スノーホワイトはファヴを聞きたいことがあると言って呼び出していた。
【どうしたぽん? 質問って】
「今、飴を一番持ってない人の所持数を教えてくれないかな?」
ファヴはスノーホワイトの質問に一瞬戸惑うが、快く答える。
【ぽん? 最下位の魔法少女のキャンディ所持数ぐらいなら教えてあげても良いぽん】
それを聞き、笑顔を見せるスノーホワイトにファヴもつられ笑っている。
【他にも聞きたいことがあればファヴになんでも言ってぽん】
「じゃあルールのこの部分についてなんだけど」
スノーホワイトはルールの最も重要な部分について自分の解釈をファヴに説明し、合っているか尋ねていた。
【現行のルールはそんな感じで間違ってはないぽん】
自分の解釈は間違っていないと聞き、安堵の笑顔を見せるスノーホワイト。
ファヴはそんなスノーホワイトを見ながらほくそ笑む。
【えこひいきは本当はだめぽん。けどスノーホワイトには頑張って欲しいぽん】
一匹と一人の笑い声が病室に、こだましていた。
◇◇◇
ルーラは廃寺に集まる部下たちを見ていた。
ミナエルユナエルは自分達が投稿した動画を見ながら騒いでいる。まったく馬鹿らしい。
たまは宿題をやっているようだったが正解より間違いの方が多く、指摘してやっても怯えながら、謝りながら、また間違えると言う事を繰り返す。
スイムスイムだけは何もせずルーラの眼前に正座していた。
頭の悪い奴らの行動は理解できない。そう思っているルーラの魔法の端末が突如鳴る。
知らない番号からの電話だった。不審に思うが、ファヴが誰かに連絡先を教えたのだろうと思いながら電話に出る。聞き覚えのある声で挨拶をされる。電話の声の主はスノーホワイトだった。
「何の用? つまらない用件だったら切るわよ」
そう言い放つルーラ。
『スイムスイムさんが困っているようなので、気にかけてあげてください』
予想だにしないスノーホワイトの用件を聞き困惑する。
「スイムスイム! 何か困り事抱えてるのなら言いなさい!」
スイムスイムに尋ねるルーラの声を聞き、周りの部下たちも何事かとルーラとスイムスイムのほうに視線を集める。
ミナエルユナエル達は、心の中でまたババアがヒスってるよと、うんざりしながら見ていた。
たまは突然の大声でびっくりして今にも泣きそうな
厄介事を抱えているのなら早く解決した方がいい。
それがあのスノーホワイトに知られているような事なら尚更だ。
ルーラはそう判断しスイムスイムに尋ねたのだったが。
「困ってない」
スイムスイムからの返事は思っていたものと違い。
ルーラにとっては芳しいものではなく、怒りがこみ上げてきたが。
スイムスイムに怒鳴っても仕方が無いと判断し、怒りの矛先をスノーホワイトに向ける。
「何も困ってないって言ってるけど? まったく私に面倒ごとを押し付けないで欲しいわ。それとも嫌がらせなの? あなたと話してると馬鹿がうつりそうだから切るわよ」
そう語気を強めながら言い放ち、こちらから通話を切ろうとしたが、スノーホワイトはそれなら良かった。ルーラさんも困った事があれば言ってくださいね。とだけ言い残し、スノーホワイトに先に通話を切られてしまう。
気付けば手が震えていた。
ルーラはそれが怒りで震えてるのではなく、恐怖で震えているのだと悟った。
◇◇◇
脱落者が発表される日の朝。
あの一件以来スイムスイムは食事も喉を通らず。学校も休み。毎日気が気では無かった。
スノーホワイトに全てを見透かされ、あまつさえ心配をされる。
ルーラの為、自分の為、自分がルーラのようなお姫様になる為、あこがれと理想を実現させる為。
これでいいと自分自身を騙そうとする。表情には出さないが今にも泣きそうだった。
自分が助けを求めたら、その声はどこに行くのだろう。
一瞬スノーホワイトの笑顔が過ぎる。スイムスイムは声を押し殺し、ルーラの居る廃寺へと向かった。
◇◇◇
ルーラはスノーホワイトから再び届いた連絡に戸惑っていた。
内容はこうだ。
『もしルーラさんの所持している飴が【3000個】より少なかったら今日、鉄塔でお会いしませんか? 助けになれるはずです』
意味も脈略もわからないが、何かを見透かしているような。
事実ルーラの所持していたキャンディは3000個を下回っていた。
廃寺の中は相変わらずだった。
ふと、いつもと変わらず正座をしているスイムスイムを見ると、すこし震えていたように見えた。
「スイムスイム! 体調悪いのなら楽な姿勢にしなさい! 見ていて鬱陶しいわ」
そう言い放ち、他の者にも各自夜まで自由行動と言い渡す。
スノーホワイトの言った言葉が気になり、ルーラは鉄塔へ向かっていった。
仮に罠だとしたら、こんな訳のわからない誘いはしないはずだ。
魂胆がわからない以上、鉄塔に向かうのは危険だと頭では理解していた。
ルーラは魔法少女ではなく魔法を解除し人間の木王早苗として、一人鉄塔へと向かっていた。
仮にスノーホワイトとラピュセルが待ち構えていたとしても、何食わぬ顔で帰れば済む事だ。
なにより部下たちを連れて行き。何の成果もあげられず、ただスノーホワイトと会話して終わりなどと言う事態になれば、リーダーとしての自分の立場が危うくなる。
危険とプライドを天秤に掛けながら鉄塔へと足早に向かう。
鉄塔の下にスノーホワイトは居た。周りを見ながら歩く。鉄塔の上にも周りにもラピュセルは居ない。
ルーラの姿になってから話し合いに向かおうと思い、スノーホワイトを無視し歩き続ける。
スノーホワイトとすれ違うが今のルーラは人間の姿。不自然な行動をしなければ特に目に留まるような事は無いと確信し、そのまま過ぎ去ろうとする。
「ルーラさんですよね。来てくださって、ありがとうございます」
ルーラが振り向くと笑顔のスノーホワイトがこちらを見つめ手を振っていた。
どうしてばれたのか、逃げようか、変身して戦おうか、などと逡巡していると、ルーラはスノーホワイトに飴を手渡されていた。
「お近づきのしるしです」
恐怖からか、ルーラはただスノーホワイトについて行く事にした。
◇◇◇
スノーホワイトはルーラと鉄塔の上に行き、冷たい床に座る。
「はるばる来てあげたのよ。つまらない事だったら承知しないから」
ルーラの声が少し震えていた。
早く安心させてあげよう。そう思い、スノーホワイトは笑顔でルーラに端末を見せる。
そこには3000個のキャンディが表示されていた。
スノーホワイトはラピュセルに余分な飴を押し付けて、わざとその個数にしていたのだ。
「この前奪った時より多くなってるじゃない」
しかし驚きと同時にルーラは疑問を口にしていた。
「どうして私が困るの?」
スノーホワイトは説明をする。この前奪われた飴の数は【37000】個で、スイムスイムが色々な魔法少女に飴を配っていた事。
現時点で飴の数が一番少ないのは【ルーラ】だという事。
このままでは今日の夜にルーラはこの世から居なくなってしまう事。
「そんな話信じられるわけ無いでしょ! 大体なんで私のキャンディが一番少ないのよ! おかしいでしょ! あの中で私が一番多く……」
そう言いかけてルーラは口ごもる。
先ほどスノーホワイトが口にしていた、スイムスイムがキャンディ配っていたいう文言を思い出す。
表情が青ざめるルーラをスノーホワイトは笑顔で大丈夫とささやきながら見つめる。
「あの阿呆ども……私をはめようとしたのか!」
怒りがこみ上げ眉間にシワをよせ、ルーラは
だが振り向きざまに口の中に飴を入れられる。ルーラは以前の屈辱を思い出し、今度は頬を膨らませながらスノーホワイトを睨みつける。
「今拠点に戻って問いただすのは危険だと思いますよ」
スノーホワイトはまるで赤子をあやすかのような口調でルーラを説得する。
「じゃあどうしろっていうのよ……」
目の前のスノーホワイトからキャンディを奪うかと考えるも、以前の敗北を思い出し二の足を踏む。
「端末を貸していただけますか」
スノーホワイトはそう言いながら、ルーラが了承する間もなく端末を手に取り何か操作をする。
「ちょっと何を! ってキャンディが増えてる?」
ルーラは目をパチクリとさせ、戸惑っている。
スノーホワイトはルーラの頭を撫でながら、スノーホワイト自身の端末をルーラに見せ話す。
「これでもう大丈夫だから、安心して寝れるね」
突然頭を撫でられ、底知れぬ恐怖に身震いし戸惑いながら、スノーホワイトの端末に視線を移す。
そこには先ほどの自分の端末と同じ個数のキャンディが表示されていた。