私の見ていた世界は小さな世界だったのだと気付かされる。
父の反対を押し切り、学校に通うようになった私は、同じ学び舎で共に教育を受ける仲間と出会い、感銘を受ける。
「となりの席だね」
幼馴染の顔がそこにはあった、父同士が政治家で幼い頃から仲が良かった少女は、かけがえの無い親友で、席が隣同士になり私はとても上機嫌だった。
「おまえなぁ、学校でそんなにベタベタするなよ、恥ずかしい」
いつも頼りきりになってしまうので少し煙たがられてしまうが、それは一種の恥ずかしさの現われで、本心はとても優しい。長い付き合いなのでよく分かる。
幼馴染の彼女はとても優れていて、リーダーシップのあるクラスの中心人物になっていた。
私は自分の事のように彼女の活躍を嬉しく思う。
女学校はこんなにも賑やかで素晴らしい場所だと、父に伝えたい。
私は確信する。学校に通うことは間違いではなかったのだと。
学校の楽しい日々がいつまでも続くと思っていた。
しかし甘い現実は打ち砕かれる。
学校をテロリストが襲撃したのだ。
警備員が居るのになぜと、疑問に思うが、その疑問を解決する材料を、連れ去られる途中に目の当たりにする。
テロリストと学校の警備員が共謀していたのだ。
国の指令で警備に当たっている人間と、テロリストが共謀しているという事実は、この国の深い闇を垣間見、私を深い絶望へと叩き落したのだった。
仲間達はみなテロリストの命令に従う他なく、逆らえば、見せしめに酷い拷問を受け、そのまま
絶望の淵に立たされた私達だったが、幼馴染の彼女だけは気丈に振る舞い、周囲を元気付けてゆく。
私の憧れの太陽は、陰る事無く輝き続けていたのだ。
アジトを転々とし、一年を過ぎそうになった頃。
人形が空から降ってきた。
奇怪な現象だったが、神様からの贈り物だろうかと私の仲間達は久方ぶりに子供らしい笑顔を見せる。
私も拾い、昔から世話になりっぱなしの、幼馴染の彼女に手渡す。
彼女は微笑む。気を張詰めていて、ずっと笑顔の無かったが、彼女の笑みは、やはり私の太陽だ。
実は子供が産まれたのだと、彼女はこっそりと私に耳打ちする、妊娠した事を隠し通し、無事に生んだのだ。
その執念に私は驚きつつも、新しい生命の誕生を祝福した。
「せっかくだからもう一つ人形を拾ってくるね、その子の分もあった方がいいとおもって!」
呆れる友の顔は久しぶりに幸せというモノを私に思い出させてくれた。
だが、産まれたばかりの赤子を守りきれる力など私達にはなく、彼女は産まれたばかりの子供と一緒に、殉教の命令を受けてしまう。
断っても、どのみち殺される事が分かっていた彼女は、子供と一緒に天国にいってくるわと、笑いながら赤子と爆弾を抱え旅立つ。
人形を手渡す事も、その背中を止める事も出来ず。ただただ見送る事しか出来なかった。
人形を握り締めて願う、どうか彼女達が幸せになれますようにと。
突如私を光が包み込む。
光が収まり自分自身を見ると、違和感があった。
見覚えの無い服を着ているのもそうだったが体の調子がおかしい。
あふれる元気に、高みへと引っ張っていく気力。いままでの自分とは違う別の何かに生まれ変わったかのような感覚。
すぐにそれは錯覚ではない事がわかる。
「お前だれだ! 何モンだ!?」
テロリストが驚いた表情をこちらに向ける。
「赤ん坊を連れた少女は何処へ向かった?」
私はテロリストに問いただす。
「あいつならチンケな量の爆弾かついで、今頃ガキと一緒に死にかけてんじゃねえか? それよりも」
彼女の殉教そのものを馬鹿にした後、テロリストは下品な笑みを浮かべ、舐るように私を見つめる。
――見かけねえ女だな。高く売れそうだ。俺にもまわして下さいよ。
下衆共が群がり耳障りな言葉を発する。
こんな奴らに今まで好き勝手にされていたのかと無性に腹が立ち、その時私は、直感で相手に見えない刃を向けていた。
「ひぃいい、バケモンだぁああ」
手足の捥がれたテロリストの方が余程醜い化物のように思えたが、そう仕向けてしまったのは私なのでそこには目を瞑りつつ――
「赤子を抱いた少女をどこへ向かわせた」
怯えるテロリストに答えろと恫喝する。
「あいつなら外国人の医師団の居る場所にいったはずだ! たすけてくれよ、俺はあの子供の父親かもしれないんだぞ!」
虫唾が走る。こんな奴があの子の父親だと?
「そうだなお前の処遇は子供に聞いてみるよ」
血まみれで喚く男を放置し、私は急いで幼馴染の元へ駆け出す。
「間に合ってくれ! お前が居ないと私は……」
魔法のように足は軽く、羽が生えたかのように飛べる。
テロリストのアジトから医師団の場所を全速力で駆けてゆく。
「待って! はやまらないで!」
私の声に彼女は――
一瞬の出来事で私はタダタダ、呆然としていた。
起爆装置を押した彼女は光り輝いて吹き飛んだ。
急いで彼女の元へゆくが、異様な光景が広がっていた。
白黒の小さな女の子が泣きながら彼女に縋り付いているのだ。
なぜ起爆したのか、彼女にも分からないようすで、虫の息の彼女は必死に赤ん坊の所在を尋ねてくる。
「私の赤ちゃんはどこ?」
尋ねられた問いで我に返った私は、彼女の手を握りながら――
「赤ちゃんは……大丈夫だよ、生きてる」
見渡しても赤子は居なかったが、私はなぜだか、直感でそう答えていた。
だが彼女はその問いになぜか嬉しそうな顔一つせず。
産まなければよかったと、振り絞るような声で呟き、それきり喋らなくなる。
騒ぎを聞きつけ駆けつけた看護婦の人に、彼女は助かるのかと問うが、黙って首を振るだけだった。
私は親友を救えなかったのだ。その事実が重く圧し掛かる。
なぜだ?
自問自答をしても答えなど見つかるはずも無い。
白黒の少女が私に話しかけてくる。
「
私は耳を疑った。少女は親友の亡骸を指差し、おかあさんと言ったのだ。
「まさか、お前が……」
「ねえ、わたしうまれなければよかったの?」
「そんな事は……」
否定する材料などなかった。目の前でそう言い残し事切れたのだから。
どうしてそんな事いったのだろう。
「あなたのお母さんはね、嘘をついたから居なくなったの」
私はそう説明するしか思いつかなかった。
「うそ?」
目をぱちくりとし、よくわかっていない、そんな様子の幼子に、私は産まれて来てくれてありがとうと伝える。
そして
慌しく看護婦の女性が声を掛けてくる。
「あなたたちも、ひょっとして人形をもっている?」
人形? と私は聞き返す。
すると看護婦の女性がいきなり変身し、さきほどまでと違う別人になっていたのだ。
驚くが私も、その事象に心当たりがあった。
看護婦の女性と話をまとめた結果。
数日前から人形が、この地域周辺で見つかった様子で、
「私もその人形に触れてこの姿になった」
「これわたしのにんぎょう」
合点がいった。白黒の少女も人形に触ったと言っていたのだ。
人形によって得られた超人的な力を、ひょっとしたら他の仲間達もこの力を手に入れてるかもしれない。
私は白黒の少女を連れてアジトへと戻ることにしたのだった。
アジトに戻るとそこは凄惨という状況で、誰も彼もが恐怖に怯えていた。
「みんなどうしたんだ!」
私は光景に驚きつつも、自分と同じように姿の変わった仲間であろう少女に声をかける。
が、岩のような物を投げつけられる。
「危ないだろ! 何投げてるんだ?」
「わかんないよ、
その少女は足元に転がっているクラスメイトだったモノに目線を移す。
「あいつがそう命令したのか?」
広間で刃物のような物持った少女が、にこやかにこちらの覗き込んでいる。
「まだ魔法少女がいたんだね! 僕お手製の人形は気に入ってくれたかな? やはり紛争地域は適合者が多くて良いね、試験のやり甲斐がある」
魔法少女と言った、恐らく変身した少女の事を指しているのだろう。
お手製の人形という事は、あの少女が作った何かしらの装置だろうか?
そして試験とも、これはこの凄惨な殺し合いをさしているのか?
思いついた疑問を少女に問いただすと、巨大な刃物を持った少女は笑みとともに、自身の目的を饒舌に語り始める。
「魔法の国は人手が足りないんだ、だからスカウトをしに来たんだ。でも今までの試験のような非効率な事はしない。それに君達も可愛い服着れて楽しいでしょ? 僕もこの国の出身だけど、女の子は皆同じような格好で、こんなんじゃ個性が死んじゃうよ!」
言っている事は訳の解らない事ばかりだったが、彼女がこの殺戮の首謀者という事だけは解った。
「魔法少女に適合できなかった奴はどうなったんだ?」
疑問を口にし、問いただすと――
「いらないから殺したよ?」
彼女はまるで当たり前のように
私は怒りに任せ、見えない刃を投げつけるが。
「危ない子だねー。じゃあこれでガードしよっと」
彼女はまるで盾に使うかのように手近にあった死体を掴み身を守る。
「きさま!」
「君が悪いんだよ? あーあ可愛かったのに原型なくなっちゃったよ。縫い付けたらまた使えるかな?」
巨大な刃物を持った少女は、まるでおもちゃが壊れた子供のように振舞う。
「でもさあんまり試験官に反抗的な態度はよく無いと思うよー」
ぞくりとした寒気で、背筋が凍る。
避けなければと、直感的に身体はしゃがみこみ白黒の少女を抱き寄せる。
次の瞬間。先ほど岩を投げていた少女の首からは夥しい量の鮮血があふれ、ちぎれて転がった首が、こちらへ助けを求めるような、見覚えのある顔に変わる。
「あーよけられちゃった」
怒りや恐怖様々な感情が行き場を無くして自分の中を駆け巡る。
「試験再開しよっか! 大丈夫ちゃんと試験に勝ち残ったらみんな生きて帰れるよ」
笑顔で刃物を携え、そう語る少女はまるで死神のように思えたが。
「そのひとうそついてる」
そんな様子に物怖じせず、白黒の少女が刃物の少女を指差し、そう呟く。
すると刃物の少女は突然光り始める。
「なんだコレは? 何の魔法を使った?」
首をかしげよくわからないといった白黒の少女。
「まあいい、やっかいな魔法なら発動する前に大元を殺せば済むだけ」
刃物を携え、こちらに向かってくる少女。
私は白黒の少女を守らなければという一心で殺し合いの場に立つ。
初めての戦いだったが、必死で魔法を使い、相手の刃物を弾くことで、自分の身と白黒の少女の身を守る事には成功する。
焦りを見せ始めた刃物の少女が突如話しを持ちかけてくる。
「その白黒の魔法少女を渡せば、お前の命だけは助けてやるぞ」
「そのひとうそつき」
白黒の少女は一蹴する。もちろん私としても、自分が死んでも
次の瞬間刃物の少女が輝きを増す。
そして瞬く間に塵へと変貌を遂げる。
「勝ったのか?」
呆然としていると周囲に生き残った少女達が集まってくる。
「たすけてくれてありがとう」
みな思い思いの感謝の言葉を口にする。
集まった人数は思いのほか少なく。
100人以上居た私の学友は10人にも満たない数へ減っていた。
私は全ての経緯を残った仲間達に説明した。
「あの子は私達が育てましょう」
「そうだよ、あの人が命がけで産んだ命なんだから」
名前が無いと不便だと皆が言い始める。
「そうだわ! あなたが名前を付けてあげると良いわ」
仲間の誰かが私を指差し名付け親になれとせがむ。
この子の名前はそうだな。
ウソを見抜き、本当の事を見つけ出す。
「この子の名前は……」
私は
走馬灯のように、いままでの思いがこみ上げてくる。
「リアリィ……」
自ら死を選んだ幼子。
仲間を助けられず、親友を死なせ、父を殺してしまい、娘のような愛しい者を見殺しにしてしまった。
心が軋む音がする。
コワレテハイケナイ。
せっかくリアリィが助けてくれた命。
そう反芻するように思えば思うほど、ひび割れた心はコワレテ
リアリィリアリィリアリィ
こだまする。
リアリィを死なせてしまったのはお前のせいだと
心が語りかける。
どうしても。
許せない
このままでは壊れた心に殺されてしまう。
私は殺される前に心を砕いた。
◇◇◇
リアリィと別行動を取る事になったスノーホワイトは。
――スノーホワイト無茶ぽん!
ファヴの制止を聞かず、広場に入れる隙間を探し、アジトの中を彷徨う。
今こうしている間にも刻々と。
イケナイ。
イケナイ。
このままではイケナイ。
【スノーホワイト危ないぽん!】
ファヴは瓦礫が降ってくるのを注意し、スノーホワイトもそのおかげで、大事には至らない。
「ジェーンさん達が閉じ込められているんです。ここで私が――」
言葉を遮るように、瓦礫は無情にもスノーホワイトの行く手を阻む。
意思を持たず降り注ぐ石の塊には、スノーホワイトの魔法の効力も無く、救出作業は困難を極める。
【ファヴはスノーホワイトに、これ以上危険な目にあってほしくないぽん】
スノーホワイトのおかれている現状を危惧する。
【今回の件、魔法の国はスノーホワイトの口封じに動いてる可能性があるぽん】
上層部が能力を畏れ、掃討作戦にかこつけて、この場で抹殺しにきたのではないかと。
ファヴの心配にスノーホワイトは。
「ここから、みんなで脱出しましょう。
ファヴに落ちてくる瓦礫へ注意を払っていて欲しいと頼みこみ、壁に手を当て黙り込むスノーホワイト。
【どうしたぽん?】
――タッタ一枚の壁。どうする事もできないと、無心に壁を叩く。
叩くその手から血を滲ませながら。
――タッタ一つ、タッタ一つでよいのです。この壁を乗り越えられたのならと。
スノーホワイトの心中には無力さばかりが、こみ上げてくる。
【スノーホワイト!】
ファヴの声に驚き、壁を叩く手を止める。
心配するファヴに向き合い、瞳を見つめ、スノーホワイトは寂しげに呟く。
「なかなか……届きませんね」
【
彼女達は今、スノーホワイトの手を握り返せないだけだと。
【諦めないで欲しいぽん】
ファヴはリアリィの端末から聞き取れる情報を全て話す。
ファヴがリアリィに脱出を優先するように、促して居る所だと。
しかしその情報とは裏腹に、ジェーンの心の声とリアリィの心の声は――
【ぽん!?】
ファヴが一瞬たじろぐ。端末を投げられたのだと説明するが――
「ジェーンさんとリアリィさんの声がキコエル」
魔法が発動し、もう時間がない。
揺れる思いに呼応するかのように建物の揺れが酷くなる。
大きな揺れにより、スノーホワイトが通れるほどの広間への隙間ができた。
【スノーホワイト! 二人ともまだ無事ぽん! 今なら救出に――】
ファヴがそう言いながら隙間に飛び込み、スノーホワイトの方を振り返ると。
【スノーホワイト……泣いてるぽん?】
スノーホワイトの視線を追いかけると――ジェーンがタッタ一人。
意識を失うように、地べたへと倒れたジェーンを見て、スノーホワイトは急いで駆け寄り、少し緩んだ瓦礫からジェーンを引きずり出す。
「ジェーンさんしっかりしてください」
【しっかりするぽん! 早く脱出しないと危ないぽん!】
二人の呼びかけにジェーンは目を覚ますが――
「おねえちゃんたち、だあれ?」
酷く幼い口調で、ジェーンは返事をする。
「おねえちゃんどうしてないてるの?」
スノーホワイトは、ただ
スノーホワイト達の後を追ってきたメディカが慌てながら駆け寄る。
足の痛みでぐずるジェーンにメディカが魔法を使う。
「スノーホワイトさん! 揺れが少し収まりました。今なら脱出できます」
駆けつてきたメディカと共に、ジェーンに肩を貸しながら、辛くもアジトの外へと脱出する。
アジトの前では、魔法の国の魔法少女達が待機しており、ファヴは警戒する。
だが、ファヴの予想に反し、魔法少女達はジェーンの身柄を確保した、スノーホワイトを労う言葉をかけていた。
◇
数日後。
S国では宮廷晩餐会が開かれ、パーティー会場の中では白い魔法少女が佇んでいた。
単身で、テロリストを壊滅させた、功労者であるスノーホワイトが魔法の国の代表として呼ばれていたのだ。
パーティー会場では皆祝賀ムード一辺倒だったのだが、スノーホワイトに、一人憂いを帯びた心が――声が聞こえてくる。
ハードボイルドと共に会った大臣の声だった。
「お嬢さん、随分とご活躍なされたようで」
なれない外国のパーティーは退屈でしょうと、スノーホワイトに微笑みを向けながら声をかける。
「
愚痴のように話す言葉には、旧友のおかげで救われた国を憂う気持ちで溢れる。
「スノーホワイトさん。聞いたよ、あいつ自分の娘を救う為にMGSへ向かったんだろ?」
大臣は続ける。
「私は守れなかった、娘も、あいつも、国さえも」
政治家どころか――同じ父親としても私は失格だと。
大臣は悔やむ心を震わせながらスノーホワイトへ感情を吐露する。
そんな大臣にスノーホワイトは一言。
「ハードボイルドさんは、あなたに感謝してましたよ」
ファヴを介し、大臣へのハードボイルドの言葉を伝え終わると、大臣は泣いているのか笑っているのか複雑な表情で、スノーホワイトへ――
「ありがとう、お嬢さん」
先ほどまでの曇った心は幾許か晴れた様子で、感謝の言葉を述べていた。
わが国を救ってくれてありがとうと、大統領から祝福される。
報道陣の囲む中、パーティー最大の見せ場でもある祝辞の場にスノーホワイトは立っていた。
「わが国としても此度のテロ組織壊滅は本当に助かったよ」
改めて礼を言うように、大統領はスノーホワイトへ感謝の言葉を告げる。
取材陣へのパフォーマンスも兼ねた、演劇の一場面かのような振る舞い。
それに応えるように、スノーホワイトは困った事があればまた助けに来ますと、彼らへ言葉をなげかける。
会場は沸きあがり、盛り上がるのだが、スノーホワイトは困りごと一つ一つに解決策を提案してしまう。
それは大統領らが隠している困りごとで、本来なら、人に知れ渡る事自体が大問題。
ファヴを介して伝えられる言葉に。
「ははは、とてもユニークな少女だ」
――そんな事が起こった時は是非とも君に助けてもらうよ。
大統領は冗談だという風に一蹴し、問題をかわすのだったが、ハードボイルドと旧知の大臣は憑き物が落ちた様子で、スノーホワイトの横に立ち、大統領に向かい合う。
「大統領。そろそろ幕引きの時間ではないでしょうか」
「貴様、何のつもりだ」
困惑する大統領を横目に、報道陣へ今回のMGS事件の発端となった、テロリストによる学校襲撃事件に政府が加担していた事を暴露する。
そして自身はそれを止められなかったという責任から大臣の職を辞すると。
加速する言葉の刃は、S国の腐った患部を抉る様に突き刺さる。
混乱する会場内からスノーホワイトは、ファヴに誘導されながら脱出し、そのまま帰国の途に着く。
スノーホワイトは日本行きの飛行機の尾翼に乗り込み、離れゆく国を思う。
僅かに過ごした、この国に春が訪れる事を願いながら――
◇◇◇
中東で起こった一連の出来事。
魔法の国の魔法少女が、S国のテロリストに拉致されていた少女達を巻き込み、引き起こした新たなテロル。
なぜこのような行為に及んだのか、事件の首謀者である魔法少女は、自らが巻き込んだ少女達の一人に殺されてしまい、結局真実が明らかになる事は無かった。
S国自体も大臣の暴露した秘密の暴発により政権は崩壊し、民主化運動が巻き起こる。
結果として誰一人として事件の真相を知るものは居なくなってしまった。
その結果を生み出したスノーホワイトは、やはり期待以上のすばらしい人材だと。
占い師のような魔法少女が笑みを浮かべる。
水晶玉越しに映る、魔法少女の微笑んだ口元は、歪んでいた。
【次回予告】
スノーホワイトが中東で活躍していた頃、N市へ、あの魔法少女がやって来た!
ファミリーが白い魔法少女に助けられたと聞き、お礼をしなければと思い立った魔法少女は誰にも止められない!
次章【チェルナー・マウスの大冒険】お楽しみにぽん。