
と力強く告げた。
「マルは…ルビィちゃんほどアイドルは詳しくないかもだけど…でも…ルビィちゃんの夢を叶えるために力になりたいズラ」
「だから…改めて…『CANDLY』のメンバーにしてください!お願いします!!」
ふたりは深々と頭を下げ、右手を前に差し出した。
「!!」
つい1ヶ月半前は、その申請を断ってしまった。
でも今回は…。
「うん。こちらこそよろしく」
「一緒にがんばろう」
千歌と梨子がふたりの手を握った。
「良かったズラ。また断られたらどうしようかと…」
「うん…」
「あははは…そんなわけないよ…」
千歌は笑っているが、目にはうっすら光るものが見える。
前回のことがあったにも関わらず、こうして頭を下げてくれたことが何より嬉しかった。
「私こそ…頼りない先輩だけど…一生懸命頑張るから」
「私も…アイドルとか全然詳しくないから…いっぱいいろんなことを教えてね?」
「よぉし!まずはこれでラブライブに向かって1歩前進だね」
と曜はウインクしながら親指を立てた。
しかし
「あれ?でもさぁ…さっき『CANDLY』に入れてください…って黒澤さんは言ったけど…名前はそれでいいのかな?」
と首を傾けながら、疑問を呈す。
「そうだよね。あれって『Chika AND Liko,You』の略だから」
「『Liko』の『L』は本当は『R』なんだけど…」
梨子はこないだも同じことを口にしていた。
相当『Liko』に抵抗があるらしい。
「それにあなたたちは『ふぉ~りんえんじぇる』ってグループ名があるし…」
「はい…そうなんですけど…それは善子ちゃんと3人で活動するとき用に、残しておこうと思って…」
「3人で活動するとき用?」
「きっと彼女は帰ってくるズラ」
花丸のその言葉と表情には、彼女たちを納得させるだけの力があった。
「そっか…」
それを見たら、誰もがそう言わざるを得ない。
「じゃあ、改めて…名前、どうする?」
「μ'sにあやかって…『沼's』とか?」
「ぬまず…ズラか?」
「あは…」
「千歌ちゃん…面白いけど…それはさすがに…」
梨子がNGを出した。
「だよね…」
「私は…『CANDLY』でいいです」
「黒澤さん?」
「そんなにコロコロと名前を変えるのもどうかと思うし…私は先輩たちのグループに入れてもらった身なので…」
「一緒にやるんだから、入れてあげたとか、そういうつもりじゃないんだけど…まぁ、そうか…この先、メンバーが増えるたびに名前を変えるのもなんだもんね」
「メンバーが増える…?」
「あれ?言わなかった?…えっと…その…さっき辞めちゃったのは、何さんだっけ?」
「善子ズラ…津島善子…」
「そうそう、津島さんと…浦の星のスクールアイドルの大先輩を入れて9人…」
「?」
「間に合うかどうかはわからないけど…9人で目指すよ…ラブライブ!」
「えっ?」
「お姉ちゃんたちと?」
「黒澤さんならわかってくれると思うんだ。1年生が3人、2年生が3人、3年生が…」
「3人!!」
「学校が統廃合の危機、μ's好きが3人もいて、音ノ木坂からの転校生もいる。そして曜ちゃんという、μ'sメンバーのそっくりさんまでいる!」
「あぁ!花陽さんですよね?やっぱり高海先輩もそう思います?私もひと目見た時からそう思ってたんです!!」
「でしょ?実はね、あの高坂穂乃果さんのお母さんと妹さんからも、そっくりだってお墨付きをもらったんだよ!!」
「ピギィ!!逢ったことあるんですか!?」
「うん、この間のフェスティバルの前に…東京まで行って…」
「うひゃぁ!!どうして誘ってくれなかったんですかぁ!?」
「千歌ちゃん、今、その話は関係なくない?」
「ルビィちゃんも、興奮しすぎズラ…」
「あっ!…」
「あっ!…」
千歌とルビィはお互い顔を見合わせ笑った。
曜と花丸も…お互い大変だね…という感じで苦笑する。
「と、とにかく…こう…μ'sとは浅からぬ縁を感じたというかなんというか…コピーをするつもりはないんだけど…でもそこまでの条件が揃ってるなら…」
「9人でやりたいってことですね?」
「いきなり2人欠けちゃったけどね…」
「あはは…その内のひとりは私だ…」
曜が頭を掻く。
「あぁ…でも、すごいです!…9人いれば…あんなこともこんなこともできますよ!」
「そうだよね?だからさ…黒澤さんは、是非、お姉ちゃんを私たちと一緒にスクールアイドルをやるように説得して欲しいんだ」
「はい!それぐらいのことは、お安い…ご……えっ?えっ?…」
そう言い掛けたルビィだが、一転して
「ピギャ~~~!!お姉ちゃんを説得~」
と大きな声で叫んだのだった…。
~つづく~
運営から指摘を受けて、何話か内容を修正(歌詞を削除)しました。
『それ』ありき…で、話を作っていたので自分の落ち度とはいえ、しばらく凹んでました…。
少しお休みさせて頂いて、どうするか考えましたが…一応『そこに歌詞があったという体』で再開することにしました。
…というわけで、今後とも皆様、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
この作品の内容について
-
面白い
-
ふつう
-
つまらない
-
キャラ変わりすぎ
-
更新が遅い