魔法少女育成計画-dogma-   作:闇と帽子と何かの旅人

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第二話『Carnival』

 【クラムベリーが魔法の国に入国しました】

 

 「15人目の魔法少女は、どんな感じの方だったでしょうか?」

 

 誰もいなくなったチャットルームで、クラムベリーはファヴと会話をしている。

 

 【ぽん! スノーホワイトの事かぽん? とっても良い子ぽん!】

 

 ファヴのスノーホワイトへの評論に、少し落胆しつつもクラムベリーは、今晩発表されるというイベントのほうが気がかりだった。

 

 「今日の夜あるという発表というのは、どんなイベントの説明なのでしょうか?」

 【抜け駆けは駄目ぽん! 夜まで待ってて欲しいぽん!】

 「そうですね、わかりました」

 

 少々急かし過ぎてしまったかとクラムベリーは反省の態度をあらわしていたが、本心ではこれから始まる事が待ちきれなくなっていて、その事を想像し口元を歪ませながら笑っていた。

 

◇◇◇

 

 鉄塔に向かうスノーホワイト()は空を駆ける。そう、空を文字通り駆けていた(、、、、、、、、、、)

 まるで身体は羽毛の用に軽く。走る速度は人間離れ。一瞬自分が獣のなったのかと錯覚し、ふと手足を見る。

 

 「よかった……私は人間だ」

 

 鉄塔の頂上にはラピュセルが先に待っていた。

 

 「あ! よかった来てくれたんだね!」

 

 スノーホワイトの到着に顔をほころばせるラピュセル。

 私はその笑顔につられギコチナイ笑顔を見せる。

 

 実際にはじめて見る自分以外の魔法少女。

 私はたった今、生まれて初めて魔法少女と()り合いになったのだ。

 

 「小雪?」

 

 いぶかしむ様に私を見つめるラピュセル。その時私がどんな表情をしていたかは、私にもわからなかった。

 

 「颯太だよ! ほら一昨年まで同じ学校に通っていた岸辺颯太だよ」

 

 颯太と名乗るラピュセルはおもむろに変身をとき。本来の姿を見せた。

 そこには、いたいけな少年がたっていた。

 

 「小雪、わすれたなんて言わせねーからな」

 

 見覚えがある。病室で見たスケッチブックに描かれていた友達は彼だと。

 そう私の心が呼びかけている気がした。

 咄嗟に笑顔で少年の呼びかけに応じる。

 

 「小雪も変わってねえな~。昔描いてた絵のまんまの魔法少女になってるなんてな」

 「私もびっくりだよ。男の子でも魔法少女になれるんだね」

 「僕が一番驚いてるよ。その……完全に女になってるし……」

 

 少年は顔を少し赤らめながら、伏し目がちに話す。

 鉄塔の上で笑い声が響く。ふと近くの空を見渡すと海鳥がないている。

 ここは海が近いせいもあってか、景色が綺麗だ。

 

 「へぇ、中学に入ってからはサッカーをしてるんだ」

 「小雪は今どうしてるの?」

 

 少年からのその問いに、私は病室に居た事を思い出した。

 彼は純粋な笑顔でこちらを見ながら回答を待っているようだった。

 私は誠実に本当の事を打ち明けた。病院に入院していると。

 

 「小雪、病院抜け出して大丈夫なの?」

 

 少年は少し切なそうな顔をして眼前の少女を気遣っている。

 私は笑顔で大丈夫と、とびきりの笑顔を彼に見せていた。

 

 「そっか。魔法少女になって身体が強くなったのか!」

 

 少年の笑顔は少し無理をしている感じだったが、少女を気遣ってか、とびきりの笑顔をしていた。

 おもむろに立ち上がり颯太からラピュセルに変身する少年。

 そして騎士の様な振る舞いで、私の手をとる。

 

 「わが盟友スノーホワイト、あなたの剣になることを誓いましょう」

 

 そう述べ、少年は決意を秘めた表情で自らの思いを少女に告げていたのだった。

  

 その後ラピュセルと別れてから病室へ戻る途中、うっそうとし、朽ち果てた寺があった。

 静けさの中から、ふと少女の声が聞こえた。

 憧れているものになりたいという、他愛の無い子供らしい悩みだった。

 

 きっとこういう少女が魔法少女になるのだろうと、思いにふけりながら。

 病院へ駆け足で戻った。

 

 

◇◇◇

 

 

 病院に戻り布団を被っていると、食事係の看護婦が食事を部屋に置きに来ていた。

 魔法少女に変身したままだったので、私には看護婦の声が聞こえていたが、それは困った事に耳を貸す値打ちも無い言葉であったが、私の心は助けを欲していた。

 

 病室で飴を見つめながらふと思い返していた。人助けをすれば手に入る。先日のチャットルームでの言葉を思い返していた。

 

 私の能力はひょっとして人助けをする為に生まれてきたのかしらん、と独りごちていたら、魔法の端末が鳴る。

 

 【ぽん! 重大発表があるぽん! スノーホワイト! チャットルームへ急ぐぽん!】 

 

 ファヴに急かされ部屋に入る。

 

 【スノーホワイトが魔法の国に入国しました】

 【ファヴが魔法の国に入国しました】

 

 【みんな揃ったぽん!】

 

 チャットルームには私を含め魔法少女が全員揃っている。

 辺りを見渡すとラピュセルが、こちらに向かって手を振っていた。

 

 「ところで今日発表されるというイベントとは、どのような催しなのでしょうか?」

 

 ファヴに質問をするクラムベリー。

 ファヴが言うにはこういう事らしい。魔法少女を多くスカウトしすぎたので、間引きをすると。

 

 【というわけで魔法少女の数を減らすことにしたぽん】

 

 チャットルームがどよめく、これからどうなるのか心配する者。どうやったら魔法少女を続けられるのかファヴに説明を求める者。イヨイヨ怒り出す者。

 

 ファヴは場が荒れる事を想定していたのか。騒然とする室内でイベントの発表ぽん。と言い放ち、騒ぐ少女たちを黙らせた。

 

 【みんなもすでにしってると思うけどぽん。人助けをするとキャンディがもらえるぽん! それを一生懸命集めた優秀な魔法少女が、これからも魔法少女を続けられるぽん】

 

 イベントの発表があり魔法少女たちは話し合っていた。

 当の私は、ラピュセルの不満めいた言葉に相槌を打っていたのだが。

 そんな私達に、ねむりんが声をかけてきた。 

 

 ねむりんと呼ばれる魔法少女は、穏やかで今回の争いごとにも、あまり関心がない。

 というよりは最初から眼中に無いように思えた。

 

 「スノーホワイトちゃんは、最近魔法少女になったばかりだから大変だね~」

 

 ねむりんの言葉を反芻する。一番新人の私がこの事態を引き起こしたのではないか。

 そういう気持ちに駆り立てられ、私はファヴに質問をしていた。

 

 【ぽん? 今回のイベントはスノーホワイトが魔法少女になったから始まったかってぽん?】

 

 私は首肯(うなず)く。

 

 【スノーホワイト、そんなに気落ちしないでぽん。元々(、、)こうする予定だったぽん! だから気にしないでキャンディ集めに励むぽん!】 

 

 予定調和とも言いたげなファヴ。

 ファヴがそう言いきってしまったのだから、誰も反論も不満もぶつけられない。

 

 各々魔法少女達はグループに分かれて、会話をしていた

 ラピュセルは相変わらずの笑顔で私を不安にさせまいとしならがも、今後の方針について話しかけてくる。

 

 「スノーホワイトの担当地区と僕の担当地区は隣同士だろ? それにスノーホワイトの魔法を使えば人助けの効率も上がるんじゃないかな?」

 

 協力してキャンディを集めようとの事だった。確かに一人で出来る範囲は限られていて、この申し出はとてもありがたい。なにより彼が私の助けになりたいという声が聞こえたので、私は自分の心に従い、協力することにした。

 

 各々区切りがついたのか、チャットルームからは人が一人。また一人とログアウトしていった。

 

 「じゃあ僕も、そろそろ落ちるね」

 

 そう言ってラピュセルは手を振りながらログアウトしていった。

 

 部屋には私とねむりんとクラムベリーとファヴが残って居た。

 

 ねむりんはいつものように眠たげで儚そうな表情で、私の話を聞いている。

 私は魔法について話をしていた。 

 

 「私の魔法は、いろんな人の夢の中を自由に行ったり~来たり~。自由に過ごせる魔法だよ~」

 

 夢の中を行き来できると雄弁に語るねむりん。ふと彼女自身の夢は何だろうか。

 そう疑問に思いねむりんの声を聞こうとしたが、彼女は困ってないようだった。

 

 「そうだ~。あとで~夢の中で会おうよ~」

 

 そう言い放ち、ねむりんはおやすみと笑顔でチャットルームからログアウトしていった。

 

 はたして私が寝たとして、夢を見るかは別だったが。約束どおり夢を見るつもりで私はベットに横たわっていた。

 

 夢か現実かわからない世界。そもそもこの数日間の出来事こそ夢の中で、本当の私は魔法少女などでは無く、ベットで寝ている。ただの人間なのではないかと錯覚する。

 

 「スノーホワイトちゃん」

 

 柔らかな声が聞こえる。私は目を見開き、グルリグルリと目を廻転(かいてん)させる。

 そこは混凝土(コンクリート)で囲まれた、酷く狭い場所だった。

 

 

 

 

 

 

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