魔法少女育成計画-dogma-   作:闇と帽子と何かの旅人

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第四話『Candy』

 あくる日。私はラピュセルに呼び出され、いつもの場所で落ち合っていた。

 私がつく前には少し不安げな顔をしていたが、私が鉄塔に到着するとそれを見せまいと気丈に笑顔を作っていた。

 

 「大丈夫だよスノーホワイト!」

 

 昨日のクラムベリーとファヴのチャットログを見たのであろう。

 ラピュセルが言い放つ。それはまるで自分自身の不安を払拭させようと、わざと大声で元気付けているような、そんな優しい声だった。

 

 私は新聞をラピュセルに渡し、ある記事を指した。

 

 「三条合歓……これがねむりん?」

 

 私は頷き伝える。彼女が本当に亡くなってしまった事。

 記事を見るラピュセルは悲しそうな顔をしていたが、私に弱気な表情を見せまいと、凛とした顔つきで戦おう、そう一言だけつぶやいた。

 

 「スノーホワイトの魔法の端末貸してくれない?」

 

 ラピュセルに突然言われたので少し疑問に思いながらも渡す。

 こうかな、ひとりごちながら端末と格闘しているラピュセルを見て私は、ほんのすこし救われた気がした。そうこうしている内にポコンと機械が鳴る。

 

 「ほら、これ見てみて」

 

 再び私の手に戻った端末に表示されたキャンディの数が減っていた。

 どういう事なのかラピュセルに説明を求めると、どうやら昨日の夜ねむりんが消えたあと、アップデートという名の機能追加があったらしい。

 

 「端末同士でキャンディの送受信が出来るようになったみたいだよ」

 

 その言葉を聞いて私はねむりんの事を思い浮かべていた。

 私は彼女からキャンディ(助け)を貰ってばかりいたのだと。

 そしてもう彼女に返す事も出来ないのかと、私は昨日貰った飴を強く握り締めていた。

 

 「スノーホワイトはねむりんと仲が良かったもんね……」

 

 悲しそうな表情を堪えながらラピュセルは端末でまた操作をしている。

 握り締めていた手を見ると、赤くなっていたが直ぐに元の色に戻る。しかし私の心はもう元に戻らないのだろうと思っていると……

 元に戻したよ、とそう言いながらキャンディの数だけは元通りになっていた。

 

 「スノーホワイトの事は私が守ります。たとえこの命に代えてでも」

 

 ラピュセルの心の声を聞く。酷く恐れていた。本当はそんな強がりをいう余裕さえない。そんな声が聞こえる。しかし私を命に代えても守りたいといったその言葉は本心のようだった。

 

 暗くなってきて今日はもう帰ろうといい、ラピュセルと別れたあと、私は三条合歓の通夜会場の前に居た。

 そこにねむりんの声はせず、彼女の家族の悲痛な声だけが私に届いていた。

 私は会場の前でただ呆然としていたが、買ってきていた彼女の大好きだった飴を置いて立ち去った。

 

 私はねむりんの居ない夢を見る事を恐れ、ただ気を紛らわせるために、自分の心が泣いているのにも耳を貸さず。無我夢中で人を助けていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 チャットルームを見ると、ラピュセルがいつもの場所でと、また約束を交わしていた。

 ふと彼女とした約束を思い出す。もう果たされる事はない指きり。

 そんな事を思いながら、ラピュセルとの約束はどうか果たせるようにと思い。私は鉄塔の上で待っていた。

 

 ふと耳を澄ます。声が聞こえる。スノーホワイトと呼ぶ声だったが、聞いたことのない声だった。

 声は更に聞こえてくる。作戦が上手くいくか不安な者。キャンディを奪えれば不安から解放されるという、不安を持つ似たような声をする者達。

 そして、この作戦は完璧だと自負しながらも、まだ見ぬ敵に不安に駆られている者。

 最後に、いつかどこかで聞いた。憧れの人物に対して不安を覚えるものが、私の目の前に居た。

 

 

◇◇◇

 

 ルーラはほくそ笑む。始まる前のこの勝負に勝ったと言わんばかりの笑顔だった。

 スノーホワイトとラピュセルの待ち合わせ場所は把握していたし、部下たちのやるべき事も、すべて手はず通り事が進んでいるように思えた。

 

 ただスノーホワイトと対峙するまでは。

 

 ルーラは鉄塔の上に居るスノーホワイトを見つけ、近付く。ルーラの魔法は相手との距離が5メートル以内でなければ使えなかったからだ。

 先行させたスイムスイムが建物に潜り隠れながら泳ぐ。彼女の魔法はどんな物も水のように潜れ泳いだり隠れれる能力だ。

 

 こちらには気付いていないのか? そう疑問に思うが、鉄塔を歩く足音は忍ばせてるとはいえコンコンと鳴り響く。

 気付かないはずが無い。だがルーラは怯むことなくリーダーとして率先して相手の魔法少女と対峙する決心をして、スノーホワイトに近付く。

 

 ふと見ると、スノーホワイトが振り向き笑顔でこちらを見ている。

 まずいと思いながらも、5メートルの距離に近付きルーラは魔法を行使しようとする。

 逃げるにしてももう遅い。たとえ攻撃しようとしてもスイムスイムが肉壁になってスノーホワイトの攻撃からルーラを守る。いずれにしても私達の勝利は決まったと、彼女はほくそ笑む。

 

 「ルーラの名の下に命ずるスノーホワイトよ……!?」

 

 しかしスノーホワイトはルーラの予想だにしない行動にでる。

 突如、魔法の端末を投げ捨てたのだ。

 

 「スイムスイム! 端末落としたら承知しないわよ!」

 

 慌ててスイムスイムに命令をする。しかしその隙にスノーホワイトに眼と鼻の距離につめられ魔法の杖を握り締められてしまう。

 

 「離しなさい!」

 

 魔法でもなんでもない、ただの言葉に意味は無く。ルーラはスノーホワイトに押し倒される。

 

 「飴が欲しいのなら差し上げます。ほら、これ美味しいんですよ。ねむりんが好きだった飴」

 

 スノーホワイトに気付かれていた。作戦の内容。ルーラの魔法にも。

 押し倒された彼女は、大量の飴を無理やり口の中にねじ込まれ喉を詰まらせそうになる。

 

 吐き出そうともがくが、どんなに抵抗しようとも、その行為は無意味だった。スノーホワイトが飴をしきりに、ルーラの口につめていく。子供が宝物を袋に詰め込むように。

 恐怖に押し殺されそうになる。魔法がどうより相手が悪過ぎる。逃げようにも、マウントをとられ手も足も出ない。助けを呼ぼうにも、口の中は飴でいっぱいで満足に言葉も発せ無い。

 唯一の救いとすれば部下にこんな無様な姿を見られずに済んだ事か。

 

 「美味しいですよね、あめ。欲しがるのわかりますよ。だって命の味がするでしょう?」

 

 ルーラは眼前の魔法少女が何を言っているのか分からなかった。ただ自分とは根本から違う存在のように思え、恐怖に打ちひしがれる。

 その堪えられない感情からか、ルーラは声にならない声で助けを呼ぶ。

 

 「ふぁふけなひゃいよ! ふぉびぐすふぉも!」

 

 その声は仲間には届かなかった。ただ目の前のスノーホワイトには届いていたようで、まるで子供のような笑顔で頷いていた。

 

◇◇◇

 

 颯太は激怒した。

 天使のような魔法少女に妨害されながらも走りながら鉄塔に向かう。

 

 途中足元の何かに足をぶつけてしまった、犬のような姿が転がる。魔法少女だろう、ぶつかった相手は気絶しているようだった。颯太は動かなくなった敵を気にも留めず、ただ小雪の元へ向かう。

 

 天使の一人を剣で叩きつける。空中を自由に飛びまわれるようで、簡単に避けられてしまうが、それも彼には計算のうちだった。

 サッカーで鍛えられた洞察力、そして瞬時の判断力は魔法少女になっても生かされていたのだった。

 避けた天使が回避するスペースを覆うように剣を巨大化させそのまま押しつぶす。

 

 押しつぶしたはずの天使は消えていた。

 残りは一人。辺りを見渡すがそこに人影は無く。

 しずかに鳥が飛び立っていくのを颯太は見上げる。

 

 「変身していたのか!」

 

 颯太は初めての一対多の戦いで善戦をするも、とどめをさせず逃げられてしまう。

 

 ふと小雪との待ち合わせが脳裏に浮かぶ。

 小雪が危ない!

 

 巨大化させた剣で天使たちを打ち落とすべく、巨大な剣をはらうが鉄塔に直撃させ、激しく揺らしてしまう。

 

 「しまった!」

 

 もし小雪が落ちてきたらどうしよう。その不安は的中しスノーホワイトが空から舞い落ちてきた。

 何とか小雪だけは無事でいてくれ。自分を省みず空から落ちてくるスノーホワイトを受け止める

 

 「無事か! スノーホワイト」

 

 その問いに少女は無邪気な、まるで赤ん坊のような笑みで答えた。

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